ゲームを読む。

-ノベルゲーム・タイピング-

CHAOS;CHILD【14】

このブログはゲームのテキストを文字起こし・画像を投稿していますので、ネタバレを多く含みます。

読んで面白いと思ったら購入し、ぜひご自身でプレイしてください。

ご意見・ご要望がありましたら
─メール─ zippydle.scarlet@gmail.com
または
Twitter─ @Zippydle_s
まで連絡下さい。

 

●購入先●

store-jp.nintendo.com

 

●公式サイト●

game.mages.co.jp

 


--------------------

 


……。


「ここだ。入れ」

「…………」

「…………」

「何をボサッとしている。さっさとしろ。

「お、お邪魔します……」

 



「えっと……」

 



「人の家の中を、ジロジロ無遠慮に見るものじゃない」

「家って……もしかしてここが久野里さんの……?」

「そうだ。何か問題でもあるのか?」

「いや、だって……」


外観もそうだったが……中身も、よくもまあ渋谷にこんな所があったなというくらい、どう見ても『筋金入りのボロアパート』だった。

もちろん、部屋の中にある物だってそうだ。

“金欠”を絵に描いたような物ばかり。

唯一、立派なのはパソコンくらいで──


「え!?」

「どうした、宮し……うわっ!」


僕は伊藤を押しのけ、パソコンの前に駆け寄った。

点けっぱなしになったモニター。

そこには見慣れたページが映っていた。

 



『渋谷にうず』

それも、僕たちがいつも見ている閲覧用の画面じゃない。

今まさに、編集している最中の画面だった。


「嘘……もしかして……ケイさん……?」

「…………」


そうか……どこかで聴いたことのある声だと思っていたけど、そのはずだ。

喋り方は僕たちの普段聞いている、優しげなケイさんのものと違いすぎる。

けど……でも、声は間違いなくケイさんのものだ。

 

 

 

 



「え? 嘘、マジ!? ケイさんって、あのケイさん!? 渋谷にうずの?」


どうやら伊藤もかなり興奮しているようだった。

無理もない。

僕たちにとって、ケイさんは憧れの人と言ってもいい。

 



情強の中の情強。

この僕が一目置いているくらいだから、トップクラスと言えるだろう。

その本人と、まさかこんな形でめぐり逢うことが出来るだなんて。

ただ……。

あのケイさんが、まさかこんな性格の人だとは思わなかった。

 



今まで、さんざん僕らを冷たく罵倒してきた“久野里さん”と……『渋谷にうず』で接する、優しい“ケイさん”。

いったいどっちが本当の彼女なのか、よく分からない。

しかもケイさんは、どうして僕たちを自分の部屋に連れてきたんだろうか?

『使えるかどうか、後ほど判断する』とか言ってた気がするけれど……。


ふと見ると。

部屋の片隅に、奇妙なものが立てかけてあるのに気付いた。

 



それは、一言で表現すると“剣”だった。

ただ、万人がそれを見て剣と思うかどうかは微妙なところだ。

それくらい凝った作りになっていて、およそ実用的なものに見えないから。

なぜだか、見ているだけで心に不安がかき立てられて。

すごく、イヤな気分になった。

何だろう、あれは。

コスプレ用、と言われたら信じてしまいそうだった。

少なくとも、目の前にいるこの人のイメージには合わない。

渋谷にうずのケイさんとしても。

僕を罵倒してきた久野里さんとしても。

それとももしかして彼女には、第三の顔でもあったりするんだろうか。

実はイケイケのコスプレイヤーだったり。

実はこっそり自作の実物大武器を作っているオモチャ職人だったり。

実はこういう剣とかを買い集めて悦に入るような厨二病患者だったり。

いずれにせよ……地雷な予感がした。

これには、触れない方がいい。

見なかったことにした方がいい。

というか、久野里さんはなにか知っているみたいだけれど。

いったいどういうつもりだ?

どうしてもったいをつける?

 



僕らを混乱させて楽しんでいるのか?

それとも、ちょっとした事情通を気取りたいのか?

 

事件のキーマンとして物語の重要ポジションを得たいのか?

なんでそういう連中ってマンガでも小説でも映画でも、いちいち上から目線なんだろう。

何様だよ。

 



いいからさっさと説明しろよ。

説明するためだけにいるキャラだろ。

そうやって謎を引っ張って、自分の出番を増やしたいのか。

サブキャラの分際で出しゃばるな!

 

「…………」


……なんてことは、言えるわけがなかった。

なので、黙って久野里さんが話し出すのを待っていたんだけれど。

 



「それよりお前」

「え?」

「お前だ。宮代拓留。いちいち聞き返すな」

「は、はは、はい……なん、でしょう?」


ヤバい。やっぱり怖い。

僕がずっと信奉してきた『ケイさん』って、僕が勝手に抱いてたイメージだけだったのか?

そして、目の前の久野里さんこそが……本性?

それなりにショックを受けている僕の気持ちなど知るよしもなく、久野里さんは壁際に立ったまま、僕を睨(ね)め付けた。


「お前は、なんの『能力者』だ?」

「…………は?」


あまりにも唐突だった。

なので、なにを問われたのか分からない。

『能力者』?

……って、誰が? 僕が?


「さっき言ったろう? あの地下施設は、いま、厳重に封鎖されている。ド素人がそんな簡単に入り込めるような場所じゃあない」

「そ、それはたまたまですよ。なんか偶然とか重なって、うまく入れただけです」

「隠すな。お前は、それを能力でやってのけたんだ」

「だ、だから、違います」

「監視モニターがいきなり起動したのだってそうだ」


な、なに言ってんだ、この人?

僕にそんな能力なんて、あるわけないじゃないか。

っていうか、ケイさん、尊敬してたのに……あんまり、ガッカリさせないでくれよっ。


「だいたい、何を根拠にそんなこと……」

「地下施設にお前たちが潜入しているのを見つけた時にな……お前かそっちの彼か、どちらかが能力者じゃないかと疑った」


久野里さんは、僕と伊藤とを交互に指差した。

 



「お、俺も……すか?」

「ああ。だが、お前の方はその後、何の反応も示さなかったからな。除外した」

「反応?」

「『11番目のロールシャッハ』画像を見た時の反応、だよ」

 


深い暗色をたたえた久野里さんの目は、いつしか、僕の目を覗き込むようにしていた。


「だが、宮代拓留。あの画像を見た時、お前は激しく動揺した」

「いや、だって、あんな気色悪い絵ですよ? あ、あ、当たり前じゃないですか」

「お前のは、そういう反応とは全く違う。あの画像を見た時にどう感じた? 思い出してみろ」


う……。

 



頭の中に、あの気色悪い『力士シール』を突き付けられた時の感覚が蘇ってきた。

あれを見ると全身が総毛立ち、止めることの出来ない悪夢のような妄想がドッと襲ってきて……いても立ってもいられなくなる。

それが恐ろしくて、どうしてもあの画像から顔をそむけずにいられない。


「じゃあ、身の潔白を証明するためにもう一度、見てみるか? あの画像を?」


久野里さんはPCに向かうと、マウスを操作してフォルダを開いた。

僕の顔を試すように見ながら指を動かし、フォルダ内の画像をクリックしようとする。


「あっあっ……い、いやです。や、やめて下さい……」


僕はいつしか全身に冷や汗をかいて、ヨロヨロと床に座り込んでいた。

PCから顔をそらす。

そう。今、あの画像を見る勇気がどうしても出なかった。


──「いい加減にして下さいっ!」

 



