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探偵 神宮寺三郎 白い影の少女【11】


・・・。




3月15日 新宿西小学校 校庭


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「貴之、あたしもう帰りたいなぁ」
「おい、うるさいぞ」
「もう、何よ!」


「ねぇ貴之、今日はもう諦めてそろそろ帰ろうよ」
「しっ・・・・・・。
いた・・・アイツだ」


「嘘でしょ・・・」


「え、うそ・・・ほんとに!」


「しー・・・。
バカ知也、声を出すなよっ」
「ごめん・・・どうする?まさか本当に捕まえるの?」
「・・・・・・」

「ねぇ、貴之・・・」


「どうするのよ、貴之・・・」


「しっ、お前ら黙れっ」


・・・


・・・・・・


「どこに向かってるんだ?」


「家に帰るんじゃないの?」


「何のんきな事言ってるのよ」


「・・・よし。
ついていってみよう」
「ホント、あんたってバカね」


「えぇ、本気!?
天国だったらどうするんだよ」


「怖いのかよ。
いいから行くぞ・・・」


・・・


・・・・・・


「うわ、こんなとこに入っていくの?」


「もう、嫌だ・・・」


「お前らうるさいぞ」



・・・


・・・・・・


「なんか、すごく不気味なんだけど・・・」


「冗談は止めて欲しいわ・・・。
こんなとこ・・・人の住むところじゃないじゃない」


「いいから行くぞ」


・・・
「やっぱりここに住んでるみたいだな」


「ここって・・・空き家?」


「人の住む場所じゃないよ」

「でも、秘密基地みたいでなんかカッコよくないか?」
「そう言われれば・・・」


「何を言ってるのよ。だから男子って嫌い・・・。

ねぇ、あの子は?」
「うーん、ちょっと待て・・・」
「ねぇ・・・あの子、何してるのよ!」


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「待てって言ってるだろ・・・。
ぬいぐるみ・・・?
ぬいぐるみで遊んでる」


「うそっ、見せて、見せて」


「あたしが先よ・・・。
見せなさいよ・・・」
「おい、やめろ・・・」



・・・カツン・・・



「・・・何か、音しなかった?」
「誰かいるのかな・・・?」
「そんな訳ないだろ。
ここは空き家だぜ・・・」




・・・・・・!!



「うわぁぁっーーーーー!」

 


・・・。



・・・・・・。





3月16日 神宮寺探偵事務所


「先生、おはようございます。
今日はお早いお目覚めですね」
「ああ・・・」


俺はまだ眠りから覚めていない頭で、洋子君の待つ事務所に現れた。


洋子君はすでにきびきびと働き、書類の整理をしている。


まあ今は、それほど書類が溜まっている訳ではないが・・・。


いつもながらこの働きぶりには感心させられる。



「おはようございまーす!
あれ、神宮寺さん今日は早いですね」


春菜は入ってくるなり、大きな声で挨拶した。


この元気っぷりにも、いつもながら感心させられる・・・。


「いいなぁ、探偵業って朝寝坊できるんですねぇ・・・」
「朝からうるさい奴だな」



・・・プルルル・・・



電話が鳴ると、すぐに洋子君が慣れた様子で受話器を取った。


「神宮寺探偵事務所でございます。
あら、熊野さん。

いま代わりますね。
先生、熊野さんからお電話です」


熊さんから電話があるという事は、昨日の一件について何かわかったという事だ。


すでに腰を上げていた俺は、洋子君の差し出した受話器を受け取った。


「やあ、熊さん、早かったな。
何かわかったのか?」
「おお、神宮寺君。
もう起きておったか」
「熊さんの報告が待ち遠しくて寝れなかったよ」
「ふぉっふぉっふぉ。
そうか、そうか・・・」
「で、どうだった?」
「ああ、調べてみたが赤ん坊が見つかったという記録はなかった」
「そうか・・・」


まあ、これも予想の範囲内の事だ。


「もう少し年数を変えて調べてみてもいいが、どうする?」
「・・・いや、その必要はないだろう」


亜希が子供をコインロッカーに置いた時期ははっきりしている。


時期を変えて調べても意味はないだろう。


「何なら、新宿以外の場所を調べてみてもいいが」
「いや、それも必要ない。
場所ははっきりしているからな」
「そうか・・・。
では、これでいいかの?」
「・・・」


残る可能性は・・・。


「ロッカー荒らしについて調べられるか?」
「ロッカー荒らし・・・かね?
そりゃまたどうして?」
「訳はまた後で話すよ」
「ふむ・・・。
逮捕されておれば記録に残ってるかもしれんな」
「できればこの近辺の事情に詳しい常習犯がいいな」
「わかった。調べてみよう。
そう時間はかからんだろうから、わかったらすぐ電話しよう」
「ああ、すまない。 じゃあ・・・」
「おう・・・」



「ロッカー荒らしってどういう事ですか?」
「ロッカー荒らしというのは、コインロッカーなどをピッキングで開けて中の物を盗む連中の事だ」
「なるほど、つまり彼らが赤ん坊を見つけたって事ですね」
「ああ、その可能性がある」
「でも、彼らが見つけたとして赤ん坊はどうなったんですか?」
「それはわからない。
だが、もし彼らが見つけたなら赤ん坊の行き先も知っているかもしれない。
調べてみる価値はある」
「でも調べるのは熊野さんでしょ?
神宮寺さんってここで待ってるだけじゃ・・・」
「まあ、そうなるな・・・。
じゃあ洋子君、コーヒーをもらおうか」


