ゲームを読む。

-ノベルゲーム・タイピング-

Steins;Gate【4】

このブログはゲームのテキストを文字起こし・画像を投稿していますので、ネタバレを多く含みます。

読んで面白いと思ったら購入し、ぜひご自身でプレイしてください。

ご意見・ご要望がありましたら

─メール─ zippydle.scarlet@gmail.com

または

Twitter─ @Zippydle_s まで連絡下さい。

 

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「お帰りニャさいませ。ご主人様♪」
「お帰りニャさいませ。ご主人様♪」

 

『メイクイーン+ニャン²』の扉を開けると、2人の猫耳メイドが笑顔でお迎えしてくれた。

「あ、オカリンだー」

そのうちの1人は、まゆりだった。

こいつもこの店で『マユシィ・ニャンニャン』として働いている。

その縁もあって、俺も月に2度ほどはこの店に通っているのだ。

常連客……ということになるのだろう、俺も。

ちなみに他のメイド喫茶には行ったことがない。

「オカリン。お帰りニャさいませ」

改めて頭を下げたまゆりは、なにか思い付いたのかハッとした。

「ねぇねぇオカリン、まゆしぃは今気付いたんだけどね」

「“オカリン”と“おかえり”って、似てるねー♪」

どうでもいい……。

 

「凶真、よく来たニャン。ゆっくりしていってね!」

もう1人のお出迎えメイド、フェイリス・ニャンニャン──当然ながら源氏名である──が、上目遣いと猫っぽい仕草のコンボ攻撃で俺に甘えてくる。

この『メイクイーン+ニャン²』の人気ナンバーワンメイドである。

まゆり以上のロリっぷりを誇る。実際の年齢は、まゆりと同い年らしいが。

「ダルニャンも来てるニャン。待ちぼうけしてるニャ」

ダルが足しげくこの店に通っているのは、このフェイリスが目当てだからである。

たまにフェイリスの個人ブログを眺めながら“フェイリスかわいいよフェイリス”とか独り言をつぶやいている。かなり重症だ。

2次元か3次元か、どちらかにしろといつも言っているのだが、ヤツは聞く耳を持とうとしない。

ちなみに俺は、この猫娘が苦手である。

なぜかと言うと“勝てる気がしない”からだ。

 

 

 

 

「今日も“機関”打倒のための極秘会議かニャ?」

「あ、ああ、そんなところだ」

「フェイリスも混ぜてほしいニャ~」

「やめておけ。ネコ耳メイドが太刀打ちできるほど、“機関”は甘くない」

「そんなことないニャ。フェイリスには“あの秘奥義”があるのニャ。きっとお役に立てるニャン」

「なに!? “あの秘奥義”、ついに会得したのか!?」

「そうニャ……。ギアナ高地での修行に耐え抜き、師匠の死も乗り越えて、フェイリスはついに……手に入れたのニャ」

師匠って誰だよ……。

フェイリスには、俺の真名である鳳凰院凶真という名や、“機関”のことなどは話したことがある。

そうしたらこいつは俺以上にノリノリになってしまい、以来、顔を合わせるたびにフェイリスの方から話を振ってくるのだ。

ちなみにフェイリスの言う“あの秘奥義”などという存在は、今日初めて聞かされた。

「だから凶真、約束通り、フェイリスも“精霊会議”に参加させてほしいニャン」

う……。さっそくフェイリスが暴走を始めている。

これに付き合ってしまったら、30分は解放されないぞ。

「お前、“聖域(サンクチュアリ)”に行くと言うのか!?」

「ダメだ、いくら秘奥義を会得したとはいえ、あの場所はお前にはまだ早すぎる」

「そんな! 約束したニャ! ニャのに、凶真は裏切るって言うのかニャン!?」

「それに、あの場所にはフェイリスのお兄ちゃんが……」

いねえよ。というか精霊会議ってなんだ!?

フェイリスは本当に涙目になって俺を見つめてくる。

ブリッコだと分かっていても、ついたじろいでしまった。

こいつと話していると、俺がツッコミ役に回らざるを得なくなる。とても調子が狂うのだ。

そして会話の主導権はフェイリスに持って行かれ、結局いつもこいつの妄想を聞かされるハメになる。

だいたい、悪ふざけにもほどがある。

俺とフェイリスとで語ることには、決定的な違いがあった。

すなわち、俺が語ることはすべて“真実”であるのに対し、フェイリスの言うことはすべて“妄想”であり“設定”だということ!

その妄想に俺はいつも振り回されてしまう。

だから“勝てる気がしない”のだ。

 


「えっとね、なんか分からないけど、まゆしぃもサンクチュアリっていうところに行きたいなー?」

うわ、能天気少女までが加わってきたぞ。

こうなるとさらにカオスだ。

無理矢理にでも会話を終わらせなければ。

「来なくていい。この話はもう終わりだ」

「ええー」

「凶真だけずるいニャ!」

 


「そうだよー、まゆしぃもフェリスちゃんもダメなんてね、オカリンは冷たいと思うのです」

「……フェリスとは誰だ?」

「フェリスちゃんはフェリスちゃんだよー。ねー?」

「ねー?」

まゆりとフェイリスは顔を見合わせて、互いに笑みを交わした。

もしかしてフェイリスのことか? 実はフェリスが本当の名前で、フェイリスと思っている俺が間違えていたのか?

そう思って困惑したのだが──

「あのね、まゆしぃは言いにくいから、フェリスちゃんって短くしてるんだー♪」

「なんだ、そういうことか」

「なんだか女学院みたいで、それも悪くないニャ」

それはそれとして。

「いいからさっさと案内してくれ。俺はいつまでここに立っていればいいんだ」

「ニャハハ、ごめんなさいニャ。ご主人様、御案内ニャ~ン♪」

「マユシィ、御案内よろしくニャンニャン

「任せてニャンニャン♪」

『メイクイーン+ニャン²』のネコ耳メイドは、ある程度、語尾に“ニャン”を付けなければいけない決まりがある。

 


まゆりが、俺の手を引いて店内へ誘導する。

御案内時に手を繋いでくれるのは、マユシィ・ニャンニャンだけらしい。

たぶんこいつは特になんの打算や考えもなくやっているのだろうが、こういうことを天然でやってしまうことから、このメイド喫茶ではフェイリスに次ぐ人気なんだとか。

ダルのいる席に案内してもらう。

 


店内の客の入りは6割程度といったところ

『メイクイーン+ニャン²』は、アキバのメイド喫茶としては中堅ぐらいのポジションだ。

フェイリスたちの格好を見ても分かる通り、メイド喫茶というよりコスプレ喫茶に近い。

しかも、ネコ耳メイド+ニャンニャン語は、はっきり言って他のメイド喫茶よりも初心者には敷居が高かった。

一方で、メイド喫茶マニアから見てもネコ耳には賛否両論あり、

“ネコ耳装備なんてメイドじゃねえ!”