突然、めったに聞いたこともないような怒鳴り声とともに、世莉架が割って入った。

僕と久野里さんとの間で仁王立ちしている彼女を、びっくりして見上げる。


「いったい、なんなんですか!? タクに『ちょうのうりょく』って、そんなアニメやマンガみたいな話、真面目にして! どうかしてますよっ!」

「なに?」

「尾上……」

 



「タクは、人が殺された場所とかで、いっぱいあのシールを見てきてるんです。気持ちが悪くなるのは、当たり前じゃないですか!? 私だって、ラブホの時の事思い出して吐いちゃいそうになること、ありますけどっ!?」

「…………」

「そんなくっだらないことが証拠だっていうんなら、私にだって『ちょうのうりょく』があるってことになりますよねっ?」

「いや。お前は、違う」

「なんでですか!?」


世莉架がさらに食ってかかった。

こいつ、僕のこととなると、いつものほわほわしている彼女とは思えないようになってくれる時がある。

来栖とはまた違った迫力で、僕を守ってくれようとする。

それはとっても嬉しくて、頼もしいことだけれど。


「お、尾上、その……ありがとう。けど、ちょっとだけ抑えてくれ」

「え!? でもっ!」

「い、いいから……本当にサンキューな」


僕が、そんな『能力』とかを持ってるだなんてありえない、と思う。

けれど、今回の事件に、得体のしれない『能力』めいたものが関係してるんじゃないかというのは、もともと僕も疑っていたことだ。

なら、久野里さんからちゃんと話を聞いてみたい。

僕がそう言うと、久野里さんは値踏みするように僕を見て、やがてため息をついた。

それから、おもむろにスマホを取り出すとどこかへ電話をかける。

電話の相手はさんざんしぶっていたようだが、やがて不承不承、同意したようだった。

久野里さんはうなずきつつ電話を切ると、言った。


「また出かけるぞ。まぁ、今度は命の危険はないだろう。安心するがいい」


…………。


……。

 



「ふむ。こんな時間によう来たの。まだ閉店時間までは間があるゆえ、ゆるりと過ごしてゆくがよい」


久野里さんに連れて来られたのは、カフェLAXだった。

 



そのまま、窓際の広い席に通される。

そういえば、この前もここに来たばかりだ。

あの時は、確か、有村雛絵と神成さんの話をこっそりと聞くためだったな……。

そんなことを考えていると、久野里さんが呼び出したとおぼしき人が、不機嫌そうに靴音をカツカツと鳴らしながら、店内に入ってきた。


「え?」


入り口から入って来た人物を見て、僕は思わず声を上げてしまった。

 



「ふむ。こんな時間によう来たの。ゆるりと過ごしてゆくがよい」

 



「用が済んだらすぐに帰りますから」

「遅かったな」

「私にだって準備くらいあるんです」


有村雛絵?

まさに、僕が今その顔を思い出していた後輩だった。

 



「あれぇ? ひなちゃんだー」

「どうもー。これってどういうことっすかね、先輩がた?」

「知らねーって。俺に訊かないでくれ」


確かに、有村を呼び出して、何をするつもりだろう……?

 

 

「っていうかぁ~。久野里さん。便利に使って巻き込むのはやめて欲しいって言いましたよね?」

「互いに情報の提供をする。そういう約束だろう」

「そっちばっかり私を利用してるくせに」

「いいから座れ」

「…………」


有村は諦めたようにため息をつくと、僕たちを一瞥してから、不満そうな顔で空いた席に着いた。


……。


ドリンクを注文してからしばらく、誰も話を切り出そうとせず、気まずい空気が流れる。


「それで。なんなんです?」


注文の品が揃うのを待って、最初に口を開いたのは、やはり有村だった。

 

 

「口で説明するよりも、見せたほうが早いと思ってな」

「まさか、話したんですか!?」

「利用価値がありそうだと判断した」

「……ホント、勘弁してほしいんですけど」


ふたりの話を総合すると、どうやら有村も例の『能力』について知っているらしい。

しかも──

 

 

「つべこべ言わずに見せてやれ」


見せてやれ? って、まさか?


「嫌ですよ、面倒くさい」

「宮代拓留が能力者かどうか確証を得たい」

「い、いや、だからですね。僕はそんな──」

「間違いなく『能力者』ですよ」


さも当然のように、有村は言った。

 

「有村……」

 

「おい、ホントか宮代!?」

「信じられないよ!」

「だから、僕は知らないって!」

「ふーん、なるほどね。『知らない』というのは本当みたいです。無自覚なんですね」

「無自覚もなにも! 有村はなんでそんなこと言い切れるんだよ」

「あれ。思い当る節、ありませんか?」

「そ、そんなのあるわけ……」


もしも僕にそんな特殊な能力があるなら、もっと便利に使ってるはずだ。


「でも、自分がこうなって欲しいと思ったところで、いつも特別なことが起きたりしたでしょう? たとえば、例のラブホテルに先輩が潜入した時」

 

 

「あの時、部屋には確かに鍵がかかっていたんですよ。なのに、先輩はどうやって入って来たんです?」

「ウソだ。鍵は開いてた」

「いいえ、閉まってました。けど、いきなり開いたんです。……だよね、せり?」

「う?」


世莉架が少しうろたえたように、僕の顔を見た。


「……確かに、ガチャって……」

「尾上!?」

「ほら。『それ』が宮代先輩の能力です」


ぼ、僕の、能力……?

うそ、だろ……?


「おそらく、望んだように物体を動かす能力……いわゆる念力(テレキネシス)、あるいは念動(サイコキネシス)か……それを持っている。病院の地下施設にあんな簡単に侵入できたのも、そのおかげだ」

「ほ、ほんとかよ……?」


伊藤は、びっくりしたように僕を見ていた。


「い、いや、待ってくれ……ち、違う……」

 

確かに、精神科病棟に忍び込んだ時も、地下施設に侵入した時も、偶然にしてはあまりにも都合良過ぎることがよく起こった。

普段なら開いているはずがないのに、“なぜか”閉まっていなかった扉の鍵。

解剖室から地下施設へ入る仕掛けも、“偶然”、何かが挟まっていたせいでこじ開けることが出来た。


でも──。


「そんな、特殊な能力なんて……本当にあるわけ……」

「でもさ、宮代、言ってたよな。今回の事件のカギかも知れないって……」

「そ、それはそうだけど」


確かに僕は少し前、そんなことを主張していた。

けど、実際に自分が『能力者』だとか言われて、初めて分かった。

本気でそれを信じ切っていたわけじゃなかったんだ。

口では、さも鋭い推理っぽく言ってたけれど……僕の中ではあくまでもフィクションに過ぎなかったんだって。

だって、当たり前だろう? そんな非常識なもの、僕が持ってるわけ──


「先輩? 今から言う質問に、すべて『いいえ』で答えてください」

「は? な、なんだよ、いきなり?」

「いいから答えてください。いいですね」

「は、はい……」


逆らうことが許されないような口調で言われ、思わず頷いてしまった。

 

