ゲームを読む。

-ノベルゲーム・タイピング-

STEINS;GATE DramaCDγ -暗黒次元のハイド- ダイバージェンス 2.615074%

このブログは音声を文字起こししていますので、ネタバレを多く含みます。

読んで面白いと思ったら購入し、ぜひご自身で視聴してください。

ご意見・ご要望がありましたら
─メール─ zippydle.scarlet@gmail.com
または
Twitter─ @Zippydle_s
まで連絡下さい。


--------------------

 

 

 

 

 


私の知るあなたは……ジキル博士ではなく、ハイド氏だった。

あなたにとって、こちらの世界とこちらの世界にいる私は……影のようなものなんだとしても……。

それでも、私は……っ!


……。

 


──ドアを叩く音がする。


岡部「…………ここは……? 一体……俺はなんでこんなところに……。確か、るか子を男に戻すためにDメールを送って……。……いや……これは……っ!? 血……!? ひっ……なんだ、この血まみれの男はっ!?」


──「ええ……そう。FBの予想通り、捜査官だった。ユーロポール……。大丈夫、二人とも……始末した。目標αは、ガード下。目標βはそこから離れた路地に。死体……転がってる。……了解」


──女が電話を切る。


???「M3。目標ブラボーを、排除してきた。後始末は、FBが……。私たちは撤収」
岡部「……萌郁? 桐生萌郁!」
萌郁「……っ……初めて、名前……呼ばれた。……こういう場では、本名呼ぶのはまずいわ。コードネームを──」
岡部「それより、なぁ! 人が……人が死んでる! ……殺したのか?」
萌郁「……タオルを。手、拭いて……」
岡部「……手だと? ……ちょっ……うわあぁぁっ!?」


持っていたナイフを落とす岡部。


岡部「……っ……!? まさか……俺が……? 俺が殺したのか!?」
萌郁「シッ……! 大声出すのは、良くない……」
岡部「おい、答えろ! これは一体どうなって──」
萌郁「正体が知られたから、排除を……。これは、仕事。今までもしてきたこと」
岡部「仕事って……正体ってなんだよ……!? お前の、ラウンダーとしての正体か!」
萌郁「……私だけじゃ、ない。……あなたも」
岡部「……っ……! 俺も……」
萌郁「ラウンダーよ」


……。

 

 

 

 


STEINS;GATE DramaCDγ -暗黒次元のハイド- ダイバージェンス 2.615074%

……。


萌郁「待って、M3」
岡部「触るな!」
萌郁「……っ……どこへ、行くの……?」
岡部「……考えろ……考えさせてくれ……。なんでだ、なにが起こってる……? なんでこんなことになってるんだ? 落ち着け……落ち着いて考えろ。……俺がラウンダーだと? そんなの冗談にも程があるだろ」
萌郁「……M3らしくない。取り乱して……」
岡部「M3……なんだよそれ」
萌郁「……あなたの、コードネーム」
岡部「お前、ケータイはどうした?」
萌郁「……ケータイ? 持ってる、けど──」
岡部「そうじゃない! なんで普通に喋ってる!」
萌郁「……喋るのは、苦手……。でも、これまでもこうして……M3……岡部君と……話してきた」
岡部「……メールで会話したことは?」
萌郁「……なに、それ……」
岡部「……そうか。そういうことか。世界戦が、想定外の変動をしたんだな。こんな冗談みたいな世界線に来てしまうなんて……。ダイバージェンスメーターを見たい。……いや、それより今は先に……ラボへ行くべきか」
萌郁「……FBからは、待機命令が……!」
岡部「ラボに戻って、もう一度Dメールを送るしか……」
萌郁「…………岡部、君……」