“ネコ耳+メイドで破壊力2倍だろ!”

という2つの意見が、真っ向から対立しているのだ。

この店はアキバに数あるメイド喫茶の中では古参に入るが、メディアの露出もそれほど多くないため、どちらかと言うと地味な印象だ。

ちなみに今語ったことはすべて、ダルの意見である。

耳にタコができるほど何度も聞かされたせいで、俺もすっかり覚えてしまった。




「ダルくん、オカリンが来たニャン」


「遅すぎでしょ、マジで」

 

 

対面に座った俺に、ダルは視線を向けようとしなかった。

唇を尖らせている。どうやら不機嫌らしい。

「それで、今フェイリスたんとなにを話していたか詳しく」

「……聞きたいのか? どうせダルには理解できない話だと思うが」

というか俺もほとんど理解できなかった……。

要するに妄想の垂れ流しなわけだし。

「ああ、そっち系の話かぁ……」

「フェイリスたんとオカリンの会話は、普通のオタじゃついて行けない領域に達してるよな。オーラみたいなものが出てるっつーの?」

「2人だけの固有結界張りやがって! 許さない、絶対にだ!」

「フェリスちゃんもオカリンのこと気に入ってるみたいだニャー」

「お店の子、お店に来るご主人様たち、みーんな含めて、フェリスちゃんのお話についていけるのはね、オカリンだけだもんニャ」

俺だってまともについていけていないのだが。

「そんなオカリンに嫉妬! なんという勝ち組!」

「フッ、ウソで塗り固めた女になど興味はない」

「今日のお前が言うなスレはここですか」

「黙れ浮気野郎めが! 2次元の嫁が泣いているぞ」

「ぐっはぁ、痛いところ疲れたッス……」

 

 

ダルがわざとらしく胸を押さえながらテーブルに突っ伏す。

そのテーブルにまゆりが置いた水を、俺は一口あおった。

 

 

「んで、ご主人様、ご注文はお決まりですかニャー?」

「オムライス。それとホットコーヒー。ブラックで」

「かしこまりましニャンニャン♪」

 


注文を承ったまゆりは、並んでいるテーブルの間を泳ぐようにして、フラフラとカウンターの方へと歩いていった。

なんだか見ていて危なっかしい。


「で、僕になんか用事だった?」

ダルが突っ伏したまま聞いてきた。

そうだった。

指圧師やら猫娘の相手をしているうちに、本来の目的を忘れそうになるところだった。

 


「あと1時間ぐらいしたらラボに行くつもりだったんだけど」

「内密で緊急の話があるのだ」

俺はテーブルに身を乗り出し、目だけで周囲の様子を窺った。

ジョン・タイターは知っているよな?」

「……ジョン・タイター? 誰?」

アメリカに10年ほど前に現れた、自称未来人だ。お前とは以前、こいつの話題をしたはずだぞ」


「またオカリンのいつもの“設定”?」

「設定とか言うな! 俺が話すことはすべて真実だ!」

「はあ、マンドクセ。じゃあ付き合ってやるけどさ……」

「そのタイターってヤツが未来人だっていうソースは?」

「待て、なんでそんな、初耳のような言い方をする?」

「事実、初耳だから」

「忘れたわけではなく?」

「自身はないけど」

「日本でもそいつに関する本が出ている」

「その本を見せてくれたら、思い出せるかも」

「本当になにも知らないのか?」

「人の記憶力なんてけっこう曖昧なもんっしょ。デジタルと違ってさ」

「…………」

やはりおかしい。

一方で、明確に“異常だ”と言えるほどの根拠もない。

高校時代、俺はジョン・タイターについてダルと話をした記憶がある。それは雑談程度だったから、ダルがすっかり忘れてしまっていたとしても仕方がない。

ダルはかなりのネット中毒者である。

だがネットの情報は自ら選別できるから、興味がない話題にはアクセスしなければいい。ダルがジョン・タイターのことをネットで調べた保証はない。

今ここで本人が“初耳だ”と言っているぐらいだし、むしろ調べていない可能性の方が高い。

間違っているのは俺の記憶なのか、周囲の記憶なのか。

「だったら、『IBN5100』については?」

「へえ、オカリンがそんなPCを知ってるなんてね。やるじゃん」

「知っているんだな?」

「IBNが1975年に発売したモデルっしょ」

そうだ。ジョン・タイターも@ちゃんねるにそう書いていた。

だからタイターは最初に1975年へタイムトラベルし、IBN5100を手に入れた後で1988年へ跳んだらしい。

「どんなPCなんだ?」

「値段高杉のPC、だな」

「黎明期だったからすっげー高くて、個人には手が出せなかったらしい。IBNの独自技術が詰まった、その当時にしてはけっこう優秀なPCだったんだけどね。IBNは6年後の1981年に『IBN PC』っていう大ヒットシリーズを発売してて、そっちの方が有名なわけ。つーか、僕もIBN5100の知識はネットのWikiを見たことがあるぐらいだぞ」

「それが現在のアキバにあるという都市伝説を聞いたことは?」

「うんうん、あるある。1ヶ月前ぐらいにネットで話題になったなあ。で、その噂を聞きつけた@ちゃんの有志が、アキバ中のショップを探して回ったんだよ。『フレパラ』のフレンドに、ゲジ姉って人がいるんだけど、その人が中心になってね。あの『疾風迅雷のナイトハルト』までが出張ってきたらしいけど、結局見つからなかったんだって」

「じゃあ都市伝説はデマだったということか?」

「さあ、知らね。アキバにはアンダーグラウンドなショップがたくさんあるし。案外、どっかの怪しいショップにひょっこり転がっててもおかしくないんじゃね?」

「ふむ。なるほど」

ケータイが、かすかな振動とともに音を発した。

それは3秒ほどで途切れる。

どうやらメールらしい。

それならいつでもチェックはできるわけだが。

今はダルと話しているわけだし、メールをチェックするのは後回しにしても問題ないと言えば問題ない。

「それで、1つだけ確認したいんだが──」

俺は再度、目だけで周囲を確認してから、ダルの方へ身を乗り出した。

「IBN5100は世界滅亡の引き金になるアイテムなんだな?」

「なんでだよ。引き金にはならないし世界滅亡もしないっつーの」

 


「ニャに~? 世界滅亡しちゃうのかニャ?」

フェイリスがオムライスを持ってきた。

実に颯爽とした身のこなしだ。

猫っぽい仕草を入れつつも、片手で支えているステンレストレーのバランスは崩れていない。

ニャンニャン口調にしてもそうだが、フェイリスからはプロフェッショナル気質を感じる。

 




