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-ノベルゲーム・タイピング-

CHAOS;CHILD らぶCHU☆CHU!!【6】

このブログはゲームのテキストを文字起こし・画像を投稿していますので、ネタバレを多く含みます。

読んで面白いと思ったら購入し、ぜひご自身でプレイしてください。

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Twitter─ @Zippydle_s
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--------------------

 

 

 


~有村雛絵編 途中から~



 

 

「え……?」

 

 

 

「宮代先輩になら……いい、ですよ……」


な、なんだよ、急にしおらしくなっちゃって。


「あ、いや……今のは、つい勢いで言っただけで、僕はそんなつもりは……」



 

「私って魅力ない、ですか?」
「う……」
「ふたりっきりでこんな狭い部屋にいても、そんな気にならないくらい、可愛くないですか?」


待て。

何をドキドキしてるんだよ。

相手は有村だぞ。

そんな気になるわけが……。



 

──!

-NEGATIVE TRIGGER ON-

 

 

 

いや、もうダメだ!

いくら僕だって、こんな風に言われたらガマンできない!!

「有村ぁぁああああ!!」


「きゃあっ!!」


僕はなかばダイブするかのように、有村にとびかかろうとした。


その時──。


「な──!?」


足元の地面が消失したかと思うと天地が逆さまになったような感覚に襲われ、次の瞬間には激しい衝撃が身体を襲った。

な、なんだ?

何が起きたのか理解が追い突かない。

 

 

 

ようやく上下の判別がつくようになって見上げると、そこには四角い光の枠が浮かんでいた。


「いやぁ、ほんっとバカだなあ、宮代」

「伊藤……」


まさかこれは……落とし穴?



 

穴の中から必死の思いで這い上がると、そこには新聞部の連中がニヤニヤと集まっていた。


「な、なんだよこれ? 何がどうなってるんだ?」

「まだわからないの?」

「ドッキリ……かも」


ハンディカメラを持った香月が言った。


「ドッキリ?」

「ああ。新聞部の新しい試みとして、今度からウェブで映像配信をすることにしたんだ。その第一弾がこいつだ」


映像配信……だと?


「ちょっと待て! そんなの僕は聞いてないぞ!」


「それはそうよ。言ってないもの」


じゃあ……。


「しかも今回は第一回目ということで、こちらでも見ていただいていまーす!」



 

『こんばんは。渋谷にうず、ケイさんです。ただいまのドッキリご覧いただけましたか?』

 


そんな……渋谷にうずで今のが……?


「それだけじゃねーぞ」

 

 

 

『どうもー。ニコニヤニュース速報の渡部です! いやぁ、見ましたか、今の宮代少年のおどろいた顔! ケッサクでしたねぇ! それでは今のシーンをもう一度、ご覧いただきましょう~!』

 


「や、やめろおぉぉぉっ!!」

 

僕は伊藤が差し出したタブレットを奪い、電源をオフにした。



 

「ゴメンねぇ、先輩。私は嫌だって言ったんですけどぉ」

「でも、台本書いたのはひなさん……かも……」

「やぁぁん、華ったら、それは言っちゃダメぇ~」


こいつ……!



 

「でも、おかげで、私たち新聞部の評判はうなぎのぼりよ」

「見ろ。SNSのトレンドにも入ってるぞ!」


なんてことだ……!

きっと、この映像はネット上で拡散されて一気に広まる。

学校中、いや、渋谷中……いや、世界中の人が、僕が女の子にとびかかったという事実を笑い、嘲り、そして軽蔑するんだ!



 

「な、なんてことだ……僕の人生はもう終わりだぁぁぁ……!」

 



 

 

 

………

 



 

「…………」


あ、あれ?

そ、そうか、妄想だったか……。



 

「ちぇ~。冗談とはいえ、ここまで言って何の反応も無いってのは、雛絵ちゃん、ちょっとショック~」


……良かった。

ただの妄想で。

あの時、有村のあの言葉に乗っかってたら、危うく街中の笑いものになるところだった。

 

 

 

 

 

--------------------

 

 

 



──!