……。


岡部「……なんだ? 身体が軽い……? この世界戦の俺は鍛えているのか……。……ん? ラボの前にいるのは……。紅莉栖!」

紅莉栖「……っ……岡部!」

岡部「……良かった。お前に頼みが──」


──「噂をすれば、ってやつか……」


岡部「……鈴羽!? 鈴羽じゃないか! お前なんでここにいる!?」

鈴羽「……いたら、不都合なの?」

岡部「お前は、タイムマシンで1975年へ飛んだはず……!」

鈴羽「……!? なんでアタシが、タイムトラベラーだって知ってんの?」

岡部「……っ……いや、お前から聞いたんだが」

鈴羽「確かに、ラボメンのみんなに話した。……岡部倫太郎“以外”のみんなにはね」

岡部「なに!?」

鈴羽「お前は私の情報を、どうやって手に入れた? ……内通者か?」

紅莉栖「鈴羽……やめて。ただでさえ、私……なにを信じていいかわからなくなってるのに」

鈴羽「……岡部倫太郎。一緒にいた桐生萌郁って女は……何者なの?」

岡部「奴はラウンダー……。ラボメンナンバー005で──」

鈴羽「ラウンダー……。やっぱりか」

紅莉栖「ラボメン005は、鈴羽でしょ? ねえ岡部……」

岡部「これは……会話が噛み合っていない。世界線が変わったせいか……。紅莉栖! すぐにDメールの準備をしてくれ。俺はこれから──」

紅莉栖「そんなことより! ……なにか言うことはないの!?」

岡部「……なんのことだ?」

紅莉栖「なにも言わないつもり……?」

岡部「俺のことはどうでもいい。それより──」

紅莉栖「見たのよ……! さっき、ガード下で……」

岡部「……っ……! 見たって、なにを……」

鈴羽「お前が……ユーロポールの捜査官を殺すところだよ」

岡部「俺じゃない!」

鈴羽「……服に、血が付いてるよ」

岡部「……ひっ……! 俺じゃないんだ……! 説明すると長くなるが、とにかく俺じゃ──」

紅莉栖「だったら! あんたは、誰なの?」

岡部「俺は……! 俺は……」

紅莉栖「……ねえ、岡部。全部嘘だったの……? 私たちを、騙してたの?」

岡部「とにかくDメールを使わせてくれ! そうすれば──」

紅莉栖「使うってどうやってよ! 電話レンジの仕組み、まだ解明してないのに!」

岡部「……馬鹿な!? Dメールは送れないのか!」

紅莉栖「……送れるけど、放電現象が起きるときと起きないときが──」

岡部「その原因は、42型ブラウン管テレビだ! あれが点いているときだけ……」

鈴羽「なぜ……それを知ってる?」

紅莉栖「……っ……!」

鈴羽「アタシたちは、電話レンジの仕組みについてこの一週間ずっと話し合ってきた。……岡部倫太郎、お前も含めてね。そこでは何も言わなかったくせにさぁ、今のはまるで……最初から知ってるような口ぶりだったじゃん」

紅莉栖「……わかってて、黙ってたの……?」

岡部「なにを馬鹿な……!」

鈴羽「お前は、嘘まみれだね。岡部倫太郎……。アタシがいた2036年でもそうだった。嘘と裏切りだけで世界を手に入れたお前はさ……。その嘘を塗り重ねるために、数多の命を奪い続けてる……」

岡部「なっ……!?」

鈴羽「だからアタシは、この時代に来たんだよ。……未来を変えるためにね」

岡部「……だったら話は早い。こんな世界線は誰も望んじゃいない! 今すぐ変えよう、Dメールで!」

紅莉栖「……っ……」

岡部「なあ、紅莉栖!」

紅莉栖「……あんた。……あんた、なんであんな事を……! ……ねえ、あの子……まゆりはもう長くないんだから……悲しませるような真似は、やめてよ……」

岡部「……長くない……? ……この世界線でも、まゆりは助からないのか?」

鈴羽「……牧瀬紅莉栖。この男を放っておくのはまずい。証拠はあるんだ、警察に連絡を」

紅莉栖「……っ……」

岡部「紅莉栖……! 信じてくれ! 俺はついさっき、別の世界線から来たんだ! 俺は殺してない! Dメールを送りさえすれば、この世界線は無かったことになる!」

紅莉栖「……警察を……呼ぶわ」

岡部「……紅莉栖っ……!」

紅莉栖「……あんたはそうやって、自分のした事を嘘で覆い隠していくのね……! 次は、私も殺すの!?」

岡部「俺はまゆりを助けるために──」

紅莉栖「まゆりを! ダシに使わないで! ……もしもし、警察ですか……」

岡部「…………紅莉栖」

紅莉栖「秋葉原で、人を殺したっていう知り合いを……保護したんです。今すぐ、来て──」


──ッ!!

岡部「……っ……」

鈴羽「スタングレネード!? うっ……くそぉ、やられたっ!」

紅莉栖「……っ……お、岡部! 岡部は!?」

鈴羽「……逃げられた」


……。


岡部「はぁ、はぁ……放せっ!」
萌郁「もっと……! 遠くに逃げないと……!」
岡部「放せっ!!」
萌郁「……っ……!?」
岡部「はぁ……はぁ……」
萌郁「……あそこには、近づかないほうがいい。もう……正体……知られちゃったから。……岡部……君?」
岡部「まゆりに……会いに行かないと。まゆりに……」
萌郁「……っ……」


