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探偵 神宮寺三郎 白い影の少女【3】


・・・。



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「この辺りか・・・」
「確かにこの辺りは開発が遅れて、寂れた感じがありますね」
「空き家も多いようだし、幽霊話が出るのもわかるな。
まあ、さっきの話は熊さんの見間違いだとは思うが、この辺りを一回りしてみよう」
「はい」

 

・・・

熊さんの言葉を信じない訳ではないが、

もはや、ここには人影はないな・・・。


ましてや、幽霊など・・・まあ、もう少し探してみるか。



・・・

 

暗闇が辺りを包み込み、沈黙だけが支配している。


不気味な空間だが、白い影などは見当たらない。


言うまでもなく、子供の姿もない。


しかし、熊さんが嘘を言っているようには見えないし、特に見間違える物もない。


こんな状況ではどう判断すればいいのだろうか・・・。


 

「先生、熊野さんは見間違えたのでしょうか?」
今の段階では、熊さんが幽霊を見たか見ていないのか判断を下す事は出来ないな」

「そうですね・・・」
「・・・・・・・」
「・・・・・・・」
「洋子君、帰ろうか」
「・・・はい」

 


・・・


・・・・・・



俺達が事務所に戻るなり、熊さんが駆け寄ってきた。

 


「おお、神宮寺君、待ちかねたぞ。どうだった?」
「それらしきものは見つからなかったよ」
「本当か?ちゃんと調べたのか?」
「本当にいたとしても、もうどこかへ行ったんじゃないか?」



「私達が行った時には何も・・・」
「う、うむぅ・・・。

では神宮寺君、ゆうちゃんについて調べてくれ!

い、い、いいな!絶対じゃぞ!

ワシの命を救うと思って!」

 

・・・


熊さんは言いたい事を言うと、逃げるように帰っていった。

 


「さて、今日はもう仕事は終わりだ。 春菜も帰るんだな」
「ちぇ・・・ まあいいや、また明日来ますね。

では、失礼しまーす」

 


そう言うと、春菜はあっという間に去っていった。


来るときも風のようだったが、去るときも風のようだ。

 


・・・



「ようやく静かになったな・・・。
それにしても、熊さんの話。どうも信じ難い話だが・・・」
「あの怯えようですから、本当の事かもしれません」
「洋子君は幽霊がいると信じてるのかい?」
「・・・でも、どちらにせよ熊野さんが何かを見た、という事には変わりはないと思います」

「そうだな」

 

・・・

俺は煙草に火を付けた。


ようやく俺の一日も終ったようだ。

 

しかし、静江の依頼と熊さんの依頼・・・。


明日から忙しくなりそうだ。


今日はゆっくり休むとするか。

 

「では先生、明日から忙しくなりそうなので、今日はこの辺で失礼させていただきますね」

「ああ、そうだな・・・」
「先生、夜更かしをしないようにゆっくり休んで下さいね」
「ああ、大丈夫だ」
「では、失礼します」
「お疲れさん」

 


・・・。


ふぅ、俺も休むとするか・・・。

 

俺は書斎に移動した。


今日は散々だったな・・・。


友人の葬儀に、熊さんの幽霊騒動。


・・・やれやれ。

 

哲司の母親からの依頼と、熊さんからの依頼も立て続けに入った。


洋子君の言ったとおり、明日から忙しくなりそうだ。


俺は哲司との思い出に浸る余裕もなく、

浅くも、深い眠りについていた・・・。

 

 

・・・。


・・・・・・。






3月12日 神宮寺探偵事務所

 


いつもと変わらぬ平穏な朝。


昨日の疲れがまだ残っているようだが、そうも言ってられない。


俺は重い身体をかばうように、ゆっくりと起き上がった。

 


・・・ん?


やけに事務所が騒がしいな。


朝から来客か・・・?

 


ドン!! ドン!!

 


「何だ・・・?」

 


洋子君ではなさそうだが・・・。


熊さんか?


俺が思案している間にも、ドアを叩く音は次第に大きくなっていく。

 


「・・・・・・全く」

 


俺は苛立つ思いを抑えつつ、書斎のドアを開いた。

 


「神宮寺さん、遅いですよ!」
「・・・・・・」

 


・・・春菜か。


俺は予想しなかった顔を間近に見て、頭が痛くなるのを感じた。

 

「先生、おはようございます」
「ああ、おはよう・・・ なんだ、まだこんな時間か」



「なんだじゃないですよ!

