*ゲームを読む*

ゲームまるごと文字起こし

リベリオンズ -Secret Game 2nd stage-【10】

 

・・・。

 

 

f:id:Sleni-Rale:20200602232835p:plain



「・・・目が覚めたか」

「はい」


眠りについてから1時間半後、藤田修平が起こすまでもなく、瞳は自然と目を覚ました。

クライ条件により、同一エリアに2時間しか留まることのできない彼女だが、その緊張感を体が既に分かっているのかもしれない。


「今後の行動について説明する」
「はい、何なりとお申し付け下さい」
「これから俺とお前は別行動をとる。 各自担当のエリアを決めてターゲットを探すんだ」
「ですが・・・それでは私が修平様をお守りする事ができません」
「お前が俺の安全を考える必要はない。 今は、一刻も早くクリア条件を満たす事に専念しろ。 それが、最終的には俺を助けることになる」
「・・・・・・はい、承知致しました」
「まずターゲットは藤堂悠奈、荻原結衣。 この2人は見つけ次第始末しろ」
「荻原結衣・・・その女とは面識がありませんね」
「ああ、そうだったな。 悠奈と同じ制服を着た、髪の長い女だ。 PDAが壊れているから、最悪、それで判断しろ」
「承知しました」
「それ以外のプレイヤーからも情報を集めろ。 必要なのは、全プレイヤーのナンバーだ」
「この状況では、他のプレイヤーたちも警戒しています。 易々と個人情報を漏らすとは思えませんが?」
「脅すなり痛めつけるなりして吐かせろ。 それでも抵抗するようなら、殺してからPDAを奪えばいい。 ただし、既にナンバーを把握している上野まり子、伊藤大祐、阿刀田初音、黒河正規の4人はターゲットから除外する」
「仰せのままに」
「それと、集合時間を決めておこう。 毎日22時に、この場所へ集まって情報交換と成果の報告だ。 何らかの事情で遅れる場合は、メールを寄越せ。 俺が遅れた場合は、この場で待機しろ。 戻ってこなければ死んだと思っていい。 それと、ゲーム終了の連絡が来た場合にも、一旦ここに戻って来い」
「かしこまりました」


何一つとして躊躇しない命令と、それを謹んで受けるメイド。

主人とその従者として、実に堂に入ったやり取りだった。


「何か質問はあるか?」
「そうですね・・・修平様は、武器は足りておりますか?」
「武器か。 銃はあるが、念のために予備も欲しいな」
「では換えの弾倉と、小型拳銃を1つお渡しします。 お納めください」


瞳がそう言って、懐から弾倉と銃を取り出す。

修平がそれを受け取り、ポケットに押し込めると、瞳が続けた。


「メモリーチップや武器の扱いはいかがいたしますか?」
「メモリーチップは可能な限り回収しておけ。 武器に関しては、かさばるものは必要ない。 機動力を優先しろ」
「はい、そのように」
「他には?」


修平が尋ねると、瞳は『ありません』と呟きつつ、一歩後ろへ下がった。


「では、行け。 期待してる」
「はい、ご期待に添えるよう努めます。 修平様もどうかお気をつけて」


それだけ言い残して、瞳は森の中へと消えていった。


「・・・まあ、あいつなら大丈夫だろう」


これまで会ったどの参加者よりも、優れた動きをするのは間違いない。

となれば、後は修平の方がきちんと動かなければならない。


「全プレイヤーのうち、素数は『2』『3』『5』『7』『J』『K』の6人。 『2』の瞳、『5』の結衣、『J』の悠奈を除いて、残りは3人か・・・」


修平に与えられた新たなクリア条件は、全参加者のおおよそ半数を殺害するという、過酷なものだ。

加えて修平にはもう1人、殺しておかなければならない人間がいる。


「黒河・・・」


琴美の死のきっかけとなった黒河正規。

あの大男だけは、どうあっても許すことができない。


「あいつは必ず俺が、この手で殺す・・・」


その瞳に、満ちて零れ落ちるほどの殺意と憎悪を湛えたまま・・・

彼もまた、従者と同じように、森の中へと消えていった。


・・・・・・。

 

・・・。

 

 

f:id:Sleni-Rale:20200602232852p:plain



「お前っ・・・修平かっ!?」

「・・・なんだ、大祐か」


修平が瞳と別れて、自分の担当エリアを探索している最中――

既に開けられたキューブの前で、2人がばったりと出くわした。


「こんなとこで会うと思わなかったぜ。 あの時は、よくもまあ俺を置き去りにしてくれたもんだ」
「・・・いつの話だ?」
「一昨日の夜だよ。 司のところに行った後だ。 あの後、俺は黒河ってヤツに絡まれて、散々な目に遭ったんだぜ?」


言われてみれば、修平と琴美が襲われている最中、大祐は1人だけ姿を消してそれっきりだった。

瞳から逃れた黒河が、その後、大祐と遭遇していたとすれば辻褄はあう。


「そうか、それは悪いことしたな」
「まあ、別に根にはもっちゃいねぇけど・・・って、あれ? 琴美ちゃんと、あのメイドさんは? お前ら一緒に行動してたんだろ?」
「・・・・・・」
「なにか、あったのか?」
「・・・琴美は、死んだよ」
「・・・は? それ・・・マジでいってんのか?」
「・・・・・・」
「いや、まあ・・・セカンドステージになった時、運営から死人が出たってメールが来たけど・・・・・・そう、か。 あれは、琴美ちゃんのことだったのか」


大祐が目を伏せ、沈んだ声で呟いた後、足下の落ち葉を忌々しそうに蹴り飛ばす。

その大仰な仕草に、白々しさを覚えつつも、修平はひとまず大介に合わせようと無言を貫いた。


「まあ、どんな経緯でそうなったのかは・・・ここじゃ聞かねぇけどよ。 あんまり気落ちしないで、修平もクリアを目指せよ。 お前がここで生き残らないと、琴美ちゃんも成仏できないだろ」
「・・・ああ、元々そのつもりだ。 大祐の方は、その後どうなんだ?」
「俺か? まあ、見ての通りキューブを探してたところなんだけど・・・俺なりに、この先の事を考えてたんだ」
「この先のこと、ね・・・」
「そっちもクリア条件は変わったよな?」
「ああ」
「どんな風に変わったんだ?」
「・・・・・・」


相変わらず危機感の感じられない質問に、修平が辟易する。

そんな重要な情報は、迂闊に他人に教えられるはずもないということを、彼は未だに理解していないらしい。

逆に言えば――この様子だと、大祐のクリア条件は極端に難易度が上がったり、人命に関係していないことが窺えた。

だとすれば、これは情報を引き出せる好機に他ならない。


「・・・俺のクリア条件を教えてもいいが、大祐からも情報が欲しい」
「ああ、もちろんいいぜ」
「ナンバー『3』と『7』と『K』のプレイヤーを知らないか?」
「『3』と『7』と・・・『K』?」
「知っていたら、教えてくれないか? いや、答えてくれ。 是が非でも」
「っ・・・お、お前・・・そのナンバーの奴を見つけてどうするつもりだよ・・・?」
「・・・そんなこと、聞くまでもないだろ?」