「自分のクラスの人間は、バカばっかりだと思っている」
「え、えと……いいえ……」
「でも、本当はその輪の中に入りたいと思っている」
「いいえ……」
「ひとりでカラオケに行ったことがある」
「いいえ」
「ひとりでカラオケに行ったけれど、一曲も歌ってはいない」
「いいえ」
「来栖先輩と一緒に暮らしていた時、来栖先輩のお風呂を覗いちゃったことがある」
「いいえ」
「なるほど、わかりました」


有村は納得したように頷くと、うっすらと笑みを浮かべた。


「わ、わかったって、何が?」
「まず最初の質問。宮代先輩は、みんなバカばっかりだと思ってますね」
「そ、そんなことは……」
「それから次。そうは言っても、本当は寂しくて、みんなの輪の中に入りたいと、そう思ってます」
「ち、違う! 僕はあんな、なんの生産性のない会話になんて──!」
「カラオケにひとりで行きましたね」
「そ、それは、新聞部の取材で行っただけだ! でも歌っては──」
「それは嘘です」
「え!?」
「本当は歌いました」
「う、歌ってない!」
「一曲だけですか?」
「だから、歌ってないってば!!」
「なるほど。一曲だけ歌ったんですね」
「う……」

 

「おい、宮代。ホントか? お前、あれだけ歌ってないって否定してたよな?」


あ、有村……なんで知ってるんだよ?

確かにあの時、勿体ないからって、一曲だけ……。


「最後に、お風呂で来栖先輩を──」

「わーっ、もういい、やめろ!」

「タクぅ……」


ぷひゅひゅ、ぷひゅ~……。

 



世莉架がなんか残念音みたいに、『ゲロカエルん』ストラップを鳴らした。

テレビのバラエティか、お前は!


「ち、違うんだ! アレは結人がいたずらして! 今なら誰も入ってないって言うから、ドアを開けたら──! それに、慌てて目をつぶったから何も見てない! ホントだぞ!


あの後、僕がどれだけ恐ろしい目にあったか!!

思い出すだけで恐怖が──じゃなくて!


「そっ、それがいったい何だって言うんだ!?」

「わかりませんか? 今のが私の能力です」

「え……?」

「他人の口にした言葉が『嘘』か『真実』か分かる──それが私の能力なんです」


他人の言葉が真実かどうか……?


「あ……」


そこでようやく僕は気づいた。

今まで有村が何度か見せた態度と、そして言葉。

 



『言葉に出してもらってもいいですか?』


あれは、“そういうこと”だったのか?


「彼女の言ってること、ホントかな」

「いや、ホットリーディングやコールドリーディングって可能性もあるし」

「ほっとりーでぃんぐ?」

「つまり、事前に調査して……って、後で自分で調べろ」

 



「ああ、もういい、面倒だ」


僕たちのやり取りを、いかにも億劫そうに久野里さんがさえぎった。


「アレを見せてやれ。それが一番早い」

「アレ、ですか? こんなところで?」

「たぶん、宮代以外には見えないはずだ」

「そうかも知れません、けど……」

 



気乗りしない様子で、有村はうつむいた。

ア、アレを見せる?

って……なんだよ? 僕に何を見せてくれる気だ?

やがて渋々頷いた彼女は、いきなり僕の目の前で立ち上がり──


「宮代先輩?」

「な、なに?」

「……よく見てて下さい」


そして、スカートをまくり上げ……

じゃなくって。

 



「う……?」


『だから、いったい何を見ろって?』と言いかけた僕の言葉が、止まった。


「────」


不意に、有村が横に伸ばした右手。

すうっと息をひとつ吸い込んだ彼女は、空(くう)からゆっくりと何かを引き抜くような仕草をした。

 



「あ、あ、あぁ……っ?」


驚愕する僕の目の前で──

何もない空間から、有村の手によって、あり得ないものがひきずり出されてきた。

 

 

歪(いびつ)にして流麗。

醜悪にして妖艶。

無機物でもあり有機物でもあり。

まるでこの世界のすべての型(かたち)という型(かたち)を閉じこめたような、そんな──。

 



「……け、剣?」


こ、これ……確か、さっき久野里さんのアパートにもあった……?

形こそ全く違うけれど……でも、この禍々(まがまが)しさは、よく似ている。

けど、有村は今、何もない所からこれを──。


「ど、どうやったんだ……っ?」


うろたえる僕を眺めながら、有村は面白くもなさそうに剣をかざしてみせた。


「やっぱり、見えるんですね」

 



「え、何の話、タク!?」

「剣ってなんだよ!?」

「見えないのか、二人ともっ?」


世莉架と伊藤は頭を横に振った。


「そんなバカな……」

 



こんなに大きなモノ、見えないわけが……。

慌てて周囲を見回してみる。

が、店内の客も店員も、誰一人として有村の手の中にあるものを見ていない。

いや。見えて……いない。


「これで決まりだな」

「ど、どういう事なんですか、これ?」

「今、有村雛絵が手にしているもの、それが能力者の証だ。『ディソード』と呼ばれている」

「ディソード……」


まただ。確か、久野里さんは何度かこの言葉を使っている。

まさかそれが、こんな剣のことだったなんて。


「その状態のディソードは能力者にしか目視できない。つまり、それが見えるお前は──間違いなく能力者ということだよ」


久野里さんの、ただでさえ冷徹な言葉の温度が、さらに少し下がった。


「でも、僕、そんな……能力なんて、本当に使った覚えもないし……」

「でも、事実だ」


ダメだ。突然そんなこと言われても、信じることなんて出来ない。

色々な事が頭の中を巡って、一向に思考がまとまろうとしてくれない。

もう一度ディソードとかいう剣に目をやると、それを弄(もてあそ)びながら、有村が鼻先で笑った。

 



「まぁ、同じギガロマニアックス同士、もう少し仲良くしときますかねぇ、先輩」

「ギガロ、マニアックス……?」


その言葉も、久野里さんが口にしたような覚えがある。

 



「我々は、『能力者』のことをそう呼んでいる。ギガロマニアックスと」
「呼び方なんてどうでもいいです。それより、やっぱり信じられません。僕の、その、『サイコキネシス』? とか、そんなの非科学的です」
「ああ。『念動(サイコキネシス)』というのは、お前がイメージしやすいようにそう言っただけだ。実際はもっと科学的な概念が存在する」
「科学的?」


僕は、有村の持っている剣を胡乱(うろん)な目で見た。

科学的だって? あんなものが?

 



「ああ、無理ですよ久野里さん。説明とかしても、さっぱり分かんないと思います。ちなみに、私はひとっつも理解できてません」
「お、お前と一緒にすんな。僕はこれでも──」
「はいはい」


くそ。こいつは、いちいちなんか腹が立つ。

 

 

「理解などしなくていい。ただ、最低限の事だけは覚えておけ。ギガロマニアックスの能力を、カートゥーンに登場するような『超能力』と同じように使うな。そんな安易なものでも、愉快なものでもない」
「何が違うって言うんです?」
「ギガロマニアックスの能力とは、簡単に言えば、自らの妄想を現実に変換する力だ」
「妄想を現実に……変換?」


この人、何を言ってるんだ?