早く起きて顔洗って調査に行きましょう!
そうですよね!洋子さん!!」

「フフ、そうね・・・」

 


洋子君は苦笑いしている。


やれやれ・・・。


洋子君でも手に負えないようだな。


これからの調査はいつも以上に大変なものになりそうだ。


俺は再び頭が痛くなるのを感じた。

 


「とりあえずコーヒーでもいかがですか?」
「ああ、もらうよ・・・」

 


目を輝かせている春菜を見て、俺は観念する事にした。


どうやら当分は俺に、平穏な生活は来ないらしい。


俺は気合を入れるため、起きて早々に上着を羽織った。



「準備万端ですね! 調査に行きましょう!行きましょう!」
「・・・全く、朝からうるさい奴だ」



「はい、先生。 コーヒーどうぞ」
「ああ、ありがとう」


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・・・。


全く今日も来るとは、困ったもんだな・・・。


完全に助手気取りだ。

 

「先生、早速調査に向かった方がよさそうですね」
「ああ、さっきから嫌な視線を感じるしな・・・」



「・・・・・・」

 


やれやれ、朝からゆっくりも出来んな。

 


「今日は何の調査をするんですか?
奥様の依頼ですか?

それともゆうちゃん?」

 

春菜は興味津々で、今にも勝手に調査を始めそうな勢いだ。


春菜の立場からすれば、静江の依頼を優先しろと迫るべきなのだろうが、そういう考えはないようだ。


いや、むしろ春菜はゆうちゃんの方に興味を引かれているようだ。

 


「先生、今日はどうなさいます?」
「そうだな・・・」



「私もついていきますからね!」
「ぞろぞろ連れだって歩いても邪魔になるだけだ」
「そんな事ないですよ!」
「・・・・・・やれやれ」

 

・・・

ゆっくりコーヒーを飲む事さえ出来ないようだ。


俺はコーヒーでくつろぐ事を諦め、これからの事を考える事にした。


・・・ここは春菜か洋子君のどちらかを連れていく方がいいだろう。



「・・・仕方がない、春菜。

付いてこい・・・」
「そうこなくっちゃ、さすがは名探偵!」



「・・・陽子君、すまないが、今日は留守番していてくれ」
「はい、わかりました」
「まあ、春菜がどこまで役に立つか知っておきたいしな・・・」



「フッフッフッ、私の実力をお見せしましょう!」
「いいから、行くぞ・・・さて」

 


早速、昨日静江から得た亜希の手掛かりを追いたいところだが・・・。

 


「やっぱり実家を当たるのが無難かと・・・」
「春菜、何を言っているんだ。

亜希の実家へ行く必要はない。

そもそも亜希の実家がどこにあるのか、わかるのか?」
「それを突き止めるのが探偵の仕事です!」
「そんな事をしなくても・・・。
とりあえず、静江から聞いたアパートへ行ってみた方がいいだろう」
「・・・なるほど! さすが名探偵!」

「・・・中野のアパートへ行くぞ」
「ラジャー!!」
「・・・何か不安になってきたな・・・」



「先生、気を付けてくださいね」
「ハハ、大丈夫だよ。

いつもとは違って危険な依頼ではないからな」
「フフフ、そうですね。

何か口癖になっているみたいです」



「洋子さん!

私が神宮寺さんを守りますから安心して下さい」
「・・・春菜、人の話を聞いていなかったのか?」
「へぇ?」
「・・・全く」



「フフフ・・・では先生、頑張って下さい」

「ああ・・・」



「さぁ! 行きましょうよ!」
「ああ、わかっている」
「よーし、行きましょう!」
「いいから、落ち着け・・・。

じゃあ、行ってくる」

「はい、お気を付けて」

 


・・・

俺達は洋子君に見送られ事務所を出た。


調査の手始めは亜希が住んでいたというアパートだろうな。


アパートは中野にあるという話だった。

 


