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探偵 神宮寺三郎 白い影の少女【14】(終)


・・・。


 


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「・・・さっきから、ちょこまか逃げやがって!
俺をナメるのもいい加減にしろよ!」



「も、もう、やばいって・・・。
逃げられないよ」
「う、うぅ・・・」
「・・・・・・」



「俺を怒らせた報いでも受けるんだな!」



「ひぃぃ・・・」



「・・・待て! そこまでだ・・・!」



「じ、神宮寺さん・・・」
「ふぅ・・・」
「・・・・・・?」



「お前達、大丈夫か!」


「・・・・・・」


「こら、貴之に、哲三さん・・・。
なぜ来ているんですか・・・」


「へん! うるさいやい!
こんな時に大人しくしてられっかよ!」


「申し訳ない・・・。
貴之君が言う事を聞かなくて・・・」


「・・・・・・やれやれ」


「ぐっ、くっそ・・・・・・!!」


「・・・・・・?」


「神宮寺さん、すみませんおそくなりました。
・・・・・・!!」


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「春菜・・・」
「な、なるほど。
こいつですね!」
「ああ・・・
しかし、なぜ礼子さんが?」


「・・・」


「礼子様に車で送ってもらったので・・・」
「そうか・・・・・・」
「さあ、神宮寺さん。
離れていて下さい!」
「ああ、お前がな・・・」
「・・・へい」


「向こうに避難していろ・・・。
洋子君、熊さんに電話しておいてくれ」
「・・・・・・はい」


「はははは、俺を甘く見るなよ・・・。
貴様等まとめて始末してくれるわ!」
「・・・!」
「くくくっ・・・。
貴様ごときに何が出来る!」

 

 

・・・っ!


・・・・・・!!


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「吠えているだけでは、俺は倒せんぞ」
「・・・ぐふ、くっそ・・・!

言わせておけば・・・!」



・・・っ!


・・・・・・!!


・・・・・・・・!?


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・・・!!


・・・・・・!!


俺は様子を見つつ、十分に間合いを取り、渾身の力を込めて男にパンチを繰り出した。


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「ぐっ、はっ!!
うぐっ・・・・・・! ぐはぁっ!!」

 


フン・・・まあ、こんなもんだろ・・・。


いい運動になったな。



さて・・・・・・。


そうだな・・・こいつの持ち物を調べてみるか。


一体、何者なのか・・・。


俺は倒れている男の服を探り、この男の所持品を探した。


・・・・・・?


・・・名刺だな。

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『北条隼人』と書かれている。


・・・!!


この名刺・・・以前、拾った事がある。


・・・となると、この名刺を落とした人物が・・・。


この男・・・いや、北条隼人を雇って悠を探していたという事になる。


いわゆる真犯人だな・・・。


・・・。


他には・・・。


・・・・・・?


携帯電話か。


一応、借りておくか・・・。


これから必要になるかもしれないしな。


・・・こんなもんか。


俺は倒れている男を見下ろしながら、これからの事について考えた。



「先生・・・」
「ああ、洋子君・・・」
「大丈夫ですか?」
「ああ、大丈夫だ」
「あっ、そうです・・・。
熊野さんがおみえになられましたよ」
「そうか・・・」



「よお、神宮寺君・・・」
「わざわざ、すまない。
熊さん・・・」
「いや、いいんだよ。
それよりもワシの方こそすまんかった。
ちと遅くなってしまって・・・。
・・・とは、言ってももう終わったようだな」
「ああ、なんとかな・・・」
「じゃあ、ワシはこの男を引き取るわい・・・」
「熊さん、ちょっと待ってくれ・・・」
「・・・何だ?」
「まだ終わった訳じゃないんだ」
「・・・なんだと!」
「向こうに真犯人がいる・・・。
この事件の首謀者が・・・」
「・・・うむ、しかしのう。
その真犯人を追い込むための証拠はあるのかい?」
「罪を認めさせるのが俺の目的だ。
警察が捕まえる事が出来るかどうかはわからないが・・・。
そうしなければ何も終わらないし・・・
何も始まらない・・・」
「・・・。
わかったわい・・・。
好きにしてくれ・・・」
「ああ、すまない・・・」
「ところで、真犯人とは誰なんだ?」
「熊さんがまた戻って来た時にはわかっているさ・・・」
「うむ・・・そうか。
まあ、いいわい。
じゃあ、ワシはとりあえずこの男を連れて行くわ・・・」
「・・・ああ」
「じゃあ、また後でな・・・」
「すまない」
「まあ、ワシがまたここに戻ってくる時にはすべて解決しておる事を祈っておるよ・・・」
「ああ・・・」




