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探偵 神宮寺三郎 白い影の少女【12】


・・・。


俺達は新宿中央公園入り口へとやって来た。


そこには中西の姿があった。


「けっ、何だよ。
また、あんたかよ・・・」


中西と徳子は仲が良いという話だったな・・・。


中西なら徳子の事を何か知っているかもしれない。


「すまない・・・」
「何だよ、しつこい奴だな。
俺は何もしらねぇよ」
「いや、徳子さんがどこにいるのか知らないか?」
「テメェ、とくちゃんの事をなんで知ってる!」
「いや、実はここで聞き込みをしている時に仲良くなってね」
「なんだ・・・そうか。
あの人は、人がいいからな・・・」
「・・・で、徳子さんはどこに?」
「何でそんなに、とくちゃんに会いたいんだ?」
「それは・・・。

実は徳子さんに返さないといけない物があってな・・・」
「なんだ、返す物って・・・?」


徳子の居場所を聞くためにも、うまくごまかさないとな・・・。


何か役に立つものは持っていただろうか・・・。



「・・・神宮寺さん、キーホルダーってことにしましょう」
「春菜・・・キーホルダーではさすがに信用してもらえないだろう。
無難なところでライターがいいだろう・・・
特にこういった暮らしをする人達にとって火は重要だからな」
「あ・・・そうですね」




・・・
「実はライターなんだ。

返したい物ってのは・・・」
「ほー・・・それで肝心のライターは?」
「あ、ああ、これなんだが・・・」


俺は仕方なく、自分のジッポを中西に見せた。


「・・・そんなもん、とくちゃん、持ってたっけかな?」
「・・・・・・」
「まあ、いいや。
仕方ないから教えてやるよ・・・」
「そうか・・・ありがとう。
・・・で?」
「ああ、とくちゃんは向こうに住んでいるから、もしかしたら帰ったかもな」
「・・・向こうとは、西新宿8丁目の方か?」
「ああ・・・」
「・・・? 徳子さんは家に住んでいるのか?」
「いや、空き家に住んでいるんだよ。
でも、まだとくちゃんが帰る時間でもねーからなぁ・・・。
この辺にいるとは思うけどな。
まあ、早く行けや・・・」
「わかった。ありがとう」
「ああ、もし会えなかったらもう一度、公園を探してみるんだな」


徳子の家か・・・。


もしかしたら会えるかもしれない。


西新宿8丁目に行ってみよう。



 

・・・


・・・・・・


徳子の家の近くまで来たが・・・。


この辺りをうろついているかもしれんな。


辺りを探してみよう。


・・・。


・・・・・・。




「いないですねぇ・・・徳子さん」
「ああ・・・だが、辺りをよく探してみよう」
「はい」




・・・
「いないですねぇ・・・」
「ああ・・・。

家がこの辺りとは言え、やはりそううまくは会えんか・・・
そもそも家に帰ったという確証もないしな」
「じゃあ、今日はもう事務所に帰りましょうか」
「諦めるのが早いな・・・」
「いえ、これはいさぎよい、という事です」
「・・・ひとまず今はもう少し手を広げて徳子を探してみよう。
もしかしたら会えるかもしれんしな」
「はぁーい」

 



・・・


・・・・・・


俺達は新宿西小学校の前へとやって来た。


学校には貴之達の姿があった。


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「あっ・・・」


どうも俺に会ったのは都合が悪いようだ。


貴之達・・・様子がおかしいな。


一体、俺達に何を隠しているんだ?


「昼間から随分忙しそうだが、何があるんだ?」

「うるせぇよ! テメェなんかに教えるか!」


「神宮寺さん、しつこい人は嫌われるのよ」


・・・やれやれ。


「もう、やめなよ・・・」
「うるせぇ、知也。
お前は何も喋るんじゃねーぞ!」
「わ、わかっているよ・・・」
「フン・・・・・・」


「じゃあ、行きましょ」



「三人でこれからどこに行くんだ?」
「アジトに行くんですよ」


「バカ知也、こんな奴に教えるな」


アジトか・・・。


時代が変わっても子供の遊びはそう変わらないものだな。



「いいから行くぞ!」


「ごめんなさいね、神宮寺さん。
あたし達はもう行かなくちゃ」


「失礼します、神宮寺さん・・・」



どうも意味深ではあるが、呼び止める必要もないだろう。


「ああ、またな・・・」
「もう会わねぇよっ」


三人は路地の向こうへと消えていった。


「結局、徳子はいなかったな・・・」
「そうですね」


そうなると、徳子がいる可能性の高い場所を行くしかない訳だな。


もう一度、考え直してみるか・・・。




・・・
そういえば、さっき中西が何か言っていなかっただろうか。



「中西のさっき言った事を信じて、新宿中央公園をもう一度探してみようか・・・」
「やれやれ・・・参ったな」
「・・・まさか、俺の真似とでも言うんじゃないだろうな」
「へへ、わかります?」


・・・やれやれ。




・・・


・・・・・・


再び中央公園にやって来た。


・・・ん?