──萌郁が電話をかける。


萌郁「……FB? ……うん、確認した。間違いない、タイムマシン。M3が、そう言ったわ。…………了解」


……。


岡部「……まゆり?」

まゆり「あ……岡部君だ! ようそこいらっしゃいましたー」

るか「岡部さん……。今日はもう来ないかと思いましたよ。……椅子どうぞ」

岡部「…………まゆり。無事なのか?」

まゆり「え……? なにが?」

岡部「まさか、入院してるなんて……」

まゆり「してるよー……前からずっと。なに当たり前の事言ってるの?」

岡部「なあ、二人とも……。俺の事、怖くないか?」

まゆり「えー、怖くなんてないよー?」

るか「……今日の岡部さん、なんだかいつもと雰囲気は違う気はしますけど……」

岡部「……そっか」

まゆり「へんな岡部くんだねー」

岡部「……お前、その呼び方……」

まゆり「えっ、呼び方……?」

岡部「まゆりは……“トゥットゥルー♪”って知ってるか?」

まゆり「とぅ……? えぇ?」

るか「テレビで流行ってる言葉、ですか?」

まゆり「あははは……。今日の岡部君はね、なんだかとっても無理してる感じがするよ。……どしたの?」

岡部「いや……。知らないなら良いんだ」

るか「…………あ、僕……飲み物買ってきます。まゆりちゃんはなにがいい?」

まゆり「うーん……じゃあね、オレンジジュース!」

るか「岡部さんは、いつもの“マウンテン・ジュー”ですね」

岡部「いや……“ドクペ”を」

るか「“ドクペ”……?」

岡部「ドクターペッパー

るか「……“マウンテン・ジュー”じゃ、ないんですか……」

岡部「……お、おぉ……」

るか「わ、わかりました。ちょっと、行ってきます……」


……。


まゆり「珍しいね、いつもは“マウンテン・ジュー”なのにー」
岡部「…………。この病室、写真がたくさん飾ってあるんだな」
まゆり「あ、うんー! 良い思い出がね、たっくさんあるから! 子どもの頃のもあるよー。……あーほらほら、これなんか小さい頃の岡部君も写ってる!」
岡部「……はは、懐かしいな。この遊園地、一緒によく行ったよな」
まゆり「……あ……行ったのは……。一回だけだよ?」
岡部「……一回だけ?」
まゆり「うん……」
岡部「……っ……」
まゆり「岡部君……?」
岡部「……まゆり。俺は、この世界線での記憶が無いんだ」
まゆり「え……?」
岡部「だから、教えてほしい。俺とお前は幼馴染……そうだな? いつも一緒に過ごしてきた、それは間違いないか?」
まゆり「いつもは……一緒じゃなかったよ。うんと……2000年クラッシュの後、7年くらいは離ればなれだったよ、ね……」
岡部「2000年クラッシュ……?」
まゆり「覚えてないの? ……10年前、世界中でね……コンピューターとかが壊れちゃって……」
岡部「……!? 2000年問題の事か! この世界線では起きたのか!?」
まゆり「う……うん……。たくさん、大事な人が死んじゃった……。まゆりの両親も、岡部君の両親も……」
岡部「……なんてこった……」
まゆり「……岡部君と再会したのは、3年くらい前だったよね。……最初はちょっと怖かったけど……まゆりの事、いろいろ気にかけてくれて。髪留めもプレゼントしてくれて……。入院費まで出してくれて……」
岡部「……俺が……? 入院費を?」
まゆり「本当にね、どれだけ感謝しても足りないのです。えへへ……」
岡部「……わからない。俺の知らない俺がいる……。なあ、その髪留め……本当に俺がプレゼントしたのか? ちょっと見せて──」
まゆり「あっ! 駄目! ……ご、ごめんね……。この、髪……。医療用のウィッグだから……もう、まゆりの髪はほとんど残ってないのです」
岡部「……え」
まゆり「治療の、副作用。……でもね、そのおかげでクリスマスまでは生きていられるかもって希望が出てきたんだー」
岡部「……まゆり……そんな」
まゆり「クリスマスには、サンタさんにもう少し時間をください、ってお願いしようかなー! ……岡部君、そんな顔しないで……。だいぶ前からわかってた事だし。いつもの岡部君なら、頑張れよって言ってくれるところだよー」
岡部「……少し、風に当たってくる……」


……。


るか「……岡部さん、病室にいないと思ったら……屋上にいたんですね」
岡部「……っ……なあ、るか子。まゆりは、あいつの病気は……。いや、なんでもない……」
るか「あの……。ついさっき、紅莉栖さんから……で、電話が……あって……」
岡部「……! 聞いたのか!?」
るか「嘘ですよね……? 岡部さん、そんなことする人じゃ、ないですよね?」
岡部「俺は……!」
るか「嘘って言ってください…・・!」
岡部「……っ……」


──「嘘じゃ……ないわ」


岡部・るか「……!?」


萌郁「……」

るか「……岡部さん。お知り合い、ですか……?」

萌郁「牧瀬さんが、なんて言ったかは……知らない。ただ、彼女は嘘を……言ってないと思う」

るか「どういう、意味ですか……?」

萌郁「岡部君が、あなたに見せていた顔は……嘘の顔」

岡部「やめろぉ!」

萌郁「今さら、隠しても無意味……。もう、バレちゃったから」

るか「岡部さん、そうなんですか……?」

岡部「……騙していたのは、本当らしい」

るか「らしい、って……! どうして他人事みたいに言うんですか……?」

岡部「くっ……!」

るか「ねえ……どうして、僕の目を……見てくれないんですか! 僕……今日、帰ります」

岡部「るか子……」

るか「まゆりちゃんには、この事……黙っておきますから……!」


……。


岡部「みんな俺から離れていく。わかってるんだ。これも全部自業自得だって」
萌郁「……岡部君」
岡部「こうなったのも、俺が不用意にDメール実験をして……。過去を改変したせいだ。……でも、こんなの……キツ過ぎるだろ。これも代償なのかよ……! 俺が不幸になるだけなら、どれだけマシだったか……! こんな世界線は、無かったことにしなければいけない! 無かったことに……!」
萌郁「……っ……」