「神宮寺さん! 早速、亜希さんのアパートに行きましょう!」
「わかっている・・・ そう怒鳴るな」
「怒鳴ってなんていませんよ。

これは気合いの証です。

探偵助手として頑張らなければいけませんからね!」
「・・・・・・」
「そういえば、神宮寺さんの事務所ビルってボロいけど、不思議と落ち着きますよね。

全然、気兼ねなんかする必要ないって感じで」

「ほめるのか、けなすのか・・・どっちかにしてくれないか?」
「うーん・・・私なりに精一杯ほめたつもりなんですけど」

 




・・・


・・・・・・


静江から教えてもらった住所によれば、ここに佐藤亜希が住んでいたようだ。


入り口にはコーポ中野ハイツと書かれている。


周りは騒がしくもなく、かといって寂れてもいない。


華やかさを求める人達には見向きもされないだろうが、居心地は良さそうだ。


俺のいる新宿のような騒々しく、雑然とした場所は好きだが、こういう場所も嫌いではない。



亜希に関する手掛かりが何かしら得られるといいのだが・・・。

 


「さぁ! 亜希さんに会いに行きましょう」
「ああ、ここにいればな・・・」

 


俺はアパートの中へと足を踏み入れた。

 


「いよいよですね・・・」
「ああ・・・とりあえず、亜希が住んでいるか調べてみるか」
「はーい!

・・・なんだか寂しい場所ですね」
「亜希は大学時代をずっとここで過ごしていたそうだ。
亜希が住んでいたのは、二階の角から二番目の部屋だな」

 


俺は慎重に確認しつつ、佐藤亜希の部屋の前に立った。


ここには亜希が住んでいるとは限らない訳だが・・・。


 

「まず、表札を見ましょう!」
「ああ、そうだな・・・。

住んでいる人を確認する方法としては、それが一番効率がいい」

 


・・・


「神宮寺さん、表札には『山田』と書いてありますが・・・」

 


やはり引っ越していたか・・・。


早速、手詰まりになってしまった。


どうしたものか。

 


・・・

俺達はコーポ中野ハイツの前へと戻って来た。


やはり俺の予想通りだったな。


しかし、これで諦めるのも心残りに感じる。


ここの住人に聞き込みでもしてみるか・・・。


 

「神宮寺さん、神宮寺さん」
「ん? どうした?」
「・・・あそこに怪しい人がいますよ」
「・・・・・・?」

 

春菜の視線の先を見ると、一人の婦人が怪訝そうに様子をうかがっているのを見つけた。


 

「・・・どこが怪しいんだ」
「私が思うに、調査を邪魔する悪の組織!!」

 

やれやれ・・・。

 

「とりあえず、聞くだけ聞いてみるか・・・」

 


ちょうどよかった・・・。


この女性に亜希について聞いてみるか。


 

「どうします? 捕まえますか?」
「・・・頼むから、おとなしくしていてくれ」
「フッ、わかりました。

私が出て行くまでもないようですね」


 

春菜が余計な事をする前にこの女性に話を聞かねば・・・

 


「ちょっと話を聞いてくる」
「え・・・? じゃあ、私も・・・」
「春菜は大人しく待ってろ」
「うっ・・・わかりました」

 

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・・・
「あの・・・すみません」
「はい・・・なんでしょう」


 

俺は煙草に火をつけた。


さて早速、聞き込むとするか・・・。

 


「どうも、こんにちは」
「どうも・・・」

 

何だか睨まれている気がするが・・・

 

「今日はいい天気ですね」
「・・・そうかしら」

 


・・・何か気に食わない事でもあるのか?

 


「申し遅れましたが・・・」
「その前に・・・何かすべき事があるでしょ?」

 


・・・?

 


「ちょっと、聞きたいことが・・・」
「・・・・・・」

 


・・・。


・・・俺は煙草を携帯灰皿に捨てた。

 


「どうも、失礼しました」
「いえ、気付いてくれればいいんです」
「・・・今日はいい天気ですね」
「そうですわね・・・。

すっかり春らしくなってきましたし」

「そうですね・・・」

 


若干ではあるが、警戒心がなくなってきたようだ。

 


「私は神宮寺といいます」
「どうも、神宮寺さん」
「失礼ですが、近所の方で?」
「このアパートの大家の佐々木と申します」
「ああ、そうでしたか。

立派なアパートですね。」
「いえ、そんな事は・・・でも、私はこうやってよくここに来て住人のみなさんとお話をするのが好きなんです。

みんないい人ばかりで・・・。

ここの大家をやっていてほんとよかったと思っています」

「そうですか」
「ほんと、人との触れ合いっていいですよね・・・」
「ええ、そうですね。

ところで、佐々木さんはいつ頃から大家をなさっているんですか?」

「もう10年くらいになりますかね。

あの、私の事ばっかり聞いて・・・。

一体、何の用なのですか?」

「・・・失礼しました。

実は聞きたい事がありまして」

 