・・・やっと見つけた・・・安田徳子。


俺達が近付いていくと、徳子はまるで逃げるかのように立ち上がった。


「徳子さん」

「な、なんだい。
アタシはもう帰るんだよ」


やはり俺の事を警戒しているようだな・・・。


さて、どうするか。


「もう一度話を聞きたいんだが・・・」
「そんな事を言われてもね・・・。
さっき話した事で全部だよ。
話す事なんてないよ!」


ここは逃げられる事は避けたいな・・・。


何か話を聞いて、徳子を引き止めた方がいいだろう。


そうだな・・・。
子供の話をいきなり聞くのはまずいだろう。


まずは例の噂について話しておくか。


「いや、さっきの話とは別の事だ・・・」
「別の事? 今度はなんだい?」
「例の黒い服の男・・・の話だ。
徳子さんが噂に聞いたのはどういう男だった?」
「なんだか、えらく体格のいい怖い男だって話だったよ」
「それ以外の男の話を聞いた事は?」
「それ以外ねぇ・・・。
・・・ちょっと待ってくれよ。
そう言えば、前にアタシの仲間が口論した事があってね。
何で口論なんてと問い詰めたら、その男の話だったんだよ。
一人は若い男だって言って、もう一人は年取った男だって主張しててね。
俺が正しい、いや俺だって、そんな事で口論してたんだ」
「その若い方の男の目的を知っているのか?」
「・・・? いや・・・でも、どうせただの嫌がらせだよ?」


・・・徳子は男の目的までは知らないようだ。

・・・そうだ。


男の目的を知れば、協力してくれるかもしれない。


徳子は子供の事を知っている可能性がある訳だしな。


「その男の目的は、どうやら子供を探しているらしい・・・」
「・・・子供だって・・・?
なんて事だい・・・」
「詳しい話を聞かせてくれないか。
・・・俺が探しているのは6年前に新宿駅のコインロッカーから消えた赤ん坊だ。
その赤ん坊について心当たりはあるか?」
「な、何だよ・・・そんなの知る訳がないよ。
何でアタシに聞くんだい・・・アタシは・・・何もしてないよ」
「・・・中西さんの事だが」
「ああ・・・シゲの事はそっとしといてやってくれないかい?
今は人様に迷惑をかけるような事はしちゃいないよ・・・」
「あ、ああ・・・。
もう一度聞く・・・6年前に新宿駅のコインロッカーから消えた赤ん坊は知らないんだな」
「そ、そうだよ・・・アタシは子供なんて知らないし、何もしちゃいないよ・・・」
「中西さんは、何かしたのか?」
「な、何を言うんだい!
さっきから言っている通り、何もしちゃいないよ!
失礼な人だね・・・」
「いや、中西さんが過去にコインロッカー荒らしをしていた事から、中西さんと親しい徳子さんなら何か話を聞いていないかと思っただけで・・・。
あなたが何をしたのかを聞いている訳ではなかったのだが」
「な、何だい・・・そんな事なら何も聞いちゃいないよ・・・」
「・・・・・・佐藤亜希・・・」
「・・・何だい? いきなり・・・。