「先生・・・? 真犯人とは?」
「ああ、洋子君、これを見てくれ・・・。
これはあの男が持っていた物だ」
「先生、これは・・・。
確か同じ物を先生も持っていましたね・・・」
「ああ」
「・・・・・・という事は」


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「神宮寺・・・さん。

あの男はどうなったんだ?」
「ああ、片付けた・・・。
あの男は熊さんに頼んで連れて行ってもらった」


「さすがだなぁー」


「ああ、マジですげー」


「フン、見直したわ・・・」


「さっすが神宮寺さんですね!」

「春菜か・・・」
「神宮寺さん、あの子・・・」
「ん・・・? ・・・!

・・・・・・。
・・・君が悠だな?」


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「だれなのぉ・・・」
「大丈夫だ・・・助けに来ただけだ」
「そうなのぉ・・・」


・・・俺でさえ一目見ただけで、哲司の面影を感じてしまった。


そのせいか、随分懐かしい気がしてしまう。


「どうしたのぉ?」
「い、いや、何でもない」


しかし・・・。


いきなりの事で随分怯えているな・・・。


とりあえず、心配しているだろうから
悠を安心させてやるか。


「亜希の話をしても効果がないと思う・・・。
悠は亜希の事は知らないからな・・・」
「そうですね・・・」
「昨日から徳子がいなくて心配に思っているはずだ。
今は徳子の話をしてやろう」
「フフフ、優しいんですね、先生」



・・・
「後から、とくちゃんのところに一緒に行こう」
「えっ・・・とくちゃん見つかったの?」
「ああ」
「ふふふ・・・とくちゃん」
「もう少し待っていろよ」
「うん!」



「・・・・・・」
「先生、やっと会えましたね。
ゆうちゃんに・・・。
でも、無事で本当によかったです」
「ああ・・・そうだな」


「フン、フン・・・なるほど。
この子がゆうちゃんですか」


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「おお、さすが神宮寺さんじゃ・・・!」

「・・・」
「わしはあんたを信じておったよ!
わはははは・・・」



・・・
「あら、随分、楽しそうね・・・」


「お義母様・・・!」


「し、静江!
なぜ、お前がここに?」
「春菜と礼子さんが慌てて出て行くものだから・・・。
後をつけさせてもらいました。
神宮寺さんの報告が急になくなったのも気になっていましたし・・・。
そしたら、こんな大事になっているとは・・・」
「うむ・・・そうだったのか」


「・・・・・・」



「それで神宮寺さん、これでもう終わったのですね。
これまでの事を詳しく説明してもらえないかしら」
「・・・すみません。
まだ終わった訳ではないのです」


「何ですと!
終わっとらんってどういう事じゃ?」


「・・・・・・」


「ええ・・・。
じゃあ、礼子さん・・・。
話を聞かせてもらおうか」
「フン・・・。
な、何よいきなり・・・。
私は関係ないわよ!」
「・・・・・・・・・」



ここは下手な詮索で時間を掛けては失敗に終わってしまう。


礼子が混乱しているうちに、一気にいくぞ・・・。



「コレをみていただきたい・・・」
「何よ・・・名刺じゃない・・・それがどうしたの?」
「これはさっきの男の名刺だ」
「フン、それが?」
「実はこれは以前、あなたが大河原家で落した名刺と同じものだ・・・」
「・・・!」
「つまり、あなたとさっきの男はつながりがあったという事になるが・・・」
「そ、そんなの知らないわ!」
「ではなぜあなたがこの名刺を持っていたのか・・・?」
「そ、そんな名刺持っていたなんて、
ただのでっち上げに過ぎないわ・・・」
「・・・ではコレを見てほしい」
「・・・・・・携帯電話がどうしたのよ?」
「これは正確にいえば、あの男の携帯電話だ・・・」
「・・・・・・!」


