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車輪の国、向日葵の少女【10】

 

・・・。



さちは、七時まで眠る。


洞窟探検に行ったその帰りなんだから、よほど疲れていたに違いない。


それにしても・・・けっこう体力を使うんだな。


・・・。


若さって素晴らしい。



かくいうおれも、火照った身体を鎮めるために外に出ていた。


パイプをくわえて火をつける。


・・・。



「ふぅーーーーーっ・・・」



甘い香りが鼻腔を満たす。


「久しぶりのケムリは格別ですねー。
ええ、私なんかこれがなきゃ生きていけませんからねー。
あーあー、ずっと世界が平和だといいなぁ」


パイプをくわえながら、軽くうとうとし始めたときだった。



「賢一ーっ!」



まなが、いまにも転びそうなほど急ぎ足でこっちに向かってきていた。

 


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「帰ってきたんだねっ」
「さちも無事だぞ。ぐーぐー寝てる」
「まな、心配したんだよー」
「悪かったなぁ」
「おみやげは?」

 

あ、まずいな・・・。


そういえば、買ってくるようなことを口走った覚えもある。


「おっほん。そんなことより、まなはどこに行ってたんだ?

なるべく家にいるようにと、きつく言っておいたはずだがね」
「お買い物行ってたの。

お姉ちゃんたちが帰ってきたら美味しいもの食べようと思って」
「うん。気が利いててよろしい。
でも、なにか変わったことなかったか?」
「なんにもないよーっ。ちゃんとお留守番してたからね。
だからおみやげちょーだいっ!」
「わかったよ・・・」


ジュラルミンケースの中を探り、おみやげっぽいものをつかむ。


「ほら、たこ焼き」
「わーい!」


・・・つーか、なんでたこ焼きなんて入ってるんだ?


「洞窟産のたこ焼きなんて、まな初めてだよぉ!
なーんちゃって、ばーかっ!」
「うわっ!? ノリツッコミ!?
どこで覚えたんだ!?」
「んとね、前髪が長いお兄ちゃんが、教えてくれたんだよ」


前髪が長い・・・。


「ひょっとして磯野か?」
「んー、セピアって言ってたよ。さみしそうだった。
でね、なんでも、ばーかって言えばたいていオチるんだって」
「ばーか、なんて言葉を使っちゃダメだぞ」
「でも、その人、毎日お部屋に遊びに来てくれてたよー」
「迷惑な野郎だな・・・。
とにかく、まなは二度とそいつと会話しちゃいけません!」
「えぇ・・・」
「ダメなものはダメだ。

ほら、帰るぞ・・・」
「あ、本当のおみやげは・・・?」
「・・・・・・」


ごまかしきれなかった。


「ごめん・・・」
「わーん!」

 

 

 ・・・


・・・・・・


 

・・・その夜。


まなをスーパーまで送ると、おれは洞窟探検で疲労した体に鞭を打っていた。


さちが止まっているのをいいことに、勝手にパソコンを使用している。



カタカタカタカタ・・・。



親父が残したメモリスティック。


その中身を分析するために、コンピューター技能の全てを費やす。


けれど、パスワードがわからないため、データを見ることができない。


自作のワームによるパスワードの改ざんを試みても、親父の作った防壁を突破できなかった。



 

――パスワードは璃々子に預けた。

 



くそっ・・・!


待ちきれないぜ。

 


――だが、万が一、この社会に違和感を覚えるときが来たのならば、このメモリの中身を閲覧しなさい。

 

「あんたも薄々察してる通り、おれはもうとっくに、こんな世の中、好きじゃねえんだよ。
お姉ちゃん・・・!」


キーボードに突っ伏す。


「はあっ・・・はあっ・・・はあっ・・・」

 

特別高等人。


とっとと試験に合格するしかねえ。


そうして、姉貴を助けるんだ。

 

・・・。




・・・


・・・・・・


いつものようにまなを迎えにやってきた。

 

「賢一っ!」

 

ぱたぱたと足を動かして駆け寄ってくる様は、まるでひよこのようだ。

 

「お疲れ。今日もがんばってたか?」
「いつも通りだよーっ」

 