「ご主人様、お待たせしましたニャンニャン♪ オムライスニャ~ン」

テーブルの上にオムライスを置くと、猫娘はケチャップをエプロンのポケットから取り出した。

 


それを使って、なにもかけられていないオムライスの黄色いキャンバスに『世界がヤバい!』と赤い文字を書き込んでくださいやがりました。

「世界滅亡前に、どうぞ召し上がれ♪」

 


「うおっ、『世界がヤバい!』キター! フェイリスたんの丸文字のかわいさに僕もヤバい!」

ダルが我を失っている。

少し落ち着け、と目で訴えるが効果なし。

 


俺はケチャップ文字を、冷静にスプーンの腹でならして消えた。

「ああ……もったいない……」

どちらにせよ食べてしまうんだから、もったいないもクソもないだろうに。

「ダルニャンダルニャン、『フェイリス杯』の件、考えてくれたかニャ?」

「ああ、もちろん! 僕も参加します」

「フェイリス杯? なんだそれは?」

オムライスをかきこみながら聞いてみると、

「次の日曜日に、この店で『雷ネット』の大会をやるのニャ!」

フェイリスがはしゃいだようにその場でピョンピョンと軽く跳ねた。

人がメシを食べている目の前で、飛んだり跳ねたりしないだもらいたいものだが。

「フェイリスはその幹事であり実行委員長、つまり言い出しっぺなのニャン」

「よかったら凶真も参加するニャン! 参加費はドリンク込みで1000円。フェイリスに勝てた人には賞品として手作り料理を振る舞うニャ」

「ムリムリ。オカリンは『雷ネット』には詳しくないんだ」

「ニャー? 面白いのに」

「いいんだ。俺は……」

俺はオムライスを口に運ぶのを止めて、小さくため息をついた。

「『雷ネット・アクセスバトラーズ』か……。その名を聞くたび、チャンピオンだったアイツのことを思い出す……。あれから、もう2年になるのか……。いや、なんでもない。今のは忘れてくれ」

「ニャニャ? すっごーく思わせぶりな態度だったのニャ! アイツ、って誰ニャ?」

「たぶん存在しないんじゃね? 『雷ネット』って公式大会が始まったのは1年前ぐらいだし」

「…………」

「凶真、“あの人”のこと、まだ忘れられないのかニャ?」

「はあ?」

「確かにあの頃、“あの人”……フェイリスのお兄ちゃんと凶真はとっても仲がよくて、フェイリスも嫉妬しちゃうぐらいだったニャ」

くっ、しまった。俺の話を勝手に“持って行かれた”……!

俺は一言も“アイツ”がフェイリスの兄だなんて言ってないのに!

というかフェイリスに兄弟がいるかすら知らないのに!

フェイリスの前でこんな話をするべきではなかった!

 


「でも、いい加減、思い出ばかりにすがるのはやめるニャ!」

店中に響き渡る大声で叫び、俺にズビシッと指を突き付けてくる。

「フェイリスは辛くても……、辛いからこそ、お兄ちゃんの遺志を継いで、“雷ネッター”になったんだニャン!」

「覚えてるかニャ? お兄ちゃんがいつも言ってた言葉。“いつか雷ネットで世界に平和をもたらそう”って──」

「フェイリス、コーヒー持ってきて」

「ニャニャ?」

オムライスを平らげた皿をフェイリスに突き出してやった。

食事は急いで食う。長年、“機関”に追われているうちに自然に身に付いた習慣だ。

スローフードなどクソ食らえである。

 


「かしこまりましたニャ~。少々お待ちくださーい♪」

 


フェイリスは皿を受け取って、ニャンニャン言いながらカウンターへ戻っていった。

ふう、あのまま放っておいたら10分以上妄想に付き合わされるところだったぞ。

「フェイリスたんは知る人ぞ知る実力派“雷ネッター”なんだぜ」

ダルが苦笑しつつ説明してくれた。

「非公式の野良試合では400戦無敗なのさ」

ヒクソンかよ」

俺のツッコミを、ダルは聞いていなかった。

「フェイリスたんが公式大会に出ないのが残念だよ。出れば優勝間違いなしなのに」

「なんで出ないんだ?」

「この店のご主人様を第一に考えてるってことっしょ。店に迷惑をかけてまで大会には出ないってスタンス? メイドの鏡だろマジで。それに、まゆ氏と同い年だから、学校も行かなきゃいけないだろうし」

「店に迷惑かけないと言っておきながら、『フェイリス杯』なるものを店で開くのか?」

「こまけぇこたぁいいんだよ!とりあえずフェイリスたんはかわいい。かわいいは正義。ネコ耳ロリメイドはけしからん、性的な意味で。それでいいだろ」

「お前は結局、2次元派なのか3次元派なのか、どちらなのだ?」

「あえて言おう。バイであると」

「色々とフリーダムだな、ダルは」

「よく言われます。サーセン

普段はやる気を見せないくせに、こういうときだけは生き生きとしている。

ラボでの活動にも、この情熱を見せてもらいたいものだ。


……。

 

 


フェイリスと話し足りないダルの背を押すようにしてラボに戻ってみると、うんざりするほどの熱気がこもっていた。

急いで窓を全開にする。少しは風が入ってくるが、それでも気休め程度だ。

扇風機の“強”のスイッチを押し、自分の目の前に置いた。

エアコンがほしい……。

俺はPCを起動させた。

 


このPCはラボの共有物である。いまだにCRTを使っていることもあり、見た目はすごく古くさく見える。

だがPCマニアのダルが勝手にパーツを買ってきていろいろ改造しているため、中身についてはけっこうとんでもないことになっているらしい。

ま、俺に関してはPCでやることと言ったら、未来ガジェット研究所HPの更新、メールのチェック、ニュースサイトの巡回、それに@ちゃんねるをたまに見ることぐらいだが。

さっきのタイターは、まだ降臨中なのだろうか。

 

 

 

 

====================

 

 

 

229 :JOHN TITOR◆f8VuYnoyWU :2010/07/29(木) 15:04:29 ID:4Co5c6io0

タイムマシンの仕組みについてみなさんは非常に興味が有るようですね。
勿論教えても構いませんよ。
ちなみに現代の技術では恐らく再現するのは不可能でしょう。
特に一部の機構については、SERNが2034年に完成されるまで待たなければなりません。

タイムトラベルは重力を変える事で行います。
基本的概念は双子のパラドックスを用いていると考えてもらえれば良いです。



230 :名無しの予言者さん :2010/07/29(木) 15:05:04 id:b6ohLRKPO

まだいたのかこの詐欺師
ウザいからさっさと消えろよ

231 :名無しの予言者さん :2010/07/29(木) 15:05:13 id:K3VietEd0

重力を操る能力を持つ厨二病の人ですねわかります


232 :名無しの予言者さん :2010/07/29(木) 15:05:57 id:twA9lm/80

双子のパラドックスってウラシマ効果のことじゃないんですか?
あれって時間の進みがおそくなるだけで過去には行けなかったような

233 :名無しの予言者さん :2010/07/29(木) 15:06:11 id:XCOl14WFGO

タイムマシンの仕組みなんかどうでもいいから株価情報教えろっつーの

 


234 :鳳凰院凶真 :2010/07/29(木) 15:06:39 ID:1Kz7Z7Sn0

>>229

ティンプラー・シリンダーとカー・ブラックホールを使っているのだろう?
やはり10年前に現れたときとまったく同じだな!
そしてお前が乗っているタイムマシンは1970年代製のシボルエだ!
俺はすべて知っているぞ!