・・・

10年か・・・。


それなら亜希の事は知っているだろうか。


 

「あの、佐藤亜希さんってご存知ですか?」
「さぁ・・・聞き覚えのある名前だけど・・・」
「先ほど、ここの住人と話をするのが好きだとか・・・」
「ええ・・・」
「おそらく佐藤亜希さんは年齢の割には礼儀正しくて、物静かな女性だったと思います。

住人の中のそのような女性はいませんでしたか?」
「・・・・・・・・あー、はい、はい・・・写真とかあります?」

「はい」

 


佐々木は写真を見ると満足した顔で俺を見た。

 

「思い出しました・・・はぁ・・・すっきりした。

佐藤亜希さんね・・・懐かしいわ・・・
ええ、覚えていますよ。

今時の人には珍しく、大人しくて礼儀正しい方で。
もう、引っ越してしまいましたが・・・」
「どこに引っ越したか知りませんか?」
「でもねぇ・・・たとえ知っていても、女性の住所を教えたりは出来ませんよ・・・」

「実は・・・」
「・・・・・・?」
「彼女とは大学時代の友人だったのですが・・・親しかった友人が亡くなりまして・・・。

彼女にもその事を知らせようと思って来たんです」
「あらまぁ・・・それは大変だったわね。

まだ若かったんでしょうに・・・病気?

それとも事故かしら?」
「体の弱い奴でしたから・・・」
「あらぁ・・・それはかわいそうね・・・。

あなたも残念だったでしょう?

ほんとにねぇ・・・。
そういう事なら、佐藤さんにも知らせてあげなくちゃいけないわね。
何か聞きたい事があったら遠慮なく言ってちょうだい。

お手伝いするわ・・・あ、そういえば・・・確か引っ越し先の住所を書き留めていた気がするわ。

ほら、出ていった後になって部屋に問題があったりしたら困るでしょう?
だからちゃんと引っ越し先を聞いておくんですよ。
ちょっと待っててくださいね」

 


佐々木という大家は慌ててアパートの一室へと入っていった。

 

・・・


・・・・・・


・・・・・・・・・



しばらく待っていると、佐々木が走って戻ってきた。



「ごめんなさいね。

時間がかかっちゃって・・・。

これよ、これよ・・・」

 

佐々木は一切れの紙を俺に差し出した。


そこには新宿のとある住所と、『メゾン西新宿・205号室』という名前が書かれていた。

 


「これは・・・?」
「佐藤さんは、新宿に行かれたのよ」
「新宿・・・」
「よければ、その紙を持って行ってもいいですよ」
「いえ、大丈夫です・・・」

 


俺はそのメモの内容を手帳に書き写した


『メゾン西新宿』は新宿駅の西口の方面にあるようだ。


うちの事務所からも比較的近い。

 


「あまりお役に立てなくて申し訳ないわね」
「いえ、ありがとうございました」
「では、私はこの辺で・・・」

 


佐々木はそう言うと、アパートの中へと消えて行った。

 


「うぅ・・・」
「どうかしたのか?」
「私の出番がなかった・・・」
「まあ、いいじゃないか。

亜希は新宿に移り住んだそうだ。

まだそこに住んでいるかどうかはわからないが、行ってみよう」
「今度こそ私の活躍を!
・・・あの人、悪の組織ではなかったようですね」
「・・・ああ、よかったな」
「ええ、でもこれからも注意して下さいね!」
「ああ、わかった」



・・・いつまで、この話につき合わされるのか・・・。


新宿・・・か。


亜希がまだそこにいるといいんだが・・・。


しかし、亜希はなぜ新宿に移り住んだのだろう?


仕事の関係で、という可能性は高いが、
少し良からぬ可能性を考えてしまうのは俺がカタギではない性なのだろうな・・・。


まさか、亜希に限って真っ当でない職についているという事はないだろう。



「亜希さん、何で新宿に移り住んだんでしょうね?」

「恐らく仕事の関係か何かだろう」
「仕事!?
ヤクザとかマフィアとかですか!?」
「・・・どうしてそうなる」
「だって、新宿ですよ?