修平が、制服の内ポケットへと手を突っ込み、僅かに拳銃を引き抜く。


「もしもお前が、このナンバーなら・・・」
「い、いや、違う! 俺のナンバーは違うって!」
「・・・・・・」
「俺のナンバーは『10』だ! お前の探してるナンバーじゃねぇよ!」
「・・・嘘は言っていないだろうな?」
「本当だって! ほら、見てみろ!」


大祐が慌ててPDAを取り出し、修平に差し出してくる。

そこには、修平も既に知っている大祐のプレイヤーナンバー『10』と――

新規のクリア条件である『半径2m以内に同時に3人以上のプレイヤーを侵入させない』が表示されていた。


「・・・なるほど。 確かに」
「嘘なんかつくかよ、こんなところで。 黙ってたら問答無用で撃ちそうな勢いだったしな、お前・・・」
「別に、ターゲット以外を殺してはいけない、とは書いてないからな」
「・・・・・・なんか変わったな、お前」
「・・・そうか?」


汗を拭いながら言う大祐に、修平は何も言わずPDAを突き返した。


「それじゃ、改めて聞くが、『3』『7』『K』のナンバーの人間を知らないか?」
「う、うーん・・・いたっけかな・・・。 あ、そうだ! 確か司が、『K』だったような気が・・・!」
「何? なぜお前がそれを知っている?」
「あいつが仲間と話してるのを、盗み聞きしたんだよ」
「そうか・・・」


口から出まかせのように思えたが、あえて修平はそれを受け入れた。

大祐の言葉が真実ならそれでいいし、嘘でもそれはそれで、さほど問題はない。


「他には?」
「わ、わかんねぇよ。 俺は基本的に、他のプレイヤーと交渉したことねぇし・・・。 っていうか、俺のクリア条件見ただろ? ゲームの最終日までどこか人気のない場所に隠れていれば、クリアも同然なんだよ」


『半径2m以内に同時に3人以上のプレイヤーを侵入させない』

他のプレイヤーとの接触を避けて、最終日までやり過ごせばいいだけのクリア条件だ。

この難易度の低さであれば、軽はずみに修平のクリア条件を聞いてきた大祐の真意も窺える。


「とりあえず、俺は食料を集めて山奥にでも篭るつもりだ。 もう一度、修平と会うことがあるなら、それはゲームが終わった時だな」
「そうだな・・・」


となれば大祐は、修平にとって路傍の石と同様の価値しかない。


「分かった。 健闘を祈る」
「おう。 なんか厳しい条件引いちまったみたいだけど、お前も頑張れよ」


素っ気なく踵を返した修平に、大祐が手を振る。

その手に一瞥もくれることなく、修平は無言で去っていった。

 

・・・・・・。

 

・・・。

 

 

f:id:Sleni-Rale:20200602232936p:plain



――城咲充は、焦っていた。


黒河に自ら提案し、仲間集めに出てきたところまではよかったのだが・・・。

いざ飛び出してきてみれば、今後の指針が決まらない。

フィールドの中を闇雲に走り回っても、問題解決の糸口は何一つ掴めずにいた。


「うわぁ!!」


充が木の根につまずいて、盛大に泥に濡れる。

彼は地面に倒れたまま、腹いせとして地面を泥ごと蹴り上げ、荒い呼吸と共に地面を叩いた。


「畜生・・・バカにしやがって・・・!」


それは、自分を転がした木の根に言ったのか、黒河に言ったのか――それとも、ゲームの主催者に言ったのか、よく分からなかった。


「はぁ、はぁっ、こんなことしてる場合じゃないのに・・・!」


荒げる呼吸でPDAを取り出し、そこに視線を落とす。


そのPDAには、プレイヤーナンバーが存在しない。

14人の中で明らかに異質な存在――『JOKER』

その特殊機能は『半径10m以内にあるPDAに変化できる。 ゲーム設定、特殊機能は変化したPDAのものになる』だ。

そして充のクリア条件は、コピーしたPDAのクリア条件と同じになる。

となれば、なるべく多くのPDAをコピーし、簡単なクリア条件を吟味するのが、普通に考えた場合の最適な行動だったはずだった。

だから充もその最適解に忠実に従って、誰よりも早くクリア条件を満たそうと奔走してきたのだが――

セカンドステージ突入によって、一気にどん底へ突き落とされていた。


「こんなの反則だろ・・・なんで、こんなことになるんだっ・・・!」


――『変化したことがあるPDAの持ち主全員の死亡』――


それが充の、セカンドステージにおけるクリア条件だった。

だからすぐに、黒河の下を逃げ出したのだ。

充がこれまでにコピーしたプレイヤーは6人――。

その中に、当然のごとく黒河は含まれている。

もしこのことを本人に知られれば、迷わず命を奪いに来るだろう。


「くそっ、くそっ・・・! 嫌だ・・・僕はまだ、死にたくない・・・死にたくないんだっ!」


崩壊しかけた精神をギリギリで繋ぎとめながら、それでも充は、必死になってクリアするための道を考えた。

この状況でクリアを目指すのであれば、条件が競合しない相手を探すしかない。

つまり、未だコピーしたことがなく、なおかつ自分に危害を加える必要のない条件のプレイヤーである。


「誰か、誰かいないか・・・誰か、仲間になってくれそうな人は・・・。 仲間、仲間・・・僕の仲間を見つけないと・・・」


充が泥に煤(すす)けた爪を囓りながら、ゆっくりと立ち上がる。

そして、落ちくぼんだ目の奥に暗い光を湛えながら、未だ見ぬ仲間を求めて、森の中をひたすらに歩いて行くと――

 

f:id:Sleni-Rale:20200602232956p:plain



行く手に、小さな少女の姿を見つけた。


「えっ・・・!?」


充は目を疑った。

そこにいたのは、テレビで幾度となく見た姿――。


「は、初音ちゃん!?――君は、安藤初音ちゃんじゃないかっ!?」


思わずそう声を上げると、初音はびくっと身を震わせた。


「あ、あなたは・・・初音を、知っているですか・・・?」
「しっ、知ってるも何も――ほら、公式ファンクラブの会員ナンバー38番の!」
「え・・・?」
「あっ、いや、そんなことより――初音ちゃん1人? 今までずっと1人だったの?」
「は、はい。 ずっと1人で、怖くて・・・」


自分を知っている相手に出会えて安堵したのか、初音がほっと息を吐きながら充の方へ歩み寄ってくる。

それだけで、充の警戒心は吹き飛んだ。

そしてファンとしての使命感が、胸の中に湧き起こる。


「初音ちゃんは、いま置かれてる状況はわかる? 皆の条件が書き換わって、殺し合いが始まってるんだよ」
「それはわかります・・・武器もないし、ただ逃げ回るしかなくて・・・」
「そうか・・・そうだったんだ・・・」


事実、初音は手にはPDAを持っているが、武器はない。

弱々しく佇むその姿は、まるで傷ついた小動物のようだ。


「・・・わかった、わかったよ初音ちゃん! じゃあここからは僕が、君を守るよ!」
「え・・・? ほっ、本当に、守ってくれるですか? でも、武器は・・・」
「いや、銃は持ってるんだけど・・・今は、弾切れで・・・でも、すぐに違う武器を見つけるよ! とにかく安全な場所に移動しよう! ついてきて、初音ちゃん!」