235 :名無しの予言者さん :2010/07/29(木) 15:07:01 id:sjCZ8ysEO

>>229

私はホモですアゥー!、まで読んだ

236 :名無しの予言者さん :2010/07/29(木) 15:07:23 id:Lqjl70ls0

>>232
双子のパラドックスウラシマ効果は違う物だろ常考

 


237 :名無しの予言者さん :2010/07/29(木) 15:07:50 ID:2xDTmiuLO

タイムトラベラー(笑)
ジョン・タイター(笑)

238 :名無しの予言者さん :2010/07/29(木) 15:08:35 ID:5rtMan8S0

>>234
シルボエってアメ車だよな?
どうせならドイツ車とかにしろよベンベとかw

 

264 :栗悟飯とカメハメ波 :2010/07/29(木) 15:19:38 id:OWM1H5LTO

>>234

ティプラー・シリンダーってティンプラー・マシンのことか?
アホかw

ティプラー・マシンは理論上「直径10km、長さ100km、太陽と同じ質量の円筒」を秒速2500回転させないとタイムマシンとして成立しないんだぞw
シルボエにそんなもの載ると思ってんのかよ
しかもティプラー・マシンはシリンダーが作られたときより過去へは移動できないし

つーか妄想乙
誰もお前のチラ裏は聞いてない
タイターに答えてほしいわけだが


265 :JOHNTITOR◆f8VuYnoyWU :2010/07/29(木) 15:20:29 ID:4Co5c6io0

これは驚きました。
私のタイムマシンは既にこの時代の人には知られていると言う事でしょうか?
10年前に現れた、と言うのは私の事ですか?
ならば鳳凰院凶真は別の世界線で私を見たと言う事だと思います。
少なくとも私はまだ2000年へは行っていません。

重要なのは回転するブラックホールにはティプラー・シリンダーと同じようにタイムトラベルの効果が有ると言う事です。
カー・ブラックホールについてはペンローズダイアグラムか、ティプラーの計算を見れば分かるはずです。
このカー・ブラックホールを2つ生成することでタイムトラベルを行います。

 


266 :名無しの予言者さん :2010/07/29(木) 15:21:06 id:g0EVX39A0

日本語でおk

267 :名無しの予言者さん :2010/07/29(木) 15:22:26 id:gigiR1Hh0

タイターが10年前にも現れていたってマジ? ソースは?


268 :名無しの予言者さん :2010/07/29(木) 15:23:17 id:K483z8/c0

カー・ブラックホールとかペンローズダイアとかってなんぞ?
おっぱいに例えて説明してエロい人!

269 :名無しの予言者さん :2010/07/29(木) 15:24:22 id:odGzF8qBO

とりあえず千円やるからタイムマシンに乗せろ
これ以上はぴた一文払う気はないからな!

 


270 :名無しの予言者さん :2010/07/29(木) 15:24:45 ID:0cc0yP/Q0

>>268

鳳凰さんの妄想でしょw
マジパネエっす

 

271 :名無しの予言者さん :2010/07/29(木) 15:25:34 id:OWM1H5LT0

ちょwww否定しないのかよwww
鳳凰院みたいなアホの話に乗っかるなんてgdgdの予感w

カー・ブラックホールでのタイムトラベルは確かに理論的に可能だけど問題がいくつか

1.どうやってブラックホールを回転させる? まさか自然に回転してるブラックホールが見つかるまで待つとか言うなよ?
2.カー・ブラックホール内のミクロ特異点をどうやって通過するつもりだ?
シルボエがそのすさまじい重力に耐えられるわけないぞ


272 :名無しの予言者さん :2010/07/29(木) 15:26:00 id:jPmtuqab0

ジョンさんはなんで説明を小出しにしてるの? 馬鹿なの? 死ぬの?

273 :名無しの予言者さん :2010/07/29(木) 15:26:08 id:ZPjtoV5f0

株価情報マダー?

 


274 :鳳凰院凶真 :2010/07/29(木) 15:26:54 ID:1Kz7ZSn0

これは俺の妄想などではない
紛れもなく10年前にタイター自身が語ったことだ本も出ている。神保町の古本屋を探してみろ

シルボエには重力を歪曲させる装置が載っているはずだ
それも10年前のタイターが言っていた

 

312 :JOHNTITOR◆f8VuYnoyWU :2010/07/29(木) 15:37:55 ID:4Co5c6io0

はい、重力歪曲装置は積まれています。
私のタイムマシンはSERN製ではなくそれを参考にした独自の物なので
この重力歪曲装置が若干不安定です。

この装置によってミクロ特異点を発生させたり、通過時の重力調整を行います。
ミクロ特異点に電子を注入する事でそれは可能です。
電子注入により特異点は超高速回転を始め局所重力正弦波が発生するのです。
私は専門家では無いですので、仕組みについてはこれ以上適切な説明が出来ません。
カー・ブラックホールは人工的に作る事が可能とだけ言っておきます。

SERNが2010年時点でブラックホール生成実験を行っている事についてはみなさんもご存じの筈です。


313 :名無しの予言者さん :2010/07/29(木) 15:38:28 id:IofLpstvO

長文UZEEEEE!!1!1!

314 :名無しの予言者さん :2010/07/29(木) 15:38:42 id:C7QwgBSSO

さらっと不安定とか言ってるけどそれってヤバイんじゃない?


315 :名無しの予言者さん :2010/07/29(木) 15:39:31 id:BrrQolR00

おいおいブラックホールなんて作られたら地球呑み込んでオワタ\(^o^)/
タイターは全人類を虐殺するどころか地球そのものを宇宙から消し飛ばすつもりだ!
ふざけんな死ね!