「はい、すぐお持ちします」


「そんな事でいいんですか・・・」
「今は待つ事が仕事みたいなもんだ」
「・・・。
ところで、昨日の黒い服の男って誰なんでしょうね。
私、すっごく気になって昨日は眠れなかったんですよね。
ひょっとして、私達と同業者だったりして!」
「つまり・・・メイドって事か?」
「違いますよ! 探偵ですよ!」
「そうか」
「今になってこんな事を聞くのも何ですけど、私って役に立ってますか?」
「ああ、役に立っている」
「ふふふ、神宮寺さんも名助手としての私の腕を遂に認めましたね」
「もう少し配慮してくれれば、申し分ないんだが・・・」
「うぅ・・・。
まあいいですよ。今日も頑張りますからね!
じゃあ、さっそく今日はどっちと一緒に調査するか決めちゃって下さい」
「フ・・・そうだな・・・。

では、今日は春菜が来るか?」
「そうこなくっちゃ!
よーし、頑張るぞー」




・・・プルルル・・・




電話が鳴ったのを聞いて、俺はすぐに席を立った。


このタイミングならば相手は熊さんだろう。


俺は電話の受話器を取った。


「おお、神宮寺君か。ワシじゃ」
「熊さん、どうだった?」
「ああ・・・ロッカー荒らしで捕まった者を調べてみたんじゃが、犯人にもいろいろじゃな。
縄張りがあるらしくてな。同じ所で何度か捕まっている奴もおる」
「5、6年前ぐらいにこの辺りでよくやっていた奴はいないか?」
「それなら、うってつけの奴がおるな。
中西茂という男だ。
中西はちょうどその頃、この辺りをを荒らしていたホームレスで・・・。

あまりに荒らしまくって、とうとうお縄についた・・・。
という訳だな」
「じゃあ、今は刑務所にいるのか?」
「いや、もう刑期を終えておるそうだ」
「どこにいるかわかるか?」
「詳しくはわからんが、この中西はホームレスの生活が身に染みついておったようだ」
「では、今もホームレスとして生活している可能性が高いな」
「十中八九、そうだろうな」
「わかった。ありがとう、熊さん」
「いいんじゃよ。それじゃあの・・・」




「先生、電話は熊野さんからで?」
「ああ、そうだ」
「何かわかりました?」
「ああ・・・。

5、6年前にこの辺りのコインロッカーを荒らしていた中西という男がいるそうだ」



「じゃあ、そいつが犯人ですね」
「何の犯人なんだ?」
「だから・・・赤ん坊のぉ・・・誘拐?」
「やれやれ・・・。
とりあえず可能性を潰していく。
中西ならば、その頃の事情に詳しいはずだから、何か知っている可能性がある。
それに・・・・仲間が赤ん坊を見つけてしまったという可能性もある」
「・・・自分が赤ん坊を見つけてしまった、という可能性もありますね」
「ああ・・・」
「じゃあ、まずその中西って人に聞き込みですね」
「中西は一度、捕まり今は出所しているがその居場所は不明だ。
だが、またホームレスに戻っている可能性が高い。
ホームレスといえば・・・」
「うーん・・・田中さん!」
「適当に答えるな・・・」



「フフフ、前田さんですね」
「ああ・・・前田なら中西がどこにいるか知っているかもしれない。
前田はホームレスでいつも西口の辺りにいる。
早速、前田のところに行こうか。
洋子君、留守番を頼む・・・」
「はい、わかりました。
でも、コーヒーはどうします?」
「・・・そうだったな。適当に置いといてくれ。
せっかく作ってくれたのに悪かったな」
「いえ、いいんですよ」




「さぁ、さぁ!早く行きましょうよ!」
「ああ、わかっている・・・。
少しは落ち着け」
「・・・でも、神宮寺さんは落ち着き過ぎです!
少しは焦って下さいよぉ!」
「ああ、わかった。 行くぞ・・・」
「はい、はい!」





「中西さんって人、本当にホームレスに戻っているんですかね?」
「ああ・・・恐らくな」
「・・・もし、本人が望んでもないのにそうなっちゃうんだったら、そのままにしてたら絶対いけない問題ですよね」
「そうだな・・・。

俺達も自分に何ができるのかを考えるべきだろう」
「そうですね」




 

・・・


・・・・・・



俺達は中西の居場所を聞くために前田を尋ねる事にした。


俺達が新宿西口を歩いていると、すぐに前田は見つかった。


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「どうも、神宮寺さん」

「調子はどうだ?」
「相変わらず快適ですよ。

・・・で、今日は何の用です?
偶然ここを通りかかったって訳じゃなさそうですが」
「少し聞きたい事があってな」
「いいですよ。何でも聞いて下さい」
「中西茂という男の事を知りたいんだが・・・。
6年ぐらい前にこの辺りでロッカー荒らしをしていた男だ」
「6年ぐらい前って言ったら・・・」