それこそ、科学とは全く無縁の世界じゃないか。


「『ディラックの海』という言葉を──まぁ、知らないだろうな」
ディラックの海?」


世莉架がソファの上で身じろぎした。

おそらく、僕たちが何を話しているのかさっぱり分からないながらも、緊張しているのが伝わっているのだろう。


「た、確か、量子力学の中の概念ですよね」
「ほう、驚いたな。一介の高校生が知っているとは」


日本のネットの世界では、なぜか相対性理論好きと量子論好きが多い。

シュレディンガーの猫』なんて、もう話題になり尽くしてしまっていて、それを持ち出すことすら恥ずかしいという、なんだかおかしな風潮まで蔓延しているくらいだ。

だから、僕にだってある程度の知識はある。


「ええと……真空を負のエネルギーに満たされた空間だと定義するんですよね。で、そこを『ディラックの海』って呼ぶ」
「ああ、そうだ。ディラックの海は、マイナスエネルギーに満ちた世界ということになる」


久野里さんは、ディソードを持っている有村の手を見た。

すると有村は、なぜか微かにイヤミな笑いを浮かべて、


「で、その、なんとかの海? と、この剣を使って、妄想を現実に出来るんですよ。『リアルブート』って言うらしいですけどね」

「リアルブート……」

「ディソードは剣の形をしているが、実はただの武器じゃない。ディラックの海に干渉し、現実との間のパイプとなる端末だ。ギガロマニアックスがその端末を用いると、本来、現実空間の中に存在出来ないはずの負のエネルギーを引き出すことが出来る。すると、空孔理論(ホールセオリー)による対生成(ペア・クリエイション)で、『粒子』と『反粒子』が生まれる。それがエラーとなって、他人の脳のデッドスポットに影響を与えるんだ」

「脳の……デッドスポット?」


有村ほどではないにしても、さすがにここまでくると何を言われてるのか、さっぱり分からない。

 



「デッドスポットというのは、人間の脳における『視覚野』の死角だよ。そこに影響を与えられるということは、つまり、自分の妄想をそこへ送り込み、妄想通りのものを相手に見せられる、ということだ。しかも、相手にとってそれは、完全な『現実』として認識される」

「で、でも……そんなのただの幻覚じゃないですか。催眠術と同じですよ」

「催眠術? そうか? じゃあ、その『妄想』を、自分の回りの人間全員がリアルな『現実』だと共通認識してしまったらどうだ?」

「共通認識……?」

「そうだ。さらにそれが、渋谷中の人間の『共通認識』になったら? そして、その『共通認識』が、東京中の人間、日本中の人間、果ては世界中の人間にまで広がっていったとしたら? いったい誰がそれを『現実じゃない』と否定出来るんだ?」

「そ、それは……」

「そうしたら、『妄想』はすでに作り事でも幻覚でもなくなる。まぎれもない『現実』と化すんだよ。だからそれは、現実化(リアルブート)と呼ばれている」

「そんなバカな……だって、そんなことで現実が捻(ね)じ曲げられるなんて……」


僕は、混乱してきた頭をなんとか鎮めようと、指で髪をクシャクシャかき回した。


「仮に……いいですか、仮に、ですよ? 僕がそのギガロマニアックスだったとして。だけど、閉まってるドアの鍵を開けるとか……そんなふうに、妄想が物理現象にまで影響を与えるなんて、不可能ですよ」

「私たち含め、研究者たちも当初はそう考え、楽観視していた。だが……そんな甘いものじゃなかったんだ」

「ええ?」

「物理現象すら捻じ曲げるんだよ。ギガロマニアックスの『妄想』と、それによって共通認識化された『現実』は」

「…………」

「だからこそ、それは……この上なく危険なんだ」



 

僕は、その言葉に驚愕となりつつ、有村の持つディソードと久野里さんとを交互に見比べた。

有村は笑みを浮かべたまま、ディソードをゆっくりと僕の前に突き出してくる。

その刃は、神聖とも邪悪ともつかぬような色の光を浮かべ、一瞬、ゾクリとするほど美しく見えた。


…………。


……。

 

 

 

 

2015年10月11日(日)

 

 



街はまるで彼女を吞みこもうとでもしているかのように、騒々しさに満ちていた。

 



けれどそれは女にとっては好都合だった。

誰もを受け入れ、誰もを拒絶する街──渋谷。

今の彼女を埋没させてくれるのは、ここが渋谷だからだろう。

その喧騒の中を、女は懸命に足を動かした。

 



前へ前へ。

その度に焼けるような痛みと苦しみに苛まれ、女は苦々しく顔を歪めた。

否。自分がそう思っているだけで、その感情が果たして面(おもて)に出ているのかどうかは、彼女自身にもわかってはいない。

女の顔は、そこに刻まれた無残な傷跡と、そして憎しみの感情をひた隠すように長い髪に覆われている。

けれど、そんな女が片足を引きずりながら歩いていたところで、渋谷という街の中では誰一人振り返ろうとはしない。

それが女には有り難く。

同時に憎くもあった。

 



女の胎(なか)では炎が燃えていた。

それは憎悪という名の炎だ。

女は憎しみの塊だった。

街を行くサラリーマンも。

何も考えてい無さそうな学生も。

幸せそうなカップルも。

不幸を背負ったような顔をして歩く老人も。

全てが憎くて憎くてたまらなかった。

 



そして何よりも、奴らが憎かった。

自分を見捨てた連中が。

こんな目に遭わせた連中が。

奴等さえ自分を見捨てなければ、こんな目には合っていなかったのだ。

女の胎内にはただ焼けつくような憎しみが詰まっていた。


──否。女そのものが憎しみだった。


あの日、手に入れた能力。

全てはこの時のためにあるのだ。

 



復讐への悦びこそがただ女を突き動かしていた。

 



前へ前へと。


その時。

すれ違った男女が驚いた顔で振り返ったことに、女は気づいていない。

自分では気づいていない。

 



けれど確かにその時、女は──嗤(わら)っていた。



誰が見てもはっきりとわかるように。

真っ赤な炎が黒い煙を上げて燃え上がるように。

 

 

声を上げて。

呵(わら)っていた。


……。

 

-------------------

 

 

2015年10月12日 現在の参加者2人
【あみぃちゃん】さん【マックス・ケイディ】さん


【あみぃちゃん】さん

首尾は


マックス・ケイディ】さん

宮代は覚醒しつつあります

まだ完全にとは言い切れませんが


【あみぃちゃん】さん

他には


マックス・ケイディ】さん

ようやく思い出したようです


【あみぃちゃん】さん

存在を?