 

-POSITIVE TRIGGER ON-

 

 

 

 



「触っても……いいんですよ……」
「へ? さ、触ってって……どどっ、どこを……?」
「すごく、柔らかいところ、です……」
「ゴクリ……!」
「触りたくないですか?」


ダメだ。

僕はもう我慢できない!!


「さ・わ・り・たいっ!!」
「あんっ!!」


僕は無我夢中で、むしゃぶりつくように、彼女の"そこ"に指を這わせた。


「こ、これが女の子の……!」


なんて柔らかいんだ。

こんなものが、この世に存在するなんて!


「ダメ、先輩……そんなに強くしちゃ……!」
「じゃあ、こっちはどうだ?」
「んっ……!! イヤ、そんなところ……!」
「ほら……こっちは、コリコリしてる……」
「言わないで……」
「この奥はどうなってるのかな……?」
「そ、そんな奥まで……恥ずかしい……」
「恥ずかしがらないで……もっとよく見せて……」
「あぁっ……そこは……!」

 

 

 

「ああ……すごい! すごいよ……有村の耳!」

 


柔らかな耳たぶ。

軟骨はコリコリしてて、耳の穴も理想的だ!!!

 

 

 

「耳、サイコーーーーーーー!!!」

 

 

 

 

 

 

 

「なーんて、もちろん冗談ですけどね」
「へ?」


……ああ……妄想か。


ていうか、なんだ今の妄想は!?

僕は別に耳に特別なフェティシズムなんて抱いてないぞ!!

たぶん……。

 

 

 

 

「でも、ま、思った通りでしょ?」
「……なにがだよ?」
「だから。フツーの男子なら、こんなところであんなこと言われたら、変なことしようって思うもん。その点、先輩は何もしなかった。ってことは、それだけ宮代先輩が人畜無害ってことじゃないっすか」


………

 


……

 

 

 

 

 

 

しまった!!

これじゃあ、まるで伊藤に襲い掛かってるみたいじゃないか!!

早く退かないと、事態が別方向に悪化することになるぞ。

今すぐに──。


(あぁぁぁぁ! パンツが!!)


ここで退いたら有村のパンツが……!

どっちに転んでもヤバいことになるんじゃないのか?

くっそぉぉぉぉぉ、どうすれば!

僕はどうすればいいんだ!


「あ、あのさ……宮代……その……退いて……くれないか?」


伊藤が何故か恥ずかしそうに目を逸らした。

待て!

そっちを向いたらパンツ(あれ)が!



 

─!

-NEGATIVE TRIGGER ON-

 

 


「だ、ダメだ!」


伊藤の顎をつまんで、半ば強引に僕の方を向かせる。



 

「あ……」


あれ?

なんだ、この胸の高鳴りは。

ていうか伊藤。

お前もなんで、そんな切なそうな顔してるんだよ?


「宮代……お前……もしかして……」
「い、伊藤……」
「そっか……ごめんな……今まで気づいてやれなくて……」
「ち、違うんだ……僕は……」
「実はさ……俺も……」
「え……?」
「俺も実はお前と同じでさ……」


同じ?

どういう意味だ?



 

「俺も前からお前のこと……」
「ウソ……だろ?」
「だから、お前がこっちの人間だってわかって、嬉しいよ。みんなで幸せになろうぜ」
「みんな、で?」


その時、突然高らかな声とともにドアが開いた。


──!

 

 

 

「ようやく本当の愛に気付いたようだね、宮代くん!」

「神成さん? それに……」

 

 

 

「ようこそ、僕たちの世界へ!」


和久井先生まで……。



 

「ちょ、ちょっと待って。これはどういうことなんだよ!?」

「僕たちはね。同じ趣味を持つものとして、この世界に新しい王国をつくる──そんな志を持つ同志だよ」


新しい王国?