俺は男の携帯電話を使い、最近の発信、着信記録を見て、特に多い電話番号に電話を掛けた。



・・・。


・・・・・・。


・・・ピリリリリリリ


ピリリリリリリ・・・・・・。




・・・

「礼子さん、電話ですよ」
「くっ・・・」
「・・・これであなたとあの男がつながった訳だ」
「し、知らないわ・・・私は・・・」
「あの男とは少なからず、面識があったようだな・・・」
「そ、それは違うわ・・・。
さっきの名刺も携帯電話も、すべてあなたがあの男の物と言って使ったものよ・・・。
本物かどうかはわからないわ・・・」
「俺が偽物の証拠品を使ったと?」
「ええ、その可能性もあるわ」
「・・・・・・往生際が悪いぞ・・・。
もう認めたらどうだ?」
「フン・・・だったら、もっと確実な事で証明して御覧なさいよ」
「・・・礼子さん、あなたは・・・」
「あら、今、私の何を聞きたい訳?
それはとても重要な事なのでしょうね?」
「それはどうかわからないが・・・」
「じゃあ、答えたくないわ」
「・・・もう、いいだろ?
いい加減、話してくれないか?」
「・・・・・・むっ」
「北条隼人について聞きたい」
「・・・あんな男、知らないわ・・・。
おそらく、その男が理由もなく子供を襲っていただけよ」



「では、なぜ、あの男が北条隼人だと知っているんだ?」
「うっ・・・そ、それは・・・。
そ、そうよ、さっきあなたが見せてくれた名刺を見たのよ。
その名刺に『北条隼人』と書いてあったのよ・・・」
「随分、目がいいんだな・・・」
「ま、まあ・・・そうね」
「では俺がさっき見せた名刺を見てわかった・・・・・・それでいいんだな?」
「もちろんよ」
「それはおかしいな・・・」
「・・・・・・?
な、何がおかしいのよ・・・」
「俺がさっき見せた名刺は・・・。
これだが・・・」
「・・・・・・っ!!」
「そう・・・俺の名刺だ。
名刺には『北条隼人』という名前は書いてあるはずがない。
つまり、男の名前を知る機会はなかった・・・」
「くっ・・・・・・!」
「もう、あなたは北条とのつながりを認めるしかない状況になった訳だ。
・・・・・・哲司はそんな君を見て、悲しんでいるぞ」
「それは・・・・・・ないわ・・・」
「・・・・・・?」
「一体、何があったんだ・・・?」
「・・・・・・」
「なぜこんな事を考えたのか、理由を聞きたい」
「私は何もしてないわ・・・」
「あの男は何なんだ・・・?
一体、あの男を使って子供を奪い・・・。
どうするつもりだったんだ?」
「知らないわ・・・。
私は知らない・・・・・・。
もう、やめて・・・。
いい加減にしてちょうだい」
「まだ話は終ってないぞ・・・」
「私は終わったのよ!」

「待つんだ・・・」
「一体、何の権限があって引き止めるのよ!」
「・・・・・・」



やれやれ・・・。


ここまでか・・・。


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・・・

「フン、何も言葉は出ないようね・・・
じゃあ、私はこれで・・・」


・・・。


・・・・・・!