充はそう言って、初音と共に歩き出そうとする。

初音はPDAを持ったまま、それに従った。

充の少し後ろを歩きながら、初音が呟く。


「・・・でも、武器がないのは残念です・・・一石二鳥になると思ったんですが・・・」
「え? 何が一石二鳥?」
「あなたの武器と、特殊機能と、その2つの事ですよ」


初音がそう答えた時、

充の首元で、奇妙な音が聞こえた。


「・・・何の音?」
「さあ、何の音でしょう・・・?」


充は首元に手を当てた。

その手を赤い光が照らす。

自分ではよく見えないが、首輪が発光しているらしい。


「は、初音ちゃん!? ちょっと僕の首輪見て、光ってない!?」
「あ・・・光ってますね。 どうしてでしょう?」
「なんで光るんだ!? こんな事、今まで一度もなかったのに!」
「うーん、初音にはよくわからないんですけど・・・」


初音は考え込むように俯き――

 

 

f:id:Sleni-Rale:20200602233019p:plain

 

そしてすぐに顔を上げ、充の問いに答えた。


「たぶん初音が、特殊機能を使って、あなたの首輪を爆破しようとしたからじゃないでしょうか?」
「――え?」


信じられないという思いで、充は初音を見つめる。

その顔には、テレビでも見た事のないような、酷薄な表情が浮かんでいた。


「は、初音ちゃん、首輪を爆破って――!?」


充が震える声でさらに問いを重ねた時――


――!!!


「ぐべっ!」

 

f:id:Sleni-Rale:20200602233040p:plain



首元で衝撃が弾け、視界が赤く染まる。

それが自分の頚動脈から噴出する血だと気づいた時には、急速に視界が暗くなり始めていた。


「は、初音、ちゃん・・・きみ、は、一体・・・?」
「ごめんなさい、初音はもう・・・あなたの知っている、アイドルの初音ではないのです」
「そ・・・、んな・・・・・・なん・・・で・・・」


充は中学の時から、ずっと初音のファンだった。

だが、そんな彼女の豹変した姿を目の当たりにしながら――


そして彼女がなぜ変わってしまったのか、その意味さえわからぬまま――


城咲充の意識は、闇の中に、永遠に埋没した。


・・・・・・。

 

・・・。

 

 

「・・・心配だな」


窓際の椅子に腰掛けて、空を見上げながら、誰にともなく三ツ林司は呟いた。

すると、昼食を済ませて見張りに出ようとしていた玲が、振り返って尋ねてくる。

 

f:id:Sleni-Rale:20200602233100p:plain

 

「なにが心配なのです?」
「ああ、いや・・・僕が部屋で育てている、シクラメンの植木のことだよ」
「ええと・・・花、ですか?」
「うん。 もう4日間も水をやっていないから、萎れてないといいんだけどね・・・」
「・・・司らしからぬ発言ですね」
「そうかい?」
「あなたのような薄情な男に、花を愛でる心があったとは意外です」
「・・・相変わらず物言いが失礼だね、君は。 花はいいよ。 人間と違って余計なことは言わないからね。 小まめに世話をしてあげれば、毎年必ず花を咲かせてくれるし・・・。 機嫌が悪くなったからといって、勝手にいなくなってしまうこともない・・・・・・欲深くて意地汚い人間に比べれば、知性を持たない彼らの方がずっと崇高な生物に見えるよ」
「・・・司は、人間が嫌いなのですか?」
「好きか嫌いかなんて関係ないさ。 僕にとって他の人間は利用できるか否か、それだけだよ」
「その考え方は・・・少し寂しいですね」
「・・・・・・やめよう。 こんな話は。 まずは、ここから生きて帰ることを考えなくちゃ。 でないと、大切な花に水もやれないからね」
「・・・そうですね」


気持ちを切り替えるかのように、玲が小さく息を吐く。

そして、改めて司に向き直る。


「丁度いい。 司に聞きたいことがありました」
「なんだい?」
「司、私たちはいつまでここに留まっているつもりですか?」
「っていうと?」
「セカンドステージになったというのに、ここでぼーっとしていていいのですか?」
「・・・だって、動く意味がないでしょ?」
「説明を要求します」
「はいはい、分かった分かった」


そわそわと落ち着きのない玲に苦笑しつつ、司が席から立ち上がる。


「このゲームはね、多くの人間が生還できるようにはなっていないんだよ。 クリア条件を見れば、生還できる人間の数は想像が付くだろ? 例えば、僕の『クリア条件を満たしたプレイヤーが3人未満』って条件。 僕が生きて帰ろうとした時点で、生き残りは3人以下だ」
「確かに、その通りですね・・・」
「僕だけがこんなにキツい条件とは思えないし、方っておいても他のプレイヤーたちは殺し合いを始めるよ。 そんな修羅場に、あえて乗り込んでいく必要はない。 ギリギリまで時間を稼いで、人数が絞られた段階で攻勢をかけた方が賢明だよ・・・とまあ、そういう理由で動かずにいたんだけど、納得してもらえた?」
「納得しました。 一応は」
「一応?」
「私は・・・仇討ちのためにここに来ました」
「前にも一度言ったけど、その目的はしばらく保留にしたら?」
「ええ、司の考えに反論しているわけではありません。 しかし、弟の仇がすぐ近くにいるこの状況で、指を咥えて見ていることしかできない自分がもどかしい・・・・・・無念でなりません」
「そう・・・僕はね。 特別に誰かのことを好きになったり、逆に殺してやりたいほど憎んだりした経験がないんだ。 弟さんの仇を自分の手で討ちたいっていう君の感情も、理屈としては理解できるけど・・・。 そんなことをしたって根本的な解決にはならないし、むしろ、虚しさが増すだけだと思うよ?」
「・・・そうなのかもしれません・・・ですが、それと同じことを、あの人にも言えますか?」


玲のいう『あの人』が誰を指しているのか、司は一瞬で理解した。

・・・理解はしたが、返す言葉は見つからない。

琴美を失った修平の感情は誰にも止められないだろう。

そして、今の彼にはどんな言葉も届かない。


「・・・・・・」
「・・・・・・」


仲間が1人減って、妙に広く感じるようになった山小屋の中。

ふいに訪れた沈黙に、気まずい空気が充満する。

そんな空気を嫌ってか、最初に言葉を発したのは玲の方だった。


「致し方ありません。 しばらくは、ここで機会を待つことにします。 それに、私がいないと司も心細いでしょうしね」
「いやいや、僕は別に君がいなくなっても寂しくなんかないよ?」
「昨夜、寝言で私の名前を呼んでいました」
「君さ、いつも必ず、僕より先に眠ってるよね」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「起きてました、実は」
「いや、よだれ垂らして寝てたし」
「う、嘘です! よだれなんて垂らしてませんから! そもそも司は、なんで私の寝姿を知っているんですかっ!? 前々から怪しいとは思っていましたが、とうとう尻尾を出しましたね・・・この、変態っ!」
「いや、君の貧相な身体に興味なんてないし・・・」
「なっ――!」
「寝顔を見られるのが嫌なら、起こされるまえに起きようよ。 寝起き悪すぎなんだよ、玲は」
「じゅ、熟睡することはいいことですよ! 寝る子は育つんです!」
「・・・そだつ?」
「何か?」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・ああいや、僕が悪かったよ」
「くっ・・・!! つぅかぁさぁあぁぁっっ!!!」