前田は何かを思い出したかのようにゆっくりと見上げた・・・。


「東京都が地下道のホームレス達を強制排除した日の事を、よく仲間から聞いていたのでつい思い出してしまいました。
たしか『動く歩道の建設』・・・という名目でホームレス達は追い出されたようですね」
「ああ・・・」
「もうあれから随分経つんですか・・・。

あっ、すみません。
あまりによく聞かされた話だったもので・・・。つい・・・」
「ああ、いいんだ・・・。
・・・それで?」
「ええ・・・。
中西はその時に散り散りになったホームレスの一人だったはずです。
そして、一旦は新宿を出たがすぐに戻って来た・・・。
そして、ロッカーを荒らして捕まった。
基本的にはいい奴ですよ・・・。
でも、ちょっと癖のある奴でして、神宮寺さんが会いに行っても話を聞いてくれるかどうか」
「刑期が終わって出所したと聞いたんだが・・・。
今はどうしてる?」
「たしか・・・中央公園にいるはずです。
探せばすぐに見つかると思いますが・・・」
「中西の特徴は?」
「ああ、わかりやすいですよ。
長い髪に赤い帽子をかぶっている。
そういう奴がいたら、中西だと思っていいでしょう」
「赤い髪に赤い帽子・・・」


俺の頭の中でその姿が明確に浮かんだ。


ここ数日の間に俺はそんな人物に会ったような気がする。


「そういえば・・・神宮寺さん」
「・・・ん? 何だ?」
「中西にはあまりしつこく聞かない方がいいですよ」
「・・・・・・」
「まあ、私の仲間にも多いタイプですが・・・しつこく聞かれるのが嫌なようで。
一度嫌われると、何も話してくれない可能性があります」
「なるほど・・・ありがとう」
「構いませんよ。では、また・・・」
「ああ」


前田は軽く会釈すると雑踏の中へと消えていった。


「さすが前田さんですね!

さあ!中央公園に行きましょう!」
「ああ」

 



・・・


・・・・・・


前田の話では中西はこの辺りにいるという事だった。


俺達は公園の中を見渡した。


すると、そう時間はかからずそれらしい人物を見つけた。


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「ちょっといいか?」
「・・・ん?

何だよ・・・って、あんた、あの時の・・・」
「やはり、あなたが中西茂だったのか」
「何だよ、悪りぃかよ・・・それにしても今日は何だよ。
オレぁ別に悪い事はしてないぜ」
「ちょっと聞きたい事があるんだ・・・」
「何だよ、話す事なんてないぜ


・・・やはり、この間会ったこの男が中西だったか。


早速、話を聞いてみたいところだが・・・。


そう言えば、さっき前田があまりしつこく話を聞こうとしない方がいいと忠告してきたな。


忠告をよく頭に留めて、行動した方が良さそうだ。


「お前が6年前にこの辺りのロッカーを荒らしていたのはわかっている。
だが、捕まえに来た訳ではない。
ただお前に聞きたい事がある」
「へえー・・・。
だがオレには何の話だか全くわからねぇなぁ。
第一オレぁ馬鹿だからよぉ、昔の事なんて覚えてねぇんだよ」


どうやら簡単に話す気はないようだ。
このまま粘り続けてもいいが・・・。


「そうか、また来るから思い出したら教えてくれ」
「期待しないでくれよなぁ」


さて、どうするか・・・。




・・・

俺が思案していると、駅の方から前田が歩いてきた。


「中西は見つかりましたか?」
「ああ・・・。
だが話は聞けなかった」
「そうでしょうね。
いくら昔の事はいえ、犯罪を嬉々として話す輩なんて、悪党以外にはいませんよ」


どうやら前田は、この事を予想してわざわざ俺達を追ってきてくれたようだ。


「前田は何か知らないか?」
「さあ・・・。
私の方から話せる事なんて何もありません」
「前田から中西に話をつけてくれないか」
「喋る気のない者に、喋らせる訳にはいきません。
私が言ったところで、喋りたくない事を喋るとも思えませんし。
それに私達の間にも信用ってものがありますからね」


前田はしばし考え込んだ後、ゆっくりと口を開いた。


「実は中西と仲が良かった女性がいましてね・・・。
安田徳子といって、仲間からはとくちゃんと呼ばれています」
「そのとくちゃんというのは、どういう女性なんだ?」
「明るく元気のいい、しっかりした女性ですよ。
歳のわりには白髪が多いのが悩みみたいです。
夜になるとこの公園に現れるみたいなので、探してみるといいでしょう」
「他に特徴は・・・?」
「うーん、そうですね・・・。
歳は確か40代後半だったような気がします。
小太りで背はそう高くなく、気の優しそうな丸顔で・・・。
そうですね、近所の気のいいおばさんといったところでしょうか」
「ありがとう。
わざわざすまなかったな。
前田、ちょっと待ってくれ。

今、少しだが礼を・・・」
「いえ、この程度で情報料なんでいただけませんよ」
「しかし・・・」
「そうですね・・・。
では、神宮寺さんが持っているそれを・・・」
「ん・・・?
これか?」
「ええ、そのキーホルダーです。
知り合いでそれを集めている人間がいるんですよ。
よろしければ、私にそれをゆずっていただけませんか?」
「こんな物でよければ構わんが・・・」
「ありがとうございます」

 