もう何がなんだかわからない。


「俺たちに見向きもしない女なんて存在は、この世に不要なんだ。世の中は男だけいればいい!」

「彼の言うとおりだ、宮代くん。小生意気なツインテールの女も、科学者だかなんだか知らないが人をゴミのように扱う偉そうな女もいらない。俺たちは男だけで目眩(めくるめ)く愛の世界を紡ごうじゃないか」


「い、いや! 僕はそんな趣味じゃ──!」



 

「何を言ってるんだい。たった今、君はその身で行動して僕たちに示したじゃないか」

「そうだぞ。せっかく出した勇気を否定しちゃあいけない」

「違うんです! あれは──」

「それじゃあ、我らが国王を呼ぼうじゃないか」


国王?


「国王陛下の、おなーりー!」


どこからともなくファンファーレが聞こえ、狭いドアからひとりの男が現れた。



 

「余はただいま帰ったぞ、タク」

「ゲンさん!?」


「そう、彼こそが我らが国の王、キング・ゲンだ」


そういえば、以前ゲンさんは言っていた。

海外の貴族の血を引いており、その関係からいざとなれば外国の特殊部隊も動かせる、と。

じゃあ、これが……特殊部隊?

確かに特殊(性的な意味で)だけど……。

 

 

「タクが仲間になってくれて、余も嬉しいぞ」

 


いや、だからっていくらなんでもこれは……。



 

「宮代くん」

「宮代くん」

「宮代」

 


「ようこそ、我ら、オトコ王国へ」
「ようこそ、我ら、オトコ王国へ」
「ようこそ、我ら、オトコ王国へ」

 

 

「ひぃぃぃ!」

 


と、ゲンさんがずいっと一歩踏み出した。



 

「さあ、余の仲間になった証に、余の一番大事なものを授けよう。心して受け取るがいいぞ」


一番大事なもの……。

それって……。

 

「い、イヤだ……それだけは! お願いっ! お願いですからやめて!」

「ほらほら、宮代、往生際が悪いぞ」



 

いつしか周りに集まっていた伊藤たちが、僕を羽交い絞めにする。

 


「いやああああああああああ!!」

 

 

 

 



 

さ、最悪だ!!

今まで妄想した中でも、最悪の部類に入る妄想だ!!

 

 

--------------------

 

 

 

 

──!

-POSITIVE TRIGGER ON-

 

 

 

 

いや、だとしても、伊藤に"そっち"だと誤解されるよりはマシだ。


「わ、悪い」


僕はゆっくりとベッドから起き上がり、伊藤の身体を解放した。


「いや……ん?」


伊藤の視線が例のブツをとらえた。


「なんだ、これ?」


ああ……もう、終わりだ。

 

 

 

「パンツ? しかもこれ、女ものじゃねえか! おい、宮代! どうしてこんなところに女もののパンツがあるんだよ!?」 
「そ、それは……」
「!? そうか……お前、やっぱり……!」
「ち、違うんだ! それは……そ、そう! 僕のものなんだ!!!」
「へ?」


しまった。

思わず言ってしまった。


「実はその……僕、家にいる時はいつもそれを履いてて……」



 

「そ、それって……このパンティーを、か?」


パンティーって言うな。

なんて突っ込んでる場合じゃない。


「このパンティーをお前が?」


とにかく、言ってしまったものはしょうがない。

こうなったら、もうこのまま押し通すしかない。

僕は伊藤に向かって、ゆっくりと頷いた。


「そ、そうか……その、なんつーか……まあ、趣味はそれぞれだよな、うん……」


伊藤は緩慢な動きで立ち上がった。

心なしか、僕から距離をとったような気がする。


「お、お願いだ、伊藤! このこと、誰にも言わないでくれっ!」
「あ、ああ……言わないよ……誰にも……」

 

 

 

僕と一定の距離をおいたまま、伊藤はゆっくりと扉側に回り込み、そのままじりじりと後退りした。


「わ、悪かったな。邪魔して。俺、そろそろ……」
「う、うん……」
「じゃ、じゃあな!!!」


──!



