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光輪の町、ラベンダーの少女【2】

 

・・・。

 

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「宗介! 起きなさい! 遅刻するわよ!」

「ん?」

「いつまで寝てるのよ。 これ以上遅刻したら大変なことになるって、はるかちゃん言ってたわよ」

「あ、朝か」


窓から差し込んでくる光がまぶしい。


「卒業できなくなるなんて、お母さん、そういうの嫌だからね!」
「今日は、はるか迎えに来なかったの?」
「はるかちゃんなら、野菜の仕入れがあるとかで自転車で朝早く出ちゃったわよ」
「・・・仕入れか。 はるか、体もつのかよ。 あ、そういや今日はテストだったな」


俺は時計をみた。

8時30分か。

ホームルームにはまだ間に合うな。

ふと部屋の片隅の竹刀を見た。

また悪夢にうなされるのはごめんだ。

桜木に返すか。

竹刀を背中に掛け、すっからかんのカバンを持つ。

部屋の前に母さんが立っていた。


「学園に竹刀持っていくの?」
「ああ」
「あんた、剣術でも始めたの?」
「ちげーよ。 知り合いに借りてたから今日、学園で返すんだよ」
「なんだ残念。 てっきり剣術はじめたのかと思っちゃったじゃない。 毎日ダラダラ生活してないで、なにか熱くなれるものでも見つけたらいいのに」

「だりーよ」

「お母さんが若い頃なんて毎日ディスコで踊りまくってたわ。 あの頃は今よりもっと美人で凄くモテたのよね」
「はいはい。 その話は何回も聞いたから」
「ああ青春だったわ。 今でも思い出すわ」
「いってきまーす」


話しだすと止まらない母さんの話を無視して家を出た。

最後まで聞いてたら遅刻はおろか、明日になってしまう。


・・・・・・。

 

・・・。

 

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公園に差し掛かり、ふと足をとめた。

数日前、ここで出会った少女のことを思い出した。

・・・桜木ヒカル。

あの光景が脳裏から離れないでいた。

・・・。

どうせテストなんて受けたって、たいして点数取れないからな。

今日は体の調子が悪いってことにして、公園で昼寝でもするか・・・。

ペンキ塗りたてにだけは注意しないとな。

・・・ん?

ベンチに先客がいることに気付いた。

見覚えのない制服を着ている少女が座っている。

なにか本を読んでいるようだ。

 

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・・・何の本を読んでんだろ。


「なあ、俺も座っていいか?」
「どうぞ」
「どうも。 もしかして、おまえもサボりか?」
「サボり? いいえ」
「俺もお前もこんな時間にここにいるってことは少なからず同士だな」
「ここの公園には、よく来るの?」
「たまにな。 見ない顔だな」
「そうね。 私は初めて来たんだもの」


俺はその少女の顔をよくみた。


「私の顔、何かついてる?」
「いや、そうじゃなくて、どこの学園生? 俺はこの先にある新山学園なんだけど、その制服、うちのじゃないだろ」
「・・・星雲学園よ」
「星雲学園? すげぇじゃん」


私立星雲学園。

文武両道の精神をモットーとした、この地区でも指折りの名門校だ。

もちろん新山学園も名門といえば名門なのだが、星雲学園には及ばない。

学力はもちろんのこと、運動に関しても、どうにも一歩及ばないのだ。

去年の夏も野球部はこの星雲学園に決勝で敗れ、全国大会を逃していたりする。


「星雲の生徒もこんなとこで授業さぼったりするんだな。 わかった! おまえ落ちこぼれだろ!」
「落ちこぼれ? そうね」
「俺も落ちこぼれなんだよ。 落ちこぼれ同士、仲良くしようぜ。 俺、椿宗介」
「・・・セツナ。 暁セツナ」
「セツナか。 珍しい名前だな」
「あなたの名前、椿宗介、いい名前ね」
「だろ? 名前負けしてないところがまた凄いだろ」
「そうね。 凄いわね」
「おいおい、冗談だって」
「そうね。 冗談なのね」
「なんかおまえ面白いな」


本から目を離さず俺と会話するセツナはどこかクールな魅力があった。


「さっきからなに読んでるんだ?」
「小説よ」
「ああ、それは分かってるよ。 俺、落ちこぼれだけど、こればBOOKってことぐらいはわかるぜ」
「そうね。 これがPENには見えないものね・・・」
「おもしろいの?」
「おもしろいわ」
「俺も今日は学園に行く気にはなれねぇから、読書でもしようかな」


カバンから漫画雑誌をだした。

俺はカバンの中は教科書より漫画の割合の方がはるかに高い。


「それはなに?」
「今日発売の新刊! でも日曜の夜には売ってんだぜ」
「それは、おもしろいの?」
「セツナは読んだことないのか?」
「読んだことないわ」
「なんで読まないんだ? こんなに面白れぇのに」


俺は漫画雑誌を開いた。


「読む必要がないもの。 だって全ての物語はこの本によって語りつくされているから」
「まじで? その本書いたヤツすげえな。 尊敬するわ」
「今、読書しているから、あまり話しかけないで」
「てかさ、大丈夫なのか? こんなところでサボってて。 星雲学園ってめちゃくちゃ厳しいってきいたぞ」
「サボってないわ。 読書してるの。 あなたはいいの? こんなところにいて」
「今日、テストなんだけどさ、どーせやっても大した点数とれないしな。 俺もあんたと一緒に読書タイムにするよ」
「私は学園には行かなくていいの」
「でも星雲なんだろ? え? それってもしかしてコスプレ?」
「登校するのは午後からよ。 授業は免除されてるから」
「よくわかんねぇーけど、行かなくても卒業できるなんて羨ましすぎる」
「そうね」
「なあ、その本のタイトルなんていうんだ?」
「タイニー・アンドロニックス」
「え?」
「大昔に書かれた素晴らしい作品よ」
「それってギャグとかある?」
「ギャグはないわ。 だって悲劇だもの」
「朝からよくそんな暗いもん読めるな、やっぱり朝は漫画でしょ! テンション上がるし」


セツナは本をカバンにしまい、ベンチを立った。

 

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「どーした?」
「公園は静かだと思ったんだけど、違ったみたいね」
「もしかして、俺、うるさかった?」
「あなたのせいじゃないわ。 ただ、私がうるさいと感じただけ」


そういうとセツナは、縦長い布袋を背中に掛けた。


「それってもしかして・・・」


俺は見覚えのある布袋をみていった。


「・・・これは竹刀よ」
「剣術やってるのか?」
「そうね。 やってるわ」


俺は自分の持っている竹刀をセツナの前で構えてみせた。


「それ」
「ほら!」


俺はセツナに桜木から預かっていた竹刀を見せた。


「どう?」
「あなた、剣術部なの?」
「え? ああ、うん」


俺はとっさにウソをついた。


「新山学園に剣術部なんてあった?」
「さ、最近できたんだよね。 まだ新しいから大して実力もないけどな」
「そう」
「星雲学園って剣術強いの?」
「強いかどうかは分からないわ」
「まあ、お互い頑張ろうぜ!」
「ねえ、素振りしてみせて」
「え? ここで?」
「公園だし、十分な広さでしょ」
「・・・ああ」