もうそれしかないじゃないですか!」

 


・・・一体どういう思考回路をしているんだ。

 


・・・


・・・・・・


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俺達は亜希が移り住んだというアパートにやってきた。


新宿でもこの辺りにくれば、アパートやマンションが多くなる。


亜希が移り住んだアパートも、そういうたくさんのアパートに埋もれるようにして建っている。


・・・亜希は今もここに住んでいるのだろうか。


亜希が哲司と別れた後、移り住んだというアパートか・・・。


 

「さぁ、さぁ!中に入りましょう!」
「元気な奴だな・・・」


 

・・・

俺はアパートの中に足を踏み入れた。

 


「ここに佐藤亜希さんがいるんですか?」
「・・・そうだな。

確認してみるか・・・」


 

中野にあった前のアパートよりは新しく、小綺麗な感じだ。


だが、どこか暗い雰囲気がある。


表札には上手とは言えない文字で『鈴木』と書いてある。

 


・・・ここも引っ越した後か・・・まいったな。

 


「ここもダメですか・・・ どうします?」
「・・・ここに立っていても仕方ない。外に戻るか・・・」

 


俺たちはアパートの外に出た。


やれやれ、早くも手詰まりか、参ったな。


新宿のアパートからも姿を消してしまっているとは・・・。


せめて、亜希を知っている人物がここにいないだろうか。

 


「最初のアパートのように、亜希の事を知っている人がいるかもしれない」
「聞き込みですね!!」
「ああ、そうだ」
「よーし!!」
「・・・何を聞き込むのかわかっているよな?」
「大丈夫です!任せて下さい!」



本当に大丈夫なのか・・・。


俺達は念のため、手分けをして周辺での聞き込みを行った。

 

・・・


・・・・・・


アパートの住人には、亜希を知っている者すらいなかった。


何人目かでやっと亜希らしき人物を覚えている人がいたが、亜希はたった半年でここからいなくなったという。


ここでの亜希は暗く無口で、誰とも関わらずにひっそりと暮らしていたようだ。


そして誰にも告げずに、忽然と姿を消してしまった。


大家にも話を聞いてみたが、答えは同じだった。


これで佐藤亜希の足跡は、途絶えてしまったという事だ。

 


「やれやれ、聞き込みも無駄に終わったか・・・」
「そんな事ありませんよ」
「・・・?」
「いい情報が手に入りました!」
「情報とは何だ?」
「あそこの家の山田さん・・・猫を10匹飼ってます!」
「・・・そうか。それはよかったな」
「10匹ですよ!」
「・・・・・・・」

 


期待した俺が馬鹿だった・・・。

 


「神宮寺さん、これからどうしましょうか?」
「ああ、手掛かりがここでなくなってしまった訳だが」
「じゃあ、どうするんです!」
「・・・春菜も考えてくれ」
「わかりません!」
「真剣に考えろ」

 


どうしようか・・・ゆっくり考えてみるか。

 


「神宮寺さん! 困った時は警察ですね!」
「ああ・・・しかし、どこに行けば調査が進展するかまでは、警察でもわかるはずがない」

「確かに・・・」
「今は効率よく行動するためにも静江に報告に行こうと思う・・・。
ついでに手掛かりも得られればいいが」
「なるほど・・・神宮寺さんにはかなわないッス。
それとこれは大事件です。

きっと亜希さんは事件に巻き込まれたんです!

今頃は海外かあるいは海の底に・・・」
「何か話が大きくなってるぞ」
「いいえ、絶対そうです。

それとも違うっていう証拠でもあるんですか?」

「・・・・・・」

 


俺は、亜希がまだこの新宿にいる気がしてならなかった。


この新宿という町は、そもそも亜希という人物には似つかわしくない場所だ。


しかし、亜希が新宿を目指したとすれば何か目的があったのだろうか。

 


「俺はまだ佐藤亜希は新宿にいると思う」
「ふーん、そうなんですか・・・」



あの亜希が、暗く無口・・・か。


俺の知る佐藤亜希とは別人のようだな。


一体、彼女に何があったというんだろう・・・?