──岡部のケータイが鳴る。 


岡部「……!」
萌郁「出て……多分、FBから」
岡部「……俺は」
萌郁「出て、お願い」


FB『M3。なぜすぐに出なかった?』
岡部「……俺は、M3じゃない」
FB『なるほど。M4の報告通りだ』
岡部「あんたがFBか……」
FB『……なにがあった? いつも冷静なお前らしくもない』
岡部「あんたは何者だ……!? 誰なんだ!」
FB『あの発明サークルの連中に、情が移ったか? ……それとも、俺を裏切るつもりか? ……まあ、お前は目的のためなら手段を選ばない男ではあるがな……』
岡部「……俺は……ラウンダーなんかじゃない……!」
FB『……話にならねぇな。少し頭を冷やせ。警視庁への根回しが、現場レベルまで徹底されるには今日いっぱいかかる。次の命令まで、待機しろ。待機ってのはつまり……どこかに隠れてろって事だからな』


──電話が切れる。


岡部「俺は……ラウンダーなんかじゃ……。あ……そうだ! 紅莉栖が通報を……」
萌郁「問題、ないわ。目立たない限りは。FB、言ってなかった? 警察には、ラウンダーから圧力を……」
岡部「……!」
萌郁「だから……捜査官の死体は、見つからない。安心して。ただ……出来れば、どこかに潜伏を」
岡部「俺は……お前とは一緒に行動できない」
萌郁「私は……あなたと一緒にいる。それが、命令」
岡部「お前はまゆりを殺した……! 俺たちを裏切った。お前は敵だ!」
萌郁「これまでの仕事も、二人で……やってきた。 私……あなたに何度も、救われた……命を」
岡部「それは別の俺だ……!」
萌郁「岡部君の言う私も、別の……私……!」
岡部「……くっ……」
萌郁「助けに、なりたいの。行きましょう」
岡部「お前とは一緒に行動しないと……」
萌郁「明日までは、大人しく隠れていないと」
岡部「俺は……!」
萌郁「一緒に……来て」
岡部「……っ……」


……。


萌郁「入って」
岡部「ここは……?」
萌郁「私の、アパート。古いけど、駅……近いし」
岡部「……」
萌郁「お腹……空いてる、でしょ? 買ってきたケバブ、食べよう。岡部君、好き……よね?」
岡部「……いや」
萌郁「嘘……。だっていつも二人で、食べたわ」
岡部「……二人」
萌郁「私と……岡部君と……」
岡部「…………いらない」
萌郁「……そう」
岡部「…………お前は……なんで俺と一緒にいようとする。この世界線での俺と、今の俺は……まるっきり別人だ。そうだろう?」
萌郁「……ええ」
岡部「だったら、お前が俺と一緒にいる義理はない」
萌郁「でも……変わってないって、感じた。岡部君の、本質は」
岡部「なにを……人殺しと一緒にするな!」
萌郁「だって、私に……生きる意味をくれたの……岡部君、だから」
岡部「俺が……?」
萌郁「自殺しようとしてた私を、助けてくれたの。そして、ラウンダーになれって……言ってくれた。私にとって、FBは父……岡部君は……兄、みたいなもの。家族なの。たとえ、偽りのものだとしても。……岡部君。悲しい顔、しないで……。私で良かったら、なんでもする。あなたの、力に……なりたい」
岡部「……っ……」
萌郁「岡部君……」
岡部「偽りは偽りだろう……。俺の事は放っといてくれ……!」
萌郁「……」


……。


フェイリス「倫太郎……いニャいのー」


紅莉栖「岡部なら、もうこのラボには来ないわ」

鈴羽「欺瞞(ぎまん)が発覚したからね」

フェイリス「じゃあ、クーニャンが昨日電話で言ってたのは本当だった、って事なのニャ……」

紅莉栖「……」

ダル「つーかさ、昨日牧瀬氏が見たって事件……。ニュースになってもおかしくないのに、全く報じられてないじゃん。なんで?」

紅莉栖「警察に通報はしたわ」

鈴羽「圧力をかけて……事件そのものを揉み消しちゃった可能性も」

ダル「そんな……っ、ヤバ過ぎじゃん!」

鈴羽「あり得ない話じゃない。それだけ相手は強大ってこと」

紅莉栖「……引っ掛かることがある。昨日の岡部、別の世界線から来たって、言ってたの……。鈴羽、どういう事かわかる?」

鈴羽「世界線をまたぐ事自体は珍しくない。普段から刻々と変動してるからね。だけどさ、世界線をまたいで記憶が継続されるなんてのは……あり得ないんだ。因果に支配されてる、あらゆる生物は世界線の変動に気づくことはできないんだよ。絶対に」

紅莉栖「でも……岡部は覚えていた」

ダル「単なる妄想じゃね?」

フェイリス「……もしかしたら、特殊な能力を持ってるかもしれないニャ!」

鈴羽「……まさか、超能力だとでも?」

フェイリス「タイムトラベラーがいるなら、超能力だってあっていいのニャ。フェイリスにだって、相手の嘘を見破る“チェシャ猫微笑(チェシャー・ブレイク)”って能力(ちから)があるし……。そうだニャ、それで倫太郎が嘘を言ってるかどうか試してみるニャ!」