俺は竹刀を構えた。

セツナは俺をじっとみている。

・・・なんだよ。

そんなに真剣にみるなよ。


「はやく、素振りをみせて」
「まあ、そんなに焦るなって」


俺は竹刀を天高く掲げ、おもいっきりスイングをした。


――ッッ


「どう?」
「そうね」
「いやぁ今度の大会でいいとこまでいっちゃうかもなぁ」
「それは野球でってこと?」
「へ?」
「もの凄くいい素振りだったわ。 ただし、剣術ではなく野球として」


・・・げ、しまった。

つい癖でバッティングセンターでやるみたいに振っちまったよ。


「あなた、剣術やったことないでしょ?」
「やったことあるよ」


俺はウソをつき通した。


「じゃあもう少し稽古したほうがいいかもね」
「へぇ~偉そうにいうんだな。 じゃあセツナは相当の達人だったりして」
「その竹刀、あなたのじゃないでしょ?」
「え? なんでわかったの?」
「竹刀をみれば、どんな人間が使っていたかくらい分かるわ」
「そんなもんなんだ」
「この竹刀・・・随分と使いこまれているわね。 それでいて、致命的な痛みは一つもない」
「ボロボロにみえるけどな」
「これを使っていた人は、とても繊細で、かつ大胆な攻撃を得意とし、芯のぶれない冷静さを持ち合わせた人物」
「それさ、友達にもらったんだよね」
「友達。 名前は?」
「え? 桜木っていうんだけど、そいつがさぁ、これまたすげー強いやつでさ・・・あ、ごめん、何でもない」


・・・言わないって、桜木との約束だったな。


「桜木? ・・・その竹刀、もう少し見せてもらっていい?」


セツナは俺の手から竹刀をとった。


「これ・・・都築・・・」


竹刀には『都築』と彫られているようだ。


「ん? どうした?」
「椿くん、あなたこの都築って人間を知ってるの?」
「都築? 知らないけど」


セツナの表情は冷静さを保っているが、どこか様子がおかしい。


「なに? この竹刀の持ち主がどうかしたの?」

 

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「タイニー・アソドロニックス。 彼はその人生をかけて、自分の娘の的に復讐を誓う」
「え? なになに?」
「タイニー・アンドロニックスは悲しい復讐の物語よ。 もしも椿くんが、この竹刀の持ち主にあったら伝えて欲しいの。 私はあなたを逃さないって」
「・・・うん。 多分、会うことないと思うけど」
「そろそろ行くわ。 私、うるさいところは苦手なの。 それじゃあ」
「まあ難しい本もいいけどさ、たまには漫画も読んだ方がいいぜ」
「じゃあ、それ貸してもらえない?」
「漫画?」
「そう」
「まだ読んでねえけど、やるよ」
「面白いのよね?」
「ああ」
「楽しみね」


「セツナ~!」


公園に誰かが走ってきた。

 

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「ああ、樹」
「ああ、樹じゃないわよ! もう何やってるのこんなところで!」
「読書よ。 樹、また裸足」
「あのねぇ! 今日はミーティングだっていったでしょ!」
「うるさい人は苦手」
「あんたが個人行動ばっかりとるからでしょーが!」
「そうね」
「もう、みんな待ってるんだからいくわよ! あ、あれ? 誰~?」
「今、知り合ったの」
「なに!? ちょっとイケメンじゃない! あんた男に興味なさそうにみえて案外やるわね! この抜け駆け女!」
「意味が分からないわ」

 

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「あの~。 はじめまして、星雲学園3年B組、七星樹でーす!」

「ああ、俺、椿宗介」

「椿さんっていうんですかぁ~? やばい、カッコいい名前!」

「どうも」

「ちょっと! あたしありかも。 ビビってきた」


セツナとは対照的に、なんか元気な子だ。


「今度、遊びません? あたし、超暇なんです!」

「あ、俺、そういうの無理なんだよね」

「・・・あ、ほんとだ! これは失礼!」

「暇なわけないでしょ。 これから夏まで稽古付け」

「はぁ~そうなんだよねぇ~。 考えただけでうんざり。 あたしたち、悪魔と契約したのよね~。 汗臭い女なんてもうやだ~」

「あんたも剣術部?」

「そうでーす! 星雲学園剣術部エース、七星樹でーす!」

「エース?」

「ミーティングは何時?」

「いや、もう始まってるっつーの」

「そう。 じゃあ急がないと」

「だから、最初っからそー言ってるから」

「樹、あなたまた裸足」

「だって、こっちのほうが超楽じゃん」

「ケガしないようにね。 道にはガラスの破片とかあるから」

「大丈夫、大丈夫! あたし鍛えてるから。 それに裸足の方がスピードでるんだよね~!」


確かに樹はものすごいスピードで公園に入ってきたな。


「あれぇ~? それなーんだ?」

「あ、これ、竹刀だけど」

「えっ!? 宗ちゃんも剣術やってるの?」


宗ちゃんって・・・。


「新山学園の剣術部」

「新山学園? え~? あの学園って剣術部あったんだ~? 超以外~」

「最近できたみたいよ」

「へぇ~。 宗ちゃんは強いの?」

「いや、はじめたばっかだからさ」

「ふ~ん。 だったらまたどこかで会うかもねぇ! 頑張ってねぇ。 セツナ行くよ」

「あの竹刀、都築のものらしいの」

「・・・都築? それってほんと?」


樹の顔色がかわった。


「名前が、書いてあったわ」

「・・・へぇ~。 都築ねぇ~。 あたしもう忘れちゃった。 誰だっけそれ」

「椿くん、漫画、ありがとう」

「なぁ? 星雲学園って剣術強いのか?」

「あ~そういう質問しちゃうんだ~。 強いよ、あたし」

「凄い自信だな」

「・・・でもセツナはもっと強いよ」

「樹、余計なこといわないで」

「だってあたし正直ものですから~。 強いものは強い!」

「私、先に行くから」


セツナは樹を置いて歩きだした。


「ちょっと待ってよ~! なに怒ってんのよ~! 無愛想だから怒ってるのか分かりにくいっつーの!」


樹はセツナの後を追いかけていく。


「あ、宗ちゃん、またねー!」


二人は公園から出ていった。


暁セツナ。


不思議な雰囲気の子だな。

どこか寂しげな目。

桜木に感じた時と別の何かを俺は感じた。

俺は竹刀をみた。

都築? ・・・誰なんだろう。

とりあえず学園にいって、桜木に聞いてみるか・・・。

俺は学園に向かった。


・・・・・・。

 