その女性がどうかしたのかい?」
「ああ、6年間も苦しんでいる」
「おや・・・かわいそうに・・・どうしてなんだい?」
「・・・・・・」
「・・・? 何でアタシにそんな話をするんだい?」
「彼女は今もなお・・・苦しんでいる」
「そうかい・・・6年も苦しんでいるなんて、病気なのかい?」
「病気ではないが・・・」
「そうなのかい・・・でも何でアタシにそんな話をするんだい?」
「徳子さん、あなたは俺の見る限り、人徳のある人だと思っている」
「ハハハ、だから『徳子』って言うんだよ・・・」
「あなたの協力がどうしても必要なんだ・・・」
「・・・・・・?」
「その女性は6年前、様々な想いを一人で抱え込み、その重さに耐えきれず赤ん坊を捨ててしまった。
しかし、彼女は自分の過ちに気付いて慌てて戻るが、赤ん坊の姿はなかった。
彼女はひどく苦しんだ。
これは神が与えた罰なのだと・・・。
そうやって彼女は罪を償うために後悔と苦しみを抱え込んで、この6年間生きてきた」
「・・・・・・」
「徳子さん、知っている事を話してくれないか?」
「で、で、でもさ・・・ほら、その母親はさ、その子を捨てたんだろ?
何を今さら・・・生まれたばかりの赤ん坊だよ。母親がいなかったら、生きていけないんだよ?
そんな子を・・・そんな我が子を捨てるなんて。
そんなひどい事をする母親に、もしその子が会ったとしても、幸せになんてなれないよ。
なあ、そうだろ?」
「確かにそうかもしれない・・・。
・・・しかし、その答えが正しいかどうかは、わからない。
無論、正しい答えを出そうとも思っていない。
ただ俺は、亜希とその子が再び出会う事で、亜希の気持ちが救われればいいと思っている。
後はその子が正しい答えを出してくれるだろう」
「・・・会いたがってる母親ってのは・・・?」
「俺の古い友人がとても大切にしていた人だ」
「そうかい・・・その古い友達っていうのは、アンタにとってどういう友達だったんだい?」
「学生時代を共に過ごした、無二の存在だ・・・」
「なるほどね・・・」
「・・・・・・」
「ど、どうして・・・どうして今頃になって・・・」
「ずっと気になっていたんだが、徳子さん・・・。

もしかして・・・その子を?」

 


俺がそう問いかけた次の瞬間、徳子の顔色が急変し、苦しそうに胸を押さえた。


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「大丈夫か!?」
「う、ぐうぅ・・・・。

ごほっ、げほっ・・・」


これは・・・。


かなりまずい状況だ・・・・・・。


「誰か救急車を呼べ。 
すぐ病院へ連れて行くんだ!」


・・・。


・・・・・・。



「・・・・・・おい、なぜ誰も動かん。
早く救急車だ!」
「い、いいんだよ・・・」
「いい訳がないだろう」
「病院なんて・・・行っても無駄なのさ・・・」
「・・・何を言っている




・・・
「神宮寺さん・・・」
「前田・・・? どういう事だ?」
「ええ、私達は生命保険はおろか、健康保険にだって入っていない。
治療費を払うアテなんてありませんし、払ってくれる身内もいない・・・。
私達が病気になっても、治療してくれるなんて事はめったにありません」
「・・・しかし、苦しそうだ」
「ええ、でも私達には・・・」



・・・!!



「・・・神宮寺さん、どこへ?」
「このまま放ってはおけない、俺は病院へ連れて行く」
「で、でも・・・」
「俺に任せろ・・・」



「ふふ・・アンタは、いい人だねぇ・・・」



「神宮寺さん、ありがとうございます。
よし、みんな神宮寺さんを手伝うぞ!」



「・・・おう!」

 




3月17日 西新宿総合病院 病室


徳子を病院に届け、一息ついた頃にはもう夜は明けていた・・・。


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「ごほっ、ごほっ。
アンタには世話になったね」
「礼などいらない。
当然の事をしたまでだ」
「じゃあ、アタシはこれで帰るよ・・・」
「きちんと治療を受けてからな・・・」
「無理な事を言わないでくれよ。
アタシには治療費なんて払えないんだから」
「ここの院長とは知り合いだ。
治療は頼んである」
「・・・やっぱり行くよ。
助けてもらっておいて、こんな恩知らずな事を言うのもなんだけどね・・・。
アタシは特別扱いが嫌いなんだ。
アタシを助けるんだったら、仲間も助けてやってくれよ。
アタシだけこんな上等なベッドに寝てるなんて、仲間に申し訳がないよ」
「あなたの場合は症状が重い」
「アタシより辛い思いをしてる人はたくさんいるよ・・・」
「そんな事を言っていたらキリがない話だ・・・」
「確かにそうだけど・・・でも大した事ないんだろう?
そんな奴がゆっくり寝てる訳にはいかないよ・・・。
ごほっ、ごほっ。
アタシの帰りを・・・待ってる人がいるんでね・・・」
「・・・このまま病院を出ると、今度はあなたの仲間が苦しむ事になるぞ・・・」
「ど、どういう事だい?」
「あなたは結核だ・・・。
最悪、感染する恐れがある」
「・・・・・・!!」
「それでもここを出るのか?」
「・・・わかったよ。
すまないねぇ・・・アタシはただ特別扱いってのが嫌いなだけなんだ。
でも他の人を苦しめちゃいけないね、さすがに・・・」
「子供の事は知っているな?」
「・・・アンタにはもう、隠し事は出来ないね。
『ゆうちゃん』の事だね?」
「ああ・・・」
「あれは・・・ちょうど6年前の今頃だったかねぇ・・・。
アタシはシゲと・・・」