・・・
「これからどうします?
夜までまた何かの調査ですか?」


夜までまだ時間はあるが、時間を無駄にする事は出来ない・・・。


今となっては俺達の目的は一つのはずだ。


立ち止まる事無く、先に進むしかない。



「・・・ゆうちゃんの調査を続けよう」
「そうでしたね!」
「それで、これからだが・・・。
まずは熊さんに今までゆうちゃんについてわかった事を報告しよう・・・。
同時に協力も頼んでおく」
「・・・?」
「怪しい男の存在だ・・・」
「あ、そうか・・・なるほど、なるほど・・・」
「怪しい男については、最悪の事態を想定した場合、熊さんの協力が必要になる」
「確かに、そうですね!」
「それから大河原家にも顔を出しておこうか・・・。
すべてを報告する事は出来ないが体裁だけは整えておく・・・」
「私としてはやっぱり、複雑な心境です・・・。
奥様に隠し事なんて」
「俺がうまい事やるから、黙ってみてればいい」
「はい、はい・・・」
「あとは・・・」
「まだあるんですか?」
「ああ、あとは貴之達だ。
俺達と同様に貴之達の目的もゆうちゃんだ。
何か進展がないかどうか確認しておきたい・・・」
「はぁ・・・。

まだまだやる事はたくさんありますね」
「当然だ。 早速、調査に行くぞ」
「・・・はい!
気合を入れ直しました!

さぁ、行きましょう!」
「あ、ああ・・・」

 



・・・


・・・・・・


俺達は淀橋署の受付へとやって来た。


そこには熊さんの姿があった。


「おお、神宮寺君。調査の方はどうだい?」

「ああ、熊さんのおかげでだいぶ助かったよ・・・」
「ふぉふぉふぉ、そうか・・・。

ところで『ゆうちゃん』の方はどうなっておる?」
「ああ、そうだな・・・」


怪しい男・・・。


このまま放っておけば、事態は更に深刻な事になりいかねない。


ここは・・・。


「熊さん・・・」
「何じゃ?」
「実はゆうちゃんなんだが・・・」
「おお、ようやく話してくれるようだな」
「ああ・・・結論から言わせてもらうと、ゆうちゃんは人間だ」
「なんと・・・!

でも、消えたんじゃぞ!」
「ああ、その理由もわかっている」
「どういう事なんだ?」
「俺達が実際に調べたところ、どうやら様々な裏道、抜け道、抜け穴を知っている子供だ。
おそらく熊さんは抜け穴に逃げたゆうちゃんを消えたと思ったのだろう・・・」
「うむ、そうだったのか・・・。
しかし、まあ、これで安心して眠れるわい。
助かったよ、神宮寺君」
「熊さん、まだ話が終った訳ではないんだ・・・」
「・・・?」
「実は今、俺達はゆうちゃんを探しているんだ」
「神宮寺君、そこまでしてくれなくてもいいわい。
もうわかったよ・・・」
「いや、実はゆうちゃんは俺の友人の子供の可能性が高いんだ」
「・・・?
詳しい話を聞こうかの・・・」
「ああ・・・。

俺の友人の哲司が昔付き合っていた女性・・・。
佐藤亜希は、過去に赤ん坊を新宿駅のロッカーに捨ててしまったんだ・・・」
「何と・・・」
「もちろん自分の過ちに気づき、戻った訳だが・・・」
「赤ん坊はいなかった・・・。
・・・という事か?」
「ああ、6年前の話だ・・・」
「なるほど、それを調べていたんじゃな・・・」
「ああ、俺の調査からゆうちゃんは亜希の子供で間違いないと見ている」
「なるほど・・・」
「そして熊さんの情報から、ホームレスの中西に話を聞きに行った訳だが・・・。

まだ話は聞けていない」
「・・・なるほど、ロッカー荒らしをしていた中西が捨てられていた赤ん坊を見つけたという事か・・・?」
「中西とは限らないが、そのセンで調査を進めている」
「そうか・・・」
「それで別件で気になる事があるんだが・・・」
「おお、何じゃ?」


熊さんに協力を頼むという意味でも話しておくべきだろうな・・・。


「熊さん、実は昨日、中央公園で聞いた情報なんだが・・・。
ここ数日、怪しい男がホームレスをジロジロと観察するように見ているようだ」
「ほう・・・」
「その怪しい男に襲われて、怪我をしたホームレスもいると言っていた・・・」
「なんと・・・それは深刻じゃな」
「ああ、また夜にでも詳しい話を聞いてみる」
「そうじゃな・・・」
「熊さん・・・今日報告した『ゆうちゃん』の事は・・・」
「・・・わかっておるわ」
「すまない、なるべく大事にしたくないんでな・・・」
「しかし、その怪しい男の事もある訳だから・・・。
事態が悪化した時はすぐ連絡するんだぞ」
「ああ・・・その時は頼む」
「じゃあ、ワシは行くわい・・・」
「ああ」



熊さんは複雑な表情を残して奥へと消えていった・・・。



「実際のところはどうなんですかね?」
「まだ何とも言えない、というのが正直な意見だな・・・」
「確かに・・・。

これからどうします?神宮寺さん」
「・・・静江のところに行こうか。
今は亜希の依頼の方でとにかく時間を稼ぐ必要があるからな」
「そうですね。
では、お屋敷に行きましょう!」