 

言い終わるよりも早く、伊藤は激しくドアを開け、逃げるように去っていった。


「………」


本当に良かったんだろうか、これで……。



 

「パンティー……」

 

咄嗟にあんなこと言ったけど……本当に履いてみたらどんな気分なんだろう。

いや、やめろ宮代拓留!

その好奇心はお前自身を殺す刃となる!

でも……。

何ごとも経験って言うし……。


「っ……」


僕は沸き上がる興味に逆らうことが出来ず、無意識のうちにズボンに手をかけていた。

そして……。

その禁断の輪の中に片足を通してしまった。


「な、なんだこれは──!!」


それはまさに、衝撃とも言うべき感触だった。


「このフィット感! そして滑らかな肌触り! これが……女子のパンティー!!」


これを体感してしまった今、もはやこれから先、トランクスやボクサーパンツ、ましてやブリーフなんて履けない!!

ありがとう、有村!

僕に新しい悦びを教えてくれて!

これからも僕は、女性ものの下着を装着しつづけるだろう。


「待てよ……上はどうなんだろう?」


下だけでは不完全な気がする。

うん、そうと決まれば、今すぐ買いにいこう!


──!

 



 

僕はズボンを履くとそのまま、胸の高まりを抱き、外へと飛び出した!


「待ってろよ、ブラジャー!!」


新たな悦びへの追及はまだ始まったばかりだ!!!



 



 

 

 

いや、無い!!

僕には決してそんな趣味はない!!!

 

「宮代……?」
「あ? あ、ああ、悪い! ちょっと躓いちゃってさ!!」


僕は慌てて伊藤の上から飛び退いた。

 

 

 

「な、なんだ、そうか。俺はまたてっきり……」
「てっきり?」
「あー、いや、なんでもないんだ! 気にするな!」


良かった。

どうやら伊藤は、有村のパンツには気づかなかったようだ。


………

 

……

 

 

 

 

 

でも……。

なんか、こうやってニーハイ履いてるところって、なんとも言えないエロチシズムを感じる。

いかんいかん。

冷静になれ、宮代拓留。

相手は有村だ。

昨日、変な気は起こさないって、言い切ったばかりじゃないか。

ここで寝たふりしてこっそり見てるなんてことがバレたら、それこそ勝ち誇ったように威張るに違いない。

有村は昨日、女の意地と言ったが、僕にだって男の意地がある。

決して、邪な感情を持つわけにはいかない。

いかないんだ。



 

 

──!

-NEGATIVE TRIGGER ON-

 

 

 

 

でも……。


「…………」


つい目がいっちゃったって、しょうがないじゃない。

だって男の子だもの。


「ん?」


マズい!!


「せんぱ~い? なぁに、見てたんですかぁ?」



 

 

ニーハイを履き終えた有村がふらりと立ち上がった。

ここは誤魔化すしかない!


「ふぇ? ああ、おはよう、有村」



 

 

「誤魔化したって駄目ですよ。さっき見てましたよね?」
「……なにを?」
「私がニーハイ履いてるところ」
「ああ……」


どうせ嘘をついてもバレる。

こういう時は、事実を認めつつ平静を装うのが一番だ。



 

 

「昨日、私にはそんな気にならないって言ってませんでしたっけぇ?」
「言ったな」
「……もしかして、ニーハイ好きなんですか?」
「ああ……」


しまった!!

適当にのらりくらりと誤魔化すつもりが、思わず素直に返事してしまった!



 

 

「ふふっ、素直なんですね、先輩」


有村には、さっきの言葉が僕の本心だとわかっただろう。

となれば、もう誤魔化したところで無駄だ。


「そうだ。僕はニーハイが大好きだ」
「そう。それじゃあ、素直な先輩にはご褒美、あげなきゃ」


ご褒美?


「私のニーハイ……欲しいでしょう?」


有村の履いているあのニーハイ……。



 

「ほら。欲しければ欲しいって言わなきゃ」
「あ、有村のニーハイ……欲しい……です」



 

「ください、でしょう?」
「有村のニーハイを……僕にください……」
「よくできました。それじゃあ……」



 

有村は嬉しそうに微笑むと、ゆっくりと腰を落とした……。

 

 

 

そして──。

 

 


「とりゃああああああっ!!!」

 


──ッ!!

