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車輪の国、向日葵の少女

車輪の国、向日葵の少女【38】(終)

・・・・・・・・・ 久しぶりに見上げた夜空は、どこまでも高く、深い闇をつむいでいた。 「こっちだ!」 まさか、おれたちが逃げ出してくるとは思いもしなかったのだろう。夜の学園内の警備は手薄だった。 牢獄から抜け出して、石階段を上った先で一人倒す…

車輪の国、向日葵の少女【37】

・・・ ・・・・・・ 翌朝、おれたちは出発前の最後の顔合わせをした。 「・・・という作戦だ。いいな!」 「まだ何も言ってねえよ!」「伝わらないのか? 僕らには言葉なんていらないはずだろ?」 こいつはほっとこう。 「一応分かってるけど、確認したほ…

車輪の国、向日葵の少女【36】

・・・ そうして、いつの間にか、朝になっていた。 ・・・三人とも、実は一睡もしていなかったのだ。 「よし、状況は理解した。この大元帥、卯月セピアが夏咲ちゃん救出のための、絶妙の計を用意しておくとしよう」 ・・・そんな顔芸つきで偉そうに言わなく…

車輪の国、向日葵の少女【35】

・・・ 夏咲より前を、おれが歩く。後ろからは、泣いているのか、小さく嗚咽が聞こえていた。 「なっちゃん、日が暮れてしまうよ?」 歩く速度が遅いため、普通に歩いていると引き離してしまう可能性がある。 「なっちゃん、はぐれないようについてきて」「…

車輪の国、向日葵の少女【34】

・・・清々しい朝。多少痛みの残る身体をほぐすように、ベランダの前で柔軟体操。いざと言うとき、痛みで動けませんでしたじゃ、間抜けだからな。 「よっ、ほっ、とっ、ぐぇっ!」 関節が軋みをあげた。 「まだ、完治じゃない、っか・・・痛てて」 ガバッ!…

車輪の国、向日葵の少女【33】

・・・。 ・・・・・・。 おれの右手は、何かを必死につかもうとしていたような気がする。 それはきっと、手のひらではなく、崖の岩や、木の幹なのだろうが・・・。 ・・・どうやら、生きてるようだ。 ・・・ 一度、ひどく咳き込んだ。 頭の奥で鐘が鳴って…

車輪の国、向日葵の少女【32】

・・・ ・・・・・・ まどろんでいた。 それは、夢の中で、夢だと気づくような現実的な夢だった。 内乱が起こる少し前。 夏咲との、つつましい日々。 ― ―― ――― ―――― ・・・ぼくは向日葵畑に来ていた。 お姉ちゃんが大学に行ってからというもの、ぼくは家に引…

車輪の国、向日葵の少女【31】

・・・「思ったんだけど、学園って面倒だよね」「そうですか・・・」 一緒に登校しているものの、夏咲の雰囲気は不安定なままだった。 「朝早くから起こされて、机にかじりついて。でも、友達がたくさんいたら楽しいよね?」「・・・かもしれません」「服装…

車輪の国、向日葵の少女【30】

・・・灯花の家を出てから、二日たった。田舎町に降り注ぐ陽射しの勢いは、若干の衰えを見せ始めていた。 残るは夏咲だけ。 とっつぁんから辞令を受けたおれは、夏咲の部屋を尋ねるところだった。おれは一秒でも早く特別高等人になりたい。 それなのに、も…

車輪の国、向日葵の少女【29】

・・・ おれが、どうしてさちと磯野と夏咲を見捨てて、この町を逃げ出したのか。 99%はおれ自身がどうしようもないクズだったからなのだが、残りの1%は親父のせい・・・ということにさせてもらおうか。 今日、おれの親父、樋口三郎は革命家などではなく…

車輪の国、向日葵の少女【28】

・・・「お母さん、体調悪いって?」 朝一番、まだ夏の夜虫が泣いている時間帯に京子さんは不調を訴えた。 「どうも、熱が出ているみたいだな」 部屋に引きこもっていた灯花も、心配そうに部屋から出てきたのだった。 「だ、大丈夫なのかな?」「軽く診てお…

車輪の国、向日葵の少女【27】

・・・次の日、朝一番で電話がかかってきた。 電話に出たのは、京子さんだ。 「・・・・・・」 おれと灯花は、固唾をのんで見守った。 「ええ、わかりました・・・灯花に聞いてみます」 その言葉を最後に、京子さんは受話器を置いた。 「どうでした?」「ど…

車輪の国、向日葵の少女【26】

・・・。 ・・・・・・。 五日たった。 おれは未だに大音家に宿泊している。 「今日も、通知来ないね」 郵便受けを覗き込み、がっかりした様子で言う。 バッジに目が行ってしまう。 京子さんが、義務の免除を申請したにもかかわらず、国から承認通知が来な…

車輪の国、向日葵の少女【25】

・・・京子さんが、慌しく出発の準備をしている。 「研修は、一週間の日程です」 おれはソファに腰掛けて、研修の説明をする。寝具など、用意すべきものの指定をして、簡単な健康診断を済ませた。 「ありがとう。それじゃあ、もう寝るわ」「なんだか、すみ…

車輪の国、向日葵の少女【24】

・・・。 朝食の時間になっても灯花は部屋から出てこない。 「いただきます・・・」「・・・・・・」 居間には、京子さんと二人きり。もともと素っ気無い食卓でも、一人減るだけでさらに寂しいものだ。 「京子さん、灯花を呼んで来てもいいですか?ご飯くら…