鈴羽「ラウンダーを甘く見ないほうがいいよ。不用意に近づいただけで、ナイフで喉を掻っ切られるかも」

フェイリス「……っ……り、倫太郎はそんな事しないニャー……。ねぇ、クーニャンもそう思うニャ?」

紅莉栖「……」

フェイリス「クーニャン……」

鈴羽「2036年ではさ、岡部倫太郎はSERN治安部隊ラウンダーのトップで、三百人委員会の一人……。決して表舞台には出てこない、影の独裁者になってるんだ」

フェイリス「……まるで映画ニャ……。鈴ニャンは、その独裁者になった倫太郎を見たことあるのニャ?」

鈴羽「……無いよ。だけどさ、命がけで調べた情報だから……間違いない。あいつは自らを神格化して、こう名乗ってた。“鳳凰院凶真”……。あいつのせいで、たくさん死んだよ。仲間も……両親も……友だちも……。私の知らない誰かも……。あいつの手下として虐殺に加担した連中も……。アタシも、無事じゃいられなかったし」

ダル「わっ……!?」

フェイリス「どうしたのニャ?」

ダル「そ、その……えーっと、阿万音氏の背中の傷って……まさか」

鈴羽「もしかして、この前覗いたときに……見たの?」

紅莉栖「ちょっ……!? 覗いたってなによ?」

ダル「わわわー……! 不可抗力っつーか! そこのシャワールームで阿万音氏が着替えてたときに、気づかずに……あ……開けちゃって」

紅莉栖「……HENTAIね!」

フェイリス「……鈴ニャン。背中の傷って?」

鈴羽「はは……。うん、まあ……ちょっと人には見せられないような大きな傷があったりするんだよね」

ダル「それも……岡部が……?」

鈴羽「私は反体勢の立場だったから、真っ先に弾圧の対象になった。……それで何度か、死にかけた事がある」

ダル「こ……このままじゃ、僕たちも……岡部に殺されちゃうかも……」


……………


鈴羽「私たちに今出来る事……一つあるよ。電話レンジを、破壊する事」

紅莉栖「ま……待って! いきなり壊すのは反対よ!」

鈴羽「だけどさ、このままじゃ岡部倫太郎に奪われる! そしたらあいつは、自分の野望のためにこれを使うよ」

紅莉栖「岡部は言ってたわ。下にある42型ブラウン管テレビが点いている状態でだけ、電話レンジは使えるって。それについて、実験してみるべきよ。Dメールが送れるなら、それを使って……こっちも対抗手段を取れるかもしれない」

ダル「Dメールでの事象のコントロールは凄くムズいって、結論出たじゃん」

紅莉栖「……未来を変えるために、電話レンジは必要なものだと思ってたんだけど」

鈴羽「電話レンジを破壊することが……未来を変えることになるんだよ」

紅莉栖「……っ……」

鈴羽「岡部倫太郎を、まだ仲間だと思ってるつもり? あいつ、今にもこのラボの襲撃計画を立ててるかもしれないんだよ? ……君はその目で見たんでしょ? 岡部倫太郎が、人を……殺しているところをさ!」

紅莉栖「……あのときの岡部……。私の知ってる岡部じゃなかった。普段から冷たい奴だったけど、根は良い奴だって思ってた……! でも、あのときの岡部は……」

鈴羽「だったら──」

紅莉栖「だけど! ……わからないの。直後にラボに来た岡部は、さらに別人で……。あいつが、あんなに悲しそうな顔してるの……初めて見たし。……もうどれが本当の岡部の顔なのか、わからないのよ」


………………


……。

 

 

 

 

──「漆原……るかさん」

るか「……っ……あ、あなたは……昨日の」
萌郁「この神社の、巫女さんなの?」
るか「……は、はい……。その……」
萌郁「聞きたい事が、ある……?」
るか「……あの、岡部さんは……?」
萌郁「ここにはいないわ」
るか「そうですか……」
萌郁「……聞きたいのは、あなたの母親の事」
るか「お母さん……?」
萌郁「あなたが生まれる前、奇妙な体験をしたっていう話……。聞いたこと、ある? たとえば、未来の日付けからポケベルに着信があったとか」
るか「それって、もしかして……。ラボにあるタイムマシンを使って……?」
萌郁「教えて」
るか「……あります。お母さんから、何度か聞かされました。ポケベルに、おかしな数列を着信したって……。一回着信して、一ヶ月くらいしたら、また……」
萌郁「内容は?」
るか「確か……。2929831831……。その数字の意味がなんなのか、お母さんはわからなくて。だから、お父さんの知り合いの大企業の社長さんに見せたんです。そうしたら、数日してその話を聞いたっていうSERNの科学者さんが来て……」
萌郁「……っ……SERN……!」
るか「その人、2000年クラッシュのときにワクチンプログラムを作った凄い人だって……後から聞きました」
萌郁「薬を作ったから、毒を撒く……。SERNの常套手段……! まさか、本当に……。調べる価値が、ある」
るか「調べると、どうなるんです?」