中西の過去を考えれば、徳子が中西と一緒に何をしたのか容易に推測出来るな・・・。


「・・・中西茂のロッカー荒らしを手伝っていたんだな・・・」
「もう知っているのかい・・・まあ、いいや。
それまでロッカー荒らしなんてやった事はなかったけどね。
でも、あの地下道の事件があってアタシ達の生活も変わっちまった。
すぐに新しい生活を見つけられた人もいたけど、アタシやシゲは途方に暮れたよ。
あちこち転々として、結局は新宿に戻ってきた。

でも、前のようにはいかなかった・・・。
アタシ達だって何かを得ないと生きてはいけない。
それでシゲが前からやってたロッカー荒らしの手伝いをするようになったんだ。
もちろん悪い事だってわかってる。
今はそんな事しちゃいないよ」
「ああ・・・信じるよ。
それで・・・」
「・・・ある日、アタシ達はとんでもないものを見つけちまったんだよ」
「赤ん坊だな・・・」
「ああ・・・かわいい子だった。
本当に・・・天使みたいにかわいかったよ。
あの時のシゲの顔ったらなかったよ・・・。
あのシゲがさ・・・オタオタしちゃって。
ヤバイもの見つけちまったって大慌てさ。
札束を見つけた訳でもないのに、地に足がついてなかったよ。
でもアタシは・・・。
わくわくしたねぇ・・・・・・。
こんな可愛い子を捨てる親がいるなんて・・・と腹も立った」
「・・・」
「シゲは関わるなって言ったよ。
本当の親が取りに戻るかもしれないからってね。
でもあの子を見てたら、これは神様がアタシに授けてくれたんだって思ったんだよ。
アタシは子供がいなくてね。
これは神様が与えてくれた幸せなんだって思ったよ。
だからアタシはその赤ん坊を引き取って育てる事にしたんだ」
「・・・・・・」
「しちゃいけない事だってわかっていたんだけどね・・・」


ここまでわかったのなら亜希のためにも早速、徳子に聞かねばならない事がある。


「今、その子はどこに?」
「アンタの思っている通りだよ。
あの子はちゃんと生きてる。
アタシ等の仲間として一緒に暮らしてるんだ。
アタシは西新宿8丁目の古い廃墟に住んでるんだよ。
あの子もそこにいるはずだよ。
アタシが帰ってこないから心配してるかもしれないね。
・・・・・・でも、あの子達がいるから大丈夫かなぁ・・・」
「・・・・・・? あの子達とは?」
「いや、何でもないよ・・・。
早く行っておくれ」
「・・・わかった」
「すまないね。 恩に着るよ」
「・・・その子の名前は?」
「ゆう・・・悠だよ」
「・・・まさか本当に『ゆうちゃん』だったのか」
「ああ・・・。
・・・・・・ごほっ、ごほっ・・・」
「大丈夫か?
すぐ医者を呼んでくる・・・」
「・・・すまないねぇ」


たちまち病室は慌ただしくなり、徳子は診察室へと運ばれた。


俺達はただ見ている事しか出来ず、気がついたら病室は沈黙に包まれていた・・・。


徳子の事も心配だが、今は俺達に出来る事をやろう・・・。




 

西新宿8丁目 午前11時00分 藤村貴之


「いやー、今日も天気がいいなぁ・・・」
「そうだね、すがすがしいねぇ」


・・・


「何言ってるの、バッカじゃない



「・・・ねぇ、貴之・・・」
「ん? 何だよ」
「何か今日、この子元気ないんじゃない」
「・・・そうか?」
「何かあったのかな・・・。
いじめられたとか・・・」
「何! 誰がいじめたんだ!」
「・・・!! いや、あくまで僕の思いつきだよ・・・」
「何だよ、紛らわしい」