 


「ほごぉぉぉぉぉっ!!」

 

 


有村の膝が僕の顎を直撃したと気づいた時には、僕の意識は途切れかかっていた。



 

「どうです、私のニーハイ?」

 


有村……それはニーハイというより、真空とび膝蹴りだ……。



 

 



 

……なんてことになりかねない。

想像したら、邪な気持ちなんて一気に消え去ってしまった。

でも、これで良かったんだ、たぶん……。

 

 

--------------------

 

 

 

──!

-POSITVE TRIGGER ON-

 

 

 

でも……。


「…………」


つい目がいっちゃったって、しょうがないじゃない。

だって男の子だもの。


「ん?」


マズい!!


「せんぱ~い? なぁに、見てたんですかぁ?」

 

 

 

ニーハイを履き終えた有村がふらりと立ち上がった。

ここは誤魔化すしかない!


「ふぇ? ああ、おはよう、有村」



 

「誤魔化したって駄目ですよ。さっき見てましたよね?」
「……なにを?」
「私がニーハイ履いてるところ」
「ああ……」


どうせ嘘をついてもバレる。

こういう時は、事実を認めつつ平静を装うのが一番だ。



 

「昨日、私にはそんな気にならないって言ってませんでしたっけぇ?」
「言ったな」
「……もしかして、ニーハイ好きなんですか?」
「さあ……」


そして、ヤバいところは曖昧にごまかす。


「ふ~ん、そうやって誤魔化すつもりですか」

 

 

 

有村がゆっくりと僕に近寄って来た。


「いいですよ。そうやって誤魔化すっていうなら、吐かせてあげます」


……何をするつもりだ?


「えいっ」



 

こ、これは──!

 

「ふふっ、どうです? こういうの、好きなんでしょう?」


両頬に太ももの柔らかな感触とぬくもりが!

それに、有村が身じろぎをするたびに、ニーハイのすべすべした材質が僕の頬をこすり上げる。

まさに至福!

そして、何よりも素晴らしいのはニーハイと太ももの盛り上がったところだ。

その盛り上がりを、こんなに近くで拝めるとは……!


「どうなんです? ほら、言ってください。好きだって」
「っ……」


有村の投げかける質問に、僕は応えず、ただその感触と、そして視界に広がる境界線を楽しんでいた。


「だんまりですか。それじゃあ──」


両頬の締め付けが一層強くなる。


ちょうど、首4の字のあんばいだ。

けれど、ぐいぐいと締め付けられれば締め付けられるほど、僕の中のボルテージは高まってゆく。


「ほら、言ってごらん? 好きだって」
「う……」
「……もう、強情なんだから。それじゃあ、これはどう?」



 

「うわっ!!」


突然、視界が暗闇に覆われた。

もちろん、停電でもなんでもない。

有村が僕の頭の上からスカートを被せたのだ。

今や僕の頭はすっぽりと有村のスカートで覆われている。

その上、両頬に触れるのは生太ももとニーハイという至極のハーモニーだ。

こんなことされたら、もう……。

 

 

 

 

 

 

……冷静になれ、僕。

仮に見つかっても、そんなことにはならないから。



 

 

 

「あ……先輩。チャオっす」


いつの間にかニーハイを履き終えた有村が、こちらを見ていた。


「ん……あぁ、おはよう」


よかった。

どうやら僕が見ていたことには気づいていないようだ。

 

………

 

……

 

 

 

 

 

 

 

 

いや、待てよ。

何かおかしい。

あの有村が、たかがこのくらいで照れたりするものだろうか。

……やっぱり無いな。

有村に限って、そんな純情じみた反応するとは思えない。

けれど……。

 

 

「…………」


照れている姿──これに関していえば、嘘とは思えない。

心なしかモジモジしている気もするし。

ということは、他に何か照れたり恥ずかしがったりする要因があるということだ。

いったいなんだ?



 

──!