 

・・・・・・。

 

・・・。

 

 

f:id:Sleni-Rale:20200602233152p:plain



――藤堂悠奈は焦る気持ちを抑え、山道を歩いていた。


「結衣・・・結衣、どこにいるの・・・!?」


そんな声が、思わず口から漏れる。

まり子の名を呼ばないのは、悠奈がまり子を敵になったと思っているからではない。

つい先ほど、まり子の死体を、森の中で見つけたからだ。

まり子や結衣が、なぜ悠奈の前から姿を消したのかは、今もわからない。

条件が変わったのに伴い、敵になったのかもしれない。

それでも悠奈は、まり子と結衣を、心から心配していた。

そしてまり子の亡骸を発見すると、その心配はさらに大きくなり、ほとんど恐怖に変わった。

結衣もすでに、誰かに殺されているのではないかと――


「お願い、生きていて・・・!」


何度もそう呟きながら、悠奈は道を急ぐ。

 

・・・。

 

f:id:Sleni-Rale:20200602233219p:plain



やがて行く手の道の脇に、小屋を見つけた。


「・・・!」


それを見た瞬間、なぜか嫌な予感がした。

風に乗って、鉄錆びに似た臭いが漂ってきた気がしたからだ。

悠奈はその小屋に駆け寄り、恐る恐るその扉を開ける。

 

そして、薄暗い部屋の中で――


悠奈は、最も見たくなかったものを見つけた。

 

f:id:Sleni-Rale:20200602233237p:plain



「結衣・・・」


尋ね人の名前が、埃臭く、血生臭い室内に空しく響く。

当然のように、返事はない。


「っ・・・!」


目の前の惨状に、悠奈が口元を覆う。

結衣の命を奪ったのは、腹部への銃撃だった。

彼女の制服は爆ぜ、穴だらけになっている。

おそらくショットガンだろう。

それはまり子の命を奪ったものと、同じ武器だった。

だが結衣に与えられた傷は、それだけではない。

全身に、徹底的な暴力を振るわれた痕跡がある。


「どうして・・・どうして、こんな、酷い・・・! 結、衣・・・私が、もっと早く見つけてあげられれば・・・。 私がちゃんと、守ってあげられれば・・・。 ごめんね、結衣・・・本当に、ごめん・・・。 私じゃ、あなたを守ってあげられなかった・・・ごめんね・・・ごめ、ん・・・」

 

f:id:Sleni-Rale:20200602233254p:plain



どんなにきつく抱きしめても、結衣の温もりは感じられない。


あの憎まれ口を聞くことも――

あの笑顔を見ることも――・・・。

夕陽に染まる小屋の中に、悠奈の嗚咽が漏れ出した。


・・・・・・。

 

・・・。

 

 

 

――明らかに、状況が変わってきている。

 

 

f:id:Sleni-Rale:20200602233318p:plain

 


誰とも知己を結ばず、単独行動をずっと続けてきた真島章則も、その事を察していた。

ようやく見つけたと思ったキューブが、すでに開封されたものだったのだ。

しかも、これで3度連続。


「・・・これも、セカンドステージとやらに移行したせいなのか・・・?」


昨日の夕方、唐突にPDAが鳴り、セカンドステージへの移行を告げた。

それと同時に、真島の条件も変わった。

それまでは単純に、『未使用のメモリーチップを10個以上所持する』という条件だったのだが、セカンドステージになると――


「未使用のメモリーチップを10個以上所持し、他プレイヤーの所持数を同数未満にする』と変わったのだ。


わずかな違いのようでいて、それは大きく意味が異なる。

他のプレイヤーが所持しているメモリーチップの数を念頭に入れない限り、真島のクリアはあり得ないのだ。


「・・・俺より多くのチップを持っている奴が、そう多くいるとは思えないが・・・」


真島に与えられたPDAの特殊機能は、『半径10m以内にいるプレイヤーのメモリーチップの所有数を表示する』だ。

恐らく、初めからセカンドステージのことを想定して、与えられていたものだったのだろう。

昨日と今日で、真島はひたすらチップを集め続け、今では8個のメモリーチップを所持しているのだが――その先が続かない。


「結局、ゲームを運営している連中の思惑通りというわけか・・・」


選択肢は2つ――。

このままメモリーチップを集め続けるか、自分より所持数の多いプレイヤーからメモリーチップを奪うかだ。

ゲームが4日目に突入し、キューブの総数自体が減っていることを考えれば、そろそろ後者を選択すべきなのかもしれないが――

どちらにせよ、2日目に受けた足の矢傷が相変わらず痛み、休み休み行動しているような現状では、楽な道とは言い難かった。


「・・・っ」


そこで真島は、ふと足を止める。

行く手の道の脇、茂みのあたりに、何者かの気配を感じたのだ。


「誰だ!?」


真島は身構えつつ、そう声を上げた。

ゲームも折り返しを迎えたこの状況で、その対応はいささか牧歌的に過ぎたかもしれない。

ややあって、7mほど離れた茂みの中から、男が1人姿を現した。

 

f:id:Sleni-Rale:20200602233424p:plain



「お前は・・・?」


今まで会った事のない男だった。

その男は、真島を見据えて問う。


「・・・お前、『真島』か?」
「っ・・・? 何故、俺の名を・・・」
「荻原結衣という女に聞いたんだ。 そんな名前の、体のでかいボクサーがいると。 お前はボクサーかどうかはわからないが、体格はいいだろう。 だからカマをかけてみただけだ」
「・・・そうか」


真島は男の目的を計りかねた。


戸惑う真島に、男は続ける。


「・・・ところで、お前にひとつ聞きたい事がある。 お前のナンバーはなんだ?」
「ナンバーだと?」


そう聞いた瞬間、真島は男の目的を悟った。

つまりこの男は、自分のクリア条件を満たすため、真島の前に姿を現したのだ。

真島が他のプレイヤーのチップ所持数を探るため、動き回っていたように。

だがこの質問には、何か不吉なものを感じた。

もし男に与えられた条件が、『特定のナンバーのプレイヤーを殺害する』などだったら――!?

そこまで考えた時、真島は足の痛みを忘れ、とっさに動いていた。

 

 

f:id:Sleni-Rale:20200602233504p:plain

 

「答える必要はない」


7mの間合いを瞬時に詰め、その勢いのままステップインジャプを繰り出す。

これがボクシングの試合であれば、有効なリードブロウとなっていただろう。

だが男は、ボクシングの試合ではありえない動きを見せた。

その場に倒れ込み、ジャブを避けたのだ。


「っ!」


真島の左拳が空を切る。

彼は視線を下に落とし、これまたボクシングの試合にはない『踏みつけ』によって、追撃を加えようとしたが――


――!!