マックス・ケイディ】さん

はい


【あみぃちゃん】さん

自らが犯した罪に関しては


マックス・ケイディ】さん

そこまではまだ


【あみぃちゃん】さん

了解

もうすぐ

裁きの日だ



 

------------------


……。


2015年10月12日(月)

 



男性「おい、アレじゃね? ほら、今流行ってる!」

女性「えーマジでー。ヤバくね? てか、流行るっておかしくね? 呪われるんっしょ? マジヤバくね?」

男性「ほれ、一枚持ってこーぜ」

女性「きゃはは! ヤバいって、それ、マジヤバいって」


……。

 



男性「あ、先輩。あれ、例のヤツじゃないっスか?」

男性「例のって?」

男性「え? 先輩知らないんスか? 力士シール」

男性「力士……シール?」

男性「いやいやいや、またまたァ。嘘っしょ? 知ってて言ってるんっしょ?」

男性「いや、マジで知らないって」

男性「マジっスか? いまめっちゃ流行ってるっスよ」

男性「流行ってんの? あんな気持ち悪いのが?」

男性「いや、流行ってるのとは違うか。ほら、例の連続殺人事件。あれの現場にあったって話っスよ」

男性「あのシールが? なんで?」

男性「なんでかは知らないっスけど。でも、なんか意味あるんじゃないっスか?」

男性「力士シールねェ。なんかそのまんま過ぎだろ。もっといいネーミングねーのかよ」


……。

 



女性「ほら、ここにもあるじゃん、力士シール!」

女性「うわ、めっちゃ増えてんじゃん。てか、あんた何やってんの?」

女性「これちょっとかわいくない? ほら、カバンとかつけたら」

女性「うっそ。かわいーとかマジ受けるんだけど。どんな趣味よ」

女性「ぜったいこれ流行るって。マジで。ね、アンタもそう思うっしょ?」

女性「ちょっ、それ近づけんのやめて。見てるとなんか気持ち悪くなんだよね」

女性「ほら、気持ち悪いっつってんじゃん」

女性「うっそ、かわいーってー。ぜったーい」


……。

 



男性「あれ? それ何つけてるんですか?」

女性「あ、これ。ほら。例の力士シール? おしゃれっしょ?」

男性「あ。いいですね、それ」

女性「でしょでしょ? これ流行らせようよー。Tシャツとかにでっかくプリントとかかわいくない?」

男性「あー、でも不謹慎とか言われそうじゃないですか?」

女性「あー、不謹慎厨とか、うざいよねーマジで。でも大丈夫じゃない? みんなで着ればさー」

男性「なんかグッズとか作ります?」

女性「いいねー。ソックスとかさー、かわいいかも」

男性「ちょい考えますか」


……。

 



男性「…………?」

男性「どしたん?」

男性「なんか焦げ臭くね?」

男性「あー、ここあったらしいぜ」

男性「なにが?」

男性「なんかほら、最近この辺で火ぃつけて回ってるやついるらしいじゃん。連続放火?」

男性「あー、なんか聞いた、それ」

男性「それもほれ、あれのせいじゃねーの。呪いのシールとかって……」

男性「あれなんなの、マジで。あれと一緒なんだろ? 前のほら」

男性「ニュージェネだろ」

男性「そうそれ。ニュージェネ。あれのマネなんだろ? シブヤ、マジヤバいって」


……。

 



男性キャスター『このように、今回の事件の日付けはすべて、ニュージェネレーションの狂気と呼ばれる6年前の事件と一致しております。そこに、どのような関連があるのかが注目されているわけですが、これについてはいかがでしょう?』
男性コメンテーター『そうですね。関連があるのは、ほぼ間違いないでしょうね。ただ、現時点ですべての事件が同一犯であると決めつけるのはまだ時期尚早ではないかと思います』
男性キャスター『それはどうしてでしょう?』
男性コメンテーター『現場に残されていたという力士シールは、渋谷の街中のどこにでもあるという話ですし、入手するのは比較的簡単なんですね。したがって、何者かが同一犯の犯行とみなすために、現場に残したという可能性も考えられます』
男性キャスター『その場合はやはり捜査の混乱を狙ったということでしょうか』
男性コメンテーター『そういうことになりますね。特に今のようなネット社会では、そうした情報は早く出回りますし、騒ぎに乗じた便乗殺人ということも無いとはいいきれないでしょうね』
男性キャスター『まだまだ謎の多い事件ですね。こちらの事件に関しては、後ほど改めましてたっぷりと検証していきたいと思います。さて、次のニュースは、こちらも東京、渋谷ですね。連続放火事件のニュースです──』


…………。


……。

 

 



第6章

抗うのは迫り寄る過去

-Their Resistance I-


……。


2015年10月12日(月)

 



「しかし、信じられないな。まさかあのAH東京総合病院で、そんなことが──」


雑然としたオフィスのソファの背もたれに身体を預けながら、神成岳志は顔をしかめた。

信用調査会社フリージアは渋谷の一角、桜丘町の古い雑居ビルの2階に居を構えている。

 



この時間、二十ばかりのデスクが並んだ部屋に社員の姿はほとんどないが、決して繁盛していないわけではない。

こうした調査会社は基本的に外回りの仕事が多い。むしろ繁盛しているからこそ、人の姿が無いのだ。

その人気(ひとけ)のないオフィスのソファで、深刻そうに話をする三人の姿があった。

 



「まぁ、神成ちゃんが疑いたくなる気持ちは分かるけど」


神成の前に陣取っているのは、フリージアの社長、百瀬克子。


「お前なんかに嘘をついて、何の得がある?」


そして、いつものように不機嫌さを隠そうともしていない久野里澪は、神成とは距離を取って座っている。刑事と慣れ合う気はない、といわんばかりだ。


「も、もちろん、信じないと言っているわけじゃない。あの病院に、いろいろ妙な噂があることだって知っている。それに、こうして生きた証人もいることだし……」


神成が向けた視線の先。別のソファに、もう1人──。

 



小柄な少女の姿があった。


「あの娘(こ)……が、本当に施設で被害者たちの世話を?」

「ああ、そうだ」

「今、彼女から、事情は聞けそうかな?」

「やってみてもいいが……失望するだけかも知れないぞ」

「え?」

「それがね……」

 



「……私、帰ります……。お願い……します。私、帰ります。あそこに帰してください。お願いします」

「ずっとこの調子──帰りたい、の一点張り。何を訊いたってろくに話してくれやしない」

「百瀬さんが苦戦するのは、珍しいな……」


そう言いながら神成は立ち上がり、山添うきという少女が座っているソファの前に、事務椅子を引きずっていった。

なるべく怖がらせないよう、ゆっくりと腰を下ろし、目線を彼女と同じ高さにする。

 



「山添、うきくん?」


なるべく優しく声をかけたのに、それでも彼女はビクッと身を震わせた。


「…………」
「怖がらなくていい。俺──僕は、えっと、おまわりさんだ」
「おまわりさん?」
「そうだ。だから、安心していい」
「おまわりさんなら……助けてください」
「ああ、もちろんだとも。だから教えて欲しいんだ。君を真っ暗な地下室に閉じ込めたのは、誰──」
「私、あの人にさらわれて来たんです。だから、助けて下さい。元の場所へ帰してください」


山添うきは一瞬だけ久野里の方を見て、それから、乞うような視線を神成に戻した。

 



