*ゲームを読む*

ゲームまるごと文字起こし

探偵 神宮寺三郎 白い影の少女【5】


・・・。



f:id:Sleni-Rale:20181224061012p:plain

 

この女性が亜希と考えて間違いないはずだ。


・・・しかし、昔と比べてずいぶんと陰りがある。


一体、亜希の身に今まで何があったと言うのだろう。

 


「覚えていないかもしれないが、俺は哲司とあなたの事を知っている。
俺は哲司と一緒の大学にいたから、
あなたと哲司が付き合っていた事も知っている。
はたから見ても、二人は仲睦まじかった。
俺の想像通りならば、これはあなたと哲司の想い出の品なのではないか?
どうか形見分けだと思って、受け取って欲しい」
「・・・・・・」

 

亜希はまるで追いつめられたような顔をした。

 

「・・・いりません。

私には受け取る資格はありません」
「資格というのなら、あなた以外に受け取る資格を持つ者はいないと思うのだが。
中身はわからないが、あなたに渡すように頼まれた物だ。
哲司はこれを大切に持っていたんだと思う」
「・・・もしそうなら、なおさら私には受け取れません。
私にはそんな大切な物を受け取る資格がないんです」

 


亜希は哀しそうな顔で訴えた。


本当に受け取る気がないようだ。

 


「何か受け取れない事情でもあるのか?」
「・・・すいません。
今日はお引取りを・・・」

 


どうやら話す気はないようだな・・・。

 

・・・


・・・・・・まあ、下手に焦る必要もない訳だし今日は・・・。

 

感情的になっているし、明らかに何かを隠している。


今、焦って聞き出そうとすれば、拒絶される可能性がある。

 

・・・今日はここで引き返そう。

 

「これは俺が預かる。

気が変わったら、連絡してくれ」

 


俺はひとまず引き下がる事にして、
亜希に事務所の連絡先を教えると、その場を後にした。

 



・・・


・・・・・・


俺と洋子君は意外な展開に戸惑いつつ、託児所を出てきた。


f:id:Sleni-Rale:20181224061129p:plain

 

「どういう事でしょうか・・・」

 

洋子君も亜希の態度を不思議に思っている。

 

「わからんな。

何か深い理由でもあるのか・・・洋子君はどう思う?」
「そうですね・・・亜希さんは迷っているように見えました。
それが何かはわかりませんが、怖がっているようにも」
「ああ、俺も同感だ。

どちらにせよ、少し時間をおいた方が良さそうだ」
「そうですね。

これからどうなさいますか?」
「そうだな・・・時間がまた空いてしまったな」

 

夜になった訳だし、また例の調査をしようか・・・

 

「先生、静江さんに報告に行きますか?」
「夜になった事だし、今日は静江への報告はやめておこう。

『ゆうちゃん』の調査をしてみるか。
夜になればまた新しい手掛かりが得られるかもしれんしな・・・」
「そうですね」
「熊さんが昨日、『ゆうちゃん』を目撃した場所は人気がない西新宿8丁目だ。情報を集めるのは難しいだろう」
「確かにそうですね・・・。
では、今日は違う場所に行きますか?」
「ああ、そうだな・・・。
今日は目撃場所から近い、新宿中央公園に行ってみようか」
「はい、わかりました」



・・・情報を集めるとしたら、やはり公園だろうか。


熊さんが見たという場所からそう離れていないし、そこなら人がいるだろう。


俺は新宿中央公園入口へ向かう事にした。




・・・


・・・・・・

 

f:id:Sleni-Rale:20181224061233p:plain

 

夜の中央公園は閑散として、
しかもところどころの暗がりが不気味な雰囲気をかもしている。


人影はほとんど見る事ができない。


カップルらしき二人連れがいるぐらいだ。

 

「先生・・・」
「そうだな」

 

どうも気が引けるが、聞き込んでみるか・・・。


野暮をしているみたいで、正直気は進まんが。

 


・・・

「な、何だよ、俺達は何にもしてないぜ」
「そうよ・・・ねぇタァ君!」
「おうよ」

 


やけに警戒されているようだ。


ここは聞くべき事を聞いて、早く立ち去りたいところだが・・・。


 

「申し訳ないが、ちょっと聞きたい事があるんだが・・・」
「ななな、何だよ。
だから俺達は別に悪いコトなんてしてねぇって!」
「白い服を着た子供の噂を聞いた事がないか?」
「白い服を着た子供?