・・・


・・・・・・


静江に下手に探りを入れられないようにしておく必要があるな・・・。


静江の元に行ってひとまずの体裁を整えよう。


・・・

「あら、神宮寺さん・・・」


調査は特に進展はないとでも言っておくか・・・。


・・・どうも静江の目が厳しいような気がしてならないが。


「毎日のようにありがとうございます・
・・・。

それで調査の方はどうなっています?」
「それが・・・何も手掛かりがない状態で、なかなか・・・」
「そうですか・・・神宮寺さん、調査についての隠し事などありませんよね・・・」
「もちろんです」
「そうですよね・・・では引き続きよろしくお願いします」
「はい」



随分、怪しまれているな・・・。


まあ、仕方のない事だが。



・・・


・・・・・・


「神宮寺さん、危なかったですね!
もう少しで奥様に気付かれるところでしたよ。
『ゆうちゃん』の調査について・・・」
「おい、春菜。
ここはまだ大河原家だぞ。

気を抜くんじゃない。
誰かに聞かれるかもしれないし・・・」


・・・!!


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「お、おお、神宮寺さんじゃないか・・・。
今日は調査の報告ですかな?」
「え、ええ、そうです」




・・・
「もしかして私達の話、旦那様に・・・」
「落ち着け、春菜。
下手に慌てたら、やぶ蛇になりかねない。
それより、哲三の慌てぶりが気になるな・・・。
一体なぜ、そこまで落ち着きをなくしている・・・?」




「お出かけになるのですか?」
「ま、まあ、そういう事じゃな・・・」
「そうですか」
「じゃあ、急ぐんでな・・・」
「ええ、では」



・・・
「旦那様、忙しそうですね」
「ああ、そうだな・・・」
「でも、確か今日は旦那様は何も予定がなかったような気がするんですが・・・」
「・・・・・・」




・・・
俺達が大河原家前へと出ると、そこには礼子の姿があった。


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「どうも、神宮寺さん」


今日はやたら大河原家の人間と出会うな。


「・・・? 神宮寺さん、どうしました?」
「いえ、何でもありません」


礼子とは特に話すことはないが・・・。


何か俺に聞きたそうな顔をしているな・・・。


「神宮寺さん、今日は・・・」
「ええ、静江さんに報告して来ました」
「・・・それで、調査の方はどうなりました?
また新しい依頼でも?」


礼子は俺の調査についてどこまで知っているのか・・・?


「それは・・・」
「わかってますよ・・・。
調査の内容は言えないんでしたよね。
フフフ・・・」



ピリリリリ・・・



「あ、すいません・・・。

ちょっと電話よろしいかしら」
「ええ、お構いなく」



・・・
「・・・はい・・・ええ・・・ええ・・・そうね・・・調査は続けてちょうだい・・・」
「・・・・・・?」


・・・調査?


「すいません、ちょっと込み入った話になりそうなので・・・。

この辺で・・・」
「そうですか、では」
「失礼します・・・」


そう言うと、礼子は電話を片手に大河原家の中へと進んで行った・・・。



・・・


・・・・・・ん?


何だこれは・・・?

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「礼子さん、落とし物ですよ・・・」



「神宮寺さん、礼子様は行ってしまいましたよ」
「そうか・・・」
「どうしたんですか・・・?

何か拾ったんですか?」
「いや、何でもない・・・」


名刺か・・・。


一応、持っておくか。


・・・しかし、さっきの調査という言葉、気になるな・・・。


この名刺と関係があるのか?

 



・・・


・・・・・・


俺達は西新宿8丁目へとやって来た。


「・・・でもさ、貴之。
女だって仲間に入れてもいいんじゃないかな・・・」
「・・・うーん」


・・・!!


「あ、神宮寺さん・・・」
「何だよ! 神宮寺」


今日はいつにも増して攻撃的だな・・・。


どうも態度が怪しく思えるが・・・。



「今日は美鈴はいないようだが・・・」
「へん、知らねーよ!

あんな奴・・・」


「何か、買い物とか言ってましたよ!」


「おい、知也!何でもペラペラ喋るんじゃねーよ!」
「ご、ごめん・・・」


「・・・そういえばさっき仲間とか言っていたが・・・何の事だ?」
「な、なんでもねーよ!」


「・・・でも貴之、神宮寺さん達にも・・・」
「おい、知也!
こいつらには絶対言うんじゃねーぞ!」
「で、でも・・・」
「わかったか! おい!」
「わ、わかったよ・・・」
「そういう事だから・・・じゃあな・・・」


「おいおい、何なんだ・・・。

教えてくれ」
「ぜってー、ヤダね!!」


やれやれ・・・。


「おい、行くぞ、知也!」
「う、うん・・・」



・・・
「神宮寺さん・・・。

一体、何なんでしょうね・・・」
「ああ・・・あの話し方からして、俺たちにも関係がありそうだしな・・・」


貴之達は確かさっき、美鈴は買い物だと言っていたな。


買い物と言うと、やはり繁華街だろうか・・・。


「貴之達、一体何を隠しているんでしょう? すっごく気になりません?」
「まあな・・・。
何にしても、危険な事に足を踏み込んでなければいいんだが・・・」
「そう言えば、黒服男が公園にうろついているって話もありますもんね。
うーん・・・ちょっと心配ですね」
「ああ・・・」