不意に響いた銃声とともに、真島の足が弾け飛んだ。


「がッ!!」


真島は右足を撃たれ、その場に思わず倒れこんだ。

男が倒れると同時に、腰に挿していた拳銃を抜き出し、それで真島の足を撃ったのだ。


「ぐ・・・ぎ、い・・・ッ!」


痛みに慣れているはずの真島も、その激痛は耐え難いものだった。


足を押さえて呻く真島の前で、男が悠々と立ち上がる。

危険を感じた真島が逃げようとする前に、男は真島を捕まえ、尻ポケットからPDAを抜き出した。

それを一瞥し、冷たい声で言う。


「プレイヤーナンバー『7』・・・やはり、素数だな」
「くっ・・・」


どうやら男は、素数ナンバーのプレイヤーを狙っているらしい。

真島は激痛に耐えながら、問いを絞り出す。


「・・・俺を、どうするつもりだ?」
「殺す」


あまりにも予想通りの答えに、真島は顔をしかめる。

だがそれに続けられた言葉は、予想外のものだった。


「・・・と言いたいところだが、その前に一働きしてもらおう」
「な、に・・・?」


戸惑う真島をよそに、男がポケットから、もう一丁小型拳銃を取り出す。

そしてその銃を、何を思ったか、少し離れた茂みに投げ込んだ。


「な・・・!?」
「あの銃を、拾って使え。 その足じゃボクシングはもうできないだろう? お前に恨みがある奴に襲われた時にでも、護身のために使うんだ」


男はそう言うや、踵を返し――

どこへともなく、駆け出した。


「あ、待て!」


真島はそう声をかけたが、男は止まらない。

そのままどこへともなく、逃げ去って行った。


「な・・・なんだったんだ・・・!?」


ともあれ、急死に一生を得たようだ。

真島はそう思いつつ、男が銃を捨てた茂みに目をやる。

何かの罠かもしれないが、確かにこの状態では、敵に遭遇した時、自分の身を護る事はできない。

完全に失われてしまったフットワークに代わる武器が必要だった。


「くそっ・・・!」


痛む足を引きずり、真島は茂みに歩み寄った。

そしてそこに落ちていた銃を探し出し、握る。

こんなものを扱った事はないが、映画などで見ていて、安全装置の外し方くらいはなんとなくわかる。

うろ覚えの知識を頼りに、安全装置を外し、試し撃ちしてみた。


――!!


「ぐっ・・・!」


弾は出たが、発射の衝撃で足の傷に痛みが走った。

忌々しく思いつつ、真島は先ほど会った男について考える。


「・・・それにしても、さっきの奴・・・何が狙いなんだ・・・?」


なぜターゲットである自分を殺さず、足を撃つだけに留めておいたのか。

なぜわざわざ銃を与えたのか。

合理的な答えは思いつかない。

真島は大きく息をつき、そして呟く。


「・・・とにかく、今は・・・この傷が癒えるまで待つしかないか・・・。 簡単に治るような、浅い傷ではないかもしれないが・・・」


だがそうする以外に道はない。

真島は手に入れた小型拳銃を腰に挿し、それから足の傷の止血を始めた。


・・・・・・。

 


・・・。

 



f:id:Sleni-Rale:20200602233531p:plain

 

――そうして、どれくらい過ぎたのだろう。


真島がなんとか止血を終え、道端で体力の回復を待っていた頃――


不意に、どこかで、声が聞こえた。


「クソッタレが・・・充の野郎、どこにいきやがったんだ?」

「ッ!!!」


出血と痛みでやや朦朧としていた意識が、瞬時に覚醒する。

その声は4日ほど前、このゲームの初日に聞いた声――


黒河正規のものだったのだ。


「あの野郎、見つけたらぜえってぇタダじゃおかねぇ・・・!」


怒りに満ちた声で、黒河が呟く。


――この時、黒河は怒りのあまり、自分のPDAの特殊機能をすっかり忘れていた。

特殊機能の存在さえ思い出していれば、すでに充が死んでいることを知り得ただろう。

だがそれに気が回らないほど、黒河は充の逃亡に対して怒りを募らせ、殺意すら抱いて徘徊していた。

獣のような表情を浮かべ、黒河が近づいてくる。

その足音を聞く真島の脳裏に、先ほど聞いた声が蘇った。


『お前に恨みがある奴に襲われた時にでも、護身のために使うんだ』


その言葉を思い出した時、ようやく真島は、あの男の思惑を理解した。


「奴は・・・黒河と俺を、潰し合わせようとして・・・!?」


足を撃ち、動けなくしておいて、銃を与えて放置する。

そこに黒河が通りかかれば、撃ち合いになる。

むろん黒河が通りかからなくても、別に問題はない。

いずれ真島が出血多量で死ぬのを待つか、後で殺しにくればいいだけの話だ。

真島がそこまで考えた時――


「――あ? 誰だよオイ、そこにいんのは?」


そんな黒河の声が聞こえた。


「!!」


真島の身が、びくんと震える。

そこに追い打ちのように、さらに声がかかる。


「充か? 逃げたけどやっぱ怖くなって、俺んところに戻りてぇのか? だとしたら、来いよオイ。 俺ァ別に怒ってねぇからよ」


そう言いつつ、黒河が銃を茂みに向ける。

逃げられない事は、真島にもわかっていた。


――やるしかない。


真島は銃を握り締め、そして――


無傷の左脚の力を奮い、茂みから飛び出した。


「黒河ァ!」

「ッ!?」


――!!!!!


真島は飛び出しざま、銃を乱射した。

そのうちのほとんどは外れたが、幾つかが黒河の体を掠める。

だが、それらは致命傷とはほど遠く――


「あ・・・」


全弾撃ち切った時、そこにはわずかに負傷した黒河が、平然と立っていた。

 

f:id:Sleni-Rale:20200602233623p:plain



「ふうぅぅぅ・・・さすがの俺も驚いたぜ、まさか藪をつついたら、真島サンが出てくるとは思わなかったもんなァ?」


黒河がニヤニヤと笑い、真島を見据える。


「その銃はどうしたんだよ、あ? ボクサーはやめて、ガンマンに転向か?」
「・・・・・・」
「って良く見りゃなんだよ、足怪我してんじゃねぇか? なるほどねェ。 それで戦えなくなって、銃を使うようになったと。 オメーもアレだな? 『ボクはスポーツマンです』ってツラしといて、一皮剥きゃ俺と同じ穴の狢じゃねぇか」
「・・・黙れ」


真島は銃を捨て、ファイティングポーズを取る。

黒河はその眼前で、勝ち誇った顔で銃を構えた。


「おいおい、さすがに無理だろ真島? その足で銃に勝とうってのはよ」
「・・・やってみなければ、わからないだろう!」

 

真島は銃に臆することなく、命乞いもせず、黒河に殴りかかろうとしたが――


――!!


それより一瞬早く、黒河が引き金を引いた。


「ぐっ!」


真島は左足をも撃たれ、その場に倒れた。


「う、く、ぐううううっ・・・!」


激痛にもがく真島に、黒河がさらに銃口を向ける。

 

f:id:Sleni-Rale:20200602233642p:plain



「なかなか笑えたぜ、真島。 そんじゃな。 あの世でチャンピオン目指して頑張れや」


――!!