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「そうかそうか、それはがんばったな」


「うわっ!?」
「なにか?」



「あ、セピアのお兄ちゃん!」
「おはよう。まなさん。

今日も太陽は東から昇ってますか?」
「昇ってるよーっ!」
「それじゃあ、今日もツッコミの練習をしようね」
「はーい!」
「いやあ、どうもどうもどうも、最近暑くなってきましたねー」
「ですねー」
「ぼくなんか、暑すぎて暑すぎて毎日冷蔵庫の中で生活してますよ」
「オイ、どんだけ広い冷蔵庫なんだよ!」


・・・。


「ああ、うん。まあまあだね。
でも、できれば、そのタイミングでぼくを思いっきりぶったたいてくれるとよりベターかな」

 

「おい!!!」

 

「なんだね?」
「なんだいまの茶番は!?」
「なにって、まなさんが勉強をしたいと言っていたので、ぼくがコーチしてるんだ」



「うんうん。ためになるよーっ」



「てめえ、磯野。

まなに変なこと吹き込むなよ」


「そんなことより、おかえりっ!」


いきなりかわいい声を出す。


「た、ただいまっ・・・」



「まなさんは、本日を持って卒業とします」
「え? もう卒業?」
「うん。

引き継ぎは森田くんにお任せします」


・・・おれかよ。


「それじゃあ」


歯を輝かせて去っていった。


まさかとは思うが、おれが洞窟に行っていた二日間、まなを見守ってくれていたとか・・・?


「賢一、帰ろっ! お姉ちゃんに会いたいよっ!」





・・・・・・


・・・



「あ、まなお帰りー」


すでに七時をすぎていたので、さちも起きていた。


「お姉ちゃんもお帰りーっ」
「へ? ああ、洞窟からってことね」
「どうだったのぉ?」
「超余裕だった」


・・・ウソをつけ。


「そうだ、おみやげあげるよ」
「え?」


机の下でごそごそしてる。


「洞窟の石だよーっ!」


鍾乳石の欠片だ。


それをつかんで掲げて見せた。


鍾乳石の岩石は、窓から差し込む朝日に輝いていた。



「ほっほーっ!」



「そんなもんいつの間に?」
「これね、あたしを挟んでたヤツ。賢一が叩き割った岩の一部だよ」



「これを、まなにくれるの?」
「うれしい?」
「うれしいよぉっ!」
「ふふふっ・・・」


まなの反応を見て満足したように笑う。


「ふ、フンっ! まなのご機嫌を取ろうとしやがって」
「自分がおみやげ忘れたからって、すねないの」
「けっ、おれにはわかる。お前のその目は、ペットに餌を与えて満足してる飼い主の目だ」

 


「ペットぉ?」


「ちょっと、賢一・・・」

 

普通に、悲しそうな顔になった。

 

「冗談でもやめてよ・・・」

「お・・・」

「この石は、純粋に、持って帰ったらまなが喜ぶかなって思ったんだから」

「おお・・・」



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「まな、お姉ちゃんのペットでもいいよーっ」
「あんたはあたしの妹だってば」


げぇっ、まぶしいっ!


「おまえらっ! おまえらっ!」


顔を五指で抑え、汗だくになってうつむいた。


「おまえらっ! おまえらっ! おまえらっ!」


ざわざわ・・・。


「このおれに、朝っぱらから姉妹愛を見せつけようというのか!?」


「ちょ、ちょっと落ち着きなよ。また一人でから回ってるよぉっ」
「賢一、変だよー」


「くそぉ、三ツ廣ぉっ! おれの心理分析では、お前は自己中心的で自堕落で金で家族を売るようなヤツのはずなんだ!」


「うがりすぎ・・・」



「賢一、それ以上は、まな、怒るよー」



「ぐっ・・・!
す、すみません・・・!」


しかし、ヒールを演じてよかったぜ。


まさか、さちがおれの知らぬ間にまなへのおみやげを用意しているなんてな。


まあ、ずっと一緒に暮らしてるんだから、基本的に仲が悪いわけがないよな。

 