・・・。

 

 

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「おはよう。 宗介くん」
「お、おはよう」
「テスト一つ、終わっちゃったよ。 どーすんのよ!」
「今から取り戻す」

 

「宗介にそれは無理な話だな」

「やってみないと、分からないだろ」

 

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「宗介くん、はるかさん、水嶋くん、おはようございます」

「リコおはよう。 おまえ、テストどうだった?」

「生物は得意だったので、なんとか出来たと思います」

「そっか。 一時間目は、生物か」

「はるかさん、キリンは昔、首が今みたいに長くなかったのをご存知でしたか?」

「え? そうなの?」

「はい。 キリンは高いところにある、リンゴをとるために、無理に首を伸ばした結果、進化したといわれています」

「進化論だっけ?」

「それは知りません。 だけど、はっきりいえることがあります」

「え? なに?」

「キリンは進化するまえは、馬と対して変らないということです」

「たしかに、区別がつかなかったかもしれないわよね」

「ところで、リコの首はのびると思いますか?」

「それはどうかな? 人間はもうじゅうぶん進化したからなあ」

「そうですか」

「うん」

「なんだこの会話は」

「この国の法律ではキリンはペットとして飼っていいことになってるんです。 でもリコには飼えません。 なぜなら、リコにはキリンの餌を買うお金がないからです」

「そうだね。 あと、土地もないよね」

「キリンって飼っていいんだ? 宗介知ってた?」

「しらねーし、興味もない」

「こんなんですが、鈴木はるかさん、友達になってください!」

「よ、よろこんで」

「ありがとうございます」

「おいリコ、もう少しナチュラルに会話できねーのかよ」

「リコは友達をつくるのが下手ですから」

「そんなことないよ。 ほらこうやって仲良くなれたじゃない」

「うれしいです。 これで友達と呼べるもの、4人」

「4人って誰?」

「はるかさん、水嶋くん、宗介くん」

「ば、ばか! 俺を数に入れるなよ」

「あとは、 ・・・桜木ヒカルさん」

「ああ、桜木か・・・」

「手に持ってる、それはなんですか?」

「ああ、これは竹刀だよ」

「なんで竹刀なんて持ってるの?」

「どこかの学園に殴りこみにでも行く気じゃないよね?」

「ち、違うよ。 これは、その、知り合いに借りてて」


・・・桜木のだとは言えないな。


「宗介って、最近、温厚になっちゃったよねぇ。 平和ボケってこわいなぁ」

「・・・・・・」

「ふたりとも、ケンカとか絶対にだめだからね。 私、絶対許さないから」

「しないよ。 はるかちゃんが怒るの見たくないし、な?」

「・・・ああ」


俺はふと、教室内の桜木の席を見た。


「桜木、来てないのか?」

「そうなの。 栗林先生が言ってたんだけど、風邪ひいて寝込んでるんだって」

「そっか」

「ヒカルちゃん、今ごろつらいんだろうなぁ。 俺、お見舞いいってこようかな」

「仮病じゃねーの? テスト受けたくないから」

「あのねぇ、そういう風にいうのは良くないよ。 宗介じゃないんだから、仮病なんて誰も使いません」

「仮病・・・リコはよく使います。 そしてバレます」

「俺もよくやってたなぁ。 ストーブに体温計あてたりさ、かーちゃんの声まねして休みの電話したり」

「ヒカルちゃんはそんな卑怯なことしません!」

「なんでわかんだよ」

「なんていうか、勘よ。 そんなに話したことあるわけじゃないけど、ヒカルちゃんってまっすぐな目をしてると思うんだよね」

「ふーん。 おまえ、随分あいつの肩もつんだな。 たかだか知り合って2、3日なのに」

「いい人か悪い人かくらい、わかるわよ。 ときどき、何考えてるか分からないところあるけど」

「桜木ヒカルさんは、リコと友達になってくれました。 こころの広い人です」

「やべ、次のテストもうすぐはじまるぞ」


・・・。

 

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「なあ? 次の科目ってなに?」

「外国語よ」

「なあ、はるか? ちょっとだけ答案用紙みせてくれよ」

「自分でなんとかしてください」

「今さらなんとかできないから、言ってんじゃん」

「ちゃんと勉強しないからこんなことになるんでしょ」

「ケチ。 ・・・なぁリコ、見せてくれないか?」

「わかりました、みせます」

「話わかんじゃん!」

「リコちゃんダメだよ」

「でも、宗介くん、困ってます。 リコ、助けたい」

「そーだリコ。 俺はいま、人生最大に困ってる」

「じゃあ、俺も人生最大に困ってる」

「分かりました。 リコ、水嶋くんにも全力でみせます」

「じゃあ俺先な。 そのあとに時間あったら回すよ」

「あんたたちね、そんなズル絶対に認めないんだから」

「いいえ、助けます」

「リコちゃん、ダメだって!」

「いいえ、助けることで友達が増えるのなら、あたしはズルでもなんでもやります」

「あのねぇ・・・」

「よし、じゃあリコが終わったら、先生が見えないスキをみはからって答案用紙をこっちによこせよ。 俺が合図するからな」

「わかりました」

「サイン決めといたほうがいいな」

「サイン?」

「そうだな、俺がグーを出したら『テスト用紙をパスしろ』の合図だ」

「グーはパス、グーはパス・・・」

「それから、パーにしたら、『待て!』の合図だ」

「パーは待て、パーは待て・・・」

「そして、チョキは『よくやった!』のVサインだ。 これはこの任務が無事遂行されたときに、俺が出す」

「チョキはVサイン、チョキはVサイン・・・」

「わかったか?」

 

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「グーはパス!」

「そうだ」

「パーは待て!」

「いいぞ!」

「チョキはVサイン!」

「完璧だ」

「じゃあ、それが終わったら、宗介が俺にパスな」

「パスがいけば・・・いいな」

「じゃあ、私はそのカンニング作戦を、全力で阻止するわ」

「はるか、どうやらおまえと俺は敵のようだな」

「そうね」

「で、それが終わったら、必ず俺にパスね」

「・・・ふっ」

「ふっ・・・じゃねぇよ。 マジでお願い!」

「グーはパス、パーは待て、チョキは・・・えっと・・・」

 

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「グーはゴリラ」

「グーはゴリラ、パーは・・・」

「パンダ」

「あ、そっかパンダ。 パンダは笹を食べるのがスキ」

「ちげーよ。 はるか! 余計なこといってんじゃねぇぞ! リコ落ち着け」

「はい」


男性教師が入ってきた。


「それでは、外国語の期末テストを開始する。 時間は50分。 なお、不正行為及び不審な行動をとったものは、いかなる点数であっても0点とみなす」


・・・ばれなきゃいいのだよ。


「では、テスト用紙を配る」


前の方から用紙がまわってきた。

・・・くそ、外国語だらけで全く読めねぇ。

 