その言葉と共に放たれた弾丸は――


的確に真島の額を捉え、その命を奪い去った。


・・・・・・。

 

・・・。

 



f:id:Sleni-Rale:20200602233705p:plain

 

「・・・来ていたのか」
「修平様をお待たせするわけにはいきませんから」


約束の時間になり、集合場所へと向かうと、そこには既に瞳が待っていた。


「まずは報告を聞こう」
「はい。 藤堂悠奈たちが拠点としていた山小屋は、既にもぬけの殻でした。 山小屋にはプレイヤー同士が争った形跡がありましたが、ターゲット2名の生死は確認できず。 その後、周囲のエリアを探索しましたが、ターゲットの姿はおろか、他のプレイヤーも発見できませんでした」
「・・・進展はなし、か」
「ご期待に添えず申し訳ありません。 次は必ず、目的を果たしてご覧にいれます」
「ああ、期待している。 他には?」
「道中にて、メモリーチップを4枚ほど確保しております」


瞳の差し出してきたメモリーチップを、修平が受け取る。

修平は手の中のチップを眺めた後に、うち2枚を瞳へと返した。


「こちらは・・・?」
「お前も必要だろう。 使え」
「あ・・・ありがとうございますっ!」


修平の行動がよほど予想外だったのだろう。

雨を貰った子供のように無邪気な笑みを浮かべながら、瞳は丁寧に頭を下げた。

その様子を、冷めた目でひとしきり眺めてから、修平は小さく鼻をならした。


「次は、俺の番だ」
「はい」
「まずは、荻原結衣と、真島章則をターゲットから外す」
「といいますと?」
「俺のPDAには、殺害対象のプレイヤーナンバーが表示されるんだ。 そこからナンバー『5』と『7』が消えた。 あいつらはおそらく、もう生きてはいないはずだ」
「なるほど。 かしこまりました」
「それでは次に、優先的に狙うべきターゲットを決める。 三ツ林司だ。 こいつは所在も知れているしな。 司は狡猾で頭のキレる男だ。 いざとなれば、仲間を見捨ててでも生き残ろうとするだろう。 瞳、お前に任せていいな?」
「もちろんです。 修平様のご期待を裏切るようなことはありません」
「いい返事だ。 成果を期待している」
「はっ!」


瞳がチェーンソーを抱えて、爛々と目を輝かせる。


そして、司がいる山小屋の方角へ向かって、森の中へと消えていった。

その様子を横目で眺めながら、修平が冷たい声で呟く。


「・・・さあ、お前はどう出る。 司」

 

・・・・・・。

 

・・・。

 

 

f:id:Sleni-Rale:20200602233730p:plain



「・・・やってくれるね」


引きつった笑みを顔面に貼り付けながら、三ツ林司は麓へと続く山道を見下ろしていた。

そこは、司が既存の罠を流用して仕掛けた数多のトラップがある。

司たちの山小屋を堅城へと変える石垣であり、それを知る者にしか通ることの許されない難攻不落の要塞であるはずだった。


しかし――


「この暗闇の中で一見して罠を見切るなんて、只者じゃないね」

 

f:id:Sleni-Rale:20200602233755p:plain



その守りを今、1人の女が、真っ向から破砕しに来ていた。

数日前、修平と共に現れたあのメイド服の怪しい女だ。

確か名前を瞳と言った。

彼女がチェーンソーを振り回し、余裕の笑みを浮かべながら、並み居るトラップを次々と破壊していく。

司たちがいる山小屋に迫るのも、時間の問題だろう。

 

f:id:Sleni-Rale:20200602233811p:plain



「どうしますか、司?」
「さぁ・・・どうしたものかな。 最近、僕は自分の考えに自信が持てなくなっていてね・・・」
「珍しく弱気なことを言うのですね。 らしくないですよ?」
「・・・愚痴の1つもこぼしたくなるさ。 黒河といい、あのメイドといい、このゲームの参加者はもう少し常識の範囲で行動してもらいたいものだけど」
「司にとっての常識が、必ずしも他の人間に当てはまらないといういい教訓です」
「ハハッ・・・肝に銘じておくよ」


認めたくないが、今回は完敗だった。

瞳は明らかに特殊な訓練を積んで、このゲームに挑んでいるのだろう。

圧倒的な技量差の前には、下手な小細工な毛ほどの意味もないのだと、司は今この瞬間に分からされた。

瞳に対抗しようと思うのであれば、少なくとも、生け捕り用の罠などではお話にならない。


「逃走か、もしくは籠城か・・・」


逃げる場合のリスクと、籠城する場合のリスクを考える。

夜の闇に紛れての、逃げ切れる可能性は・・・恐らくは5分。

威嚇射撃を繰り返しつつ、チェーンソーを振りにくい藪目掛けて逃げていけば、どうにか――


「いや・・・待てよ。 あいつの特殊機能はレーダーにもなるのか・・・」


彼女の特殊機能の有効半径は100メートル。

範囲内に入ると、メールの送信欄に名前が上がるため、逃走する場合は100メートルは空ける必要がある。


「・・・逃げ切るのは厳しい、か。 だとすれば籠城かな。 いや・・・」


山小屋の中に籠もり、守りを固めたとして、それが一体何になるのだろうか。

既に、ここの位置は相手に割れている。

撃退できる可能性はあるが、相手を殺さない限り何度でも襲ってくるだろう。

火でも放たれて狭い山小屋の中で逃げ惑うのは、お世辞にも愉快とは言えない。

だとすれば、この場から生き残る方法は一つしか思い浮かばない。


「・・・真っ向からの勝負に賭けるしかないか。 玲は、あいつとまともにやり合って勝てる自信はある?」
「・・・・・・おそらく実力は拮抗しています。 ・・・無傷で、とはいかないでしょう」


チェーンソーが唸りを上げて近付いてくる。

もはや、一刻の猶予もなかった。


「・・・それでもやるしかないね。 玲は足止めを頼む。 その間に、僕は不意打ちの用意をしておく。 横合いから狙撃で割り込むから、相手が怯んだところを全力で仕留めてくれ」
「承知」

 

f:id:Sleni-Rale:20200602233858p:plain



玲が抜刀し、道の中央で構えながら瞳がやってくるのを待つ。

その間に、司は木の陰へと飛び込んだ。

そして、当初の作戦通り、戦場に背を向けて走り出した。

 

・・・。

 

 

f:id:Sleni-Rale:20200602233918p:plain



「・・・悪いね、玲」


司の選んだ本当の策は、玲を囮にして確実に逃げることだった。

彼女を犠牲にして、自分だけは100パーセント生き残る。

こんな時のために、ずっと玲を傍に置いていたのだから。

非常に現実的で合理的な、『司の生存率が最も高い』選択だった。


チェーンソーの回転する刃が、司の背後で高らかに唸りを上げる。

それを聞いて、『そろそろ玲と交戦が始まるのか』と、司が後ろを振り返る。

 

 

f:id:Sleni-Rale:20200602234018p:plain



「な――」


その瞬間、


半月型に口の端を吊り上げ笑う瞳と、


――目が合った。


「お連れの女性を置き去りにして、どちらへ行かれるのです? よもや1人で逃げ出すつもりだったのですか?」

「・・・っ」

「・・・やはりあなたは、修平様のおっしゃる通りの人間でしたね。 たとえ私の目は欺けたとしても、修平様まで欺く事はできませんよ?」

「・・・藤田先輩が入れ知恵してたわけか。 それは誤算だったかな」


懐から拳銃を引き抜きながら、司は苦笑いを浮かべる。

態度とは裏腹に、その額には冷や汗が滲んでいた。

 

f:id:Sleni-Rale:20200602234044p:plain



「修平様が、あなたの死をお望みです。 ここで、命を差し出していただけますか?」

「・・・拒否権はあるのかい?」

「当然、ありません」


司が銃を構えると同時に、瞳は近場の木の陰に飛び込んだ。


――!!!