それを調べて、私は……どうしようっていうんだろう。

岡部くん、言ってた……。

この世界線を、無かったことにしなきゃいけない、って……。

無かったこと……。

私と、彼の今の関係も……。

何も、かも……。

私、そんなの……望んでない。

それなのに……。


るか「桐生さん……?」
萌郁「……っ……なに?」
るか「あの……桐生さんと岡部さんは……どういうご関係なんですか?」
萌郁「……パートナー。仕事の」
るか「ラウンダー……ですか」
萌郁「……そうよ」
るか「お願いが、あります。どうか……岡部さんと、まゆりちゃんの残された時間を……邪魔しないでください!」
萌郁「……昨日も、言ったはず。彼は、あなたの思ってるような人じゃ……」
るか「少なくとも、僕が知ってる岡部さんは、優しい人なんです。毎日、まゆりちゃんのお見舞いに来て……。話し相手になってくれてるんです。普段は、ちょっと近寄り難い人ですけど……。まゆりちゃんと話すときだけは、本当に優しそうな顔をしていて──」
萌郁「幻想よ」
るか「岡部さん、昨日だけ“マウンテン・ジュー”を飲みませんでした」
萌郁「……」
るか「いつもはそれしか飲まないのに……。その事が、凄く引っ掛かってるんです。それに、昨日の岡部さん……。あんなに、悲しそうで」


そう……昨日の彼は、おかしかった。

普段は、機械みたいに感情を表に出さないのに。

昨日の彼は、ずっと泣きそうな顔をしてた。

もしかすると、彼が別の世界線から来たっていう話は……本当なのかも。

だとしたら、私は……どうすれば……いい。

私は……。


──萌郁のケータイが鳴る。


萌郁「M4」
FB『仕事だ。未来ガジェット研究所のタイムマシンを押さえろ。抵抗してきた場合は、殺しても構わん』
萌郁「了解」
FB『ただし、開発者の三人は殺すな。確保してSERNへ連行する』
萌郁「……っ……三人?」
FB「わかるだろ? 牧瀬紅莉栖、橋田至、それと……岡部倫太郎」
萌郁「……! 岡部君を……!?」
FB『それが本部の意思だ』
萌郁「本気、なの……」
FB『質問は受け付けない』
萌郁「でも……」
FB『M3は信用できない。裏切る前に、切り捨てる』
萌郁「なんとかして……」
FB『作戦開始は“ひとななななまる”3時間後だ』
萌郁「なんとかして……」
FB『M3とM4は先行し、アルファチームとして突入しろ』
萌郁「なんとかして……!」
FB『バックアップとして、ブラボーチームが応援に入る。M3の拘束は、ブラボーに任せろ。お前は、タイムマシン確保を最優先だ』
萌郁「ねえ……! なんとか、して……」
FB『……はぁ……。迷ってんならよ、今決めろや。どっちに付くのかな」
萌郁「……今……?」
FB『覚悟がねーなら、選ばない事を選べ。流されろ、従え』
萌郁「……FB……」
FB『……甘いなぁ、俺も』


──電話が切れる。


るか「……あの……」


だとしても……。

それでも……。

私は……!


……。


萌郁「……ただいま」
岡部「…………」
萌郁「M3、落ち着いて……聞いて。次の仕事、タイムマシンを……奪えって」
岡部「なっ……なに……」
萌郁「バックアップに、他のラウンダーも来る。……ラボの人たちが抵抗したら、殺しても構わないって」
岡部「……っ……!」
萌郁「牧瀬さんと、橋田君……。二人の確保も……。岡部君……!?」
岡部「紅莉栖たちに逃げるように伝えに行く」
萌郁「信じると思う?」
岡部「説得するさ!」
萌郁「無理、あなたは信じてなんてもらえない」
岡部「……っ……」
萌郁「それに、ラウンダーを裏切ったら命は無い……。わかってるでしょ?」
岡部「……脅しか……?」
萌郁「本当の事」
岡部「お前だけでも先に、この場で殺しておいたほうがいいかも知れないな……!」
萌郁「わかって……! あなたは今、とてもまずい立場にいる──」
岡部「知った事じゃない! いいか、俺の邪魔をしないならお前の事は見逃す。だから止めるな!」
萌郁「岡部君! 行ったら……駄目なの……。行けば、あなたも捕まる……」
岡部「……! すでに裏切り者として扱われているって事か」
萌郁「そう……。さっき、拘束する対象は二人って言ったけど、あれは嘘。本当は、岡部君も含めた三人なの」
岡部「FBとやらに逆らった今の俺には、当然の対応だな」
萌郁「だから、行っちゃ……駄目」
岡部「問題ないさ。俺は絶対に死なない」
萌郁「どうして……! 言い切れるの?」
岡部「この世界線での俺は、2036年時点でも生きている……。鈴羽がそう言っていた。つまり今の俺は、どうやっても死なないように……因果を収束する」
萌郁「……よく、わからない……」
岡部「不死身ってことさ」
萌郁「冗談はやめて……!」
岡部「お前こそなんの冗談だ? どうして俺に全部話した? 今のお前の行動が、ラウンダーへの裏切りになってるって気づいてるのか?」
萌郁「……私は」
岡部「話は終わりだ」
萌郁「……っ……岡部君!」
岡部「止めるな。俺はこんな世界線に未練はない。どんな手を使ってでも、Dメールを送ってやる!」


……。


私は……どうしたいんだろう。


『迷ってんならよ、今決めろや。どっちに付くのかな』


彼の言ってる事が本当だとして……。

彼の望む事を叶えようとするなら、私と彼の関係は……消える。

このまま行かせても、彼はSERNに捕まって……。

一生、幽閉されるだけ……!

私は……。


『萌郁……? 桐生萌郁!?』


それまで、岡部君はずっと……私の事をコードネームでしか呼ばなかった。

あのとき、萌郁って初めて呼ばれて……嬉しかった、凄く……。

どうして、今そんな事を思い出すの……?