-NEGATIVE TRIGGER ON-

 

 

 

「やっぱりダメ! もう黙ってることなんてできない!」


有村が突然、声を上げた。


「宮代先輩……実は私、先輩に言わなきゃいけないことがあるんですけど」
「言わなきゃいけないこと?」


いったいなんだ?

しかも、さっきとは打って変わって、やけに真剣な表情をしている。

何か重大なことだろうか。



 

「あのね。実はね……その……ぷっ!」


と今度は噴き出した。

 


「いやーっ、もう我慢するの無理ーっ! 超恥ずかしいんですけどー」
「なんなんだよ、さっきからいったい!!」



 

「先輩、今日家出る前、鏡見ました? 見てないですよねー?」


鏡?

確かに見てないけど……。

 

 

 

「あのね……………鼻毛、出てますよーっ!!」
「なっ!?」
「しかも、両方の穴から。びっしり!」
「びっしり!?」
「もう、もっさり!」
「もっさり!!?」


思わず両手で鼻を覆い隠す。


「いやーっ、いつ気づくのかなって待ってたけど、さすがにこれ以上一緒にいるのは恥ずかしいー!」


じゃあ……さっきのは照れてたんじゃなくて、僕の顔を見てずっと笑いをこらえてたってことか?

「そうそう、あとね……」


まだ何かあるのか!?


「チャック、開いてますーぅ」
「いやんっ!」
「それから、シャツ、裏表反対だしぃ」
「ひぃぃ!」
「なんか、カピカピになったご飯粒ついてるしぃ」
「ぬわぁぁぁ!」
「後頭部寝癖ついてますしぃ」
「どあああああ!」
「靴下も、左右違いますよぉ」
「あ……あぁ……あぁ……」



 

「よくもまあ、この格好で外なんて歩けたもんですよねー。私なんて、一緒に歩いてるだけで赤面ものだったのに!」


道行く人がくすくすと笑いながら僕を指さして通り過ぎてゆく。


「は……恥ずかしい……」


僕はなんて恥ずかしい格好で今まで歩いてたんだ。

もう……外を歩けない。

今すぐ帰ろう。

家に帰ろう。

そしてもう、二度と外には出ない。

一生出るもんか。

 

 

 

 


--------------------

 

 

 

──!

-POSITIVE TRIGGER ON-

 

 

 

 

 

「きゃっ!!!」


と、その時、不意に僕たちの間を突風が吹き抜けた。

有村がスカートを抑えて、真っ赤な顔をしている。

なんだ?



 

「……み、見ちゃった?」
「え?」
「見たでしょう?」
「み、見たって……何を?」
「っ……とぼけないでください。見たくせに」


いや、断じて見てない。

けれど、さっきまでとも違う有村の様子に、僕は呆気にとられて何も言えなかった。



 

「そのっ……いつもじゃないんですよ! たまたまですよ! たまたま今日は……無いだけで!」
「無い?」


なにが?


「もう……わかってるくせに」


有村はさっきから、やたらとスカートを気にしている。

も、もしかして……。


「お、お前、穿いてないのかっ!?」
「っ…………」


有村は恥ずかしそうに顔をあからめ、上目遣いに小さく頷いた。


(穿いて……ない……)


「い、いつから?」
「朝からずっと……です……」
「なんで!」
「だって……先輩、こういうの、好きかなって思って……」


僕はいったい、有村にどういう奴だって思われてるんだ!?

くっ……一瞬でも、有村のことを純情だと思った僕が間違っていた。



 

「言っときますけど……こんなことするの……先輩だからですよ……」


そ、そうか。

これは僕に良かれと思ってしてくれたわけで……。

だったら……しょうがない、よな?


「…………」
「っ…………」


思わず息を飲む。

有村のスカートは結構短めで、その下は……ニーソじゃなくて、タイツだよな、あれ。

ノーパンにタイツ……それなら多少はわからないんじゃないかという気もしないでもないけど、それはそれでかなりマニアックな気がする。

もしかしてそれを含めて、僕が好きかもしれないと言ったのか?