立て続けに鳴り響いた銃声。


吹き出された弾丸は、瞳が潜んだ木の幹に吸い込まれる。

すかさず、木の陰から飛び出した瞳が、次の遮蔽物へと移動する。

僅かな時間の攻防にもかかわらず、急激に両者の距離が縮まっていく。

無論、司の銃から吐き出される弾丸は掠りもしていない。


「く・・・そっ、速いっ・・・。 どうして、最初に気が付かなかったんだ・・・。 あのメイドが藤田先輩の命令で動いてるなんて、考えればすぐに分かりそうなことなのに・・・」


ファーストステージにおける修平のクリア条件は『素数ナンバーのプレイヤー全員のクリア条件を満たす』こと。

司はその事を、すでに把握していた。

中央管理施設で修平たちに会った時に、まず琴美の特殊機能をコピーし、さらにそれを用いて各人の情報を盗んでいたのだ。

だがせっかくクリア条件を把握したのに、それを活かしきれなかった。

セカンドステージに移行した段階で、素数のナンバーである司が標的になっている可能性は、充分予測できたはずなのに――


「こんなところでゲームオーバーなのか? この僕が・・・?」


「くっ・・・!」


さらに、この期に及んでの弾切れ。

こうなれば、もはや為す術はない。


「・・・抵抗は、おしまいですか?」


闇の中から這いずり出てくるように、瞳が姿を現す。

その距離は、わずか3メートル。


「では・・・おやすみなさい」

「こんな、馬鹿なことが・・・」


月を背負ってチェーンソーを振り上げる瞳を前に、すぐ先に訪れる終わりを見た。

唸りを上げて回転する鎖状の刃が、司の肉体をミンチに変えるべく振り下ろされる。

初めて体感する死の恐怖に、司の身体は完全に硬直していた。


「く・・・っ!」


最期の時を覚悟して、両目をきつく閉じる。


と、その時――


――!!

 

f:id:Sleni-Rale:20200602234104p:plain



「させませんっ!!」


振り下ろされるチェーンソーの刃を横合いから弾き飛ばし、玲が勢いを殺しつつ司の前方へ着地する。

 

f:id:Sleni-Rale:20200602234125p:plain



直後、返す刃を逆袈裟に切り上げ、後方へと大きく跳ねる瞳のメイド服を削り取る。


「・・・これは、なんのマネですか?」

「司は、死なせませんよ」


玲が日本刀を構えて司を庇い、瞳の前へと立ちはだかる。


「れ、玲・・・? どうしてっ・・・!?」

「仲間が危機的状況なら、助けるのが当たり前です」

「・・・僕はっ! 君を裏切って逃げようとしたんだぞ!?」

「・・・知っています」

「だったら――!」


背後で捲し立てる司に、玲がはぁと、これ見よがしにため息をつく。


「司も落ちたものですね」

「なっ・・・」

「弱音を吐いている暇があるなら、早く策を立てなさい。 あなたはもっと生き意地が汚いはずです!」

「・・・っ!」

「違いますか?」

「・・・・・・ああ、そうだね。 その通りだ! 玲! 時間を稼いでくれ!」

「了解っ!」


返答と同時に、玲が瞳の間合いに飛び込んでいく。


――!!

――!!!


交わる日本刀とチェーンソー。

2つの鋼が悲鳴を上げ、夜の森に火花が咲いては消えていく。


「ふっ――!」


――!!


その宙に舞う赤い花弁を切り裂きながら、日本刀の切っ先が敵を食らいに走る。

 

f:id:Sleni-Rale:20200602234154p:plain



が、瞳はそれをチェーンソーで弾いて回避。

驚異的な動体視力は夜でも衰えることを知らず、玲の放つ突きを紙一重でいなしていく。

改めて確認する化け物の性能に、玲が目を見開く。

見開きつつも、踏み足を変えて瞳の右側へ移動――突きから撫で斬りへ変化、続けざまに胴を払おうと刀を返したところで、


「っ!」


――!!


視界の端から飛んできた強烈な一撃を、皮一枚のところで回避してのけた。

髪が飛ぶ。

服が千切れる。

掠めた肌に血が滲む。


――!!!


それでも、恐怖に鳴りそうになる歯を噛み殺し、玲は直後に降ってくる異形の刃を潜り抜けた。

だが、それだけでは終わらない。


「私と渡り合うとは、見事な剣の腕ですね・・・。 しかし、それもいつまでもつかっ!!」


瞳はチェーンソーを木の枝か何かのように軽々と振り回し、玲の首を刈り取るべく凄まじい勢いで迫っていく。


――!!!


周囲の落ち葉を巻き上げ、ありとあらゆるものを破断しながら進むそれは、さながら竜巻の様相だった。

その暴風域から、しかし玲も出ようとしない。

紙一重で避け、あるいは紙一重で裂けながらも、決死の思いで時間を稼いでいる。

日本刀の刃がこぼれ、皮が避け肉が破れ血が噴き出しても、悲鳴の一つをあげることなく起死回生の策を待ち続ける。


――司は、その様を冷静に見ていた。

そしてタイミングを見計らい、PDAを操作した。

直後、その場にいる全員のPDAから、メールの着信音が鳴り響く。


「・・・っ!?」


瞳が、僅かながら動きを止める。

本文が何もない、白紙のメール。

それこそが、司が考えついた瞳の気を引くための策だった。

自分の特殊機能『半径6m以内にあるPDAの特殊機能を使用できる』を使い、瞳の『メール送信』機能をコピーしたのだ。

そうして作った隙をつき、司は玲を掴んで引き寄せ、その目と耳を手で覆った。

同時に投げ込んだのは、司の最後の切り札――閃光音響手榴弾


「それは――!」

 

f:id:Sleni-Rale:20200602234234p:plain




――!!!!