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(こんなことなら外国人の彼女を作っとくんだった)

 

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(早く終わらせて、宗介の不正を未然に阻止)

 

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(パンダは笹を食べすぎると寝る・・・)


「では、はじめ!」


俺はリコに目をやる。

リコは俺の方を向いて、コクリとうなずいた。

リコの答案が完成するまで、教師の動きをチェックだな。

教師は前の方から教室中を見渡している。

・・・全体の様子をまんべんなくうかがっているわけか。

五分が過ぎたあたりで教師は立ち上がり、教室の真ん中の通路をまっすぐ歩きだした。

なるほど・・・今度は、生徒に近づきながら個々に注意を促すわけか。

教師は俺の横を通り過ぎ、一番最後の席までいって、繰り返す。

そして俺の横をまた通り過ぎた。

ここがチャンスのポイントだな。

俺の席は中央にある。

そして、リコの席は斜め前。

ちなみにはるかは斜め後ろ。

どーでもいいが水嶋は俺の真後ろだ。

勝負は一瞬。

教師が折り返し、俺の席を通り過ぎた後、背を向けて完全に死角になる、そのときだ。

俺は死角になる秒数を数えた。

・・・5秒か。

教師はまた一番前から教室全体を見渡し、そこから10分後に同じ行動を繰り返した。

・・・ラスト10分前の死角を狙うか。

みつかったらゲームオーバー。

まるでアクションゲームだな。

俺はリコを見た。

急げリコ! 早くテストを完成させるんだ!

リコは夢中で問題を解いている。

大したことない教師が監視役でよかった。

これが栗林だったら・・・。

栗林はテストの最中、前にはいない。

一切動かず、常に教室の一番後ろから俺たちを監視している。

それが最も厄介で、最もカンニングを防げる方法らしい。

もしかして見られているんじゃないかという不安にかられる。

栗林にしばられていると同時に、その不安が自分自身をしばり、カンニングができなくなってしまうのだ。


(宗介くん、出来ました!)


リコがこっちに合図を送った。

よし、よくやったリコ。

だが、まだ教師は前から見ている。

俺はリコにパーの合図を出す。


(パーは待て、パーは待て。 待ちます!)


リコはうなずいた。

そうだ。

作戦は教師が動き出してからだ。


(絶対にカンニングさせないんだから)


(あー、腹減った。 たしかラーメン屋、今日半額だったな)


(パーは待て、パーは待て)


教師は俺の前を通り過ぎて、教室の後ろに行った。

まだだ。

教師が戻って通り過ぎたら本当のチャンスだ。

俺はさらにパーの合図を送った。


(パーは待て、パーは待て。 パーは・・・パンダ?)


教師は折り返し、俺の前を更に通り過ぎ、背を向けた。


今だ!!


俺はついにグーをリコに出した。


(グー! グーはパス! グーはパス!)


俺はリコに手を伸ばす。


(グーはパス、グーはパス!)


リコは答案を俺にパスしようとする。

もっと手を伸ばせ・・・。

 

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(ぐふぅ・・・)


リコの手は短い。

くそっ。

あと少しなのに・・・。


・・・痛てっ!


後ろから消しゴムが飛んできて、俺の頭に当たった。

飛んできた方向を振り返る。

・・・はるか!

てめぇ、何邪魔してんだよ。

 

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(私じゃないもん・・・)

 

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(なぁ? まだ?)


水嶋が後ろから俺のイスを蹴る。

くそ。

仕方ねぇ。

俺は席を少し立ち、答案をリコから奪い取る。


(パスです!)


教師はまだ俺たちに背を向けている。


(チョキ! Vサイン!)


リコは俺にピースしてくる。

まだだよ。

この答案を写して無事におまえに返したらVサインだ。


(早くしてくれ~! 俺の写す時間がなくなるだろ!)


水嶋はガンガン蹴ってくる。


(やめろ・・・悪いが答案がおまえに回ることはない!)


俺は答案をみた。


ん?


・・・なんだよこれ!


リコから渡ってきた答案には答えが書いてない。

おい! リコ、全然終わってねぇーじゃん・・・。


(チョキはVサインです!)


もの凄い笑顔で俺にピースしてくる。

ピースじゃねぇよ。

答案用紙のいたるところに、やたらリアルな動物の絵が書いてある。


(キリン、パンダ、ライオン)


ふざけろよ・・・。


(宗介! まだかよ! 急げ!)


俺は答案を水嶋に回した。


(やっと来た! ・・・ってなんだこれ!)


水嶋は力なく俺に答案を戻す。


(カンニングさせてもらう相手を完全に間違ったみたいだな)


俺はリコに答案を戻そうとした。

すると後ろからまた消しゴムが飛んでくる。


(ぜったい、カンニングなんてさせないんだから)


細かく切り刻んだ消しゴムの欠片をマシンガンのように、次々投げてくる。

はるかのせいでリコにうまく返せない。


(喰らえ! 喰らえ!)


やめろ・・・。


消しゴムが俺の口に入る。


「やめろっつってんだろ!」


俺は立ち上がり、声を出してしまった。


「あ・・・」

「椿、どうした?」

「いや、その・・・」


教師が俺に近づき、答案をチェックする。


「これ、椿の答案用紙じゃないな? ・・・佐田リコ」

「いや、違うんすよ。 落ちてたんで拾っただけです」

「佐田? どういうことだ?

「あの、あの、カンニングじゃないです・・・」

カンニング? おまえたちまさか」

「ただ、サインをしただけです」


・・・バカ! 余計なこというな!


「佐田? 椿にカンニングさせたのか?」

「パーはパス、グーはグリンピース、チョキはハサミ・・・」

「君たち、二人、あとで職員室に来なさい」

「あの、後ろから消しゴムの破片がすげー飛んできたんですけど・・・それで、その・・・」

「消しゴム?」


教師は、はるかの机の上にある消しゴムの欠片を見た。


「鈴木、なんだこれは」

「え? その・・・」

「あと、後ろの水嶋くんも、俺のイスをガンガン蹴ってきました」

「おまえ・・・友達を売るのかよ!」

「友達? ただのクラスメートだろ。 それに、この計画を立てたのはおまえだし」

「水嶋、おまえも共犯か?」

「違いますって。 俺、関係ないっすもん」


教師は水嶋の答案を見る。


「何も書いてないじゃないか」

「・・・いや、もうちょっとしたらやろうかなぁって思って」

「四人とも職員室に来なさい」


・・・・・・。


・・・。

 

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カンニングですってね」

 