「あんたがバカなだけでしょ」

「何だと!」



「また始まった・・・ねぇ、ゆうちゃん、今日は元気ないね」

「うん・・・。

きのう、とくちゃん、かえってこなかったのぉ・・・。
ゆう、しんぱいなのぉ・・・」
「・・・そうなんだ」
「・・・・・・」



「とくちゃんに何かあったのか・・・?」
「さぁ・・・」
「でもさ・・・最近、調子悪そうだったぜ」
「そうだね・・・」


「・・・・・全く、あんた達の頭で考えてもわかる訳ないじゃない」
「なんだと!」
「何よ!」


「まあ、まあ・・・」
「まあ、いいや。
じゃあ、とくちゃんを探しに行こう!
ついでに、この街の案内をしてやる!」


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「うん、それいい!」


「へへ、そうだね」


「たまにはマシな事言うじゃない」


「じゃあ、早速、行くぞ!
向こうの電柱まで競争だ!」
「わーい!」


「負けないよ!」


「こら知也、フライングだぞ!」


「・・・もう、待ちなさいよ。
ホント、ガキねぇ・・・」



「一番遅かった奴、ジュースおごりだぞ!」
「な、何よ急に!」

 



宮寺探偵事務所 午前11時38分 神宮寺三郎


俺は一度、準備を整えるため事務所へと戻って来た。



「せ、先生、大丈夫ですか?」
「・・・?
・・・あ、そうだったな。
昨日は戻って来れなくてすまなかった。
ちょっと昨日の夜、大変な事が起きてな・・・」
「とりあえず、先生が無事でよかったです」



「神宮寺さん、モテモテですね」
「・・・」



「それで・・・昨日の夜、何が起きたんです?」



俺は昨日の夜に起こった事を洋子君に説明した。


「そうですか・・・では早速、ゆうちゃんを探しに行くので?」
「ああ、そうだ」



「ふぁー、疲れた・・・」


早速、調査に向かいたいところだが・・・。


そうだな・・・春菜は昨日からの調査で相当に疲れているだろう。



「洋子君、春菜は昨日の事で疲れているだろうから。
一緒に来てくれないか」
「ええ、もちろんです。

私もそのつもりでいました」



「そうか・・・。

春菜、昨日はお疲れだった。
しばらく休んでくれ」
「ふぁ・・・。
ありがとうございます。
ではゆっくり休ませてもらいます」





・・・
「じゃあ、早速、行こうか」
「はい」



「さぁ、はりきっていってらっしゃい!」

 


アルタ前 午後1時10分 藤村貴之



「ジュース、おいしかったねぇ」
「ああ、そうだな・・・知也にお礼を言わないとな」


「何で僕が負けるの・・・」


「ホント・・・一番最初に走り出しておきながらねぇ・・・」
「うぅ・・・」


「あ、そうだ・・・。
ゆう、ここがアルタ前って言うんだぜ!」


「ちょっと、この子も新宿に住んでいるのよ」


「そうだよ、知らない訳がないよ」



「あるたまえ・・・っていうの?
すごーい・・・」



「あれ・・・?」



「・・・それにひともいっぱいいるねぇ・・・」

「そうだろ、そうだろ・・・」



「ゆうちゃんはこの辺はあまり来ないの?」
「ううん、ときどき、とおるよ。
でも、おひさまがでているときはそとにでないの・・・。
だから、こんないっぱいのひとみるの、はじめて・・・」
「何で昼間は外に出ないのよ」
「とくちゃんがダメっていうのぉ・・・
だから、くらくなってからこっそりそとにでるの」



「そうなのか・・・でも今は外に出ているけど、大丈夫なのか?」
「・・・うーん」



「こらっ、貴之、ゆうちゃんをいじめるなよ」
「いじめてなんかいねーよ!」



「いまはとくちゃんをさがしているからいいのぉ」
「そうだね!」



「そういえば、とくちゃんを探さなくちゃいけなかったな」

「貴之、忘れていたの?」
「いいじゃねーかよ、今、思い出したんだから・・・」


「もう、しっかりしてくれよ」

「うるせぇ!
さあ、とくちゃんを探しに行こうぜ! ゆう!」



「うん、いこう、いこう」

 