 ・・・・・・。


・・・。



「じゃあ、まな寝るーっ!」


クローゼットにもぐりこんだ。


「あ、まな、もう寝るの?」
「んんっ・・・なあに?」
「いや、お金入ったからさ、ちょっと遊びに行こうよ」
「え?
うれしいけど・・・でも・・・」


とたんに気まずそうになるさちだった。


「い、いや・・・今日は、洞窟に行った疲れを癒そうと思って」


まなが寝ている間にさちは絵を描く。


・・・いままでは、それがこの二人のルールになっていたようだ。


「たまにはいいじゃん? せっかくの夏休みだし」
「うん・・・」


おれも、絵を描けと言いたいところだが・・・。



――『もう、絵は嫌い・・・誰も喜んでくれなかったから・・・・・・』



・・・難しそうだな。


「さちって実はすごい寂しがり屋だよな?」
「はぁっ!? いきなり何言ってんの!? あたしは超絶唯我独尊系だよ!」
「だって、おれを部屋に誘ったり、まなを拾ったりと・・・。
一人じゃ眠れないタイプだろ?」



「ほほーっ・・・」



まながおれにむかって同意のため息をついた。


「いや、あんたらは、あたしの子分みたいなもんじゃん!」

 

昔はおれと磯野を子分扱いしていたしな。


ガキ大将は決まって寂しがり屋。

 


「ちょっと、賢一、ニタニタしてんじゃないよ」



人にかまってもらえないと不安なんだろうな。



――『なんか知らないけど、みんな喜んでくれるんじゃないかなと思って描いた絵がさ、みんなを不快にさせたんだよ』



自分の絵を褒めてもらえなかったときのショックは大きかっただろうな。


「賢一、いい加減人の顔見てなんかたくらむのやめなよ」
「お、すまん。癖で」



「けっきょく、おでかけするのぉ?」
「もちろん行くよ。パチンコ行こうよ、パチンコっ」



呆れてしまう。


「金ないくせに・・・」


まだ、ダイヤを換金してないだろうが。


「いやまあ、あるも同然じゃん」


こいつ、固定資産をそのまんま現金だと勘違いするタイプだな。


「しかし、パチンコなんてギャンブル、特別高等人として認めんぞ」
「へ? ま、まさか『特別指導』とかいうヤツ?」
「うむ。お前は今日から、一歩も外に出ずに内職をしろ。
そうだな・・・バラの造花なんかがいいだろう。
破ったら強制収容所だ」
「えぇっ! あんた、法典に書かれている内容以外は押し付ける気ないんじゃなかったの?」
「うるさい黙れ。それから、おれのことは今後『ケン様』と呼べ」
「やりたい放題なんだけど・・・?」
「怖いだろ、特別高等人は。

『特別指導』の名の下に、お前らをいいように扱うことができるんだ」
「だったら、賢一みたいに変なヤツが担当だったらやばいじゃん!」


・・・心外な。


「おれよりヒューマニティな高等人候補はいないと思うぞ」


・・・いや、自分でもよく最終試験まで残ったと思う。


「ああ、だから、あたしの前の担当だった人は、あんな機械みたいなヤツだったんだね」
「なかなかに察しがいいな。

機械みたいに能率だけを重視する高等人は多いらしいね」
「あの、法月って人もそうじゃん?」
「あの人は機械じゃない。そんな単純な分析ができるほどわかりやすい人じゃない」
「賢一、いきなり真剣だよ・・・?」
「え? マジで?」
「うん。ちょっと顔が強張ってるよー」


くそっ、意識するだけで緊張するのか。


「まあ、つまんない話はともかく、パチンコに行くよー」
「だからダメだと言っている!」
「それは命令じゃないでしょ?」
「子分として、居候としてのお願いだ」
「だったら聞いてあげないっ。だって、ギャンブル禁止されてたもん。
為替はセーフだったけどね」


担当がおれに代わって、ギャンブル解禁か。


そりゃ、行きたくもなるわ。


「まな、行こう!」
「ああっ・・・!」


手を引いて、部屋の外へ向かって駆け出した。


「こぉらぁっ!」

 

 

 

 