・・・ああー、アレか」



「知ってるぅ! 銀のエンゼルだよね?」
「は? 何言ってるんだよ。
すごい速さで走って逃げる子供の幽霊の話だろ?」
「えー、タァ君こそ何言ってるのよぉ。
幸せのエンゼルのコトだよ。ねぇオジサン、そうだよね?」

 


・・・。


どうやらオジサンというのは俺の事らしい・・・。

 

「フフフ・・・」

 

やれやれ・・・何だか切ないな。

 

「どこで見かけたとか・・・そういう話は聞いた事はないか?」
「あ、それならすぐそこの新西少の方で見た事があるらしいよ。

ミナの弟が見たって言って騒いでいたもん」


すぐそこの新西小・・・?


「ホントかよ?」
「何よぉ、タァ君ってばミナの言うコト信じないのぉ?」
「いや、信じる、信じるってばよ。
俺がミナの言うコトを信じない訳ないだろぉ」
「タァ君・・・嬉しい」
「テヘ・・・」

 


「・・・邪魔したな」

 


俺はそう言ってカップルから離れた。


・・・公園と小学校。


夜の閑散とした不気味な雰囲気が似ていると言えなくもない。


小学校の方も調べてみる必要がありそうだな。

 

「早速、その新西小へ行きたいところだが、どこの事だろうか?」
「そうですね・・・若い人は言葉を略しますから、何かの言葉を略しているとは思いますが」
「・・・・・・」

 


さっきの証言から考えると、その学校はここから近いようだ。


おそらく新宿西小学校のことだろう。


確か、西新宿8丁目の方にあったはずだ。


 

「新宿西小学校のことだろうな。

行ってみよう」
「はい、先生」

 




・・・


・・・・・・


俺達は西新宿8丁目の住宅街へやって来た。


この先に、新宿西小学校がある。


目撃証言があった以上、確かめてみよう。


新宿でも外れにある西新宿8丁目は、
最近になってようやく再開発の手が伸びてきたところだ。


まだまだ古い建物が残っていて、しかも空き家も多い。


狭い路地からちょっと入れば、いったいどこの廃墟に来たのかと目を疑ってしまう場所もある。

 


・・・


・・・・・・

 

f:id:Sleni-Rale:20181224061331p:plain

 

ここが、さっきの証言にあった小学校だな。


ここに『ゆうちゃん』が・・・?


まあ、いい。



 

「できれば中に入ってみたいところだが・・・」
「フフフ・・・」
「・・・? 洋子君、どうした?」
「最初と比べて、やけに気合が入ってますね」
「ハハハ、そうだな・・・。

こうなったら、とことん調べてやろうと思っただけさ」
「そうですね」
「どこからか入れないだろうか・・・」
「では、少し探してみましょうか」
「ああ、そうだな。
門やフェンスを乗り越えずに済む所があるといいんだが」
「そうですね・・・私はスカートですから、そうしていただけると助かります」

 


俺と洋子君は小学校の入り口を見渡した。


・・・しかし、入れそうな所は見当たらなかった。

 


「・・・ないな」
「そうですね。

もう少し探してみましょう」

 

俺は道路に面した堀の周りをぐるりと回ってみた。


すると、街灯からも離れた薄暗い場所に、一人がやっと通れるぐらいの狭い隙間を見つけた。

 

「ここから入れそうだ・・・」
「そうですね、入りましょうか」
「そうだな」

 


俺は小学校の中へと足を踏み入れた。

 



・・・
広々とした空間に誰もいない。


その不気味さというのは、さながらゴーストタウンのようだ。


暗い校庭には誰かがいるような様子はない。

 

「やはり誰もいませんね・・・」
「そうだな・・・」

 


・・・やはり、そう簡単に会える訳はないか。


そもそもただの噂だしな。

 

「よし、帰るか・・・」





・・・

・・・ん?


まさか・・・!



「い、いまのは・・・!?

洋子君、追うぞ!」
「はい!」

 


こいつが『ゆうちゃん』なのか・・・?


複雑な想いに襲われながらも、俺はひたすらその影を追った。

 

・・・


・・・・・・


「はぁ、はぁ、はぁ・・・!」

 

新宿8丁目へと入ったところで、俺はようやくその影に追いついた。

 

「いててててて、離せ、離せよ!」

 

それはれっきとした生身の少年だった。

 

「子供か・・・」

 

俺は安堵と落胆の入り混じった、複雑なため息を漏らした。

 

f:id:Sleni-Rale:20181224061459p:plain

 

「なんだよ、悪い事してないだろ!?」

 

まさかこいつが『ゆうちゃん』の正体ではないだろうな・・・。


いや、それはないだろう。


どうみても、ただの子供にしか見えない。


さて、どうするか・・・。


まあ、家に送り返すのが一番だろうが、
その前に聞くべき事を聞いておいた方がいいだろうな。

 