西新宿8丁目 午後2時20分 神宮寺三郎



俺達は徳子の家を探すために西新宿にやってきた。


徳子の話では西新宿8丁目の廃墟を根城にしているという。


そこに『ゆう』もいるはずだ。


「・・・一体、どの家だ?」
「・・・そういえば詳しい場所を聞きませんでしたね」
「今、徳子は診察中だろうし・・・自力で探すしかないな」
「この中から探し出すとなると、骨が折れそうですね。
でもゆうちゃんも徳子さんの事を心配しているでしょうから、早く行ってあげましょう」
「ああ・・・」



 

新宿中央公園入口 午後4時35分 藤村貴之



「とくちゃん、いないねぇ・・・」
「そうだなぁ・・・」


「でも、まだそんなに探してないし・・・きっとこの辺にいるよ」
「・・・・・・」





・・・

「貴之!」
「なんだよ・・・!!」


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「・・・ん?
おめえらは・・・あの時のガキか・・・?」
「しげちゃん!」
「・・・おお、ゆうちゃんじゃないか。
久しぶりだなぁ・・・」
「ひさしぶりぃ・・・」



「・・・え?」
「・・・?」


「しかし、ゆうちゃん、こんな奴らと一緒に何してんだ?」
「うん、とくちゃん、さがしているのぉ・・・」
「・・・そういえば、今日は見ねぇなぁ・・・で、こいつらとは?」
「なかまなのぉ・・・」
「ふーん、仲間ねぇ・・・」



「・・・」
「・・・」
「・・・あの、この前はどうもすみませんでした」



「・・・」
「・・・早く、貴之も謝りなよ」
「・・・な、なんで」
「・・・覚えてないの?
貴之がめちゃくちゃに言ったんじゃないか!」


「確かに、あの言い方はひどかったわね・・・。
あたしも謝っておくわ、すみませんでした・・・」


「・・・」


「ほら、あとは貴之だけだよ」
「・・・・・・でもよ・・・」
「早く・・・」


「・・・ったく、男らしくないわね」


「・・・・・・わ、わかったよ。
えっと、しげちゃん、この前はごめんなさい」
「・・・・・・」



「しげちゃんって何だよ・・・。
また怒られちゃうじゃないか」
「でも、ゆうがしげちゃんって呼んでたぜ!」


「でもあたし達が呼ぶのは失礼でしょ」

「何でそれをもっと早く言わねーんだよ」
「あんたがいきなり言ったんでしょ!」



「ははは、おめぇら面白れぇな」
「・・あの」
「ああ、もういいよ・・・。
オレぁ、素直な奴は嫌いじゃないしな・・・。
ゆうちゃんと仲良くしてやってくれや・・・」
「ええ、もちろんです!」



「じゃあ、街でも行って遊んでこいや・・・・・・」
「んーとね、もうまちではあそんできたの!」
「・・・そうなのか」
「ジュース、のんで・・・。
あと、ひとがいっばいいてねぇ・・・」
「おお、そうか、そうか。

じゃあ・・・。
・・・ん?」
「どうしたのぉ?」



「貴之っていったかなぁ・・・?」
「え? そうだけど・・・」
「ゆうちゃんを連れてここから離れてくれ」
「いきなりどうしたんだ?」
「いいから・・・。

じゃあ、頼んだぞ」
「・・・・・・うん」



「あの野郎だな・・・
やっと見つけたぞ・・・」



「・・・・・・・?」
「一体、どうしたの?」
「さぁ・・・。

じゃあ、ゆう行こうぜ」


「貴之、どこに行くの?」
「行くところと言ったら、あとはあそこしかないだろ?」
「なるほど・・・・・・」


「じゃあ、ゆう、行くぞ」
「はーい」

 




新宿中央公園入り口 午後4時45分 神宮寺三郎



俺達は徳子の住処を見つけられぬまま、新宿中央公園へ戻って来た。



「やれやれ・・・」
「・・・先生、どうしましょう?」
「・・・・・・」


・・・・・・!



「・・・?」



「おい!! オレにはわかってんだよ。
オレ達の仲間をやったのはオメェだな。
仲間はオメェを怖れてるが、オレはオメェなんざ怖くもなんともねぇ。
オレが仲間の仇を取ってやる!」


そう叫ぶ男は・・・。


中西茂・・・だな。


詰め寄られている男は、歳を取った恰幅のいい男・・・。


まさか、怪しい男の一人・・・?


俺は二人に歩み寄り、男の顔を確認した。


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その男は・・・。


大河原哲三・・・・・・!


・・・どういう事だ?