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「すいません」

「鈴木さん、あなたもなの?」

「・・・はい」

「なるほどね。 あなたが、見せる役割、そして椿くん、水嶋くんが見る役割ってことね」

「まあ、概ねそんな感じすね」

「ところで、あなたなに? なんでいるの?」


栗林はリコに聞いた。


「あたしは、カンニングさせました」

「あなたが? まさか。 だって佐田さん、あなた人に見せるほど勉強できないでしょ?」

カンニングをさせて友達を増やすんです」

「何をいっているの? それに、あなたの答案用紙をみせてもらったけど、動物の絵しか描いてなかったわよ」

カンニングは友達を増やすための近道だから」

「それは近道とはいいません」

「・・・じゃあ坂道ですか?」

「道の話はやめて。 すこし佐田さんは黙っててもらえるかしら?」

「黙ります」

「まあ、なんつーか、俺と宗介がカンニングしたつーことは間違ってないんで、あれでしょ? 処分でしょ? 停学ですかね?」

「停学で済めばいいんだけど」


栗林はニヤニヤしている。


「あの、私も同罪なんで二人と同じ処分をください」

「俺が悪かった。 はるかは関係ありません」

「鈴木さん、あなたは優秀な生徒よ。 こんなところで、人生を棒に振るつもり? あなたは二人に脅迫された? 違う?」

「そうです。 悪いのは俺と水嶋です」

「違います。 私も同じ処分にしてください」

「強情な人ね。 どんな処分が下っても文句は言わないでね」

「はい」

「処分処分って俺らは犯罪者かよ」

「・・・犯罪者」

「・・・カンニングくらい許してくださいよ」

「許せません」

「教師ってそんなに偉いのか?」

「愚問ね。 学園において教師は絶対です」

「だったらこんな学園、俺からやめてやるよ」

「それは学園としても喜ばしいことだわ。 犯罪者がいては迷惑だわ」

「・・・悪かったな」

 

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「ごめんなさい!」

「もう遅いわ。 これほどの屈辱を覚えたのはいつ以来かしら」

「はるか、謝ることないよ」

「宗介は黙ってて! 栗林先生、すいませんでした」

「おまえも謝れって」

「なんでだよ」

「理由なんかねぇよ。 ほら頭下げろって」


水嶋は俺の頭を押した。


「椿くん・・・いやいや謝ったところで意味はないわ。 そうねぇ、あなた一人が罰を受けるっていうのはどう? そうすれば他の人は見逃すことにしましょう」

「・・・罰ってなんだよ」

「あなたがこの学園を去る。 それが条件よ」

「それは、許してください。 罰はみんなで受けます」

「あなたたちに選ぶ権利はないわ。 どうするの? 椿くん?」

「宗介・・・」

「俺は・・・」

「ピースはVサイン」

「佐田さん? それはなに?」

「友達の証です」

「友達? ・・・やめなさい」

「Vサインです」

「あなた状況理解しているの?」

「友達が欲しかった」

「そして、できた」

「あ、そう」

「だから、椿くんが学園をやめたらリコの少ない友達が減ります。 それは嫌です」

「それは、残念ね。 佐田さん、友達はよく選んだほうがいいわよ。 だって彼は・・・」

「わかりました。 でも友達は選べるけど、担任の先生は選べません」

 

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「どういう意味かしら?」

「特に意味はないです」

「意味のないことは言わないで!」


栗林はリコのペースに飲まれ始めている。


「もう、私あなたを無視します」

「はい」


栗林は動揺している。


「とにかく、椿くんは退学も覚悟しておいてね」

 

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「入りますわ。 ぜんぜんクーラーがきいてないわね。 設備費は充分過ぎるほど援助してるはずなんだけど」

「げ! レイカ様だ!」

「あら? 椿宗介、こんなところで何をしてるの?」

カンニングで捕まって・・・」

「あ、鈴木はるか・・・」

 

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「神山さん。 昨日はどうも」

「昨日? な、なんのことかしら?」

「電話で話したじゃない?」

「話してないわ。 あなた、誰かと勘違いしてるんじゃないかしら? 例えば亀田みゆきとか」

「え? それ誰?」


はるかはレイカの思惑とは裏腹に亀田みゆきの存在をすっかり忘れてしまっている。

 

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「こんにちは」

「こんにちは。 ってあなた誰?」

「佐田リコです。 動物は好きですか?」

「別に。 お金の方が好きだわ」

コガネムシは好きですか?」

「そんなムシ聞いたこともないわ」

「そうですか」

「桜木ヒカルはいる? 私、彼女に用があって来たんだけど」

「今日は、風邪で休んでるの」

「風邪か。 せっかくポスターが完成したというのに運の悪い人」

 

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「神山さん、おはようございます」

「栗林先生、おはようございます」

「話しているとこ悪いんだけど、いま、私がこの子たちに指導している最中よ。 邪魔しないでもらえる?」

「邪魔ですって? この私に指図しないで」

「指図? 違うわ。 教育よ」

「あなた、ただの教師のくせに私に文句いわないで。 レイカ会を敵に回すつもり?」

「レイカ会? ああ、あのわけのわからない組織のことね」

「私は桜木ヒカルに会いたいの。 このポスターを渡したいの」

「今日は欠席よ。 日を改めることね」

「じゃあ、住所を教えて」

「無理です。 個人情報ですから」

「もーなんなのよ! 私は神山レイカよ。 私のいうことに従って」

「・・・」


栗林は住所を紙に書き始めた。


「最初から素直に教えればいいのよ」

「これが住所よ。 今、話の途中だから席をはずしてもらえるかしら?」

「椿宗介、これが桜木ヒカルの住所だから、ポスターを届けること。 いい?」

「え? 俺?」

「そうよ。 ちゃんと届けるのよ。 あなたレイカ会の人間でしょ?」

「ちげーよ」

「素直になりなさい。 このポスターを無事に届けることがレイカ会に入会したあなたの初めての任務よ。 頼んだわ」

「でも無理だな。 俺、今日で退学になるかもしれないし」


俺は白々しくいった。


「退学? どうして?」

「いや、俺たちカンニングしちゃってさあ、いま説教されてる最中なんだよね」

カンニング? 間抜けね」

「だからさ、レイカ会も引退だな。 入会早々悪いんだけどさ」

「栗林先生、椿宗介を退学にするつもり?」

「あなたには関係ないわ」

「レイカ会の人間を、私の判断なしにやめさせることは認めないわ」

「どういうことかしら?」

「椿宗介が退学することを取り消しなさい」

「嫌だといったら?」

「お父様に報告します」

 

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「お父様・・・」

「私が言えば、あなたなんか教師を続けていけないんだから」

「神山グループ。 いいお父様をもったわね。 わかりました。 あなたたちの処分は保留です。 もう帰っていいわ」


・・・・・・。


・・・。

 

 

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「ナイスタイミング! マジで助かったわ」

 

「何が? そんなことはいいから、しっかりポスターを届けてちょうだいね。 すごくいい出来なんですもの」

 