佐藤亜希の行方に関する手掛かりが得られるといいんだが・・・。


 

 

 

・・・


・・・・・・


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俺達は大河原家にやって来た。


今回の目的は静江への報告だが、ここで新たな手掛かりを得たいところだ。



・・・そうだな。


哲司の持ち物を調べれば、亜希の行方に関する手掛かりを掴めるかもしれない。

 


「亜希さんの行方に関する手掛かり・・・。
パタッと消えちゃいましたねぇ・・・」
「そうだな」
「うーん、参りましたねぇ。

哲司様が生きていれば、何か手掛かりになるような事が聞けたかもしれませんけど」

「それは言っても仕方ない事だろう・・・。

それより、哲司の遺品に何か手掛かりが残されている事を期待した方がいい」

「そうですね。

では、早速中に入りましょう!

もうすっかりこの屋敷は見慣れたつもりですけど・・・こうして見ていると、やっぱり大きなお屋敷だな、と思いますね」

「そうだな。

これだけの広さとなると管理も大変だろう?」
「そりゃあもう。

掃除なんて数人がかりですからね。
でも、これだけ立派なお屋敷ですから、ちゃんと手入れしてあげないと」
「そうだな・・・」

 



・・・
俺達は大河原家に足を踏み入れた。


昨日の事もあってか、少しは馴染み深く感じる廊下へ俺達はやって来た。



・・・

俺達は応接室へと向かった。

 

「何かおわかりになりましたか?」
「いえ、佐藤亜希のアパートを訪ねましたが、もう引っ越していました」
「やはりそうですか・・・」

 


静江は明らかに落胆している。
俺が来た事で余計な期待をさせてしまったようだ。

 

・・・おっと、もう煙草を一箱空けてしまったようだ。



「神宮寺さん・・・!」



春菜はさりげなく新品の煙草を俺に差し出した。



「気が利くな・・・」
「助手としては当然です!」



「春菜、神宮寺さんの調査のお邪魔になっていないでしょうね?」
「もちろんです奥様。

微力ながら全力を尽くしています・・・」
「そうですか・・・。

よろしく頼みますよ。くれぐれも粗相のないように」

「はい、奥様」
「・・・・・・」

 

俺は春菜の言葉をしらじらしい思いで聞いていた。

 

「今日はその報告だけで?」

 

・・・ここは手掛かりを得るためにも、

現在の状況を話しておいた方が良さそうだな。

 



「『ゆうちゃん』の事でも話しておきましょうか」
「だが静江さんの依頼は『ゆうちゃん』と全く関係ない。
言うまでもなく、報告する必要はない」
「ではこの気まずい空気をどうしようっていうんですか!」
「それよりも、今は調査に行き詰まっている事を報告した方がいいだろう」
「あっ・・・そうですね」



・・・
「実は早速ですが、調査に行き詰まってしまいまして・・・。

他に何か手掛かりはないかと」
「・・・そうですか。

でも、手掛かりと言われましても・・・」



・・・やはり、俺の方から提案した方がよさそうだ。


手掛かりを得るためにも、哲司の持ち物を調べたいところだ。

 

「静江さん・・・哲司の部屋を調べさせてもらいたいのですが、よろしいでしょうか?」

「哲司の部屋を・・・?」
「他に手掛かりがないか、調べたいので・・・」
「そうですね・・・。

神宮寺さんならよろしいでしょう。
春菜、ご案内して差し上げて」



「はい奥様。

神宮寺様、こちらへどうぞ」
「・・・ああ」

 


佐藤亜希・・・ 一体、どこに行けば彼女に会えるんだろうか・・・

 

「では、行きましょう神宮寺様」



「神宮寺さん、大変申し訳ないんですが、私これから出掛けてなくてはいけないんですが・・・」

「いえ、大丈夫です。 ご心配には及びません」
「本当にすみません。 この家の事は春菜がすべて知っていますので・・・」
「はい、わかりました」



「・・・春菜、神宮寺さんを頼みましたよ」
「はい、かしこまりました」
「では、失礼します」

 


そう言うと、静江は深々と頭を下げ部屋を出て行った・・・。



 

・・・。


「神宮寺さん、行きますよぉー」
「・・・『様』じゃなかったのか?」
「それはメイド春菜です!

今からは探偵春菜ですから!」
「そうなのか・・・」

 


・・・。