「やめないか」
「お、なんだよテメェ。
ジャマするんじゃねぇよ。
オレぁ、仲間を守るんだよ」
「この男は違う。
お前の仲間に怪我を追わせたのは別の男だ。
歳を取って動きも鈍い男に、本当にお前の仲間を怪我させられるのか・・・・・・」
「け、けどよ・・・。

コイツはこの数日になってこの辺りによく来てるんだぜ。
コイツ以外の誰が犯人だって言うんだよ」
「中西、俺は聞き込みでもう一人の男の証言を聞いている。
特徴から見ても、彼は違う・・・。

おそらく、たちが悪いのはもう一人の男の方だ。
少なくとも彼じゃない。
それに・・・この男は俺の知り合いだ」
「・・・な、なんだよ。
へっ、それならそうと早く言ってもらわなくちゃよ」
「とにかく、この場は収めてくれ」
「ああ、わかったよ」
「度々・・・すまないが、少しはずしてくれ」
「ちぃ、わかったよ・・・」


中西はそう言うと舌を鳴らして、俺達から離れて行った。


まさか哲三がこんなところに現れるとは・・・意外と言う他ないな。




「なぜ、ここに?」
「いや、ちょっとな・・・」
「散歩という訳ではなさそうですが・・・」
「・・・・・・」
「この数日、哲三さんはこの辺りによく来ていたんですね?」
「・・・・・・」



哲三の態度を見る限り、明らかに何かを隠している。


しかし、話す気はないようだ。


こんなところで時間をかけている暇はない・・・。


ここは、強引ではあるが、鎌を掛けてみるか。


「・・・やはり、哲三さんだったんですね。
ホームレスを脅して、子供の事を聞きまわっていたのは」
「な、何を言っておる。
それは、さっき神宮寺さんが違うと・・・」
「でも哲三さんは何も言おうとしない。
ここでゆっくり話を聞いている訳にはいかないので・・・。
・・・では、中西とさっきの続きでもどうぞ」
「ま、待ってくれ、わかった、話すから・・・」
「では・・・なぜ?」
「・・・・・・子供を探していたんじゃ」
「子供・・・? まさか『ゆうちゃん』ですか?」
「やはり知っていたのか・・・」
「なぜあなたが『ゆうちゃん』を・・・」
「・・・わしは、この近くでそのゆうちゃんに会った事があるんじゃ・・・。
そう、あれは・・・亜希さんが我が家にやって来た日の事じゃ。
ワシは亜希さんに申し訳なくて託児所を訪れたんじゃ・・・。
ただ気の済むまで謝りたかっただけなのかもしれん・・・。
でも亜希さんはその日は休みだったようで、いなかった。
どうも気持ちの整理がつかず、わしは新宿中央公園をブラブラ歩いていた・・・」

 



――――


「・・・・・・はぁ」

 


・・・・・・ドンッ!

 

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「あっ、ごめんなさい」
「・・・・・・?」
「ごめんなさい・・・」
「ハハ、大丈夫じゃ・・・。
・・・・・・!

君は・・・・・・。

哲・・・司・・・?」
「・・・? わたしはゆうだよぉ。
みんな『ゆうちゃん』ってよんでくれるのぉ。
ふふふ・・・・・・」
「・・・おお、それはすまんかった。
ゆうちゃんじゃな?」
「うん、ふふふ・・・」
「・・・しかし、ゆうちゃん。
こんな夜に何をしているんじゃ?」
「ふふふ、おうちにかえるところじゃ!」
「ハハ、そうじゃったか・・・家は近いのかい?」
「うん、すぐそこ・・・」
「そうか、そうか。
危ないからすぐ帰るんじゃぞ」
「はーい」
「・・・一人で帰れるかい?」
「うん、いつもここをとおるのぉ。
だから、もうひとりでもだいじょうぶなのぉ」
「そうか・・・」
「じゃあね・・・バイバイじゃ・・・ふふふ・・・・・・」


・・・


――――



「その日からワシはあの子の事が忘れられなくなってしまった。
まるであの子が哲司のような気がしてきて・・・。
それであの子と出会ったこの新宿中央公園に何度も来てしまった訳だ」