車輪の国 向日葵の少女【23】

・・・。 さて、経過報告書をとっつぁんに提出しに行かなきゃならない。 経過報告といっても、まったく進展がない。 京子さんの管理も、おれの監督もかなりいい加減だし・・・。 とっつぁん、キレるんじゃねえかな・・・。 うぅむ・・・胃が痛くなってきた。…

車輪の国、向日葵の少女【22】

・・・。朝一番に、灯花と一緒にラジオ体操をする。 「腕を大きく回して、左へほーい!」・・・。「なにしに来たんだ?」「邪魔くさいなあ・・・」「いや、暇で暇でしかたがないんだよ」「・・・友達いないのかよ?」「君たちがいるじゃないか」「無視しよっ…

車輪の国、向日葵の少女【21】

・・・。 「というわけで、本日から当家にご厄介になることになりました、森田賢一でございます」 「は・・・!?」 「は、はあ・・・」 「今日付けで、大音灯花さんの担当になりましたので」「あ、そうなんだ」 「・・・私たちの家に住むの?」「ええ。 す…

車輪の国、向日葵の少女【20】

・・・。 おれがまだ、樋口健だったころ。 親父とおれとお姉ちゃんの三人で暮らしていたころ。 陽射しは傍若無人なまでに照りつけ、道の両脇に広がる向日葵は精一杯背伸びをしていた。涼しげな山風が、道の真ん中でたたずむ少女の長い髪を、大きく波打たせ…

車輪の国、向日葵の少女【19】

・・・。 前日の雨はどこへやら。その日は、異常なまでの快晴が予測された。天高くそびえる山の向こうが白み、ついで鮮やかな黄金色の朝焼けを見せたかと思うと、あっという間に濃い青色の夏空となった。 さちにとって最も重要な一日の朝がやってきた。 午…

車輪の国、向日葵の少女【18】

・・・。 朝七時。さちは向日葵畑で目を覚ました。 「おはよっ!」 それまで青かった表情に赤みが差す。 「っく・・・!」 吐き気を催したのか、口元を押さえてうつむいた。 「だいじょうぶか?」 支えてやるが、だいじょうぶではなさそうだった。せめて、し…

車輪の国、向日葵の少女【17】

・・・。 昨日からの雨は、その勢いを弱めながらもしぶとく降り続けていた。朝七時、さちがだるそうにベッドから身を起こした。 「おっはよーっ!」「・・・・・・」 こめかみを押さえて頭を振っている。 「・・・うっ・・・」「大丈夫か?」 「・・・っ・・…

車輪の国、向日葵の少女【16】

・・・。 なんだか、今日は蒸し暑い。朝、止まっているさちを背負って、向日葵畑まで運んできた。時計の針が七時を指したとき、さちの顔が苦痛に歪んだ。 「んっ・・・ぅっ・・・」「お姉ちゃん・・・?」 まなが心配そうにさちの顔を覗き込む。 「ぅっ・・…

車輪の国、向日葵の少女【15】

・・・。 お昼の時間である。 「あー、だりぃ。さちの監督とかマジめんどくせえ」「ちょっとは黙ってられないのぉ?」「寂しいと人間は死ぬんだってば!」「お、怒るなよぉ・・・」 じゃれあっていると、さちがゆっくりと椅子から腰を上げた。 休憩するのか…

車輪の国、向日葵の少女【14】

・・・。 澄み渡る広い空。蝉の声が遠く山の向こうから運ばれてくる。 「お姉ちゃん、初夏から夏に季節認定していいかな?」 「う、む・・・」 おれの背中で寝むりこけていたさちが、もぞもぞと蠢きだした。 「うあっ・・・。え? こ、ここは?」「寝ぼけて…

車輪の国、向日葵の少女【13】

・・・。朝七時、さちはぱちりと目を開いた。 「・・・だいじょうぶか?」「・・・んっ、まなは?」「まだ寝てる」 まなは、昨日おれたちが部屋に戻ったときにはクローゼットの中で眠っていた。 「あー、なんか気持ち悪い・・・。いつものことだけど・・・」…

車輪の国、向日葵の少女【12】

・・・。 久しぶりにぐっすり眠ったおれは、誰も起きてこない時間のうちに、負傷した我が身を念入りにチェックした。 ・・・やっぱり、肩がいまいち調子悪いな。さちと殴り合いにならなきゃいいがね。苦笑して、しばらくぼーっとしていると、まながクローゼ…

車輪の国、向日葵の少女【11】

・・・。 その翌日。洞窟探検で披露しているにもかかわらず、おれは一睡もできなかった。 「さち、そろそろ七時だ」「よーし、今日も・・・って、あれ?」 ベッドの上で上体を起こしたさちがおれの顔を見て固まった。 「どしたの? やけにシビアスなんだけど…

車輪の国、向日葵の少女【10】

・・・。 さちは、七時まで眠る。 洞窟探検に行ったその帰りなんだから、よほど疲れていたに違いない。 それにしても・・・けっこう体力を使うんだな。・・・。若さって素晴らしい。 かくいうおれも、火照った身体を鎮めるために外に出ていた。パイプをくわ…

車輪の国、向日葵の少女【9】

・・・。 足場の悪い横穴が延々と続いていた。 「はあっ・・・はあっ・・・はあっ・・・」 竪穴を登って一度休憩したが、すでに疲労はさちの潜在体力の限界を超えていたようだ。 「・・・さ、寒くない・・・?」「多少は・・・」 奥から吹き込む風は冷たく、…