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「神山さん、ありがとう」

「あなたにありがとうなんて言われるおぼえはないわ」

「俺もレイカ会に入ろうかな」

「入会申し込みは、神山レイカ公式WEBサイトからも出来るわ」

「神山レイカさん、リコと友達になってください」

「私、友達は作らない主義なの。 僕はいつでも募集中よ。 そっちもホームページの僕募集フォームがあるから、そこから申し込んでくださる?」

「わかりました」


「椿宗介、ちょっといい?」
「なに?」
「これも桜木ヒカルに渡しておいて。 ポスターのギャラよ」


イカは封筒を俺に渡す。


「それから桜木ヒカルに伝言をよろしく」
「伝言?」
「あなた、なかなかいい引き立て役になったわって」
「伝えとくよ」
「いけない、ピアノの時間だわ。 椿宗介とその他の人、さようなら」


イカは去っていった。


・・・・・・。

 

・・・。

 

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カンニング作戦、大失敗ってとこか」

「私たち、停学かな」

「でも停学になったらゲーセン行き放題じゃん!」

「お前らを停学になんてしねぇよ。 俺が退学になれば、栗林も納得するだろ」

「宗介・・・」

「まあ今そんなこと考えてもしょうがないっしょ! 前向きに考えよーぜー!」

「今日は夜から雨らしいです」

「どうして分かるの? 朝のニュースでは晴れって予報だったけど」

「つばめ・・・、つばめさんがあんなに低く飛んでます」

「ほんとだ!」

「つばめさんが、言ってます。 もうすぐ大雨が降るから早くお家に帰った方がいいって」

「こんなに晴れてんのに降らねぇだろ」

「私帰らなきゃ。 お店、混む時間だから」


俺は手に持ったポスターと竹刀を見た。


「俺、レイカに頼まれたポスター届けなきゃいけないからさ。 んじゃ、俺、行くわ」

「あ、これ、傘です」


リコは俺に折りたたみ傘を渡してきた。


「大丈夫だよ。 雨なんか降らねぇよ」

「ポスター濡れるといけないですから」

「・・・分かった。 念のために借りとくよ」


俺は桜木の家を目指した。


・・・・・・。


・・・。

 

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リコの予想どおり、雨は降り出した。

ポツポツと雨粒が頭に降りそそぐ。

俺はポスターが濡れないようにかばった。

リコの傘は小さく、ポスターをかばうとどうしても肩は濡れてしまう。

・・・この辺のはずなんだけどな。


俺は地図をみた。

タバコ屋と文房具屋のアパート。

・・・ここだ!

桜木の家は二階建てのオンボロアパートだった。

思ったより古いところに住んでるんだな。

203号か・・・

階段、階段っと。

今にも腐って抜け落ちそうな木の階段だ。

 

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「なにやってるんだ?」


振り返ると傘を差した桜木が立っていた。


「お前の家もこの辺なのか?」
「これ、神山レイカのポスターできたってさ」
「ポスター? ああ、あれか。 あまり笑顔が作れなかったんだ」
「まあ、出来栄えはあとでゆっくり見ろよ」
「悪いな」
「あと、これギャラだってさ」


俺は桜木にお金の入った封筒を渡した。


「あんなことするだけで、こんなにお金が貰えるとはな。 雨の中、悪かったな」
「風邪はもういいのか?」
「ある程度回復した。 食べるものを買ってきたところだ」
「家族は?」
「今は一人で暮らしている」
「そうか」
「風邪をひいたりするほうじゃないんだけどな。 少し寄っていくか?」
「・・・玄関でいいよ」
「・・・そうだな。 部屋は2階だ」
「この階段、やけに年季が入ってるな」
「出来たのは私たちが生まれるずっと前らしいからな」
「・・・天然記念物だな」
「戦争の空襲でも一切、被害を受けなかった奇跡のアパートだ」
「空襲ねぇ」
「あ、階段に生えてるキノコは食べるなよ」


よく見ると木で出来た階段の端にキノコが生えている。


「それはフクロツルタケといって猛毒をもっている」
「なんでそんなもんがここに生えてんだよ」
マツタケかと思って食べようとしたんだが、調べると物凄い毒キノコだった」
「普通、食べようとするか?」
「だから、椿も気をつけろ」


・・・いや、だから食わねぇって。


「やけにギシギシいうなこの階段」
「腐りかけているからな。 まあ、バランスをしっかりとっていれば落ちることはない」
「家に入るのになんでこんな苦労しなきゃいけないんだよ」
「特に雨の日なんかは、踏みどころが悪いと滑って下に落ちるぞ・・・」


――ッッ


「・・・いてぇっ!」
「・・・言うのが少し遅かったな」


俺は階段から転げ落ちた。


「もういやだ・・・こんな家」
「いいところもあるぞ」
「どこだよ」
「家賃が安い」
「だろうな」


・・・。

 

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「タオル使うか?」
「いいよ」
「でもビショビショだぞ。 畳が濡れる」
「それより絆創膏くんねぇかな? 擦りむいちゃってさ」
「軟弱だな。 ほら」


桜木の部屋はお世辞にも綺麗と呼べるものではない。

どこか物悲しい、狭い部屋だ。


「親はどうしたんだ?」
「母親はいない。 あと、父親とは訳あって別々に暮らしている」
「はるかもなんだよな。 あいつは親父と暮らしてるけど」
「鈴木さんもか」
「ああ。 うちは親父いねえしな」
「親がいないなんて、もはや特別でもなんでもねーよな」
「そうだな」
「まあ、こうやって風邪ひいたときは困るんだろうけどさ」
「まあな」
「へっくしょん!」


雨で濡れたせいで体が冷える。


「これ、着るか?」
「え?」


桜木はトレーナーとジャージを俺に渡した。


「いいのかよ」
「風邪をうつすと悪いからな」
「洗濯して返すよ。 あ、着替えるから向こうむいてろよ」
「恥ずかしがるほどのことでもないと思うが」
「可愛気のない女だな」
「後ろ、向いてるよ」


俺は服を着替えた。

服からは、ほのかにラベンダーの香りがした。


「サイズはちょうど良さそうだな」
「何買って来たんだ?」


桜木はスーパーの袋から緑の物体を大量に出した。


「キュウリだ。 少し買いすぎたかな」
「おまえ、キュウリしか買ってないの? しかもこんなに」


ざっと見た感じ、十本はある。


「キュウリって風邪にきくのか?」
「知らない」
「んじゃ、なんでこんなに買ってくんだよ」
「好きだからに決まってるだろ」
「お前、いつもそれ食べてんの?」
「そうだな。 生でも食べるし、調理もするぞ。 色々な味が楽しめる」
「まるで河童だな」
「河童か。 椿は面白いことを言うんだな」
「賞金、何に使うんだ?」
「生活費の足しにしようと思う」


お金に汚い奴だと思ったが、桜木の生活をみて俺はその考えを改めた。


「ポスター見てみるか?」
「・・・いいよ」
「なに? お前照れてるの?」
「別に、照れてない」
「どれどれ、いい感じに撮れてるかなぁ?」


俺はポスターを広げた。

 