「…………」

「これで私も立派な誘拐犯だな。逮捕してみるか?」

「茶々を入れないでくれ。──なぁ、うきくん? 何か勘違いをしてるようだけど、君は、地下でひどいことをさせられていたんだ。だから、こうして助け出されたんだよ?」

「ひどいことなんて何もありません。私はただ、みなさんのお世話をしていただけです。それが私の仕事です」

「…………」

「だから、戻らないといけないんです。私がいないと、みなさんが困ってしまいます」


なるほど、百戦錬磨の“モモちゃん”が苦戦するわけだ。

神成は2人の方を見て肩をすくめた。


「参りましたね」

「でしょう?」

「聞いた限りだと、地下の環境はかなり劣悪ですよね。普通、女の子がそんなところに帰りたいって思うもんですかね」

「私なら、ご免こうむるわね。ま、ウチも仕事内容の劣悪さじゃ負けてないと思うけど」


百瀬が、苦笑気味に笑う。

 



「そいつの頭皮を見てみたが、ロボトミーや電気ショックの痕跡はない。ちゃんと脳の検査をしないと断定はできないが……たぶん、長年の軟禁生活で、自分の境遇に疑問を抱かなくなってしまったんだろう」

「虐待されてる子供と同じか」

「ああ」

「どうしたもんかな……」


神成は、泣きそうな顔で必死にこちらを見ている少女に視線を戻すと、困ったようにボリボリと頭を掻いた。

AH東京総合病院に関しては、今のところ、警察には動く理由が全く存在しない。合法的な手段を用いて手に入れた証拠が、何もないからだ。

山添うきの証言があれば、内部告発という形でこの状況を変えられるかも知れないが……本人がこの調子では、望みが薄い。


「ああ、そうだ、うきくん? この少年を知ってるね?」


神成は思い出して、ポケットからスマホを取り出した。若い奴らから借りてきた端末だ。

碧朋学園で撮影しておいた事件関係者の写真の中から、宮代拓留のものを選んで、うきの前に掲げる。


「彼のスマートフォンを君は拾ったはずだ。彼がそう証言してる」

「その人なら、何回か会いました。でも、その……スマートフォンって、いったいなんですか?」

「は? なに?」

「……その子ね、最近の物は何も知らないわよ」


百瀬に注意された神成は、うきの目の前に掲げていた自分のスマホを指さす。


「ええっと、これがスマホだ。これと似たようなものを、彼が落として、君が拾った。覚えてないかな?」


うきはじっと神成のスマホを見つめていたが、やがてそれに思い至ったらしく、コクリと小さくうなずいた。


「やっぱりそうか。で、それをどうした?」

「落ちていた場所に、すぐに戻しました」

「戻した? 君が持って行ったんじゃなくて?」

「持ってなんて行きません。なんだか分からない物は怖いです……」

「でも、宮代くんによれば、そのスマホから電話がかかってきたって言うんだ。君がやったんじゃないのか?」

「……??? スマホというのは、そうやって写真を見る機械じゃないんですか? 電話もかけられるんですか?」

「…………」


ぷふっ、と吹き出す声が百瀬の口から漏れた。

神成はそちらを軽く睨みつけつつ、うきの前に差し出していたスマホを手元に戻し、ある電話番号を画面上に呼び出した。

その番号を軽くタップする。


呼び出し音がしばらく続いた後、やがて神成の耳に、不機嫌極まりない声が響いてきた。


『はい、もしもし。有村ですけど?』
「ほら、こうやって電話が出来るんだよ。な?」


神成は受話音量を上げ、有村の声がうきにも聞こえるようにした。

うきは、特に興味を引かれる様子もなく、


「そうですか……」


『もしもし? いったいなんなんです? 用がないんなら切りますよ。私、これからランチなんで』
「いや、用ならあるんだ。しかも大事な用が。悪いんだけど、ちょっと力を貸して──」
『お断わりします』
「即答はないだろ」

 



『ねぇ、神成さん? 私ってあなたの恋人かなんかですか? 何かっていうとすぐに電話してきて。いやらしい』
「いやいや、待て待て待て! 別にそういうつもりじゃ」
『なら、ストーカーってことでいいですね?』
「よくない! 困ってるんだ、助けてくれよ」

 



『うわ、出た! 女の敵の決まり文句! それでお小遣いをせびったり、お金のために変なバイトをさせたりするんですよね。最低のダメ人間』
「真面目に聞いてくれよ。大切な話なんだ。頼む」


神成は、絶え間なく文句を言い続ける有村をなんとか説得しつつ、AH東京総合病院や山添うきの話をした。

そして、彼女にこちらの会話を聞かせながら、もう一度、より突っ込んだ内容の質問を、うきに色々ぶつけてみる。


──その結果。


「……どうだ、有村さん?」
『全部シロですよ。真っ白。その子、ウソはひとつもついてません。あと、今回の一連の事件についても、ホントになんにも知らないですね。その子が犯人と関係あるとか思ってます? だったら空振りもいいとこですよ』
「そっか……」


それを聞いて最も肩を落としたのは、神成ではなく久野里だった。

山添うきから、自分の“知りたい情報”がそれなりに得られると思っていたのだろう。

口をへの字に引き結んで、天井を仰いでしまった。


「有村さん、助かった。ありがとう。今度、なんかご馳走するよ」
『はぁ? それって、もしかしてデートに誘ってるつもりですか? だったら、絶対にイヤなんですけど』
「未成年をデートになんて誘ったら、警察クビだよ。じゃあ、またな」
『また、って、もうこういうのやめてくださいよ! 何度言ったら分かるん──』


なおも文句を言おうとしている有村との通話をOFFにすると、ようやく室内が静かになった。


「…………」

「…………」

「…………」


しばらく、誰からも意味のある声が上がらなかった。

山添うきだけが、不安げに足元を見つめながら、『帰りたい』というつぶやきを繰り返しているだけの時間が続いた。

 



「……まぁ、その子に関しては、もう少しうちで預かることにするわ。って言っても、食事と寝る場所の提供くらいで、たいしたことは出来なさそうだけど」


百瀬がようやく立ち上がり、疲れたように首を回した。

ポキポキと不健康そうな音が鳴る。


「それでも充分助かります」

 



「AH東京総合病院(あっち)のほうは、一からやり直しか……」


「一からってことはないさ。地下施設の本格的な捜査が出来ないか、手を考えてみる」

「何とかなるの? 正式な手続きを踏んだところで、またどこかから圧力がかかるわよ」

「でしょうね」

「でしょうね、って、あんた……」

「ま、そこらへんは適当に口実をでっち上げます。ダメならダメで、やりようはあると思うんで。それに、お天道様の下にさらしてしまえば、いくらなんでも無視はできないでしょうからね」

「ふーん……」

「なんです? 何かおかしな事言いましたか?」

 



「似てきたじゃない。あの人に」

「そいつは喜んでいいんですかねぇ」

「どうかしら。少なくとも、良い死に方はしないわね」


…………。


……。

 

-------------------

 

 