316 :栗悟飯とカメハメ波 :2010/07/29(木) 15:40:27 id:OWM1H5LT0

説明しないんじゃなくて、説明できないんだろw

移動先の指定はどうする? 地球は常に宇宙空間を動き続けてるんだぞ

ちなみにタイター=鳳凰院説について提唱してみるw

 

379 :JOHNTITOR◆f8VuYnoyWU :2010/07/29(木) 16:01:20 ID:4Co5c6io0

移動先の指定はVGLで行います
Valuable Gravity Lockシステム
日本語だと可変重力ロックシステムと言った所でしょうか
重力歪曲装置とセットになっている物です
これで到着予定先の局所重力を読み込み、ティブラー正弦波をその位置にロックするのです
地球の重力を捉えるので、必ず地球が有る場所に到着出来ます
4個のセシウム時計の光学システムを利用して計算している為、誤差は極めて微少の物になります


380 :名無しの予言者さん :2010/07/29(木) 16:02:03 id:OSrrA5ca0

法皇淫とかいうコテハンうぜぇw
つーか10年前にもタイターが現れたとか聞いてねーぞw

381 :名無しの予言者さん :2010/07/29(木) 16:02:09 id:YKFYUZjGO

てかタイターのうんこのせいで宇宙がヤバい

 


382 :鳳凰院凶真 :2010/07/29(木) 16:04:15 ID:1Kz7Z7Sn0

そうだ、そんなようなことが本にも書かれてあった気がする

だがこれは結局のところ本の内容をコピペしているだけであって
タイターでなくても誰でもできることになるぞ

 


383 :名無しの予言者さん :2010/07/29(木) 16:05:01 id:yiNxM5tq0

ジョンたんは萌えキャラ。俺の嫁
異論は認める。

 


384 :名無しの予言者さん :2010/07/29(木) 16:05:41 id:OWM1H5LTO

なんかどんどんガッカリ感が…

結局はどれも具体的じゃないんだよな
頑張ってそれっぽく見せてるのは認めるが
漏れはごまかされない

 

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おっと、いつまでも@ちゃんねるを見ているわけにはいかない。

昨日から棚上げになっている問題に着手しなくては。

電話レンジ(仮)。

いい加減、こいつの謎の機能について種明かしをしたいのだ。

ダルには以前から、電話レンジ(仮)にPCを繋げるように頼んでおいた。

そのセッティングも昨日で終わったとのことで、今は開発室でてきぱきと配線を繋げているところだった。

 

「なあ、ダル。なぜX68000(ペケロッパ)なのだ?」

なにしろ20年以上前のマシンだ。スペックは当然ながらすごく低いというのに。

 


「ロマンだからに決まってんじゃん常考

「主人公が日本人なのにオッドアイである理由のようなものか」

「全然意味が分からん」

「ロマンだ」

「ロマンならしょうがないな」

「いずれにしても、ラボには他に空いてるPCがなかったんだよ」

「お前の最新PCは?」

「ふざけんな。こんなわけの分からんものに繋げて、もし動作が遅くなったらどうすんだよ」

ワガママなヤツめ。

というか電話レンジ(仮)を作ったのは俺たちなのだから、“わけの分からない”もの呼ばわりしなくてもいいだろうに。

「そう言えばゲル化について調べてきたん?」

「ああ、今朝、大学に行ってきた」

バナナはなぜゲル状になったのか。それがどういう状態なのかを調べるため、夏休み中の大学へ行ってきたのだ。

「顕微鏡で調べてみたんだが、分子レベルでズタズタだった」

「ズタズタ?」

相転移とかそういうレベルではなかった。バナナではないなにかになっていた……」

「腐食した可能性は……ないか。2分間チンしたくらいで腐るはずないもんなぁ」

「……フラクタル構造を思い出したよ」

メンガーのスポンジだっけ?」

「ああ。バナナに、フラクタル図形の穴をナノレベルで無限に開けていったような感じ」

「なんかヤバくね? なにが起きてるんだろう」

「……俺には、1つ仮説がある」

もったいぶるように、俺は少しばかり押し黙ってみた。

ダルがゴクリと喉を鳴らす。

「電話レンジの電磁波の影響、という仮説だ」

「え、それってどういう──」

「俺の推測が正しければ、電話レンジ(仮)はとんでもない殺傷兵器になり得る。軍事に転用すれば、戦争の歴史が塗り替わるだろう。ククク」

悪者っぽく唇を歪めてみた。

それからケータイを取り出し、耳に添える。

「……俺だ。計画は第2段階を迎えた。……ああ、いずれヤツらは思い知ることになるだろう。審判の日(グランド・ジャッジメント)は近いのだとな。すべては運命石の扉(シュタインズゲート)の意志であり、人類はそれに抗うことはできん。エル・プサイ・コングルゥ

 

妖精さんと話してんじゃねーっつの。接続終わったぜぃ」

妖精などではないと説明したかったが、できなかった。

正体をバラすことは裏切り行為になるのだ。

そうすれば“機関”よりも厄介な相手を敵に回すことになる。

電話レンジ(仮)は、配線だらけになってなんだかわけが分からない状態になっていた。

それにPCを繋げたと言っても、“魔改造”に近い。

できることと言えば、業務用のターミナルモードをPCで操作できるようになるということ、それとレンジの稼働状態を監視できるぐらい。

 


「で、どうするん?」

「バナナは用意してある」

 


さっき『メイクイーン+ニャン²』を出るときに、まゆりから“バナナ買っといて”と頼まれたのだ。

お代はまゆり持ちである。

実に御しやすい女だな。究極のお人好し、あるいはなにも考えていない頭ユルユルのおバカさんだ。

俺にバナナを買わせたら確実に実験に使うと、予想すらできないらしい。

というわけで電話レンジ(仮)の中にバナナを人房入れた。

「まるまる使うと、またまゆ氏がしょんぼりしちゃうんじゃね? それ、まゆ氏のお金で買ってきたんだろ?」

「ヤツから提供された研究費だ」

「そもそも丸々全部使う必要なんてないし。1本でいいよ1本で」

ダルは房からむしり取った1本だけを、電話レンジ(仮)の中に入れ直した。

「実験に金をケチるようでは、世界の支配構造を作り替えることなどできんぞ」

「作り変えたいと思ってるのはオカリンだけだって」

ラボに戻ってくるなり、やる気をなくしおって。

こいつは気分にムラがありすぎだな。

「ほら、早くケータイからタイマー入力よろ」

ケータイはどこへやったかな……。

ケータイケータイ……。

 

呼び出し完了。

すぐに繋がった。

「R・E・N・G。こちらは、電話レンジ(仮)です」

まゆしぃガイダンスが始まる。

「こちらから、タイマー操作ができます。♯ボタンを押した後、温めたい秒数をプッシュしてください」

「まゆしぃガイダンスにスキップ機能を付けておくんだった。待たされるとイライラする」

「例えば、1分なら『♯60』。2分なら『♯120』……です」

ようやくガイダンス終了。

『120♯』と入力するぞ。

入力完了。



電話レンジ(仮)内のターンテーブルが、普段とは逆へと回転を始めた。

「2分はけっこう長いんだよな……」

別に2分にこだわる必要はなかったりするのだが、初めてまゆりがこの冷凍(?)機能を発見したとき、タイマーを2分にセットしていたので、その再現という意味も込めているのだ。