「待つんじゃな・・・」
「あなた誰よ!」
「新宿淀橋署の熊野警部だ」


「熊さん・・・」


「お時間を取らせませんので、もう少しお話をよろしいかな?」
「・・・・・・むっ、わかったわ」



「熊さん、すまない・・・」
「ああ、いいんだよ・・・
神宮寺君、早速・・・」
「ああ・・・」



「もう、早く終わらせてちょうだい」
「ああ・・・」


しかし・・・。


ここまで来ても認めようとしないとは・・・。


もはや俺だけではどうする事も出来ないのか・・・。



「北条についてだが・・・」
「あら、その話は終ったはずでしょ?」
「いや、そんなはずはない・・・」
「終ったのよ・・・。
その話はやめてちょうだい」


まずいな・・・。



「礼子さんは・・・」
「私の事なんて何も関係ないわ・・・」
「いや、関係ある・・・」
「じゃあ、納得のいく説明をしてよ」
「・・・・・・」


このままではらちが明かない・・・。


ここはもはや俺の力だけでは、どうする事も出来ないようだ。


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・・・
「なんなのぉ・・・・・・」
「ああ・・・ちょっと協力してくれないか?」
「なにするのぉ・・・?」
「ここにいるだけでいいんだ」
「うん、それならいいかも・・・」


「そうか・・・ありがとう。
礼子さん・・・あなたが探していた子だ」
「・・・・・・」
「そう、この子が亜希と哲司の子供だ・・・」
「・・・・・・」
「この子を捕まえてどうするつもりだったのか、教えてあげてくれないか?
礼子さん・・・」
「・・・やめて・・・!」
「・・・」




「・・・・・・はっ!」


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「哲司・・・・・・さん・・・。

うぅ・・・・・・ごめんなさい・・・。

 ・・・・・・ごめんなさい。 

・・・・・・。
そうよ・・・。
私が・・・。 

私がすべて仕組んだ事よ・・・」


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「・・・・・・」

 


「フッ、何も聞かないのね・・・・・・
神宮寺さん」
「あなたの悲しい目を見れば、分かるような気がする」
「・・・・・・結婚した当初は、哲司さんの愛は私に向けられているのだと思っていました。
だから・・・哲司さんが病に倒れた時も、哲司さんが一刻も早く病から良くなるように祈りながら・・・。
私も哲司さんを精一杯、愛しました。
でも、時折見せる哲司さんの顔はどこか寂しそうでした・・・・・・。
そして最後に『亜希・・・』と、つぶやくように哲司さんが息を引き取った時に、私は痛感しました。
哲司さんの本当の気持ちを・・・。
その時、私は悲しみとあの女に対する嫉妬でボロボロになってしまいました。
そんな最中、お義母様が神宮寺さんに依頼しているのを聞いてしまった・・・。
そして時が進むに連れて、私の悲しみはゆっくりと姿を消していき・・・。
あの女に対する憎しみだけが私を支配していました・・・」


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「礼子さん・・・」
「・・・・・・」



「すみません、私は大河原家に来るべき人間ではなかった」




・・・
「・・・そんな、あんたの勝手な都合で巻き込まれたゆうは可哀想じゃないか!
俺はあんたみたいに、言い訳ばかりする大人が大嫌いだ!」
「・・・・・」



「すまない、熊さん・・・・・・」
「・・・・・・あ、おう。
神宮寺君・・・。
これでいいんじゃな・・・」
「ああ・・・・・・・」



「じゃあ、署で話を聞こうかのう・・・」
「はい・・・」


「・・・・・・」


「ごめんなさい、礼子さん・・・。
すべては私が余計な事をしたばっかりに・・・・・・すべて私が・・・・・」
「やめて下さい・・・お義母様・・・」


「・・・・・・・・・」


「・・・さようなら」


「・・・・・・・・・」


「礼子さん・・・・・・」





「・・・・・・?」
「・・・悠を捕まえて、どうするつもりだったんだ?
俺はあなたが、悠に危害を加えようとしたとは思えない・・・」
「・・・・・・フッ、私もわからないわ。
どうするつもりだったのかしら・・・」
「・・・・・・」
「・・・ただ哲司さんの子供の顔を見たかっただけかもしれない」



「けっ・・・くだらねーなっ!
大人だって、俺たち子供と何も変わんねぇじゃねーか!」
「ああ、そうだな・・・」
「へっ・・・」

 