・・・


・・・・・・


さちがたどり着いた先は商店街の古臭いパチンコ屋だった。


店内にはぜんぜん客が入ってないし、パチンコの台も傷が入っていたり、床もろくに掃除されていなかったりと、とにかくしけたパチ屋だった。


「さあ、まな、コレを握ってぇ!」
「こ、こうかな?」


グリップを握らせていた。


「まなは強運だからねー。

細かいところはあたしに任せて、じゃんじゃんやっちゃって!」
「おいさち!」


タバコ臭いパチンコ店特有の匂いと、ジャラジャラうるさい音がする。


店員がマイクで喋ってるのも結構クリアに聞こえる。


「えー、本日は数あるパチンコ店から当店をご指名ご来店いただきまして、まことにまことにまことにありがとうございます」


マイクパフォーマンスだけは、しっかりしてんな。

 

・・・数あるのか?

 

「当店は甘釘ばかりでございます!」


客がおれたちしかいないのに、やたら張り切っていた。


「うひゃーっ! もう出てるよーっ!」


ジャラジャラジャラ!


「ほっほーっ!」
「まなすごいすごーい!」



「まことにまことにありがとうございます」



「さち、帰るぞっ」


腕を引く。


「あはははははっ!」


聞く耳持たない。



「まことに、本当にありがとうございます」

 


「・・・お礼言い過ぎだろ」



「お姉ちゃん、また出てきたよーっ!」



ジャラジャラジャラ・・・!



「そのままそのままぁっ!」
「うおおおおおおっ!」



「うわっ、止まらねえ・・・」

 

 

 


・・・・・・。


・・・。

 

その後、延々と台に座り続けるさちとまなだった。

 

 ・・・。



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「うーんっ! まなのおかげで今日も稼いだよーっ」
「まな、お姉ちゃんの役に立ったの?」



「なあ、もういい加減に遊びつくしただろ?」
「まだまだ足りないよー」
「・・・ったく、次はどこに行こうってんだ?」



「寿司食って帰ろうっ!」

「お寿司、お寿司っ!」



「お前らぁ・・・」



頭を抱えたくなった。

 

 


・・・


・・・・・・

 

「ふーい、食った食ったぁ」
「お姉ちゃん、ごっつさんでしたぁ!」



「ったく、海が遠いくせにうまい寿司だったな」
「賢一、お姉ちゃんにおごってもらったんだから、お礼言わなきゃダメなんだよぉ」
「うむ。ゴチ」



「なんか、誠意を感じないよぉ。せっかくまなが稼いだ金なのにさあ」
「ギャンブルで得た金に価値などない」
「じゃあ、さっき食べたものいますぐ吐き出しなよ」



「賢一、ウニばっかり食べてたよー」
「うるせえな。おれは寿司はウニしか食わねえんだよ」



「なんて、贅沢な・・・」
「お金かかるよぉ」
「まな、こんな大人になっちゃダメだよ」
「はーいっ!」



さちがまなの頭に手を置くと、まなは元気よく返事をする。



「なんか買って欲しいもんない?」
「あ、服買ってくれよ。そろそろ同じ服も飽きた」
「あんたは自分で買いなよ」



「まなは、いいよーっ」
「そろそろマジで暑くなってきたからさ、夏服とかいらない?」
「んーんっ。お姉ちゃんのお下がりでいいよぉっ!」
「遠慮するなっての」
「いいのっ!」
「ガンコだなあ・・・」
「お姉ちゃんの匂いがいいんだよぉっ!」
「はは・・・変態さん?」
「んーんっ。たまーに絵の具の匂いがするのっ」
「あ・・・・・・」

 

・・・。


とたんに顔が曇る。

 


「さっ、帰ろ、帰ろっ」

 


流そうとする。

 


「今日は楽しかったねー」

 

 

 

 


・・・


・・・・・・


「それじゃ、おやすみーっ」


ひょいっとクスリを口の中に放り込む。

 

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「しょーにゅー石、ありがとうねっ!」
「大事にするんだぞぉ」