【東京】 キャスター渡部氏殺害事件、ニュージェネレーションの狂気をなぞる一連の事件と同一犯か★4


1 名前:ファイナンス☆ミルク嬢φ ★@転載禁止

東京渋谷の学園にて10日午後、ネットニュースなどで知られるキャスター渡部友昭(22)が死亡した事件で警察は、7年前に起きたニュージェネレーションの狂気と呼ばれる事件をなぞる一連の連続殺人事件の犯人と同一の人間による犯行であるという見方を強めた。
渡部氏は学生との対談のため文化祭を訪れており、ステージに登壇したところ、口から大量のシールを吐き出しながら死亡した。
調べによると、渡部氏の胃の中からは力士シールと呼ばれる謎のシールが大量に発見されたことから、警察は、何者かによって力士シールを飲み込むことを強要された事が死因とみて、捜査を進めている。
また、力士シールは現在、渋谷の路上などを中心に至るところに貼り付けられているため、その入手経路を特定するのは困難だろうとの見方を強めている。
渡部氏は先月7日に起きた男性の死亡事件と、19日に起きた渋谷路上での女性変死事件、29日に起きた男性の死亡事件と力士シールとの関係を指摘しており、警察は一連の事件との関わりがあるものとみて、捜査を続けている。


981 名前:名無しさん@転載禁止

ごっつぁんデス


982 名前:名無しさん@転載禁止

ごっつぁんデス


983 名前:名無しさん@転載禁止

ごっつぁんDEATH


984 名前:名無しさん@転載禁止

相撲協会ステマ


985 名前:名無しさん@転載禁止

対談相手の学生が犯人だろこれ


986 名前:名無しさん@転載禁止

ごっつぁんデス


987 名前:名無しさん@転載禁止

つーか名称、ごっつぁんデスで決定?


988 名前:名無しさん@転載禁止

おまいらそんなに力士シール見たきゃ鏡見ろよ


989 名前:名無しさん@転載禁止

この事件の裏にはとある筋の巨大な組織が関わっている。
被害者は全員事件について探ろうとしていた者たち。
ニュージェネ事件を起こしたのもそいつら。
力士シールをデザインした人間もその裏組織によってこの世から消されているはず。
この対談相手の学生というのも危ないだろうな。


990 名前:名無しさん@転載禁止

>>>989
陰謀論


991 名前:名無しさん@転載禁止

>>>989
裏筋まで読んだ


992 名前:名無しさん@転載禁止

>>989
ネ申降臨


993 名前:名無しさん@転載禁止

???


994 名前:名無しさん@転載禁止

>>>991
ヒントつID


995 名前:名無しさん@転載禁止

ごっつぁんデス


996 名前:名無しさん@転載禁止

ごっつぁんDEATH


997 名前:名無しさん@転載禁止

スレ伸び杉
おまいらどんだけ相撲好きなんだよ


998 名前:名無しさん@転載禁止

ごっつぁんデス


999 名前:名無しさん@転載禁止

ごっつぁんデス


1000 名前:名無しさん@転載禁止

1000なら秋場所優勝


-------------------


……。



「物体を動かす力──いわゆる念力(テレキネシス)とよばれるもの。それが先輩の能力です」

「僕の……能力(ちから)……」

「さあ、念じてみてください。動けと。心の中で……」

 



「念じる。心の中で……」


(動け……動け……動け……)

 



(動け動け動け動け動け動け動け動け──)


「動けよぉぉぉぉおおおおおおおおッ!!!」


──!

 

「わっ! 見て、机の上の本が……」

「マジかよ……。浮いてやがる……」

「…………」

「動い……た……」

「お、驚きました……。これは、私が思っていた以上の能力かもしれません……」

 



「宮代拓留。君の能力、この目でじっくりと見させてもらった」

「く、久野里さん……」

「これからは、その能力を使って、私の『渋谷にうず』を手伝ってくれないか?」


(ぼ、僕が、渋谷にうずを……)


「私には君の力が必要なんだ」

「……は、はい! 喜んで!!」

 



「やったね、タク!」

「すごいじゃねーか、宮代!」

「ま、まあ、これくらい当然だよ」

「タク!」

「宮代っ!」


……。


──「タぁクぅ~。ねえ、タクったらぁ」


「は……はは……これくらい……たいしたこと……」

 



「たいしたこと……」


あれ?


「あ、起きた」

「ここ……」

 



僕の、部屋?

じゃあ、今のは……夢?

時計を見ると、時刻はすでに昼を越え、夕方になろうとしている頃合いだった。


(ああ……そうか……)


思い出してきた。

確か、カフェLAXで有村たちと会って、混乱した頭のままこの部屋に戻ったのが深夜。

それから考え事をしたり、ネットで調べものをしたりしていて、結局眠りについたのは明け方だったから……こんな時間まで起きられなかったんだ。

 



「ったく、人が心配して来てやったのに、気持ちよく寝てやがるんだもんなぁ」

「えへへぇ、タクはのんきだね~」

「って、うわぁっ? なんだお前ら!?」


驚いて、思わず飛び上がる。



「なんだ? って、ご挨拶だな、キミはー」

「みんな、タクを心配して、様子を見に来たんだよ?」

「心配? 僕を? なんで?」

「だって、ねえ、華ちゃん」

 

「ん……」

 

「か、香月? お前まで」


この狭い部屋なのに、今の今までいることにまったく気づかなかった。



 

「んんーっ」

「ちょっとタク。そういう言い方はヒドいよ。華ちゃんだって、ずっと気にしてたんだから。ねー?」

「ん……」


意外だった。

あの香月が僕のことを心配して、わざわざこんな所まで足を運んでくるなんて……。

 

どんな時でも、部室でエンスーとかやってそうなのにな。


「てか、大げさなんだよ。そんなに心配しなくたって……」

「でもよ。結構いろんなことあったろ、昨日?」

「そうだよ。のんちゃんも気にしてたよ?」

「のの……来栖が?」

「うん」

「まさか、昨日のこと、ベラベラ喋ったりしてないよな?」

「…………」


世莉架は、あれれ? ダメだったのかなー? といわんばかりの顔になった。


「も、もしかして話したのか!?」

「……うん」

「例の『能力』のことも?」

「うん……」

「なんで言っちゃうんだよっ?」

「だ、だって……のんちゃんには隠し事してもバレちゃうんだもん……」

「…………」


確かに……あの鋭い来栖相手に、世莉架じゃ、とても太刀打ちできないか……。

僕は諦めて、再びベッドに倒れ込んだ。


「いけなかったかなー?」


ぷひゅひゅ、ぷひゅ~……。


世莉架が、いつものようにスマホの『ゲロカエルん』ストラップをいじりながら、申しわけなさそうに僕を見る。


「いや、いい。話しちゃったもんは仕方がない」


来栖のことだ。今頃きっと激しく気をもんでいることだろう。


「で……?」

「ん?」

「それで、来栖はなんて?」

「あー。えっとね……私はいま動けないから、代わりにあなた達がタクのそばにいてあげて、って」

「え、それだけか? あいつのことだから、もっと色々言われただろ? 『危険なことするな』とか『能力なんてバカな』とかなんとか……」

「ううん、そんなことなかったよ」

「だって、あの来栖だぞ? それだけのハズないだろ」

「ううん。それだけ」

「だよな?」

「ん……」

「…………」


なんとなく腑に落ちない物を感じながら、まだぼんやりしている頭をすっきりさせようと、指で両まぶたの上を軽く揉んだ。


「ああ、そうだ! 昼間、神成さんから電話あったぞ。お前が探してるスマホのことで!」

「あ!」


伊藤が、大事なことを思い出したとばかりに手を叩いた。

僕も慌てて身を起こし、立ち上がる。なんといっても最重要な話のひとつだ。


「神成さん、なんだって!?」


僕は勢い込んで、伊藤に訊ねた。

神成さんは、今日一日かけて、山添うきという子から色々な情報を引き出すつもりだと言っていた。

当然、僕が落としたスマホのことも聴取してくれるよう、何度もしつこく頼んでおいた。たぶん、その結果が出たんだ。



「あ、ああ、それがな……」


でも、その直後、神成さんから伝えられた話を聞いて、僕はひどく戸惑うことになった。


……。



 