 



・・・


・・・・・・


俺は悠を連れて西新宿総合病院へと急いでやって来た。


病院に着いた俺達を真っ先に出迎えたのは亜希だった。


洋子君からの連絡を受け、亜希は病院に駆けつけていたようだ。


「亜希・・・?」
「あっ、神宮寺さ・・・ん。
・・・この子は・・・。
・・・うぅ・・・哲司さん・・・・・、
間違いないわ・・・・・・・」


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「・・・・・・?
誰なのぉ・・・?」
「ごめんね、ごめんね・・・」
「・・・・・・?」



・・・

「アンタが亜希さんかい!」
「は、はい。
・・・あなたが徳子さん?」
「ああ、仲間にはとくちゃんって呼ばれてるよ」
「あ、あの・・・私は何て言ったらいいか・・・・・・」

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「・・・・・・アンタも苦労してるようだねぇ・・・。
・・・本当はさ、アンタに会ったら、一言二言ぐらいは言ってやろうと思ってたのさ。
・・・でもアンタの顔を見たらその気はなくなっちまったよ・・・」
「本当にすみませんでした。
私、あの時はどうかしてたんです・・・。
赤ん坊がいなくなったのは愚かな私への天罰だと、ずっと思ってました・・・・・・。
でも、もう一度
こうして会えるなんて・・・」
「謝るのはアタシの方だよ。
本当ならこの子を見つけた時にすぐ警察に届けるべきだったんだ。
そうすればこの子は本当のお母さんと一緒に暮らす事ができたんだからね・・・」


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「・・・おかあさん?」
「そうだよ、ゆう。
この人がゆうの本当のお母さんなんだよ」
「おかあ・・・・・・さん?」
「何をしてるんだい。
ほら・・・お行き」
「どうしてなのぉ?」
「この人があなたの、本当の母親だからだよ」
「ゆう、とくちゃんと離れたくないのぉ・・・」
「この人はゆうを一番愛してくれている人なんだよ。
そして、ゆうのためにどんな苦しい思いをもしてくれる人・・・」
「・・・でもぉ」
「行きなさい・・・」
「・・・・・・」
「今はまだわからないかもしれないけど・・・。
そのうちわかるはず・・・。
今はこのとくちゃんの言う事を聞きなさい、ほら!」
「うぅ・・・」
「やれやれ・・・困った子だねぇ・・・。

ホントに・・・・・・う、うぅ・・・。
ごほっ、ごほごほっ」
「とくちゃん?
ねぇ、だいじょうぶ?」



「・・・っ! ・・・医者を呼べ!」



「うわぁぁん、とくちゃーん」
「うぅ・・・」

 



・・・
一度、俺達全員が廊下へと追い出された。


短くも長い沈黙が廊下を支配した


病室へ入る事が許され、俺達が再び病室へ足を踏み入れると・・・。


さっきとは全く違った空間へと姿を変えていた。


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「とくちゃん、苦しい?」
「なぁに、大丈夫だよ。
ごほっ、ごほっ」


「とくちゃん、大丈夫か?」
「ふふ、心配してくれるのかい?」
「当たり前だろ?」


「こんなアタシでも心配してくれる人がいるんだねぇ・・・。
ごほっ、ごほっ・・・・・・。
・・・ゆう、これから言う事をよく聞いておくれよ。
ゆうはね、その人と一緒にいるのが一番幸せなんだよ」
「・・・・・・」
「このとくちゃんが言うんだから、間違いはないよ」
「とくちゃん・・・。
でもぉ、とくちゃんだってゆうのおかあさんでしょ?」
「違うよ・・・アタシは・・・ゆうをだましていた悪い奴さ」
「うぅ・・・違う。
違うのぉ・・・」


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「今までありがとう。
アタシは幸せだったよ」
「とくちゃん・・・?」


徳子はゆうの手を強く握り締め
軽く微笑んだ・・・。


悠の泣き叫ぶ声だけが
この病院内に響き渡った・・・。

 