ベッドにもぐりこむ。


「えへへへ、お姉ちゃんに遊んでもらったの久しぶりだよぉ」
「そうか・・・」


絵の話題さえ出なければ、仲の良い姉妹なんだろうな。


「さて、おれも少し寝るぞ」


どうにも洞窟探検で開いた傷がうずく。


「スーパーに行く時間になったら起こせ。送ってやる」
「うん。おやすみぃ」


ごろりと床に寝転がる。


「お姉ちゃんお姉ちゃんっ」
「なになに、もう止まるよー」


きゃっきゃと笑いながらくすぐりあっていた。


「いたずらっ子めー」
「くふふふふっ」

 

・・・・・・。


・・・。

 

そんなやりとりを横目で見ながら、いつの間にか眠りに落ちていた。

 


・・・。



・・・・・・。



「ん・・・」


目が覚めて、時計を確認する。


どうやら二時間ほど寝ていたらしい。


「ふう・・・あれ?」


まながいない。


まだスーパーに行く時間じゃないはずだが・・・?


買い物にでも出かけたのかな。


おれも一服してくるとしよう。

 

 

 

・・・。


 

ケムリをふかしていると、まながとぼとぼと歩いてきた。

 

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「おかえり。買い物か?」


けれど、まなは首を振った。


「どした? お友達と遊んでたのか?」
「まな、お友達いないよ」
「そうか。おれもいないから仲間だな」
「うん・・・」


どうにも様子がおかしい。


「まな、学園にお呼ばれしてたの」
「へ? 学園? 誰が? なんの目的で?」
「うん。賢一の、じょーしな人」


じょーし・・・上司・・・。


「とっつぁんが、まなになんの用だ?」


嫌な予感が、ただの予感でとどまるわけがない。


「・・・んとね、もうスーパーで働いちゃダメだって」
「他には?」
「んと・・・まなが・・・」
「どうした?」
「まな・・・」


笑顔のまま、固まった。


「なにか、怖い目にあったのか?」
「違う、怖いんじゃなくて・・・えっと・・・。
どうしたらいいのか、まな、わかんなくて・・・。
えっと・・・んとね・・・んとね・・・まなね・・・えっと」
「わかった。 もういい」


ただ事じゃない気配を察し、少女を問い詰めるのをやめた。


「部屋に戻ろうな」
「う、うん・・・ごめんね。

よくわかんなくて・・・」


寮の部屋まで、まなの手を引いてやった。

 

 ・・・・・・。


・・・。



よほど憔悴していたのか、まなはあっさりと眠りに落ちた。


おれはとっつぁんに問いただすべく、学園に向かった。

 

 

 

・・・


・・・・・・



特別指導室の前までやってきた。


室内に人の気配はある。


「森田です。至急お伺いしたいことがあります」
「来客中だ」


まるで、おれが訪ねてくるのを知っていたかのように早いレスポンスだった。


「明日八時、三ツ廣さちを連れて来い。
その場にて、お前の知りたがっている事情を説明してやる」


反論する暇もない。


「・・・わかりました」


すごすごと引き下がるしかなかった。


去り際、室内から外国語が聞こえてきて、思わず立ち止まる。


まなの国の言語だ。

 

 ・・・。


 

――どうやら、客人は親善大使らしい。

 

――お金・・・契約金の話をしている。

 

――なんらかの契約が成立。

 

――いい買い物をした。

 

――こんな町まで来たかいがあった。


――あなたは素晴らしい商人だ、我が国をあげて感謝する。

 

よくしゃべる野郎だな。


本性むき出しの下品な笑い声すら聞こえる。


外交官にしては品がなさすぎる。


公の交渉に来たわけじゃないのかもしれない。


なんらかのインサイダー取引

 

なるほど・・・。


ピンと来るのに一秒もかからない。


怒りに身を任せて、ドアノブに手をかけようとした瞬間だった。


「森田には直接関係のない話だ」
「・・・っ!」


盗み聞きしているのなんてばればれらしい。


むしろ、わざと聞かされていたのかもしれない。


おれは舌打ちをしたい気分で、今度こそその場を後にした。

一昨日の晩のことを思い出す。

 

 ・・・。

 

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――『その人ね、まなと同じ国の人だって言ってた。
うん・・・ちょっといやな感じに・・・じろじろ見られたの』

 

 

 

まなは、買われたんだ・・・。

 

 

・・・。