だとしたら……こいつにはすべてお見通しなのか!?


「気になります?」
「そ、そりゃあ……」
「じゃあ……」


有村は何を思ったのか、スカートの裾を摘まんだ。


「お、おい……」


そして、ゆっくりと、ゆっくりと……。

スカートを上げるにしたがって、黒いタイツの面積が広がってゆく。

意識してないとデニール値高めのタイツに見えるが、良く見るとうっすらと白い肌が透けて見える。

ということは、その上は……。


「っ……」
「……ごくっ」



 

 

 

 

「先輩危ないっ!!」
「え?」


──!


「あがっ!!!」


「大丈夫ですか?」


……考え事しながら歩いてたせいで、思いっきり電柱にぶつかってしまった。


………

 


……

 

 

 

 

 


「先輩……」
「ん……」
「せーんぱい……起きて、先輩……」
「んー……」
「もう、しょうがないなぁ……」


──チュ……。


「ん?」



 

「あ、やっと起きた」
「あぁ……ごめん。ついウトウトしちゃって……」
「ふふ……まあいいです。寝顔も可愛かったから」


あれから僕と雛絵は付き合い始めることになった。

あの出来事のあと、母親との確執もとりあえずは解消され、これでようやく雛絵も家に帰るだろう──と思っていたのだが……。


「ていうか、いいのかな。ホントに……」
「なにがです?」
「このまま一緒に生活してて……お母さんだって怒ってるんじゃないのか?」


そう。

雛絵は結局、家に帰ることなく、僕のこの住処に居候し続けていた。


「いいんですよ。どうせパパやママだって好き勝手やってるんだし」
「でも、だからって……」
「じゃあ、先輩は私が帰っちゃってもいいんですか? 明日からまた、お掃除もお洗濯もご飯も、ぜーんぶ自分でやることになりますよ?」
「う……」
「それに……」


雛絵は僕の耳元に顔を近づけて囁いた。


「こんな風に、一緒に過ごすこともできなくなっちゃいますけどー?」
「……それは……イヤだ」
「ふふっ、素直でよろしい」


雛絵のかわいらしい唇が、僕の耳に触れた。

雛絵と付き合っていくコツは、嘘をつかないことだ。

どうせ嘘をついたところでバレるんだから、取り繕うだけ無駄というもの。

逆に言えば、それさえ守っていたなら、彼女は僕に怒ることもない。

怒ることがなければ、反発しあうこともない。


「それにね。本当はママも認めてくれてるの」
「認めてって……ここに住むことを?」
「もちろん、将来的にちゃんと責任とってくれるなら、だけど」


責任……。

もしかして僕は……試されてるんだろうか?


「僕は──」
「なーんて、冗談ですよ、冗談」
「え?」
「私、別にそういうので縛ったりとかしませんから」
「雛絵……」


ひょっとして、あの時みたいに、また怖くなったんだろうか。

僕の言葉を聞くのが。

でも、きっと大丈夫。

僕はもう彼女を不安にはしたりしない。

だって、あの時に決めたから。

だから僕は、彼女の目を真っ直ぐに見つめて言った。


「卒業したらさ。ちゃんと挨拶にいくよ」
「え?」
「お母さんや、お父さん。それにお兄さんにも……」
「先輩……」


もちろん、そこから先はまだまだ未来の話だけど。

でも。


「ねえ、先輩?」
「ん?」
「私のこと、好き?」
「わかってるくせに……」
「そんなんじゃダメ。ちゃんと言ってくれなきゃいや」
「好きだよ……」
「うん……私も大好き……」


僕は、決めたから。

これから先も、彼女とともに歩んでいくことを。


「えいっ!」
「え?」
「ふふっ……」
「あ、ちょっ、ちょっとタンマ!」
「だーめ! やっぱり私をこんなにも好きにさせた責任、とってもらいますからねっ」
「あぁっ!!」
「ふふふふ、一生逃しませんよ~」

 

………

 


……

 

 

 

 

【有村雛絵 Good end】