・・・


・・・・・・



時の流れの中で


様々な想いが残り・・・


様々な想いが消えた・・・


感傷に浸る暇もなく、

雑然とした時間が流れていった・・・

 

 

 

 





4月7日 新宿西小学校 入学式

 

気が付けばこの新宿にも早い春が訪れていた。

 

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悠は新一年生として、新宿西小学校に通う事になった。


新六年生になった貴之は、悠に対して早くも先輩風を吹かしているそうだ。


この日、小学校では入学式が執り行われていて、その中に悠の姿もあった。


・・・入学式を終えた悠と亜希。


微笑む二人を桜が祝福するように
花びらを散らしている。


こうして見ていると、つい最近まで離れ離れになっていた親子とは思えないくらいだ。


もう彼女は同じ過ちをおかさないだろう・・・。


幸せそうに微笑む亜希を見ているとそう思えてならない。



「おかあさん・・・」
「何、どうしたの・・・?」
「ふふふふ・・・なんでもない」
「フフフ・・・何よ」

 

 

・・・。



 

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「・・・父兄席の方がよく見えたんじゃないか?」
「アタシはあの子の母親でもなんでもないからね・・・」
「・・・フ、そうか」
「・・・アタシはこんな生活を始めてから、いつも思っていたよ。
いつも、いつも失ってばかりだってね・・・。
でも今回は、大切な物を手に入れる事が出来たと思うよ」
「・・・・・・」
「アンタには世話になったねぇ。
お礼の一つでもしたいところだけど、アタシはこの通りの人間だからね・・・」
「・・・礼などいい」
「じゃあ・・・アンタは何のためにアタシ達を助けてくれたんだい?」
「・・・ただお節介なだけだ」
「・・・フン。
おや、いい時計だね・・・。
・・・って、それはゆうが持っていた時計と似てるじゃないか・・・」
「ああ、厳密に言えばそのお揃いの時計さ・・・」
「・・・・・・?」
「亜希から譲り受けたものだ」
「そりゃよかったね・・・。
ちゃんと動いているようだし」
「ああ・・・。
じゃあ・・・俺はこの辺で」
「・・・?
もう行っちゃうのかい?」
「ああ・・・。
これからうるさくなりそうだからな」
「・・・?」




・・・

「とくちゃんだ!」
「おや、貴之に知也・・・」
「とくちゃん、来てたのか。
中に入れば良かったのに」


「そうだよ。
遠慮する事ないのに」


「いやいや、そんな・・・」


「・・・私もいるんだけど」
「ハハハ、すまないね。
美鈴・・・」


「なんだ、いたのかよ」
「うるさいわね!」


「ふ、二人共・・・こんな時にやめなよ」



「・・・でもよ、とくちゃん。
心配しなくても、ゆうの事は俺達に任せな!」
「そうかい、そうかい・・・。
よろしく頼んだよ・・・」
「うん、うん!」


「まあ、貴之は口だけだからアテにはならないけど・・・あたしに任せてよ!」
「おや、そうかい・・・」


「そんな事ねぇよ!
お前の方こそアテにならねーぞ!」
「何よ!」



「・・・もう、やめなよ」


「ハハハ・・・・・・」

 

・・・・・・。


 

「あー、とくちゃんだーっ!」


「あっ・・・」


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「とくちゃん、きてくれたのぉ」
「ああ、ゆうの立派な姿をちゃんと見てたよ」
「ふふふふ・・・見てくれたって・・・」


「フフフ、よかったわね」


「とくちゃーん!」
「相変わらず、甘えん坊だねぇ・・・ゆうは・・・。
ゆう、学校は楽しそうかい?」
「うん、みんなたのしいよ」


「大丈夫。
アタシ達も一緒だから」
「そうかい、そらなら安心だね」


「そうだよ、俺達に任せておけってんだ!」
「ハハハ、頼もしいねぇ」


「フフフ・・・」


桜が散り、またそれぞれの新しい時が動き始める。


俺は微笑ましい情景を背中で感じながら帰路についた。



・・・。



END