・・・


・・・・・・


俺達はアルタ前へやって来た。


そこには美鈴の姿があった。


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「あっ、神宮寺さんじゃない」


こんなところで美鈴と会うとは、奇遇だな・・・。


確か貴之達が美鈴は買い物中だと言っていたが。


「こんなところで何しているんだ?」
「何よ、あたしがここにいたらいけないって言うの?」
「いや、そういった訳ではないが・・・。

今日は一人のようだな・・・」
「フン、一人じゃいけないっていうの?」
「いや、そういった訳ではないが・・・。
そういえば、西新宿8丁目でさっき貴之達に会ったな」
「フン、相変わらずうるさかったでしょ?
あの二人・・・」
「ああ、まあな・・・」
「あんな奴らがいたら、ゆっくり買い物も出来ないわよ・・・。
私はこれからの事もあって、いろいろと忙しいんだから」
「・・・? これから何かあるのか?」
「う、うるさいわね。
神宮寺さんには関係ないでしょ」


そう言うと美鈴は街の中へ消えて行った・・・。



「一体、何を隠しているんだ?」
「怪しいですね! 神宮寺さん!すぐに尾行しましょう!
「もう見失っているから無理だ・・・。そもそもそんな事をしている程、俺達は暇じゃないはずだぞ」

「はぁい・・・」



・・・


・・・・・・


「・・・!」
「どうした、春菜」
「そろそろ、この新宿の街に闇が迫りつつあります・・・」
「・・・夜になるって普通に言えんのか。 安田徳子に会いに行くぞ」
「・・・・・・あっ、神宮寺さん、待ってくださいよ・・・」


爽やかにざわめく木々の間から、新宿の街に影が忍び寄ってきた。


昼から夜へ・・・。


表から裏へ・・・。


都会の喧騒の中で、そこだけが別の生き物のようにその姿を密かに変えていく。


闇に染まり始めた新宿を歩き、俺達は新宿中央公園へと向かった。

 



・・・


・・・・・・


すっかり陽も落ちたようだ。


前田の話によると、安田徳子は夜になるとこの公園にやってくるという。


そろそろ安田徳子を探しに行くとしよう。




・・・
「・・・・・・いませんねぇ。

安田徳子さんらしい人・・・」
「もう少し辺りを探してみよう。
春菜、周りをよく見回すんだぞ」
「はぁい」




・・・
「きれいですねぇ。滝がライトを反射していて」
「そうだな・・・」
「・・・あっ!」
「どうした? 春菜」
「今、気付いたんですけど、何かこうしているとすごくデートっぽいですね!
ね、神宮寺さん。そう思いません?」
「・・・」




・・・
俺達は、ホームレス達の中から安田徳子を探して歩いた。


寝床に入ろうとするホームレスに
安田徳子・・・とくちゃんについて聞いてみたが・・・。


『それならこの辺りにいるよ』


・・・という答えばかりで結局は歩いて探すしかなかった。


安田徳子はどこにいるのだろうか・・・。



・・・

しばらく見回した俺は、公園の中にあるベンチの横にそれらしき人物を見つけた。


俺はすぐにその女性に声をかける事にした。


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「こんばんは」
「ああ、こんばんは。
あれ・・・? アンタは昨日の・・・」


この女性は昨日この辺りで苦しそうにうずくまっていた女性だ。


彼女が安田徳子だったのか?



「神宮寺さん。このおばさんと知り合いなんですか?」
「ああ・・・偶然にもな」
「それは話が早いですね!
中西さんの事、ちゃっちゃと頼んじゃって下さいよ!」


・・・

「安田徳子さんですか?」
「おや、いつのまに名前なんて調べたんだい?
・・・確かにアタシが安田徳子だよ。
みんなからは『とくちゃん』って呼ばれているよ」
「やっぱりそうでしたか」
「なんだい。アタシを探してたのかい?」
「ええ、実はちょっとお聞きしたい事がりありまして」
「なんだい、困ってるのかい?
いいよ、話を聞こうじゃないか。
アンタとはもう他人のような気がしないからね。
何だって聞いてくれよ」


さて・・・。


話を聞かせてもらうか。


「俺は子供を探しているんだが・・・」
「・・・そう、だったら夜の公園に来ちゃ駄目だよ」
「いや、そういう意味ではないんだ」
「・・・?」
「徳子さんは子供について、心当たりがないかと思って・・・」
「そんなのいないねぇ・・・」
「徳子さんはこの生活は長いのか?」
「どのくらいだと思う?」
「・・・5、6年くらいか?」
「・・・どうだろうね。
詳しい年数はわからないね」
「中西さんの事だが・・・」
「ああ、いい友人だよ」
「中西さんは過去に、コインロッカーを荒らして生活していたとか?」
「もう足を洗ったはずだよ・・・それにシゲはもう罪を償って来たよ・・・
今更、シゲに何させようって言うんだい?」
「いや、そういう意味じゃないんだ。
悪かった・・・」
「もう、シゲを責めるのはやめてやってくれないかい?
アタシ達はもう厄介ごとはごめんだよ・・・」
「実は・・・。
行方不明になった子供を探している。
場所は6年前の新宿駅のコインロッカー・・・。
何か話を聞いてないか?」
「うーん・・・知らないね・・・」
「・・・そういえば、徳子さんは昔は仕事に就いていたのか?」
「アンタ、どう思うね?」
「・・・就いていたんだろう?」
「ああ、そうだね・・・でも今はこの様さ・・・」
「・・・最近の調子は?」
「ハハハ、どう思う?」
「悪そうに見えるが・・・」
「・・・そうかい?アタシはこの通り元気だけどね」
「そうか・・・それはよかった。今日はこれからどうするんだ?」
「ハハハ、どうすると思うんだい?」
「帰って寝る・・・だろうな。
すまない・・・くだらない質問して・・・」
「ハハハ、いいんだよ」


・・・。


「・・・そういえば、さっきから俺の質問を質問で返してくるが、なぜなんだ?」
「ハハハ、最近は癖になってしまったみたいだね」


・・・!