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水着の神山レイカが中央で満面の笑顔。

イカは抜群のプロポーションで、まるで雑誌のモデルのように輝いている。

背景は合成の海と砂浜とホテル。

バックにはヤシの木やらなんやらあり、リゾート気分満載の海の雰囲気。

『夏とレイカのピアノコンサート』

というキャッチコピーがプリントされている。


「これ、桜木か?」
「多分」


イカの隣に水着の桜木がいた。

イカのような派手さはないが、しっかりとした存在感と美しさがあった。


「へぇ。 結構ちゃんと写ってんじゃん」
「おかしくないか?」
「おかしい? なにが?」
「いや、この顔、普通かなと思って」
「普通だよ。 変じゃない」


むしろ、凄く可愛い。


「こういうの、やったことないから不安だったんだ。 そうか。 普通か」
「笑えるんだな?」
「え?」
「いや、このポスターの顔、けっこう笑ってると思うぞ」
「そうか?」
「ああ。 こっちの方がいい。 まあ本人知らないやつは騙せるんじゃねぇの?」
「騙せるってどういう意味だ?」
「あ、これ返すよ」


俺は竹刀を渡した。


「これ・・・」
「俺、やっぱり使わないからさ」
「それは困る」
「大事なもんなんだろ?」
「・・・いらないなら、処分してくれ。 もう私には必要ないからな」
「それ、すげーいい竹刀なんだってな。 それ使ってた奴は、手入れとかもちゃんと出来てて、相当の達人だっていってたぞ」
「その竹刀、誰かに見せたのか?」
「・・・・・・」
「椿のような腑抜けに、この竹刀のことはわからないだろ。 誰に聞いた?」
「公園で星雲学園の剣術部員にあってさ、そいつらが教えてくれたんだよ」
「星雲学園・・・」
「なあ、都築って誰? お前の知り合い?」
「・・・竹刀の持ち主だ」
「だよな。 そこに名前あるもんな」
「星雲学園の剣術部員の名前は?」
「ああ、確か暁セツナとかなんとか、知ってる?」
「暁セツナ・・・知らない」
「そいつがさ、その都築ってやつを探してるんだって」
「・・・都築などいない!」
「どうしたんだよ」
「都築は・・・死んだ!」
「・・・お前、死んだ奴の形見なんか、俺に渡すなよ」
「・・・この竹刀、処分してはくれないんだな」
「悪いけど」
「・・・そうか。 下まで送るよ」
「・・・うん」


・・・。

 

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「やっぱり、竹刀は椿が持っていてくれないか」
「なんでそんなに、こだわってんだよ」
「それは・・・これがあると、自分が自分で無くなるんだ」
「・・・でもさ」
「お願いだ・・・もう、見たくない」


「・・・やっと、見つけたわ」


「え?」

 

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そこには、少女が立っていた。


「おまえ・・・」

「ごめんなさい。 あなたの後を付けさせてもらったの」

「・・・おまえは」

「こんな形で会うことになるなんて、夢にも思ってなかった」

「・・・俺が竹刀を見せた星雲の剣術部員って、こいつだよ」

「・・・・・・」

 

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「もう、あなたは逃げられない」

「・・・・・・」

「ここで、決着をつけましょう」

「決着!?」

「都築・・・ヒカル」

「都築って、どういうことだよ?」

「都築は・・・死んだ」

「じゃあ、私の目の前にいる、あなたは誰? 亡霊?」

「そうだ。 私は亡霊だ」

「・・・私はあなたをずっと探していた」

 

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セツナは背中にある竹刀を構えた。


「さあ、あなたも、そこにある竹刀を構えて」

「・・・いやだ」

「あなたに拒否権はないわ」

「おい、どういうことだよ!」

「これは、私の都築ヒカルの戦いの物語よ。 あなたには関係ないの」

「関係ないかもしんねーけど、桜木、嫌がってるだろ」

「桜木?」

「そうだよ。 いきなり現れて勝負しろって、不良じゃあるまいし」

「・・・早く、竹刀を握りなさい」

「嫌だ・・・都築はあの日、死んだんだ」

「いいえ。 簡単に死なせたりはしない。 早く構えなさい」


桜木はガクガクと震えている。


「おい、いい加減にしろよ! 桜木は風邪引いてるんだぞ」

「・・・風邪?」

「そうだよ。 決着だかなんだかしらねーけど、そういうのはせめて元気な時にやれよ」

「・・・・・・」

「桜木、大丈夫か?」

「私は、あの日・・・」

「さあ、竹刀を持ちなさい」


桜木は、ゆっくりと竹刀に手を伸ばす。


「そうよ。 あなたには戦う義務があるもの」


桜木は竹刀を持ち、立ち上がる。


「・・・そうよ。 さあ、構えて」

「・・・・・・」

「・・・構えるのよ」


雨は強さを増していく。

 

「・・・できない」

「どうして?」

「もう、私には竹刀を振る資格なんてないんだ・・・」

「どうして?」

「・・・もう、誰も傷つけたくないんだ」

「・・・あなたは誰を傷つけたの?」

「もう・・・やめてくれ」

「・・・どうして?」

 