もちろん、60秒や180秒にして実験もした。

短ければ短いほど冷凍は中途半端になったり、そもそもなにも起きないという結果が得られた。逆に長ければ長いほど変化も大きくなった。

 

「でもさあ、マジで電磁波のせいだったら、僕らの細胞なんかもスカスカになっちゃってんのか?」

手持ち無沙汰の様子のダルが、今さらその話に食いついてきた。

「お前は電話レンジ(仮)の中に入ってチンされたことがあるのか?」

「そもそも入れない罠」

「つーか、電磁波の影響って、ソースは?」

「あえて言うならば……マッドサイエンティストとしての勘だ」

「ちょっ、根拠なしとか」

「かつてエジソンはこう言った。1%のひらめきがなければ、99%の努力は無駄でしかない。だから発明家よ、ひらめけ! ……と」

「“天才は1%のひらめきと99%の努力”じゃなかった?」

「残念だったな。近年では、それは誤って広まったものだというのが常識になっているのだ。フゥーハハハ!」

エジソンが言ったん? ひらめけ、って?」

「そう、ひらめけ、とだ」

ひらめけ、だったかどうかは不明だが、そういう意味のことを言ったのは確かだ。

俺もネットのWikiで最近知った口なのだが。

「故に天才マッドサイエンティストである俺は常に、ひらめ──」

電話レンジ(仮)が軽快な音を鳴らした。

「しかしチンをしたところで、ゲル状になるだけで、新しい発見などなにもないよな」

この120秒間を無駄にしてしまった気分だ。

 


ダルが電話レンジ(仮)のドアを開け、中をのぞき込む。

と、なぜか困惑顔になった。

「お……おお!?」

目をこすって、何度もまばたきをして、繰り返し首をひねっている。

「なにをしている?」

 


「いや、えっと……あれ?……消えた」

「消えたってなにが?」

「バナナが」

こいつはなにを言っているんだ?

俺は状況を呑み込めないまま、ダルを押しのけて電話レンジ(仮)の中を見た。

 


「……ない」

……なかった。

中には、なにもない。

つい120秒前に入れたはずのバナナが、跡形もなく消え去った。

「…………」

 


俺は小さく息を吐くと、ケータイを取り出した。

電話の向こう無音に対して語りかける。

「……俺だ。厄介なことになった。俺たちはどうやら……とんでもないものを目覚めさせてしまったらしい」

「と、とんでもないものってなんぞ!?」

隣でダルがあわあわしているが、無視。

俺も驚きのあまり心臓がドキドキしているのだが、表面上は冷静さを心がけた。

「今すぐに緊急要請666号“冷厳なる封印(クーリングオフ)”を発動させろ。なに!? 政府の承認!? バカか、そんなことを言っている場合ではない! このままではこの国が吹っ飛ぶぞ!」

 


怒鳴ってから、ケータイをしまった。

 


「……じ、自演乙」

「うるさいフェイリスのストーカー。それでバナナはどこに隠した?」

「誰がストーカーだよ!」

「バ・ナ・ナを、出せ。手品でも披露して得意になっているつもりか?」

「隠したのはオカリンだろ?」

「…………」

「…………」

 

 

イヤな沈黙。

気が付けば喉がカラカラだ。

「なんで消えたんだよ!?」

「知らんがな!」

「どこに行った、バナーナ! バナーナァァ!」

 

電子レンジ内のターンテーブルを取り外したりして、隅々まで探してみるが、バナナの皮すらも見つからない。

 

「そ、そうか、分かったぞ……。これは電磁波兵器などではなく、テレポートが可能な電子レンジだったのだ……!」

「な、なんだってー……って、そんな無茶な」

「でなければこの密室から、バナナが消えるはずがない!」

「ええと、ひとまず、冷静になるべきじゃね」

「あ、ああ。そうだな……」

 

2人して深呼吸。

そうだ、バナナでも食べて落ち着こう。

そう思ってバナナの房に手を伸ばした。

──そして、目を疑った。

 


「な……に……!?」

それは明らかに不自然だった。

俺がまゆりに頼まれて買ってきたバナナの房。

3分ほど前、ダルがその房から1本だけバナナを千切り、電話レンジ(仮)に入れた。

……はずだった。

だが今、その房には“千切られた跡”は存在せず。

そして代わりに、1本だけゲル化したバナナが繋がっていた。

 

「な、なんじゃこりゃー!? どうなってんだ?」

ダルも気付いたらしい。

目を白黒させてバナナを触ろうとしたので、俺は急いで制止した。

「ダルよ、このラボに今、バナナはいくつある?」

「た、たぶん、このバナナだけ……」

「このゲルバナがくっついているところは、お前がさっき千切った場所か?」

「わ、分かんね……。そこまで確認してないし……」

「このゲルバナ、完全にくっついてるなぁ……」

そう、完全にくっついている。

切れ目もなにもない。

ゲル化している以外は、とても自然だ。細工した形跡すらない。

千切れている部分に後からゲル化したバナナをくっつけたわけではない、ということ。

「な、なあ、ダル……これってもしかして……」

ついさっき、思いつきで口にした言葉。

それを改めてつぶやくことが、俺には少しためらわれた。

しかし、言わずにはいられない。

どれだけ信じられないことでも、
この目で見てしまったのだから……!

頭の中は疑問マークだらけだし、いったいどういう仕組みでこんなことが起きたのかは分からないが、見たままを説明するなら、これは──

密室状態にあった電話レンジ(仮)の中から、バナナの房への──

「テレポート……だったりするんじゃないか……!?」

 

 

──「ふーん」

 


と、談話室の方から女の声。

 

「興味深い実験してますね」

 

「だ、誰だっ!?」

 

心臓が喉から飛び出るかと思った。

驚きつつ、声のした方へと振り向く。

 

 


と同時に、逆に鋭い視線を射抜かれた。

 

「バ、バカな……!? なぜ貴様がここに……!? 弱冠18歳にして『サイエンス』に論文が掲載された天才……衆人環視の中で男をいじめるドS女……そしてまたの名を“蘇りし者(ザ・ゾンビ)”……牧瀬紅莉栖……!」

 

「説明セリフ乙……」

 

「誰がゾンビだ、誰が」

 

「いったいどういうことだ!? なにが目的でここへ……」

 

「あなたに会いに来たの、岡部倫太郎さん。じゃなくて、鳳凰院凶真さん、だった?」

 

おかしい、こいつ、なぜ俺の本名を知っている?