「先生、この子に話を聞いてみては?」
「そうだな・・・ 大人しくこっちの質問に答えてくれるといいんだが」
「相手が子供でも気を抜かないで下さいね」
「ああ、わかっている」

 



・・・

「こんな時間にこんな場所で、一体何をしていたんだ?」
「オッサンには関係ないだろ」
「年はいくつだ?」
「フン・・・」
「名前は・・・?」
「・・・・・・」
「家はどこだ?」
「さぁな・・・」
「さっきの小学校に通っているのか?」
「・・・・・・」

 

やれやれ、全く話す気はないようだな。

 

「オッサンこそ何者だよ。

俺を捕まえる権利なんてあるのかよ!」
「話を聞く権利くらいは主張したい」
「フン・・・。
でも、俺にだって話さないといけないっていう義務なんてないぞ!」
「・・・口の減らない奴だな」


とりあえずこの少年の名前を知りたいところだが・・・。


「このまま睨めっこしていても仕方がないだろ?

話したくない事は話さなくていい・・・」
「本当か?」
「ああ・・・」
「じゃあ、アンタと話したくないから帰る」

 

そうきたか・・・。

 

「おい、それは屁理屈ってやつだ。

俺と話す事が前提だ」
「うるせぇ、都合が悪くなるとすぐ大人は怒る! あー、ヤダ、ヤダ・・・」
「・・・わかった。

そこまで言うのなら帰ってもいい」
「えっ・・・?」
「親が心配しているだろうから、早く帰れ・・・」
「・・・・・・」
「・・・どうした?」
「少しなら話してもいいかも・・・」
「そうか・・・」
「じゃあ、名前は?」
「・・・・・・」

 

なるほど、話したくないって事か・・・。


これは自力でこの少年の名前を見つけるしかないな。


しかし、どうやって・・・。


俺は少年にゆっくりと歩み寄った。

 

「お、おい、何するんだよ!」

 

俺は少年のえりを掴んだ。

 

「い、いきなり、な、なんだよ!

やっぱり怒ってんじゃねーかよ!」
「いや、えりにゴミがついてるぞ・・・」
「そんなゴミなんかいいよ!

やめろよ!」
「いいからじっとしてろ」

 


俺は嫌がる少年を無視して、えりの裏を見た。


子供の服にはたいていの母親が名前を書いているものだ。


えりの裏には予想通り、女性の文字で『貴之』と書いてある。

 


「・・・タカユキか」
「な、何でわかったんだよ!」
「・・・で、名字は?」
「フン、本当にわかんねぇのかよ?」
「ああ・・・」
「・・・つていうかオッサン。
人に名前を尋ねる時には自分から名乗るもんだぜ?

ったく、これだから礼儀を知らない大人っていうのはよ・・・」
「・・・そうだな。

俺は神宮寺三郎だ」
「ジングウジ? 変な名前だな」
「よく言われる。 それで・・・」
藤村 貴之(ふじむら たかゆき)だよ」
「そうか・・・」

 

ようやくスタートラインにつけたようだ。

 

「貴之、あの小学校で何をしてた?」
「オッサンこそ・・・」
「おいおい・・・俺は神宮寺だ」
「何だよ、細かい奴だな・・・。
はい、はい・・・わかったよ・・・。

神宮寺こそ何をしてたんだよ!」
「おい・・・呼び捨てか?」
「何だよ、神宮寺だって俺の事を呼び捨てにしてるじゃねーか!」
「ああ、そうだな・・・」
「・・・で、何してたんだよ!
小学校に忍び込んで変なモン盗むつもりじゃないだろうな?」
「いや、ちょっと、人を探していてな・・・」
「じゃあ、何で俺を追っかけてきたんだよ! 俺は関係ねーだろうが!」
「貴之が逃げるからだろ?
逃げれば追いかけるのが人の心理というものだ」
「フン、人の心理なんて・・・そんなの俺にはわからねーな!
やっぱりお前も、そこら辺の奴らと同じで言い訳ばっかりだな!
・・・誰か探してるなら、警察にでも頼めよ。
大人はすぐ警察だなんだって大騒ぎするじゃないか」
「ああ、確かにそうかもしれないが・・・。

今は貴之に話を聞きたい」
「フン、どうしよっかなぁ・・・」
「・・・わかった、もう諦める」
「・・・そ、そうか。
でも、いいのか本当に俺の話を聞かなくても?」
「聞きたいのは山々だが・・・話す気がないのだろう?」
「・・・まあね。

だったら神宮寺が当てればいいんだよ。
小学校にいた俺の目的を・・・。
当たっていたら教えてやる。

まあ、わかるはずはないとは思うけど・・・」
「いいだろう・・・」



「なんとか話はきけそうだが」
「先生、貴之君の目的・・・わかるんですか?」
「ああ、なんとなくな・・・」


おそらく俺達と目的は同じだろうな・・・。



「貴之・・・お前の目的は『ゆうちゃん』だな?」
「な、何でわかったんだ!