この言葉・・・。


同じ事を言っていた人物がいた・・・。


そうだ・・・。


託児所の経営者の、林由香子だ。


林が質問を質問で返す癖がついたのは・・・そう、子供のためだった。


そうなると・・・。



「その癖の事だが・・・」
「・・・?
何だい・・・?」
「原因は・・・子供だな・・・」
「・・・!!」


このタイミングで『子供』という言葉を聞いて動揺する徳子を見る限り・・・。


子供に何らかの心当たりがあるようだ。


「徳子さん、その子供・・・」
「アタシは何も知らないよ!
急いでいるんでね!帰らせてもらうよ!」
「・・・」


俺は遠ざかっていく徳子の背中を見つめた。



・・・


まさか・・・。


意外にも『ゆうちゃん』を知る人物に近づけたのかもしれない。


俺が振り返ると春菜は不満たっぷりの顔をしていた。


「・・・・・・」
「何か言いたい事でもありそうだな・・・」
「どおぉーーーーして何も聞かなかったんですか!
絶対怪しいじゃないですか。
あの人、何か知ってますよ」
「まあ、そう焦るな・・・。

今のはボクシングで言うジャブみたいなものさ・・・」
「じゃぶ・・・・・・?
・・・でも、まさかこのまま引き下がったりしませんよね?」
「少し時間を置くだけだ。
俺達は犯人探しをしている訳じゃない。
子供が見つかればいいだけだ」
「じゃあ、今日はもう終わりですか?」


徳子の方はとりあえず時間を置いて・・・。


せっかくだからまたここで例の噂について調査してみるか。


「怪しい男の調査をしてみようと思うのだが・・・」
「あ、そうですね。

それがいいですね!
神宮寺さん。とっとと謎の黒ずくめの男をとっ捕まえましょう!」
「そうはやるな。
まずは辺りの人間に聞き込みだ」
「うーん・・・何だか地味な事ばっかりですね」
「探偵業なんて、そんなものだ」
「むぅ・・・」




・・・
俺は中央公園の辺りを中心に噂の立っている黒い服の男について、ホームレスの男性に聞き込みを行った。


「あぁん、怪しい男ねぇ・・・」
「ええ、最近ここら辺で噂になっている・・・」
「おお、そうそう・・・そういえばこの前、下田のおっちゃんがごつい男に絡まれたって言ってたな・・・」
「その男の特徴は・・・?」
「おお、何か若い兄ちゃんで黒服にサングラスって言ってたな・・・
まあ、要するにいかにも怪しい男って事だな・・・」
「そうですか・・・」
「あっ、そうそう、下田のおっちゃん、その男に怪我させられてよぉ・・・」
「・・・・・・」
「・・・全く、怖い話だよぉ。
まあ、大した怪我じゃなかったみたいだけど、兄ちゃんも気をつけなよぉ」
「・・・その男の目的は?」
「さぁ・・・何か子供について聞いているみてぇだな。
それで、知らねぇと言ってもしつこく聞いてくるみたいだ」
「そうですか・・・。

ありがとうございます」
「いや、いいんだよぉ。
じゃあ、俺は寝るよぉ・・・」
「すみません・・・お休みのところを」


体格がごつく、黒服、サングラスの男か・・・。


しかも・・・子供を探しているとは・・・。


嫌な予感が的中してしまった。


他の場所でも聞き込んでみるか。




・・・
「なんだ?」
「すみません・・・。
この辺で黒服にサングラスの男を見かけませんでしたか?」
「ああ、あの野郎か・・・」
「詳しい話を聞かせてもらってもいいですか?」
「まあ、いいけど・・・。
この前よ、いきなり子供の事を聞かれて、知らねぇって言うといきなり脅してきやがってよ。
そんでこんな有様だよ・・・」


そう言うと、男は顔の傷を指でさした。


「これは・・・ひどいですね」
「・・・ったく、乱暴な奴だよ」
「あなたは・・・?」


さっきの聞き込みで出てきた男性だろうが・・・名前は何だったかな・・・。



「下田さん、ですね」
「おお、そうだが・・・何で知っているんだ?」
「ええ、先ほど下田さんの事を聞きまして・・・。
聞いた事に似ていたのでまさかとは思いましたが・・・」
「・・・そうか。
・・・ったく、山さんだな。