 


瞬間、凄まじい爆音と閃光が、周囲を蹂躙した。


「・・・くっ! 小癪なマネをぉっ!!」


強烈な光と音の前に、瞳の動きが完全に止まる。

片膝をつき、両目を手で押さえながら苦悶の声を上げる。

「今だ! 逃げるよ!」

「はいっ!」


司も玲も、お互い耳はほとんど聞こえなかったが、口の動きと状況から意図を察し、その場から駆け出した。


・・・・・・。

 

・・・。

 

 

 

f:id:Sleni-Rale:20200602234259p:plain

 

「山小屋か・・・こっちにもあったんだ」


瞳の襲撃から逃れた司たちは新たな山小屋を発見していた。

司の使っていた山小屋から1kmほど離れた場所にあるその場所は、かつて悠奈が拠点としていた山小屋である。


「ここで少し身体を休めよう。 もう少しだけ、歩ける?」
「はい・・・大丈夫、です」


・・・。


「・・・誰もいなくてよかった」


山小屋の周囲を見て回っても、得に誰かが潜んでいる様子はなかった。

地形的には、司が拠点としていた山小屋よりも攻めに弱いが、山小屋に置いてあった武器を上手く使えばトラップも作れるだろう。

 

f:id:Sleni-Rale:20200602234312p:plain



「・・・誰かが使っていた痕跡がありますね」
「そうだね。 もしかしたら、その誰かが戻ってくるかもしれない」
「・・・長居は禁物でしょうか?」
「だからといって、玲の体力も限界でしょ。 危険を承知でしばらく間借りさせてもらおう」
「・・・足手まといですね。 私は」
「・・・・・・ひとまず、傷の手当てをした方がいい。 幸い、応急処置に必要なものは揃っているようだし」
「・・・ええ」


セーラー服の上着に手をかけた玲を見て、司が視線を逸らす。


「僕は、隣の部屋にいるよ」
「あの、司・・・」
「なに?」
「その・・・手伝ってもらっても、いいですか?」
「・・・・・・うん」

 

f:id:Sleni-Rale:20200602234351p:plain



瞳に襲われた際、矢面に立って食い止めた玲の傷は、思った以上に深かった。

挫折に脱臼、一部は骨にヒビが入っているようでさえある。

加えて、相手の得物は、掠めただけでも皮を剥ぎ肉を抉るチェーンソー。

そんなものと何十合も打ち合っていれば、全身が擦り傷切り傷だらけになるのは、当然の結果だろう。

それら刻まれた生傷の痛々しさに、司は息を潜めて目を細めつつも、黙々と玲の治療をこなしていた。

肢体にこびりついた泥と血をふき取り、1つ1つの傷口に消毒を施して、包帯を巻いていく。


「・・・痛っ!」
「ごめん、強く締めすぎた?」


苦痛に顔を歪めた玲が、小さく悲鳴を上げる。

その反応に、司は彼女の二の腕を巻いていた包帯を急いで緩めた。


「・・・大丈夫です。 この程度、かすり傷みたいなものですよ」


強がって平静を装う玲の額には、大粒の汗が浮かんでいる。


「玲・・・どうしてあの時、僕を助けたの? あのメイドと戦えば、無傷ではいられないって言ったのは君だよ」
「・・・仲間が危機的状況なら、助けるのが当たり前です」


玲は、あの時とまったく同じ言葉を返してくる。

それに、司は眉を顰(ひそ)めてかぶりを振った。


「・・・僕は、君の仲間じゃない。 君を見殺しにして、1人だけ逃げ延びようとしたんだ」
「・・・そう、でしたね。 司に裏切られたと知った時、私はとても・・・悲しかった。 司に信頼されていない自分が悔しくて、何も言わずに置いていかれたことが悲しくて、私を囮にした司が憎くて・・・胸が、すごく・・・痛かったです」
「・・・・・・」
「・・・おかしなものですね。 最初に会った時は、司のことをまったく信用していなかったのに。 司が怪しい素振りを見せないか常に警戒していました。 万が一、裏切られても即座に対応できるように、刀は手放しませんでした。 それをしなくなったのは・・・きっとあの時からです」
「あの時・・・?」
「私が初音を崖から突き落としてしまった後、司は私に刀を手渡してくれました。 そして私を、仲間だと言ってくれました」
「・・・そんなの詭弁だよ。 君を騙して、利用し続けるための偽りの言葉だ。 本当は玲だってわかっていたはずだよ。 僕らは最初から打算と計算の上に成り立ったドライな関係だった」
「だったら、どうして司は私を介抱してくれるんですか?」
「え・・・?」


言われてみれば、その通りだった。

戦力として期待していた玲だったが、この怪我では、これ以上戦闘を行うのは不可能だろう。

連れて歩くにも、この怪我では足手まといになる。

もう既に、司にとっての彼女の存在価値は、ゼロと言ってもいい。

そして何より、司のクリア条件は『クリア条件を満たしたプレイヤーが3人未満』。

玲とは、競合しないというだけで、生かしておくメリットがない。


「今の私が、司にとってどんな価値があるのですか?」
「・・・それは、僕にもよくわからないよ。 人間の心なんて単純明瞭で、それを操作するなんて容易いことだと思っていた。 だけど、現実は想像以上に複雑で・・・僕の思い通りになんて、なってくれなかった。 ・・・馬鹿みたいだよね。 他人どころか、自分自身の感情だってよくわかっていないんだから・・・」


真っ直ぐ見つめてくる玲から視線を逸らし、司が自嘲気味な笑みを浮かべる。


「まあ、それでもね・・・別に僕だって、女の子の裸に興味がないわけじゃないよ」
「・・・はい?」
「玲って身持ちが堅そうだからさ。 こんな無防備な姿を拝めるなんて、僕は役得だと思わない?」
「・・・貧相な身体には、興味がないと言っていませんでしたか?」
「玲は意外と着痩せするタイプかも。 想像していたより成長してて驚いたよ」
「なんだか、司に肌を晒しているのが急に疎ましく思えてきました。 あまり私に近寄らないでください」
「ハハハッ」


ささやかな双丘を腕で覆い隠しながら、玲がジト目で睨みつけてくる。

そんな彼女に、司はいつもの小憎らしい微笑を浮かべた。


「玲と一緒にいると退屈しないからね。 それが、キミを生かしておく理由ってことにしてくれないかな?」
「はぁ・・・私は暇つぶしの玩具ですか・・・。 無念です・・・」
「そう? 光栄に思えばいいんじゃないかな――っと、よしっ、これで終わり」


最後の傷口に包帯を巻き終えて、司が立ち上がる。


「外を見張っておくよ。 その間に仮眠をとっておくといい」
「・・・司」
「ん?」
「ありがとう、ございます」
「・・・・・・」


司は小さく微笑を浮かべて、ひらひらと手を振りながら山小屋を後にした。


・・・。

 

「・・・さて、と。 これからのことを考えておかないと」


1つ大きく伸びをしてから、頭をきっちりと切り替える。


「当面の問題は、あのメイドだよね・・・」


この山小屋に居座っても、発見されるのは時間の問題だ。

PDAを放棄してメイドの特殊機能から逃れれば、しばらくは時間を稼げるかもしれない。

しかし、地図やメモリーチップを使えない状態は、あまりにもリスクが高すぎる。

しかも、ルール上3時間以上はPDAを手放せない。


「だったら、ここで迎え撃つしかない・・・」


玲ですら相手にならないということは、近距離ではまず勝ち目がない。


「遮蔽物のない場所に誘い込んで、面で攻撃していくか・・・」


例えば、サブマシンガンやショットガンなどの強力な火器を手に入れ、メイドの動きを封じる。

地雷があるならば、それも効果的だろう。

問題は、大半の武器を以前の山小屋に置いて来てしまったことだ。

回収に戻る猶予はなく、新たに見つけようにも、メモリーチップの残量が心もとない。


「となると、あとは時間との戦いだね。 あいつが再び襲撃してくるまでに、こちらがどれだけ準備を整えられるかが勝負の分かれ目になる・・・。 その後は、天に采配を委ねるしかない」


・・・。