まさかお前も探してるのか?」
「貴之、お前は『ゆうちゃん』を見た事があるのか?」
「いや、俺はまだ見てねぇけど・・・ うちの学校に出るって噂でよ。
俺はそいつの正体を調べに来たんだ」
「なるほどな」

 


やはりこの小学校の辺りに『ゆうちゃん』は出るという事か。

 

「貴之、『ゆうちゃん』というのは・・・」

 

俺がそう言いかけたとき、貴之の視線が何かに釘付けになった。


俺が貴之の見ている方を見ると、そこに白い影があった。


いや、白い影がいた、という方が正しいだろうか。


それは俺の目には白い服を着た子供のように見えた。


その影は俺達の目の前を横切り、そのまま路地裏に消えていった。

 


「い、今のは・・・・・・」

 


俺はハッと我に返り、その白い影を追おうとした。


だが子供の影はすでに辺りにはなく、見つける事はできなかった。

 

「み、見た・・・すげぇ。

俺、ほんとに見たよ・・・」

 


貴之は興奮覚めやらぬという感じで、肩を震わせている。

 


「先生、今のは・・・」
「あれが本物の・・・白い影なのか・・・」
「・・・・・・」
「しかし、もう追いかけるには遅いようだな・・・」
「そうですね・・・では、貴之君をどうしましょう?」
「そうだな・・・。
このまま放っておく訳にもいかないしな」



「貴之、今日はもう帰れ・・・」

「勝手に決めんなよ!

俺はさっきの幽霊を追うんだよ!」
「子供が出歩くような時間じゃないだろう?」
「うるさいなぁ、俺の勝手だろ?」

 


・・・仕方ない。


ちょうど俺達も帰ろうと考えたいた訳だし・・・。

 

「貴之君のお母さんに連絡しますか」
「洋子君・・・そんな事したら貴之に恨まれてしまうぞ」
「確かにそうですね」
「貴之を家まで送ってやるか」
「ええ・・・それがいいと思います」



「貴之、いいから帰るぞ。家はどっちだ」
「あ、こら、離せよ! 俺を子供扱いすんじゃねぇよ!」

 


・・・

俺は暴れる貴之を捕まえ、家まで送り届ける事にした。

 

 




・・・


・・・・・・


貴之を家に送り届けたあと、俺達は事務所まで戻ってきた。


「あっ、神宮寺さん。おかえりなさい」
「ああ・・・」
「お疲れ様です。

すぐコーヒーを入れますね」
「ああ、すまない」

 

f:id:Sleni-Rale:20181224061640p:plain

 

 

俺は洋子君が入れてくれたコーヒーを飲みながら今日あった事をかいつまんで話した。


まず亜希が哲司の形見を受け取ろうとしなかった事。

 

「亜希はまだ迷っているようだ。

それに、何かはわからないが、怯えているようでもあった。

これは亜希自身の口から聞かなければならないだろうな」


それから小学校で会った生意気な貴之という少年と、そこで会った白い影の事。


「ゆうちゃんは本当にいるんでしょうか・・・」
「ゆうちゃんはいますよ!

私が言うから間違いないです!」
「フフフ・・・そうね」



「まだあれがゆうちゃんだと決まった訳じゃない。
もう少し詳しく調べてみる必要はありそうだな・・・」

 

俺が一通り言い終わると、さすがの春菜も疲れたのかどことなく元気がない表情を見せた。

 

「はぁ・・・疲れた。

では私は屋敷に戻りますね」

「ああ、気を付けてな」



「洋子君も遅くまですまなかった。

今日はもう帰ってくれ」
「はい、ではお先に失礼します。

先生もゆっくりお休みになられてください」



「では神宮寺さん。また明日・・・」
「ああ、お休み」

 


・・・

二人が帰って事務所が静かになると、書斎へと向かった。


俺は椅子に座り、一息ついた。


やがて、いつものまどろみがゆっくりとやってくる。


亜希やゆうちゃん、そして哲司の事を考えながらゆっくりと眠りに落ちていった。

 



・・・。