 

俺は牧瀬紅莉栖に本名を名乗ったことはないのに……!

 

「そうか……、やはり貴様、“機関”に所属するエージェント、しかも特殊能力者だな……! それなら不死であることもうなずける……!」

 

「だから死んでないって。勝手に殺さないでくださいよ。橋田さん、この人なんとかしてもらえませんか?」

 

「この状況で牧瀬氏が現れたから、オカリンは混乱してると思われ」

 

ダルはこの女の登場に驚いていないようだ。

いったいなぜだ?

 

「ダル、裏切ったのか!?」

 

「オカリン、暴走しすぎ」

 

「牧瀬紅莉栖に弱みを握られたか。
 それとも色香に惑わされたか?」

 

 


俺は紅莉栖をにらみつけた。

俺の右腕を、よくも……!

 

「許さんぞぉぉ、このヴィィィッチがぁぁぁっ!」

 

「落ち着け」

 

紅莉栖の瞳がギラリと光った……ような気がした。

18歳とは思えない迫力だ。

もしかしてこの女、一度死んで蘇ったのではなく、死んだ紅莉栖を元に作られた人造機械歩兵ではないのか?

とりあえず俺は素直におとなしくすることにした。

 

「この場所のことは、昨日講義が終わった後で橋田さんから聞いたの。あなたの名前もね」

 

つまらないオチだな……。内心舌打ちをしてしまった。

 

「俺と話をしにきた、と言ったな?」

 

「そうです。私が死んだのを見たっていうのが、事実なのか単なるセクハラの言い訳なのか。それについての解答がほしくて」

 

そう言えば俺は昨日、こいつにHENTAI扱いされたのだった。

まあ、今になって思い返してみるとよくぞ警察に突き出されなかったものだと思えるほど、失礼なことをした気がする。

だがあのときは仕方がなかったのだ。死んだ人間が目の前に現れたら誰だって俺と同じ行動を取るだろう。

 

「でも、今のあなたの振る舞いで理解した。どうやら単なるセクハラだったみたい。つまり私の予測が証明されたということ」

 

「勝手に結論を出さないでもらおうか。お前は俺を誤解している」

 

このままでは俺はHENTAI認定されてしまうではないか!

なんとか誤解を解かなければ!

 

「ま、そのことは今はいいんです」

 

「え、いいのか……?」

 

助かった。警察を引き連れてきたのかと思った。

だが“今は”というのが気になる。

 


紅莉栖はピンと背筋を伸ばしたまま、ツカツカと開発室へと入ってきた。

まだ18歳だと言うのに、なかなかスタイルがいい。

歩き方もさまになっている。

胸のふくらみはあまりないがな!

俺もダルもすっかりたじろいでしまい、それほど広くないこの部屋で紅莉栖と距離を取ろうと、ついつい後ずさりしてしまった。

くっ、おのれ。開発室は関係者以外立ち入り禁止なのに!

 

「そう言えばまともに自己紹介してませんでしたね。牧瀬紅莉栖です。改めましてよろしく」

 

そう言って仏頂面のまま手を差し出してくる。

なんだ、この仕草は?

指先から超常的な波動でも打ち込む気か!?

 

「握手もできないの? 日本の男の人って常識が足りないんじゃない?」

 

握手だと?

ほぼ初対面に近い異性、しかもHENTAI認識寸前の俺に対して、この天才少女は自ら握手を求めているというのか?

 

「欧米か!」

 

アメリカで7年暮らしてますがなにか」

 

「欧米か……」

 

補足しなやかで、キレイな指。

爪は艶やかで健康的な色。マニキュアや付け爪など余計な装飾はしていない。

俺はそれを、まじまじと見つめた。

いつでも逃げられるよう、へっぴり腰のままで、そーっと自分の手を伸ばす。

紅莉栖の人差し指の先端部分を、自分の親指と人差し指で軽くつまみ、すぐに話した。

 

「ビビりすぎ」

 

「身にまとう殺気がハンパないからな。これが俗に言うマーシャルアーツか」

 

「俗に言わないわよ」

 

「ではNINJA──」

 

「言わないつってんだろ」

 

くっ、この女、どこまでも冷徹だ。

かもたまに口調が怖くなるし。

 

アメリカ育ちならば、“HAHAHA! ナイストゥミーチュウ!”と満面の笑みを浮かべながら握手を求めるのが普通だろう。いや、むしろハグを求めるぐらいするべきだ」

 

人造機械歩兵では無理か?

 

「どんな偏見よ、それ」

 

紅莉栖は肩をすくめつつ、そう吐き捨てた。


すでに俺の方を見てはいない。

その視線は、電話レンジ(仮)の横に置いてあるバナナへと向けられている。

ついさっき、とんでもない現象を起こしたバナナ。

房の中で、1本だけ不自然にゲル化している。

 

「……これ、本当に興味深いですね」

 

紅莉栖は顔を寄せて、バナナをためつすがめつ観察し始めた。

 

「ピンセットあります?」

 

「ない!」

 

「そう」

 

と、紅莉栖は人差し指を、ゲル状バナナにぶすりと突き刺した。

ぶよぶよのバナナの中に、紅莉栖のキレイな指先が埋まっていく。

 

「なにをする! 貴重な実験データを……!」

 

「ぐずぐずね」

 

紅莉栖はすぐに指を抜いた。指先にゲル状の欠片がこびりついていて。

紅莉栖は躊躇することなく、その指をパクリとくわえた。

 

「……味は無しか。まっず」

 

顔をしかめようともしない。

 

「食い意地が張っているとはまだまだお子様だな、蘇りし者よ。そんなに腹が減っているならばバナナ1本くらいめぐんでやろう!」

 

「いりません」

 

「そもそもあのバナナ、まゆ氏のじゃん」

 

「遠慮することはない。俺がめぐんでやると言っているのだ!」

 

「HENTAIのバナナなんて誰が食べるもんですか」

 

「HENTAIのバナナ……!」

 

ダルが電撃を受けたかのようにビクンと身を震わせた。

な、なんだ? どうしたんだ?

 

「HENTAIのバナナを、食べる……。ぐずぐず……。指くわえる……。まっず、と顔をしかめる……」

 

どうやらこいつの脳内変態プロセッサーが高速で稼働を始めたらしい。

 

「牧瀬氏、牧瀬氏、今の、もう一度お願いできる? できれば悔しそうな顔でよろ」

 

「はい……?」

 

「ほら、“HENTAIのバナナなんて誰が食べるもんか”って。できればその後で“ああ、でも……”も付け加えてくれるとなおグッド!」

 

「……ん? ……ん~? ……っ!」

 

言葉の意味に気付いたのか、紅莉栖はカァッと顔を赤くした。

 

「フハハ、ダルよ、お前はどうしようもないクズだし最低のHENTAIだが、今回ばかりはよくやったと言っておこう!」

 

あの生意気な紅莉栖に一矢報いたことになるわけだからな!