「・・・そうですか」


哲三はゆうちゃんにすでに出会っていたとは・・・。


仕方ない・・・。


哲三には話しておくか・・・。



「黙っていたのは悪かったと思いますが・・・」
「・・・・・・?」
「哲三さん・・・その子は、ゆうちゃんは哲司と亜希の子供です」
「・・・・・・!!
そ、そんなバカな・・・・・・。
だって・・・」
「・・・事実です。
詳しい事情は後で話します。
今はその子を探しているんです」
「・・・それで、ゆうちゃんの手掛かりは何かあるのか?」
「ええ、安田徳子という女性が住んでいる家というか・・・。
廃墟にいると思います」
「そうか・・・。
それで神宮寺さん達は今から向かうところなんじゃな」
「ええ、そうなんですが・・・」
「・・・・・・?」
「さっきから探してはいますが、見つからなくて・・・」
「なんと・・・でも、さっきの話ではあのゆうちゃんを狙っている男がいるんじゃろ」
「狙っているかどうかはわかりませんが・・・」
「な、なんとか見つけられんのか・・・?」
「・・・・・・」


俺もすぐにゆうを探し出したいところだが、徳子の家がわからないのではな。


・・・待てよ。


それを知っていそうな人間がいたはずだが・・・。


「むぅ・・・」


哲三は必死に考えている。


・・・なんとかならないものなのか・・・。


徳子の家の場所を知る者はここにいるのだろうか・・・。


・・・!


そういえば・・・。

もしかしたらまだ近くにいるかもしれない。


俺は周囲を見回した・・・。


すると・・・公園の奥の方で、俺達の様子をさりげなくうかがっている中西の姿を容易に発見出来た。


「中西!!」


俺がそう叫ぶと、中西はゆっくりと歩み寄って来た。


「・・・ん? 何だよ?」
「中西、徳子の家の場所を知っているな?」
「し、し、知らねぇよ」
「昨夜、徳子が倒れて病院に運ばれた」
「え・・・とくちゃんが?
ど、ど、どうしたんだよ。
とくちゃんは無事か?」
「しばらくは入院が必要だ。
その事をゆうにも知らせなければならない。

中西、知っている事があったら教えてくれ」
「でもよ、確かにゆうちゃんが心配だが・・・。
オレ、マジで知らねぇんだ。
西新宿8丁目に住んでる事以外は」
「そうか・・・」


・・・中西は嘘をついているようには見えない。


「・・・やはり自分で探すしかないようだな」
「わしも手伝うぞ」
「いや、しかし・・・」
「このまま帰るなんてわしには出来ん!」
「・・・わかりました。
人数がいた方がいいでしょうから、一緒に探しましょう」
「俺達は徳子の家を探します。
哲三さんは、このままゆうちゃんを探して下さい」
「ああ、見つかっても、見つからなくても、一旦この場所に戻って来る・・・」
「わかりました」



「・・・あっ、オレ、今、思い出したけど・・・。
さっき、ゆうと貴之達に会ったわ・・・」


「な、何だって・・・」


「なんと!! ・・・で、どこにいるんじゃ」
「いや、あんたが怪しい男だと思ったからよぉ・・・。
貴之に、ゆうちゃんを連れてここを離れろって言ったんだ。
だから、どこへ行ったかはわからねぇ・・・」



「・・・ゆうは貴之達と一緒にいたのか!?」
「ああ、一緒に遊んでいたみたいだ」
「これは厄介な事になった」


「貴之とは・・・?」
「ええ、小学生の少年です」
「なぜ、厄介なんじゃ?」
「行動範囲は広がるし・・・。
俺の知らない場所に行っているかもしれない」
「なるほど・・・」
「街に行った可能性もある。
手分けして・・・」



「待ってくれ、確かもう街で遊んできたと言っていたぞ」
「何・・・!

それをもっと早く言ってくれ」
「すまん、すまん」


街で遊んで来たという事は、次はどこへ行ったのか・・・。


俺の知っている場所から、貴之達とゆうがいるであろう場所を考えてみるか・・・。


まず、この中央公園内。


そして西新宿8丁目に新宿西小学校・・・。


後は・・・さっきから探している場所の・・・徳子の家だ。


「哲三さんは、この公園内にまだいないか探して下さい」
「おう、わかった」
「では俺達は他のところを探して来ます」
「じゃあ、またここに集合でよかったかな?」
「・・・はい」



「オレも仲間に聞いてみるわ」
「ああ、頼む・・・・・・」
「じゃあ・・・・・・」



中西と哲三は、勢いよく新宿中央公園の中へと走って行った・・・。




あっという間に空は黒い闇へと姿を変えた・・・。



・・・