「……あの子は、持ってない?」

「ああ。一度拾ったけど、すぐに元の場所へ戻したそうだ」

「そんな言い訳、神成さんは信じたのか?」

「有村が確認したんだと。ウソはついてないって」

「有村が……?」


ってことは、山添うきという子の言葉は『真実』ということになる。


「じゃあ、僕の携帯から伊藤に、謎の着信があったのも?」

「それも、彼女は無関係だってさ」

「そう、か……」


(つまり、スマホを持ち去った犯人は別にいるってことか……?)


僕のスマホを──僕の大事な写真を──今、その手に持ってるのはいったい、誰なんだ?

そして……どんな手を使ったか知らないが、不審な電話で僕らを脅してきたのは、なぜなんだ?


「…………」

「とにかく、宮代のスマホは引き続き捜索してくれるそうだ。だからさ、とりあえず新しいのを買ったらどうだ?」

「え?」

 

 

「タクはね、やっぱり私たちの真ん中にいる“ぶちょー”なんだよ。だからね、タクと連絡取れなくて困ること、いっぱいあるんだ。今日も一日中、心配しちゃったし。あと、のんちゃんも、タクとお話したい時にすごく困るって言ってた」

「……そ、そっか……」


みんなの真ん中にいる……か。

なんだかくすぐったくて仕方なかったが、こんなこと言ってくれるのは、やっぱりこいつらだけだ。


(うん。確かに今のままだと、何かが起こった時に、みんなと連絡を取り合うことが出来ないな……)


「うん、分かった。早めに新しいスマホ、手に入れるよ」


僕がそう言うと、世莉架は例によって『えへへぇ』という明るい笑顔を浮かべた。


……。

 



「で、昨日の話の続きなんだけどさ、宮代?」

「続きって、どの話の続きだ?」

「久野里さんの言ってた『能力』だよ。本当にありそうなのか?」

「ああ、それ。……分からないな。ちょっと非科学的過ぎるし」

「でも、最初に超能力がどうのって言い出したのは宮代じゃなかったっけ?」

「それは……」

「お前には見えたんだよな? 有村が出した剣みたいなの」

「まあ……見えるには見えた、けど……」

 

 

有村が手にしていた剣──確かディソードと言ったっけ──あれは間違いなく実在した……ように思えた。



「そいつが見えたってことは、やっぱお前は能力者ってことだろ? 久野里さんもそう言ってたし」

「伊藤……相変わらず久野里さんの言うことは信用するんだな。あれだけひどい目に遭わされたのに……」


AH東京総合病院の地下での仕打ちは、かなりヒドイものがあったと思うんだが……まさか伊藤は、ああいうのがいいんだろうか?


「おいおい、なんだよその目は。俺は別に、そういう趣味はねーぞ?」

「いや……そういえば、お前、来栖を怒らせるようなこともよく言うよな? あれもわざとじゃ──」

「うわぁー、真ちゃんってヘンタイさんだったんだねぇ」

「ん~……」

「……や、やめろよ、おまえら。んなことより、宮代の『能力』の話をしてんだ、今は」


伊藤が、ごまかすかのように話題を元に引き戻した。

これは、絶対に怪しい。


「いや、『能力』とか言われたって……自分の意思で使えたことなんてないしさ。ラブホテルとか病院の地下とか、カギを開けたのは僕の能力だって、有村や久野里さんは言ってたけど、半信半疑なんだ」


ホテルの鍵なんて、本当は最初から開いていたのかもしれないし……それ以外の事だって、ただの偶然かもしれない。


「ちゃんと試してみたのか?」

「試す?」

「おう。だってさ、やってみなきゃ使えるかどうかわかんねぇだろ?」

「コツさえつかめば、案外、出来るかも知れないもんね」

「ん……」

 



普段は全くやる気のなさそうな香月まで、興味津々といったていで、僕の顔を見つめている。

こんな彼女は珍しい。

もしかして、超能力とかオカルトとか興味あるのかな、香月は?


「ええっと……そうだな……」

「それともタク、ひとりで試してみたりした? それでダメだったとか? だったらしょうがないけど……」

「ちっ、違うよ。ぼ、僕がそんな馬鹿げたこと、ひとりでやるわけないだろっ」


とっさに嘘をついてしまった。

実は、昨夜、すでに試してみて……ダメだったのだ。


「じゃあやってみようよ。ね? いいじゃん。減るもんでもないし」

「けど、やるったって、どうすれば……」

「やっぱ、強く念じるとかじゃね?」


だから、それで駄目だったんだよ。


「ほらほら、タク! 念じて念じて!」

「念じるって、何を……?」

「そうだなー。たとえば、ほらっ。そこにある本を動かしてみるとか」


しかもそれ、夢で見た内容と被ってるし。


「わ、わかったよ。やるよ! やってみる……けど、期待はするなよ?」

「大丈夫大丈夫。えー、こほん。それでは挑戦して頂きましょう、宮代拓留くんです! ぱちぱちぱちー」


突然、居住まいを正した世莉架の紹介と、まばらな拍手に後押しされて、僕は仕方なく本の前に陣取った。

そのままゆっくりと両手を挙げ、神経を集中させる。


(動け、動け……動け……)


「…………」

「動けっ……動け動け動け動け──!」

「……!」

「…………!」

「うっ……動けえええええええええええええッ!!」


ドンっと勢いをつけて両手を突き出す。

すると! 本のページがゆっくりと──!


「うーん、やっぱ動かないねえ……」

「はぁはぁはぁ……だろ!? だから出来ないって言ったんだよ!」

「ちぇー、なんだ、つまんねぇの」


──ドン!


「…………っ」

「こ、こら、香月。人ん家の壁を殴るな」

「えへへぇ。でもよかったね、タク」


いつの間に冷蔵庫から出したのか、僕のマウンテンビューを開けながら世莉架が笑顔で言った。


「あ、俺にも一本!」


世莉架は飲もうとしていたペットボトルを伊藤に渡し、新たに2本取り出すと、1本を香月に手渡した。

 



「おい、お前ら、人の物を勝手に。後で金払ってもらうからな」

「なんだよ、ケチ臭ぇな」

「ひとり暮らしは何かと金がかかるんだよ。ていうか、尾上、僕にも1本」

「ん」


これで計4本消費だ。

新しくまとめ買いして来なきゃ。


「サンキュ。で、何がいいんだよ?」

「ん?」

「さっき言ったろ。よかったねって」

「あ、うん。だってさ……。もしもタクにそんな能力があったら、命を狙われるかも知れないってことでしょ?」

「え?」


(命を、狙われる……?)


……。