ここはさらなるコンボを狙って追い打ちをかけねばなるまい!

この生意気な少女に、大人の戦術というものを見せてやるのだ!

 

「それで牧瀬紅莉栖。お前は今、なにを想像したのだ? ぜひ教えてほしいものだな、フハハハ」

 

「…………っ」

 

「さあ言え、天才少女! 天才がどんな妄想をしたのか、ご高説願おうではないか!」

 

「この、バカ……!」



紅莉栖は肩を怒らせながら、俺たちに背を向けてしまった。

人間らしい感情表現もできるのだな。

どうやら人造機械歩兵ではなかったらしい。

俺は今、実に清々しい気分だ。

ここ何年かで最高にスッキリした。

さすがダル。俺の右腕。いい仕事をする。

 

「あんたたち、2人ともHENTAIだったのね」

 

「いやあ」

 

照れてるんじゃないバカが。

 

「お前に言われたくはない」

 

「オーケイ。生意気な振る舞いについては謝ります」

 

紅莉栖は大きく息をついて、俺たちに向き直った。

すでに表情には冷静さが戻っている。

 

「その原因があなた方のセクハラ行為にあったとしても、今は不問にする」

 

だから、いちいち“今は”と付けるな。後で本当に訴えられたらどうしようと不安になるだろうが。

 

「詳しく教えてください。このバナナのことと、それとそっちの──」

 

紅莉栖はチラリと電話レンジ(仮)を見た。

 

「電子レンジのこと」

 

「トップシークレットだ。あえて部外者のお前に1つだけ教えてやるとするなら、こいつの名前は『電話レンジ(仮)』だということぐらいだ」

 

「かっこ、かり? なにそれ?」

 

「そのままの意味だ。名前はまだ仮なのだ」

 

「名前なんてどうでもいい」

 

「だが名前以外は教えることはできないぞ」

 

「でもさオカリン。牧瀬氏なら、このヘンテコ機能について解明してくれるかもよ?」

 

「む、それは……」

 

なにしろ天才らしいからな。

俺を論破したほどなのだ。少なくともその頭脳はアテにできる。

だが小生意気な性格が気に食わない。

この少女は危険だ。

ちょっと怖いし。

そこで俺は、いいアイデアを思い付いた。

 

「ニヤニヤしちゃって……またなにかHENTAIチックなこと考えてる?」

 

「クリスティーナと言ったか、貴様」

 

「誰がクリスティーナだ! 一言も言っとらんわ!」

 

なんとなくそっちの方がハリウッド映画っぽくて雰囲気が出ると思ったのだ。

 

「このレンジの秘密を教えてほしければ、俺と取引してもらおうか」

 

「……なによ?」

 

「まず1つ。貴様にはラボメンとなってもらう」

 

「ラーメン……?」

 

「ラボメンだ、馬鹿者! ラボラトリーメンバー!」

 

「研究所のメンバーに迎えてくれるっていうこと? でも私、8月中にアメリカに帰る予定なんですけど」

 

「他者に秘密を漏らさないという契約書を書いてもらうさ。もし破ったら、貴様がムッツリスケベのHENTAIだと『サイエンス』誌に告発する」

 

「くっ……」

 

 

「鬼畜だな、オカリン。その『サイエンス』、発売されたら5冊買う」

 

「ラボメンとなった暁には、帰国するまでゲストとしてその頭脳を我がラボのために役立ててもらって結構だ」

 

「……偉そうに。詳しく契約書を見せて」

 

「そんなものはない! ここはサークルであって会社ではないのだ」

 

「……知識を提供するなら、オーケイです。ただし他にHENTAI的なオプション契約があるなら、答えはノーよ」

 

「取って食ったりしないから安心しろ」

 

「セクハラはする気?」

 

「しないっつーの!」

 

「さっきあなた、“まず1つ”って言いましたよね? 2つめがあるんでしょう? それがHENTAI的要求の可能性が──」

 

「2つめの条件は──この俺が貴様に大した行ったセクハラ一歩手前の行為について、すべて不問にすることだ!」

 

「…………」

 

「オカリン、ちっちぇえ! 人としての器がちっちぇえッス! そこにシビれる憧れるゥッ!」

 

「ダルに言われたくない。ちなみにダルのセクハラ行為はこの件に含まれない。そっちは2人で話し合え」

 

「なんだとコラふざけるな!」

 

「こちらからの要求は異常だ! この2点を呑めないのなら、今すぐお引き取り願おう! ククク、さあ、どうする? 悪くない取引だと思うがな」

 

「あんたにとってでしょ」

 

紅莉栖は指を額に当て、大げさにかぶりを振った。

 

「まったく……。ノルアドレナリンが過剰分泌されてる気分よ。開いた口が塞がらないわ」

 

「貴様が顎関節症になろうと知ったことではない! 要求を呑むか呑まないか、さあ答えろクリスティーナ!」

 

「だからティーナって付けるな! 私は紅莉栖!」

 

紅莉栖は自らを落ち着かせるかのように、天井を振り仰いだ。

いちいちアクションが大きいのは、アメリカ育ちだからだろうか。

そのうち“ッデム!”とか“オウマィガッ!”とか“マザーファッ!”とか言い出しそうだ。

 

「……オーケイ。取引する」

 

「ククク、いい返事だ。今この瞬間、君はラボメンバー004となった」

 

「歓迎しよう、クリスティーナ。いや、蘇りし者(ザ・ゾンビ)よ」

 

「どっちも間違ってるから。ちゃんと呼べ、鳳凰院」

 

「…………」

 

「…………」

 

俺たちは1分間ほど視察戦を繰り広げた。

先に目を逸らしたのは紅莉栖。

やれやれ、という感じで余裕ぶっている。

 

「子供ですね」

 

「なにか言ったか、天才“HENTAI”少女」

 

「あーもう! 以後、HENTAI禁止! 私もあんたのことHENTAI扱いしないから! もう許して!」

 

「分かればいいのだ。では本題に入ろう。ダルよ、クリスティーナに──」

 

ティーナも禁止」




「紅莉栖くんに、これまで我々が行った実験について説明してやりたまえ」

だが断る

「…………」

結局、俺が説明することになった。紅莉栖に対して途中、俺の武勇伝も披露しつつ──紅莉栖に“脱線しないで”と怒られた──電話レンジ(仮)とバナナの関係について、ウソ偽りなく語った。

紅莉栖は最後に自ら質問してくるなど、天才と言われるだけあって理解力は早かった。

 

……。