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桜木は竹刀を払い捨て、その場にしゃがみ込む。


「桜木!」

「・・・なぜ、戦うことを拒むの?」

「・・・・・・」

「・・・どうして、逃げ続けるの?」

「・・・私は」

「・・・何?」

「私は・・・普通になりたいんだ」

「・・・普通?」

「・・・普通の女の子になるんだ」

「・・・あなたは普通になんてなれない」

「・・・・・・」

「あなたは竹刀を持つために生まれてきたのよ」

「・・・違う」

「・・・何を迷っているの?」

「・・・・・・」

「やめろよ!」

「・・・何?」

「桜木、そいつの言うことなんか聞かなくていいよ」

「・・・椿」

「桜木がやりたくないんなら、やんなくていいよ」

「・・・それは出来ないわ」


雨は激しさを増していく。


・・・・・。


・・・。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

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その日は晴れていた。


「ねぇお父さん、見てよ。 晴れてきたよ」

「ほんとだ!」

「そうだな。 2人がいい子にしてたから、神様晴れにしてくれたんだろうな」

「そっか~、いい子にしてると神様はちゃんと見てるんだね」

「うん」

「あそこに浮かんでるのが、お父さんの船?」

「そうだよ」

「宗介くんのお父さんは、あれに乗っていつも仕事をしているの?」

「そうだよ」

「すごいだろ~? 羨ましい?」

「うん」

「でも、今日は特別に会社の人に許可をもらったから、2人とも乗せてあげるよ」

「わぁーい。 マコト、良かったね」

「うん。 おじさん、ありがとう」


目の前に大きな船が浮かんでいる。

今になって思えば、そんなに大きな船じゃなかったのかもしれない。

子供には何でも大きく見えてしまうのだ。


「カッコいいなぁ~。 この船、名前はなんていうの?」

「宗介丸だよ」

「宗介丸?」

「宗介くんと、同じ名前だ~」

「この船はね、宗介が生まれた日に出来たんだ」

「僕が生まれた日?」

「そうだよ。 だから、宗介とこの船は兄弟だな」

「船と兄弟なんて変なの~」

「早く乗ろうよ」


俺たちは船に乗り込んだ。

船は水しぶきを上げながら港から離れていく。


「すっご~い! 速いね」

「見て! どんどん町が小さくなっていくよ」

「しっかり捕まってるんだぞ」

「お父さんの船、速いだろ~」

「うん。 車なんかよりずっと速いよ」

「どう? 羨ましい?」

「うん。 すっごく、羨ましい」

「僕のお父さんは、凄いんだ」

「でも、宗介くん、船から落っこちたら大変だね」

「どうして?」

「だって、宗介くん、泳げないもん」

「そんなことないよ。 少しくらいなら泳げるもん」

「うっそだ~」

「落ちたりしないもん」


・・・。


「ほら、2人とも、あんまり騒いでると、海に放り投げられちまうぞ?」


操縦席から顔をだす。


「だいじょうぶ、だいじょうぶ」


俺は甲板から身を乗り出して景色を見ていた。

潮風が顔に当たった。


「海の匂いがするね」

「うん」


――ッッ


「・・・あれ? 雨かな?」


潮風に混じって、水滴が頬に触れる。

 

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さっきまでの晴天が嘘のように、空は顔色を変えた。

雨は徐々に振り出し、次第に大きく波が揺れた。


「宗介、マコト。 2人とも、中に入りなさい」


・・・。


「まずいな。 そろそろ戻ろう」

「え~、もう終わり?」

「わぁ!」


船は大きく揺れた。

船を取る父の額にうっすらと汗が見えた。

雨と波は激しさを増していく。

小さな宗介丸は波に押し上げられ、上下に激しくうねる。


「・・・お父さん、大丈夫だよね?」

「・・・酔ってきた」

「・・・心配ない。 大丈夫だから」


・・・心配ない大丈夫だから。

父の言葉とは裏腹に事態は深刻化していく。

波は荒れくるい、海は凶暴性をあらわにする。


「お父さん!」

「よく聞くんだ。 何があっても、これにしがみ付いていろ」


父は浮き輪を俺たちにくれた。


「おじさんはどうするの?」

「おじさんのことは心配要らないよ。 マコト、君も宗介と一緒にこれにしっかりと捕まっているんだよ」

「うん。 わかった」


やがて、海は小さな宗介丸を飲み込んだ・・・。

・・・お父さん。

 

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海の中へ俺たちは放り出された。


「わぁ!! 宗介くん!」

「捕まって!!」


必死に浮き輪にしがみ付く。


「・・・怖いよぉ」

「大丈夫だよ。 これに捕まってたら平気だって、おじさん言ってたでしょ?」

「・・・うん。 でも、お父さんが・・・」

「おじさん・・・どこに行ったんだろ」

「お父さん!!」


叫ぶが波と雨の音に、声は消されていく。


・・・。


・・・それから数時間。

体も心も衰弱しきったまま、荒れる海の中を2人は彷徨った。

・・・もう、助からない。


「・・・ねぇ、これは僕の浮き輪なんだ」
「え?」


震えて、青くなっていた。

たぶん、俺も、海と同じくらい暗い顔をしていただろう。

・・・だから、仕方なかった。


「これは、お父さんが、僕を助けるためにくれた浮き輪なんだ」
「・・・どういうこと?」
「・・・さっき君、言ったよね。 僕は泳げるから平気だって」
「・・・だけど」
「僕、泳げないからさ・・・」
「・・・宗介くん?」
「このままだったら、二人とも沈んじゃうよ」


小さな手を、ゆっくりと放そうとした。


「ごめんね・・・だってこれは、僕の浮き輪なんだ」
「や、やめてよ・・・」
「大丈夫だよ。 君は僕と違って泳げるだろ?」


手は力なく浮き輪から外れていく。


「わぁ!」
「ごめんね・・・」


それから、ずっと海を漂い続けた。


・・・・・・。

 

・・・。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

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「桜木がやりたくないんなら、やんなくていいよ」

「・・・それは出来ないわ」

「なんで」

「・・・あなたはきっと、もう一度、竹刀を持つ日が来るわ」

「・・・もう、二度と、剣術はやらない」

「・・・そうね。 そうやって、あなたは私たちの前から姿を消した」

「・・・・・・」

「・・・私は、あなたがいなくなった日からずっと、あなたを探していたわ」

「・・・もう、探さないでくれ」

「どうして?」

「・・・もう、静かで平穏な日々を、ゆっくりと送りたいんだ」

「・・・静かで平穏な日々」

「・・・ああ」

「もういいだろ。 これ以上、こんなとこにいたら、風邪が酷くなるだろ」

「・・・そうね」

「・・・っ・・・っ・・・」」

「・・・わかったわ」

「早く、家の中に入ったほうがいいぜ」


桜木はうなだれている。


「都築ヒカル、私はあなたと戦う日が来るまで、いつまでも、あなたを追うわ」

「・・・・・・」

「・・・さようなら」


セツナは雨の中、消えていった。


「・・・私は、私は普通だ」

「ああ。 普通だよ・・・。 もう大丈夫だ」
「・・・・・・」
「立てるか?」
「・・・ああ。 ありがとう」
「・・・あいつ、一体なんなんだよ」


俺は道端に転がってる竹刀を見た。


「この竹刀、やっぱり俺が処分しとくよ」
「本当か?」
「まかせとけ」
「すまない」
「今日は、ゆっくり休めよ。 風邪治して、学園で会おうな」
「・・・ああ」
「あと、・・・悩みあるなら、聞くぜ。 人の事とか考えるのは得意じゃねーけど」
「・・・大丈夫だ。 椿に迷惑をかけるわけにはいかない」
「そうか」
「ああ」
「なぁ? あいつは誰なんだ?」
「星雲学園3年、暁セツナ」
「それは知ってる。 桜木との関係だよ」
「セツナは、私と同じ道場にいたんだ」
「道場?」
「ああ。 その道場で、私たちは互いに力を競い合ったんだ」
「そうだったのか」
「あいつと私は・・・仲間だった」
「・・・仲間?」
「同じ釜の飯を食って育った。 同じ苦労を共にした」
「その仲間がなんでお前を執拗に狙うんだよ」
「私は、その道場を辞めたんだ。 それ以来、セツナは私を追っている」
「なんで辞めたんだ?」
「・・・言わないとダメか?」
「・・・別にいいけどさ」
「私とセツナはもう、なんの関係もない赤の他人だ。 今日のことは忘れてくれ」


桜木は階段を上り、部屋の中へ入っていった。

雨はまだ、止まずにいる。

 


・・・。