どうかしてる、私……!

本当に、どうか……してるわね……。

それでも、私は……!


……。


萌郁「岡部君! 待って! 私も……行くわ」
岡部「……! ラウンダーを裏切れば、命はない。そう言ったのはお前だ。なのになんで──」
萌郁「私は、岡部君のパートナー……だから」
岡部「……っ……」
萌郁「あなたの、力に……なりたいの」
岡部「今の俺は、お前の知ってる岡部倫太郎じゃない。丸っきり別人なんだ。自殺しようとしたお前を助けた覚えは無いし、パートナーとして仕事をした記憶もない。……なのに、全てを捨てて……全てを敵に回して……俺に付くのか?」
萌郁「そう……。あなたは、まるで別人。でも、昨日も言ったわ。あなたの本質は、変わってないって」
岡部「萌郁……」
萌郁「それに……。名前、呼んでくれて……嬉しかったから」
岡部「……。萌郁、俺を助けてくれるか?」
萌郁「……もちろん」
岡部「作戦名は“オペレーション・ドベルグ”だ。悪の妖精ドベルグとなり……。俺は、この世界を否定する!」


……。


フェイリス「……どうしたニャ? 鈴ニャン。さっきから窓の外ばっかり睨んでー」

るか「雨、降りそうですね。雷、怖いです……」

鈴羽「嫌な予感がする」

フェイリス「ちょ……超能力ニャ!? 天気で未来予知が出来るニャ!」

鈴羽「牧瀬紅莉栖、実験はいつまでかかるの?」

フェイリス「……スルーかニャ……」

紅莉栖「そんなに急かさないで。電話レンジは、調整が難しいのよ」

ダル「でもさ、焦りもするってー。ラウンダーみたいなヤバい連中相手にするなんて、分が悪すぎるっつーか」

フェイリス「ふわぁ~……。フェイリスは倫太郎でも探してこようかニャー」

鈴羽「死にに行きたいの?」

 

岡部「……よりによって、ほぼ全員集まってるようだな」
萌郁「急がないと、ブラボーチーム……合流しちゃう」
岡部「わかってる。Dメールの送り先を確定させるのに手間取った。……猶予は、どれだけある?」
萌郁「30分、くらい」
岡部「……大丈夫だ。それだけあればいけるさ。42型ブラウン管は点灯済み。あとは、電話レンジに設定を打ち込んで……メールを送るだけなんだ」
萌郁「抵抗されて、手間取る恐れもあるわ」
岡部「……! その銃……」
萌郁「“ミネベア9mm”……。FBから、支給された」
岡部「……俺の銃は無いか?」
萌郁「……撃てるの?」
岡部「……っ……」
萌郁「無理しなくていい」
岡部「いや……あるなら貸してくれ」
萌郁「撃てるの?」
岡部「俺は人殺しじゃない。人殺しにはならない」
萌郁「だったら……」
岡部「それでも……貸してくれ」
萌郁「じゃあ、これ。使って」
岡部「お前は……?」
萌郁「予備で小さいの、持ってるから」
岡部「どこに?」
萌郁「スカートの下」
岡部「……そうか」
萌郁「撃つときは、両手でしっかりグリップを」
岡部「ああ……」
萌郁「大丈夫。撃たせない」
岡部「それよりも、なるべく……撃たないでくれ」
萌郁「……どちらが、先行を?」
岡部「俺が」
萌郁「了解。準備、良い?」
岡部「少し待て。……………」
萌郁「……手……震えてる」
岡部「大丈夫だ……。ドベルクを演じ切ってみせるさ……」
萌郁「……M3。いえ、岡部君。キス、するね……」
岡部「……はぁ……? なっ……!? お前、いきなり何を……」
萌郁「シッ……聞いて。たとえ、あなたが元いた世界では……私たちは敵同士だったとしても……。今は、私だけは……あなたの味方だから。あなたが、世界中を敵に回しても……。私だけは、あなたのパートナーだから。背中を、預けて」
岡部「……信頼している。今だけは……」
萌郁「行きましょう。時間、ない」
岡部「ああ」
萌郁「……終わったら、あのケバブ……もう一度……。二人で食べたいな」
岡部「……萌郁、それは」
萌郁「ふふ……。……カウント……1……2……3!!」


──ッ!!


岡部「全員動くな!!」

紅莉栖「……! 岡部!」

ダル「う、うう動かない! 動かないから、うう撃たないでー!」

フェイリス「……倫太郎、なんで……!」

るか「岡部さん……!」

紅莉栖「見損なったわ!」

岡部「喋るな! 全員壁に向かって、跪くんだ!」


岡部「(くっそー、この光景……。まゆりが殺されたときと一緒じゃないか……! まさか、自分が紅莉栖たちに銃を突きつけることになるなんて……!)」

るか「……岡部さん。凄く、悲しそう……」

岡部「……なっ……そんな事はない!」

フェイリス「倫太郎……。嘘ついてるよ、そうでしょ? フェイリスには、わかる……」

岡部「俺は……本気だ」

フェイリス「なん、で……。なんで嘘ついてまで、こんなこと」

岡部「いいから跪け! でないと撃つ!」

フェイリス「……っ……」

岡部「萌郁、こいつらを見張っておいてくれ。俺はDメールを……」

萌郁「待って。一人、足りない……!」

岡部「……! 鈴羽は!? あいつはどこに──」


──「こっち!!」


──ッ!!