そうだろ? 兄ちゃん」
「いや、その話を聞いた人の名前までは聞かなかったので」
「・・・ったく、山さんに決まってらぁ。
相変わらず、お喋りだな」
「その男について詳しく聞かせてもらえませんか?」
「ああ、いいけどよ・・・。
俺は覚える事が苦手でよぉ。
さっき話した事が全部だよ」
「そうですか・・・」
「おっ! 思い出した!
黒服にサングラスだったぜ!」
「・・・そうですか」


知っている情報だな・・・。


「おっ! それによぉ! 子供の事を聞かれたなぁ」
「・・・なるほど」


これも知っている情報だな・・・。


「わかりました・・・。
どうもありがとうございました」
「おっ、もういいのか・・・。
じゃあな・・・・・・」
「ええ、お邪魔しました」


他の場所でもう少し聞いてみるか。




「何もしてない人間に暴力を振るうなんてどうしようもないクズですね。
神宮寺さん!そんな奴、私達の手でぶちのめしてやりましょう!」
「・・・もし、俺達の目的がその男と同じものなら、いずれ必ず会うだろう。
その時を待とう」
「はい!
その時はガツンとやっちゃって下さいね!」




・・・
「何だよ・・・」
「すみません・・・この辺りで黒服でサングラスの怪しい男を見かけませんでしたか?」
「・・・・・・?
知らないねぇ」
「そうですか・・・」
「でも・・・」
「・・・?」
「その男とは違うけど、怪しい男なら見たよ・・・」
「それは・・・?」
「ああ、太っている男でキョロキョロと怪しい奴さ」
「その男は何か聞いていたり、誰かを脅したりしていましたか?」
「いやぁ、話しかけようとすると逃げて行った男だよ。
そんな乱暴な事をするような人には見えなかったけど・・・」
「そうでうか・・・」
「・・・ったく、あんな年を取ってまで何をしてるんだかねぇ」
「・・・? その男は若い男では?」
「いやぁ、違うよ。
あんなん、どう見たっておじいさんだよ・・・。
何か周りをキョロキョロと見ていて、何かを探しているようだったねぇ・・・。
だから、わたしゃここの仲間になりたいのかと思って声をかけたら、オドオドしながら逃げて行ったよ。
何なんだろうね・・・」
「・・・ありがとうございました」
「ああ、いいって事よ。
わたしゃ暇だしね・・・じゃあ、お休み・・・」
「・・・」


どういう事だ・・・?


今まで聞いた男とは違う男の証言だ。


もう少し、聞き込みを続けるか・・・。



「何でしょう?
歳を取った、オドオドした男と言うのは?」
「特に害はないようだが、何か探しているようだというのが気になるな」
「むむ・・・。
怪しい男が二人もなんて、頭が混乱するなあ」




・・・
俺達は中央公園の辺りを中心に噂の立っている黒い服の男について聞き込みを行おうとした・・・。


・・・その時、一人の男が声をかけて来た。


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「どうも、神宮寺さん」
「あなたは・・・荒川さん」
「どうも、今日も人探しですか?」


せっかくだから、荒川にも話を聞いておこうか・・・。


「・・・・・・? どうしました?」
「荒川さん、聞きたい事があるんですが」
「はい、何でしょう」
「最近、この辺で怪しい男についてよく聞くんですが・・・」
「ええ、そうですね・・・実は僕も詳しく聞いて回っているんですが・・・」
「その男について詳しく聞きたいんです」
「・・・神宮寺さんがどれほど知っているかは知りませんが・・・。
僕が聞いたのは黒い服の乱暴な若い男と、オドオドした年寄りの男です。
しかし、なぜ二人も同時に急にここに現れたのか・・・。
何かあるのでしょうか?」


・・・やはり怪しい男は二人いるようだ。


「・・・で、神宮寺さんの方は何を知っているので?」
「・・・大体似たような事ですが、その若い男の方は子供を探していると聞きました」
「子供・・・?」
「ここに子供が住んでいる事は?」
「いえ、聞いた事はありません。
ほとんどがホームレスだけですし・・・。
昼間、ここに遊びに来る子供の事でしょうか・・・?」
「・・・いえ、まだはっきりとは・・・」
「まさか『ゆうちゃん』を探しているのでは・・・」
「・・・」
「きっとそうですよ・・・。
でも・・・幽霊なんて捕まえようとすれば罰が当たるだけなのにね・・・」
「・・・・・・」
「あ・・・そうだ。
神宮寺さん、若い男の方は乱暴でここのホームレスの人達も被害にあっています。
気を付けて下さい」
「ええ、荒川さんも・・・」
「ええ・・・では、僕はこの辺で・・・・・・」
「はい」




・・・
「男が二人いるというのは、間違いないようだな」
「二人の男・・・謎が謎を呼び、いよいよ事件は佳境ですね。
そろそろ、私の本当の出番が!」
「盛り上がっているところですまないが、少し考えてみる・・・。
静かにしていてくれ」
「はーい」




二人の男・・・。


一人は威圧感を漂わせた、ごつくて若い男。


一人は何かを探すようにさまよっていた年を取った男。


なぜ若い男は子供を探しているのか・・・。


年寄りの男の目的は・・・。


だがその答えを求めるには、まだ情報が足りない。


今日はこれ以上の進展は望めないだろう。


「で、どうします?

聞き込みを続けます?」
「この件については、今日はここまでにしておくか」
「じゃあ、とくちゃんにもう一度会いに行くんですね」
「・・・そうだな」




・・・。