岡部「ぐあっ……! しまっ……」


──ッ!!


岡部「……っ……ぐは……!」

萌郁「岡部君!!」

鈴羽「撃つな! 岡部に当たるぞ」

萌郁「……っ……!」


──ッ!!


萌郁「……うっ……くっ……!」

鈴羽「……形勢逆転、だね……」

ダル「阿万音氏スゲー! カッコ良すぎる! 結婚してくれー」

鈴羽「無理」


岡部「……くっそ、鈴羽ー!」

鈴羽「橋田至! 二人を縛って!」

ダル「え、え、えっ……? 僕?」

鈴羽「早く!」

岡部「……これで、終われるかよ!!」


──ッ!!


鈴羽「うっ……ぐ……!」

紅莉栖「鈴羽ー!」

萌郁「岡部君! この銃を使って!」

岡部「……動くな、鈴羽! るか子の命がないぞ!」

るか「お、おか……べさん……!」

鈴羽「卑怯者……! 漆原るかを盾にするなんて……!」

フェイリス「倫太郎……! こんな事してなんになるのー!?」

紅莉栖「もうやめて!! やめてよ……。お願い、岡部……自首して……」

岡部「なんとでも言え……。俺はどんな手を使っても、Dメールを送るんだ……!」

紅莉栖「岡部……!」

岡部「……《るか子……抵抗しなければ……危害は加えない》……」

るか「……っ……」

岡部「いいか! このメモに書かれた内容を、X68000(ペケロッパ)に入力してくれ!」

るか「……はい……」

鈴羽「従っちゃ駄目!」

岡部「黙れ! さあ、るか子。入力しろ」

るか「…………打ち込みました」

岡部「……よし! 後は俺のケータイから、メールを送れば……!」


──ッ!!


岡部「うっ……ぐ……!」

るか「……! 岡部さん!!」

鈴羽「スナイパー!? 隣のビル! なんで!?」

萌郁「ブラボーチーム……! 予定より、早い……!」


──ッ!!


鈴羽「こ、こいつら……!」

萌郁「……FB……!」


???「ブラボー、ターゲット以外無力化しろ! 行け!!」

岡部「るか! 危ない!!」


──ッ!!


萌郁「岡部君……!!」

鈴羽「みんな、伏せて……!」


──ッ!!


???「ぐ……制圧しろ!!」


──ッ!!


岡部「ぐ……ぐは……!」

るか「岡部さん……! 岡部さ……凄い血……! どうすれば…・・・!? 死なないで!」

岡部「……っ……! め、メールを……! メール……」


萌郁「岡部君……!」

岡部「……萌郁…………メールを、このケータイから……送れ……」

萌郁「……わかった、今……」


私の知るあなたは……ジキル博士ではなく、ハイド氏だった。

あなたにとって、こちらの世界とこちらの世界にいる私は……影のようなものなんだとしても……。

それでも、私は……っ!


萌郁「岡部君……。元気で……」


──萌郁がメールを送信する。


岡部「……萌郁……。ありがとう……」


…………。

 

……。

 

 


るか「…………岡部さん……そろそろ帰るって、牧瀬さんが……」

まゆり「あー……オカリンってば、気持ちよさそうに寝てるねー。ほっぺたプニプニしたくなっちゃうよー。えへへへへ」

紅莉栖「いい歳した男子のくせに、はしゃぎすぎなのよ」

フェイリス「クーニャンも、『海だー!』ってノリノリだったニャー♪」

紅莉栖「わ、私は……別に……」

鈴羽「楽しかったなー! 海水浴なんて初めてだったし」

まゆり「でもー、どうする? オカリン起きるまで、待ってる?」

紅莉栖「そんな悠長な事してらんないわ。橋田、岡部をお姫様抱っこしろ」

ダル「だが、断る」

鈴羽「もうちょっとのんびりすればいいじゃん」

るか「……そろそろ、日も暮れちゃいますし」

萌郁「今からだと……終電、ギリギリ……」

まゆり「ねえねえ! どこかで、みんなで晩ごはん食べてこーよー!」

紅莉栖「いいわね。だからこそ尚更、岡部を起こさないと」

フェイリス「るかニャン、るかニャン。なにが食べたいニャ?」

るか「ぼ、僕ですか? この季節と言えば、流しそうめんとか……」

ダル「おお、いいじゃーん。でも、どこでやんの?」

まゆり「ラボでいいんじゃないかなー?」

紅莉栖「ジャパニーズ風物詩よね」

鈴羽「なにそれ? 食べれるのー?」

フェイリス「決定ニャー!」

まゆり「萌郁さんもそれでいいかな?」

萌郁「……私は……。私は、ケバブが……いい」

るか「え、ケバブ?」

フェイリス「アキバ名物の?」

鈴羽「なにそれ? 食べれるのー?」

まゆり「まゆしぃは好きだよー」

ダル「なんでー、ここでいきなりケバブなん?」

萌郁「……岡部君が、食べたいかな、って……。そんな気がして……。なぜかは、わからないけど……そんな気が、したの」


……。